2012年07月23日

熱湯をかけて机に打ちつける フレンズ6-23その1

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シーズン6 第23話
The One With The Ring (ポールは泣き虫)
原題は「リングの話」


[Scene: Central Perk, Phoebe and Rachel are sitting on the couch.]
セントラルパーク、フィービーとレイチェルがカウチに座っている。
フィービー: So how are things going with Paul? (それで、ポールとはどんな感じ?)
レイチェル: Good. Although, y'know, he-he's a private guy. Y'know, I wish I could get him to open up a little bit, share some feelings. (グッドよ。でも、ほら、彼は一人でいるのが好きな人[人前に出たがらない人]なんだけどね。彼がもう少し心を開くようにできればいいのに、感情をシェアさせることができればいいのに、って思ってるの。)
フィービー: That's easy. You just have to think of him as a-as a jar of pickles that won't open. (そんなの簡単よ。ただ彼を、蓋(ふた)が開かないピクルスの瓶だと思えばいいだけよ。)
レイチェル: So what are you saying; I should run him under hot water and bang his head against a table? (それじゃあ、あなたが言ってるのは、私は彼を熱湯の下に通して[くぐらせて]、彼の頭をテーブルに打ち付けるべきってこと?)
フィービー: No, that's what you do when you want to get the truth out of someone. (いいえ、それは、誰かから真実を引き出したいと思う時にすることよ。)

フィービーはレイチェルに「ポールとは今どんな感じになってる?」みたいなことを問うています。
How are things going with Paul? を直訳すると、「ポールとの間で、物事はどんな感じに進んでる?」みたいになるでしょうか。
そこから、ポールとの付き合いの状況や進行具合などを問う質問になるのですね。

レイチェルは、Good. と答えますが、その後に、逆接の意味のある although という単語が続いていることから、何かしらの不満を抱えていることがわかります。
接続詞 although は、「〜だけれども、〜であるが」のように訳されることが多いですが、このように、Good, although he's a private guy. のような形であれば、「グッドなんだけど、でも、彼はプライベートな人なの」のように、「でも、だが」という逆接で文を繋ぐ形で訳した方が自然になるでしょう。
フレンズのセリフでは、Good. He's a private guy, though. 「グッドよ。彼はプライベートな人なんだけどね」のように、文尾に though をつける形がよく出てきますね。
although と though は、although の方が文語的、形式的ですが、ほぼ同じ意味であるために、大抵の場合は置き換えが可能です。
ただ、He's a private guy, though. のような形で、although を文尾に使うことはできませんので、ご注意下さい。

private は「プライベート」という日本語からも何となくイメージは浮かびますが、「一人(でいるの)が好きな、人前に出たがらない、非社交的な」という意味。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
private [adjective] : PERSON [only before noun] a private person is one who likes being alone, and does not talk much about their thoughts or feelings.
例) He doesn't talk much about his family - he's a very private person.

つまり、「(名詞の前のみ) private な人とは、一人でいるのが好きな人、自分の考えや感情についてあまり多くを話さない人」。
例文は、「彼は自分の家族のことをあまり話さない。すごく private な人だ」。

いろいろな日本語の訳語を当てはめなくても、「彼はプライベートな人だ」と表現しても、理解できるようなニュアンスだとは思います。

「彼はプライベートな人なの」と言った後、レイチェルは、I wish I could 「〜できたらいいのに」という仮定法過去を使って、自分の願望を述べています。
open up は「広げる、開ける」で、この場合は「心を開く、気持ちを打ち明ける」という感覚ですね。
open up という、大きな概念の言葉を使った後、もっと具体的に述べる形で、share some feelings 「気持ちをシェアする、共有する」とも表現しています。

