2012年05月16日

恩に着るよ+「レインマン」の話再び フレンズ6-18その3

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ジョーイは部屋に入ってくるなり、チャンドラーに「お前の大学時代の同級生で映画監督になった子(女性)がいただろ?」と尋ねます。
ジョーイ: Oh well listen, anyway she's directing a new Al Pacino movie. You gotta get me an audition! (なぁ、聞いてくれよ、とにかく、彼女が新しいアル・パチーノの映画を監督するんだ。俺のためにオーディションをゲットしてくれよ!)
チャンドラー: Oh, I don't know, man. I haven't talked to her in like 10 years. (あぁ、どうかなぁ。彼女とはもう10年くらい話してないんだ。)
ジョーイ: No-no-no, please-please, Chandler, I-I-I would owe you so much! (だめだめだめ、お願いだよ、チャンドラー。そしたら、ものすごく恩に着るからさぁ!)
チャンドラー: You do owe me so much. You owe me three thousand, four hundred.... (お前は(すでに、実際に)俺に恩があるんだよ。お前は俺に 3,400ドル借りてて…)
ジョーイ: Hey-hey dude. Why are you changing the subject? Why? Will you make the call or what? (おいおい、お前。どうして話題を変えてるんだ? どうして? 電話する気があるのか、どうなんだ?)
チャンドラー: Oh, okay, I'll-I'll try. (あぁ、わかったよ。電話してみる。)

direct は「…を指導する、指揮する、監督する」ということで、映画や劇の場合は「監督する、演出する」という意味。
ですから、director はカタカナの「ディレクター」というよりは、映画であれば監督、劇であれば演出家と訳した方がしっくりきますね。

You gotta get me an audition! は「お前(チャンドラー)は俺にオーディションをゲットしなくちゃいけない」みたいなことですが、この get は「手に入れる」のニュアンス。
get somebody something のように、2つ目的語を取って、「人にものを手に入れてやる」、つまり、「人のためにあるものを手に入れてやる」という感覚になります。
「お前の同級生がアル・パチーノの新作の監督をするんだから、俺の友人であるお前は、俺のために(お前のコネを使って)オーディションをゲットしてくれなくちゃいけないんだよ」という感じでしょう。

I haven't talked to her in like 10 years. は、「10年くらい、彼女と話していない」という現在完了形。
今に至るまでの10年の間、彼女とは一度も話してない、という感覚ですね。

長い間、話もしてないから、そんなこと頼めないよ、と言いたそうなチャンドラーに、ジョーイは、お願いだよ、と必死に頼んで、I would owe you so much! と言っています。
owe somebody は、「人に恩義などを負っている」で、「人に借りがある」という感覚。
owe you so much だと「君にずいぶん恩義がある、借りがある」ということになります。
ここでは、would がポイントなのですが、その説明は後にして、次のチャンドラーのセリフを見てみます。

ジョーイが、I would owe you so much! と言ったことに対して、チャンドラーは、You do owe me so much. と言っていますね。
would や do のニュアンスは別にして、owe me so much に関してのみ言うと、ジョーイの言った you を me に置き換えて、「お前は俺にずいぶん借りがある」とオウム返しのように言っていることになります。
その後、You owe me three thousand, four hundred.... と言っているのは、まさに「お前は俺に 3,400ドルの借りがある」と言っているわけですね。

ここで改めて、ジョーイのセリフの I would owe you の would について見てみます。
この would は、「もしお前が俺のためにオーディションを取ってきてくれたなら[ゲットしてくれたなら]、俺はお前にものすごく恩義を感じるだろう」という「仮定」のニュアンスが込められています。
ジョーイが would を使っているのは、「今、俺はお前にたくさんの借りがある」と言いたいのではなくて、「もし俺の頼みを聞いてくれたら、お前にたくさんの借りがあることになる」と言っているわけですね。

日本語で「恩に着る」という表現がありますが、これは広辞苑では「恩を受けたのをありがたく思う」と説明されています。
ジョーイが言いたいのもそういうことで、「もしオーディションを取ってきてくれたら、その恩をものすごくありがたく思うからさ」という感覚でしょう。それで上の訳では、「ものすごく恩に着るから」みたいに訳してみたわけです。

「そうしてくれたら、その恩は忘れないよ」みたいな意味で、ジョーイは「お前にいっぱい恩義を感じるよ、お前にたくさん借りができたと思うよ」と言ったのですが、チャンドラーはあきれたように、ジョーイの would の代わりに、owe を強調する do を加えて、「お前は(もうすでに今の段階で)俺にたくさんの借り・恩があるんだ」と指摘したのですね。
その借りを具体的に説明するために、「3,400ドル」という借りがすでにあるじゃないか、その金をお前は俺に返すことになってるんだぞ、と言いたいわけです。
そんな大金を俺に世話になっといて、まだ頼みごとをするつもり? さらには「そうしてくれたらものすごく恩に着る」だなんて、すでに俺にものすごい借りがあるのを忘れたのか?という気持ちから出た言葉でしょう。

