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娘エリザベスが、年上の男性ロスと交際していることを快く思っていないパパ、ポールは、ロスとの夕食の席で、ロスに皮肉ばかり言っています。
それに我慢ができなくなったロスは、
ロス: Y'know what? I-I-I... I-I have had enough of this! Y'know, I-I-I care a great deal about your daughter and I have treated her with nothing but respect! So if-if you've got a problem with me, frankly-- (いいですか? 僕は、僕は…僕はもうたくさんです! 僕はあなたの娘さんのことをものすごく気にかけていますし、彼女には尊敬の念だけを持って接しています! だから、もしあなたが僕をいやだと言うなら、率直に言うと…)
ポール: Are you yelling at me?! (君は私に怒鳴ってるのか?)
ロス: God, no! (そんな、とーんでもありません!)
エリザベス: Y'know what, daddy? If you don't like Ross, that's fine. It doesnt matter to me. I'm gonna go out with him anyway. (ねぇ、パパ? もしパパがロスを好きじゃないなら、それでいいわ。私は構わないもの[私にはどうでもいいもの]。どのみち私は彼とこれからも付き合うわ。)
ポール: Really?! (She nods in the affirmative.) (本当か? [エリザベスは肯定してうなずく])
ロス: Well, if it doesn't matter to her, it doesn't matter to me! (to Paul) Still not yelling. (ええ、もし彼女にとってどうでもいいことなら、僕にとってもどうでもいいことです! [ポールに] 今でも怒鳴ってませんよ。)
ポール: Wow. What can I say? (Pause, pointing at Ross) This doesn't make me like you any better! (わぉ。僕は何て言える?[何と言えばいいんだ?] [間があって、ロスを指差して] 今のこのことが、前より少しでも君を好きにさせるわけじゃないぞ。)
ロス: That's okay. I'm not so crazy about myself right now either. (それで構いませんよ。まさに今は、僕もそんなに自分のことが大好きではないですから。)
ポール: Then we agree? (それじゃあ、我々は意見が一致してるんだな?)
ロス: Uh yeah, I guess. Yeah! I guess so. (ええ、そうだと思います。そうですよ! そう思います。)
ポール: Neither of us like Ross! (我々はどちらもロスが好きじゃない!)
エリザベス: I like Ross. (私はロスが好きよ。)
ロス: Ohhh! Kids! (あー! 全く、子供ってのは(これだから困りますよね)!)
I have had enough of this! を直訳すると、「僕はこのことをもう十分に持った」みたいな感覚なので、「もう(こんなことは)たくさんだ!」と、うんざりしているニュアンスになります。
Enough of this/that! や、Enough! だけでも、「もうたくさんだ!」という意味になります。
文章の形だと、I have had enough. のように現在完了形になるのがポイントですね。
過去のある時点から現在までの間に、「もうたくさん」だと思えるほど何かを持った、ので、今、ここでその我慢の限界が来て、怒りが爆発している、ということになるわけです。
過去から現在までに積もり積もったものが限界を越えちゃった、という感じが、現在完了形で表されていると言えるでしょう。
care about は「〜を気にかける、大事に・大切に思う」。
nothing but... は「…の他は何もない」ということで、treat her with nothing but respect は「彼女を尊敬の念だけで扱っている」、つまり、「尊敬の念だけを持って彼女と接している」ということになります。