「彼に心を開かせたい、気持ちを共有させたい」というレイチェルに対して、フィービーは「そんなの簡単よ」と言っています。
You just have to は「ただ〜しさえすればよい」というニュアンス。
何をすれば良いのか、という以下の文の構造を簡単にすると、think of him as a jar 「彼を瓶と見なす、彼を瓶だと考える」になります。
どんな瓶かの説明が、その後に続く、(a jar) of pickles that won't open ですね。
won't open は「開かない、開こうとしない」なので、彼を「蓋が開かないピクルスの瓶」だと思え、と言っているわけです。

心を開かない人間を、蓋が開かない瓶だと思え、というのは、わかったようなわからないような例えなので、レイチェルは「じゃあ、蓋の開かない瓶に対してするような行動を、彼にもしてみればいいわけ?」と問い返しているのですね。

run him under hot water について。
run の基本的な意味は、自動詞「走る」ですね。
後ろに目的語を取る他動詞では「走らせる」が基本になるでしょう。
そこから、「(機械を)動かす」「(会社を)運営する」という意味にもなるのですね。
また、自動詞 run には「(液体が)流れる」という意味があり、run water という他動詞だと「水を流す、出す」という意味になります。
ただ、今回のセリフでは、確かに water という言葉が使われてはいますが、run の目的語とはなっていないので、「水を流す」という訳語は当てはまらないように思えます。

さらに別の意味を見てみると、run A through B で、「A を B に通す、突っ込む、突き刺す」というような意味もあります。

研究社 新英和中辞典では、
run=〈糸・指などを〉(…に)通す、突っ込む
He ran his hand [fingers] through his hair. 彼は手[指]を髪に通した。


この例文は、自分の髪の毛を手櫛(てぐし)のようにすいているイメージで、これが、her hair なら、彼女の髪の毛を彼の指で「すく」ような、恋人同士がよくやる仕草の描写になります。
これも「彼は髪に指を走らせた」と表現しても、イメージは湧きますよね。
通訳、翻訳を仕事とする方であれば、「日本語として一番しっくりくる言葉」を選ぶ必要が出てきますが、「英語を英語のまま理解する」ことを目的としているのであれば、頭の中に、この run という動作の動きがイメージできればいいわけです。
セリフでは、through ではなく under なので、「熱湯の下に通す[くぐらす]」と私は訳してみましたが、「通す」という訳語が大事なのではなくて、「熱湯の下を走らせた」みたいな動きが run という言葉からイメージできたらオッケーだ、ということです。

bang は元々「ズドン!」(銃声)、「バタン!」(ドアを閉める音)のような擬音語で、この場合は「〜をバンと強く打つ」という他動詞ですね。
ですから、bang his head against a table は、「彼の頭をテーブルに(バンと)強く打ちつける」と言っていることになります。
ジャムなどの瓶の金属製の蓋が固くて開かない場合に、火であぶったりお湯につけたりして膨張させるテクニックは日本人も使いますが、レイチェルはそれと同じようなことを言っているようです(私は温めた後、テーブルにぶつけたりはしませんけれど…笑)。

蓋を温めて、テーブルにガンと打ちつければピクルスの瓶は開くかもしれないけど、それと同じようなことを人間の彼にもやれってこと?と、レイチェルは冗談を言っているのですね。
レイチェルにしてみれば、「まさか本当に瓶みたいに、温めて叩けば開くってもんでもないでしょうに、瓶に例えられてもわからないわ」ということなのですが、その後のフィービーの返しが面白いです。

No とまずは否定しているので、「そんなことを人間に対してするわけないじゃない、私が言っているのは別のことよ」とでも続くのかと思いきや、フィービーの返事は、「それは、誰かから真実を引き出したいと思う時にすることだ」。
つまりフィービーは、「誰かに真実を語らせる、事実を吐かせる場合には、その方法を使うけど、心を開かせる時に使う方法じゃないわ」と言っていることになります。
「人間に対して使う方法じゃない」と否定しているのではなくて、「心を開かせる場合に使う方法じゃない」と否定しているわけですね。
「瓶に例えられても、まさか熱湯をかけてテーブルに頭をぶつけるわけにはいかないし」のように、そんな方法は人間に使えないとレイチェルは言っているのに、フィービーは「真実を吐かせる場合に使う方法だ」と人間に対してその方法を使うことを認めている、というオチになります。
例えば、「24」のように拷問シーンが登場するような作品には出てきてもおかしくないような方法ではありますが、そういうよくある(?)瓶の開け方を、対象を人間として語ってみると、何とも残酷な、口を割らせたり、自白させたりするための拷問みたいになってしまう、という英語表現の面白さが、このやり取りのポイントになっているわけですね。