そうやって、「お前は俺にすでにたくさんの借りがあるだろ」と説明しかけた時に、ジョーイが、「おいおい」と言って、「どうして話題を変えるんだ?」と怒っています。
Will you make the call or what? の Will you...? は「お前は…するつもりがあるのか?」みたいな、ちょっと挑戦的なニュアンスが感じられますね。
最後の or what? は、「〜か何か? それとも何だ?」みたいな感覚で、「電話する気があるのか、どうなんだ? まさか電話しないって言うつもりか?」みたいに食ってかかる感じでしょう。

チャンドラーは「ジョーイがチャンドラーに恩義を感じる」という話題に沿って、「ジョーイはチャンドラーにすでに大きな借りがある」という話をしたわけです。
つまり、まさにその話題をしていたのにもかかわらず、ジョーイは「お前は話題を変えるつもりか?」とプリプリ怒っている、その「状況をわかってない」具合が、ジョーイらしくて笑えるわけですね。
ジョーイとしては、オーディションを取ってきてくれるかどうかだけが問題で、「恩に着るからさ」と言ったのは、ただの「人にものを頼む時の決まり文句」程度の意識だったのでしょう。
その owe you so much という言い方にひっかかったチャンドラーが、「すでにお前は 3,400ドルも俺に借りてるのに…」とボヤいたところ、「今はオーディションの話をしてるのに、どうして金の貸し借りの話を持ち出す?!」みたいにジョーイが怒ったということです。
「まさにその恩義の話題をしてるんだろうが」と思いながらも、議論しても無駄だな、みたいなあきらめの表情で、「あぁ、わかった、やってみるよ」と言うチャンドラーにも笑えますね。


(今日のおまけ) 「レインマン」を見て気づいたことを3つほど…。

前回の記事で、映画「レインマン」について触れましたが、その映画を鑑賞している時に、過去に拙ブログで解説したことと「ちょっぴり関係ありそうなこと」を3つ発見しましたので、ご報告も兼ねて書かせていただきます。(あらすじに触れている部分もありますので、未見の方はご注意下さい。)

1. 「600万ドルの男」ならぬ「300万ドルの男」

兄レイモンドと弟チャーリーが、狭い電話ボックスに入っているシーンでのセリフ。
チャーリー: You know why there's a party for you? 'Cause you're the 3-million-dollar man. (どうしてレイモンドのためにパーティーがあるか知ってるか? それは、レイモンドが”300万ドルの男”だからだよ!)

二人の父が亡くなった時、チャーリーが受け取ったのは車とバラだけで、残りの遺産 300万ドルは、兄レイモンドの信託預金となってしまいます。
つまり、兄が父の遺産をほぼそっくり相続したことになるのですね。
そのことに腹を立てた弟チャーリーは、自閉症である兄の保護権を裁判所に申請し、その 300万ドルを手に入れようとしています。
弟に言わせると、レイモンドは「300万ドルの価値のある男」なので、「300万ドルの男」と言っているわけですが…。
この the 3-million-dollar man という言い方は、過去記事、600万ドルの男 フレンズ6-7その2 で取り上げた、海外ドラマ「600万ドルの男」(the Six Million Dollar Man)を意識した言い回しだと思います。
ただ「300万の価値がある男」という文字通りの意味だけではなく、有名なドラマのタイトルにひっかけて、あえてそういう言い方をした、ということだと思いました。
日本語字幕が「”300万ドルの男”を争う裁判だ」と引用符付きで表記されていたのも、それに似たタイトルをもじった言葉であることを示すためなのでしょうね。

2. カジノをしていたホテルは「シーザーズ・パレス」

レイモンドの数字の記憶の才能を使って一儲けしようと、チャーリーはレイモンドをラスベガスのカジノに連れて行きます。
DVD のチャプター・リストに「25. シーザーズ・パレス」と出ていたので気付いたのですが、そのホテル、シーザーズ・パレス(Caesars Palace)は、古代ローマがテーマのホテル フレンズ5-22その6 で、ジョーイがグラディエーターの恰好でバイトしていた、あのホテルですね。
さまざまな映画やドラマで使われている有名なホテルですが、「フレンズ」でも「レインマン」でも登場していたということです。

3. レイモンドが見ていた映画に「フレッド・アステアとジンジャー・ロジャース」が

止めたエレベーターの中で、スザンナがレイモンドとダンスを踊った後のシーン。
いつも持ち歩いているポータブルテレビをレイモンドが見ながら、
レイモンド : Fred Astaire and Ginger Rogers. (フレッド・アステアとジンジャー・ロジャース。)
スザンナ: Like us. (私たちみたい。)
レイモンド: Yeah, like us. (ああ、僕たちみたいだ。)