だんだん語気が荒くなってきたロスに対して、ポールが「君は私に怒鳴ってるのか?」と言うと、God, no! と、急にトーンダウンするのもロスらしいです。
なかなか和解できそうにない父と彼とを見て、エリザベスは、「もしパパがロスを好きじゃないなら、それでいい。私は構わない。とにかく私は彼と付き合うもの」みたいに言っています。
If you don't... 以下のフレーズは、「もし〜でも、私は気にせず構わず、自分のやりたいようにやるわ」という気持ちを主張するのに、そのまま使えそうな言葉ですね。
fine 「(それでも)結構よ」、doesn't matter 「重要なことじゃない、構わない、どうでもいい」、I'm gonna... anyway 「とにかく私は…する」という部分に、エリザベスの気持ちがよく表れています。
エリザベスがはっきりそう宣言してくれたので、これまで押され気味だったロスも、「彼女にとってどうでもいいことなら、僕にとってもどうでもいいことです」と強気な発言をしています。
そう言った後で、また大声で叫んでしまったと気づいたロスが、「今のも、あなたに怒鳴ってるわけじゃありませんよ」とフォローするのも面白いですね。
エリザベスに「パパがどう思おうと関係ないわ」と言われたのがショックだったようで、ポールはしばらく黙りこんでいます。
その後、This doesn't make me like you any better! と言っていますね。
使役動詞 make のニュアンスを出して直訳すると、「今のこのことは、私に君を少しでもよりよく好きにはさせない」、つまり、「このことで、僕が君のことを前より少しでも好きになる、ってことはない」ということになります。
this というのは、今のこの状況、エリザベスがパパがどう言おうと私はロスと付き合うわ!と言っている状況を指すでしょう。
エリザベスがそう言ったからと言って、私は君のことを好きになるわけじゃないぞ、ということになります。
君のことを好きになることはないけれど、エリザベスがそう言っているのを止めることもできない、と、消極的にではありますが、ロスとの交際を認めざるを得ないと言っているセリフになります。
「君のことを好きになるわけじゃないが」と言われたことに対して、ロスも「僕も今はそんなに自分自身のことが大好きってわけでもないですからね」と言っています。
別にあなたに好きになってもらえなくても、交際を許してくれたらそれでいいです、僕もそんなに自分を素晴らしい男だと思っているわけではないですから、という感じの大人な発言ですね。
ロスなりの譲歩なのでしょう。
「じゃあ、我々2人は、どちらもロスが好きじゃない、ということで意見が一致してるんだな!」と言い、そういう和解した様子の2人を見て、エリザベスは横から「でも私はロスが好きだけど」みたいに言います。
それに対してロスは、Kids! と言っていますね。
この kid 「子供」というのは、エリザベスの発言が子供的発言だと言っているニュアンスになります。
ポールとロスは、「お互いロスが嫌いってことで意見が一致しましたね」と盛り上がることで、お互いを完全には認めていないながらも、ロスとエリザベスの交際を認める、という方向で話がまとまっているわけですね。
そういう「落とし所を見出して、そこで手を打つ」というような「大人のやり方」をわかっていないかのように、「でも私はロスのことが好きよ」と話に入ってきたエリザベスを、「大人の処世術をわかっていない、君はまだまだ子供だな」と言っていることになるわけです。
が! このセリフそのものは、Kids! と「複数形」になっていますね。
そういう意味では、"You're still a kid!" 「君はまだまだ子供だな!」のように、「エリザベスが子供だ」と言っているのとは、少々違ったニュアンスがあることになりますね。
この「複数形」のニュアンスを出して訳すと、「全く、子供ってやつは!」「これだから子供ってのは!」という訳が近いように思います。
エリザベスが子供(a kid)だと言っているだけではなくて、Kids 「子供全般、子供というものは」、こういうことをする・言うものだ、という「習性」を表している感覚になるでしょう。
このように、名詞の複数形だけで、Kids! のようにあきれた感じで言うセリフは、他の作品でもよく見かけます。
私の記憶に残っているものから、2つご紹介します。
まず、1つ目は、「プリズン・ブレイク」の 1-3 「セルテスト」(Cell Test)。
女医のサラ・タンクレディが、ケガをしたマイケル・スコフィールドを診察しているシーン。
マイケル: I've made some enemies. (俺は敵を作った。)
サラ: You scared? (怖い?)