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posted by Rach at 17:26| Comment(3) | フレンズ シーズン6 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
非公開コメントでメッセージを下さった方へ

温かいメッセージありがとうございました。
拙ブログを参考にして下さっているとのこと、とても光栄で嬉しいです。

さて、ご質問の件ですが、お探しの記事は、フレンズ解説記事のはざ間に位置していたので見つけるのが難しかっただろうと思います。お手間をおかけして申し訳ありませんでした。
お探しの「英語ブログのことを書いた記事」というのは、以下の記事になります。

もう一つの私のブログ
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388471245.html

ただご指摘の通り、かなり昔の記事(2008年6月)ですし、そこで紹介した英語ブログも 2008年12月23日を最後に、その後は更新していません。ですから、あまり参考にもならないかもしれませんが、ただ昔の記事であっても「私がフレンズなどで学んだフレーズを盛り込みながらライティングしている」さまは感じていただけるかもしれません。

ちなみに、エピソードと関係ない内容のコメントであれば、最新記事あたりにでもコメントして下さったら結構ですし、今回のように非公開コメントでいただいた場合は、このようにお返事だけ公開にして書かせていただきます。
また何か探したい記事やご質問などがありましたら、お気軽にコメント下さいね。
Posted by 非公開コメントを下さった方へのお返事 at 2012年07月25日 18:13
Rachさん、コメントさせて頂いた者です。
お忙しい中ご丁寧にお返事くださってありがとうございました!!

1年越しに(!)その記事、見つけることができました !!
やはり私の探し方がヘタだったみたいで、お手を煩わせてしまいすみませんでした(> <)
ライティング、スピーキングの参考にさせて頂きたいと思います!

このブログと、好きなもので楽しく学ぶことを続ける、というRachさんの考え方は、
私の英語学習において大きな支えと原動力になってきました。
これからもブログ応援しています!!
本当にありがとうございました。
Posted by Miley at 2012年07月26日 22:50
Mileyさんへ
こちらこそ、ご丁寧かつ温かいお返事ありがとうございます。

4年も前の記事のことを覚えていて下さって、探して下さっていたということは、ブログを書いているものとしてとても光栄で嬉しかったです。書いた本人の私が何を書いたか忘れていることもありますが(笑)、また探し物がある場合は、お気軽にお尋ねになって下さいね。

その英語ブログにつきましては、やはり、日本人の私が書いたものですから、「日本人英語」的な部分が入ってしまっているかもしれません。そういう意味では、ライティング、スピーキングの「お手本」としては、ネイティブが書かれたものを参考にするのが、やはり一番確実で間違いない、と思うのですね。

私の英語ライティングは、そういう「ネイティブの英語をお手本にして、それをアレンジして書いている」様子をお見せしているもの、という感覚になるでしょうか。自分としては「日本語から無理やり英語に直す」ようなことは避けるように、そして、「ネイティブが実際に使っているのを聞いたことがあるフレーズ」を使うように心がけて書いていましたので、その辺りを意識しながら見ていただければ嬉しいなと思います。

「私の英語学習において大きな支えと原動力」とまでおっしゃっていただけて、大変嬉しいです。ありがとうございます。そのように言っていただけることが、このブログを継続するためのまさに「大きな支えと原動力」になってくれています。
これからも頑張りますので、今後ともどうかよろしくお願いいたします。
Posted by Rach at 2012年07月28日 11:15
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