1つ前のエピソードである、フレンズ6-17その3 のコメント欄 で、チャンドラーがモニカに渡した音楽テープに入っていた The Way You Look Tonight という曲についてのコメントとして、
「映画「有頂天時代」(原題:Swing Time)で、フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースが The Way You Look Tonight に乗って踊るシーンがある」
ということを教えていただきました。
そこで名前が出ていたアステアとロジャースが、映画「レインマン」でも出てきた、ということです。
ネットで検索したところ、レイモンドが見ていた映画は「ブロードウェイのバークレー夫妻」(The Barkleys of Broadway)のようです。
フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースはゴールデンコンビとして、何作もの映画で共演しているので、レイモンドが見ていた映画は The Way You Look Tonight の「有頂天時代」ではありませんでしたが、その二人が躍っていたシーンなのは間違いありません。
「レインマン」でも、ダンスシーンの後に二人の名前が出てきたことから、やはり、アメリカ人にとっては、「ロマンティックなダンス」と言えば、この二人の名前が浮かぶ、ということなのかな、と思います。
少し前に話題に出てきたばかりだったので、タイムリーだと思って、ご紹介してみました。

…ということで、上に挙げた3つの件は、どれも、「直接、フレンズとレインマンを結びつけるもの」ではありません。
が、セリフで言及される有名なドラマのタイトル、ドラマの撮影でよく使われる場所、ダンスと言えば思い出す映画のシーンや俳優たち、ということですから、そういうことをちょこっとかじっておくのも、後々、何かの役に立つかなぁ、と。
そういう「ちょっとした知識」のあるなしで、作品をより楽しめるかどうかが決まるのかな、とも思いますし、私自身はそういういろんなことをひっくるめて、これからも英語学習を楽しんでいきたいなと思っています。


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posted by Rach at 16:58| Comment(4) | フレンズ シーズン6 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Rachさん、こんばんわ。
早速ですが、
チャンドラー: Oh, I don't know, man. I haven't talked to her in like 10 years. (あぁ、どうかなぁ。彼女とはもう10年くらい話してないんだ。)
ここのセリフが字幕では
I seen talked to her in 10 years.
になっています。これ、haven'tの省略ですか?でもseen talked と動詞が2つ並ぶのも変だし・・・この文章について解説していただいてもいいですか? よろしくお願いします。
Posted by やっちん at 2015年02月10日 20:30
やっちんさんへ
ご質問ありがとうございます。

ご質問の部分、私も DVDの字幕を確認してみました。おっしゃるように確かに、
I seen talked to her in 10 years.
と英語字幕に書いてありますね。
実際の音声は、ネットスクリプト通りなので、それをはしょった(簡略化した)ものが、英語字幕になっているはずなのですが、seen talked という形はやっぱり変な感じがしますよね。
私も seen talked という表現は聞いたことないし、「10年間話していない」という意味でないといけないのですが、否定語も入っていないことから、これは「単なる字幕の間違い」である可能性が高いなと感じました。

そこで、「DVDの字幕の間違いである」ことを確認する手段として、フレンズのブルーレイの同じエピソードの字幕を確認してみることにしました。
ブルーレイの字幕は以下のようになっていました。
Oh. I haven't talked to her in like 10 years.

、、、ということで、やはり、DVDの英語字幕が単に間違っていただけ、ということになりそうですね^^

DVDの英語字幕は、実際の音声よりも省略されていることが多く、ただその場合でも、「英語字幕の英文は、意味はほぼ同じで、文法的にも正しい」のが通例ですよね。今回は(理由はわかりませんが)、haven't がなぜか seen と表記されていて、意味も通じないし、文法的にも正しくない文章になってしまっていたようです。
「ブルーレイでも、seen talked になっていたらどうしようかなぁ〜、、」などと思いながら、ブルーレイをチェックしたのですが、やはり誰かがその間違いを指摘したことがあったようで、ブルーレイ版ではちゃんと修正されていたのは良かったな、と思いました。

私もいつも、ネットスクリプトとDVD英語字幕を突き合わせるのですが、この字幕については、全く気付いていませんでした。貴重なご指摘ありがとうございました!(^^)
Posted by Rach at 2015年02月12日 16:31
Rachさん、字幕の間違いだったんですか?あるんですね〜そういうこと!ブルーレイは私も持っているけれど、そんな風に思わなかったこともあって見ていませんでした。滅多にないことを発見してしまったんだぁ〜!(笑)
Posted by やっちん at 2015年02月13日 17:07
やっちんさんへ
コメントありがとうございます。
他の作品も含め、字幕のタイポみたいなものを見つけたことはあるのですが、今回のような例はあまり記憶にないですね。
そうです、やっちんさんは滅多にないことを発見されたのです! Good job! :)
Posted by Rach at 2015年02月14日 10:21
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