マイケル: .... (…。<無言>)
サラ: Men. ((全く)男っていうのは。)
この最後のサラの、Men. というセリフは、DVDの日本語字幕では、「男の意地ね」と訳されていました。
この Men. も、「全く、男っていうのは(いつでもこんな風に意地っ張りなんだから)」みたいなニュアンスで使われていると思います。
2つ目は、「ザ・メンタリスト」の 1-5 「アカスギの森」(Red Wood)。
患者を動揺させるような行動を取ったパトリック・ジェーンを見て、同僚のテレサ・リズボンが注意しています。
リズボン: The doctor said to be gentle. ((担当の)医者は、穏やかにするように、って言ってたのに。)
ジェーン: Ah, doctors. (ああ、医者なんてもんは。)
これも、テレサが、患者の担当医である医者(ゆえに、the doctor と”特定”されている)が、be gentle であるようにと指示してたのに、と指摘したことに対して、「医者なんてものは、そういうことを言うもんだ」みたいに「医者」を複数形にしてひっくるめた形にして、「そういう職種の人たちは、概してそういうことを言う」と言っているわけですね。
つまり、"Men." "Doctors." というセリフは、「全く男ってのは」「全く医者ってのは」(どいつもこいつもみんな、そういうことをする、そういうことを言う)みたいな感覚で「複数形」を使っているということになります。
今回のロスのセリフも同様に、エリザベスの行動が子供みたいだと言うために、「子供ってのは、大人の意図を理解しないでこういうことを言うんですよね」という意味で、Kids! と言っていると考えられるでしょう。
パパのポールはちょっとあきれた顔をしていますが、ロスとしては、エリザベスの言動を「これだから子供ってのは!」と言うことで、「僕たちは大人らしく、問題を解決しましたよね?」と言いたかったようですね。
(過去記事への追記のお知らせ)
前回の記事、人に教えられるもんじゃない フレンズ6-21その5 のセリフ、
ウェイン: Yeah. Her. All of them. Anyone.
について、コメント欄でご意見を頂戴しました。
記事への追記、及び、コメント欄にて、訂正と追加説明をさせていただいておりますので、併せてご覧いただけると幸いです。
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今回のBruce Willisは一場面だけでの顔見世でなく、結構長く出演しているのですね。Ross やRachelとのやり取りもなかなかしゃれていて本当に脚本がうまいなー、と思います。
このkids!というところは最初ニュアンスわからなかったのですが、解説拝見しなるほどと思いました。いつも深い掘り下げで敬服します。たしかに、単数だと、音のひびきやイメージ的におかしいし、複数にすると、男や子供や医者が複数思い浮かんで「・・というものは」、という感じにしっくりきますね。
ありがとうございます。
いつも温かいコメント、ありがとうございます。
そうなんです、今回、Bruce Willis は、複数回のエピソードに渡って、ゲスト出演しています。そのため、出番も多く、彼のコミカルな演技をたくさん見ることができて、非常に興味深いです。
ロスとレイチェルのやり取りも面白かったですよね。解説では飛ばしてしまった部分でも、席を外していたレイチェルが戻ってきて、最後に聞こえたセリフから話の内容を勘違いして、要らぬことをしゃべってしまう…などのシーンも、コメディならではで面白いなと思いました。
この Kids! というのは、初めてこのエピソードを見た数年前には気付かなかったのですが、記事内で挙げたような別の作品を見ていた時に、「どうして複数形なんだろう?」とふと思ったのがきっかけです。特に、「ザ・メンタリスト」の "Ah, doctors." というセリフは、その前のセリフで、「特定された一人の医者」である the doctor (単数形)が使われているので、余計にその「複数形」が目に留まったのだろうと思います。どこかで一つ、そういうものを意識すると、「あぁ、フレンズにもやっぱり出てきた!」と気付けるわけですね。
いつも記事をお褒め下さり、ありがとうございます。そう言っていただけるととても励みになります。これからもよろしくお願いします。