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船を買ったものの、全くセーリングをしていないジョーイに、「私は子供の頃から船に乗ってるから、セーリングを教えてあげる」とレイチェルは言います。
そして、実際に、レイチェルがジョーイにセーリングを教えるシーン。
船の操作方法を教えたはずなのに、ちっとも覚えていないジョーイに、レイチェルはだんだんイライラしてきている様子。
レイチェル: No. What do you do if I say we're coming about? (違うわ。「船を風上に回すわよ」って私が言ったら、何をするの?)
ジョーイ: I'd say, "Come again?" No-no, wait, I-I-I know this one, I know this one, uh.... (俺ならこう言うね、「何だって?(もう一度言ってくれ)」って。いやいや、待って、これは知ってるんだ。これは知ってる、えーっと…)
(Rachel blasts an air horn in his ear.)
レイチェルは、ジョーイの耳に、エアホーン(空気警音器)を鳴らす。
レイチェル: Time's up. Now you're dead. (時間切れ。あなたはもう死んでるわ。)
ジョーイ: And deaf! (それに、耳も聞こえない!)
レイチェル: Okay, you just go on and make your little jokey-jokes, but if you do not know what you are doing out at sea you will die at sea. Am I getting through to you, sailor?! (She punctuates each word by slapping him on the forehead.) (いいわ、ただそうやって、つまらないジョークを続けてなさい。でも、もし海に出て自分のやっていることがわかっていなかったら、海で死ぬことになるわ。私の言ってることがわかる、セイラー?! [レイチェルは、ジョーイのおでこをぺしぺししながら、各語を(強調して)区切って言う])
ジョーイ: Yes. (はい。)
レイチェル: Don't just say yes! This isn't a game. Joey, you can really get hurt out here. Okay, so do you want to pay attention, or do you want to die?! (ただ、はい、とだけ言うな! これはゲームじゃない。ジョーイ、ここであなたは本当にけがをすることになるわ。よし、じゃあ、注意して話を聞きたいか、それとも死にたいか、どっち?)
ジョーイ: I want to make a ship-to-shore call to Chandler. (チャンドラーに、船から陸への無線電話をしたいよ。)
レイチェルはジョーイに、セーリングの操作を指導しています。
What do you do if I say we're doing... は、「"We're doing..." と(私が)言ったら、何をする?」という感覚。
この場合は、"We're coming about." と言ったら、どんな船の操作をすればいい?と質問していることになります。
be coming about という現在進行形は、「今、come about しているところ」という意味にも取れますし、「これから come about する、come about しようとする」という意味にも取れると思うのですが、それについては後で述べます。
come about というのは、一般的には「起こる、生じる」みたいな意味で使われますが、今回のようにセーリング関係の意味では、辞書には以下のような意味が出ています。
研究社 新英和中辞典では、
come about
(2) 〈風が〉変わる
(3) 〈船が〉上手(うわて)回しになる 《船首を風上に回すこと》
今回のセリフは、主語が we になっているので、「私たちの乗っている船が、上手(うわて)回しになる、船首が風上になる」という意味がふさわしいでしょう。
Macmillan Dictionary では、
come about [Phrasal Verb] [intransitive] : if a ship comes about, it changes direction
つまり、「船が come about するとは、方向を変えること」。
さきほどの現在進行形の話に戻ると、「今、私たちの船が方向を変えている、変えつつある」という「現在進行中」の意味としてとらえると、「船の方向が違ってきてるので、どうやって修正したらいいか?」を尋ねていることになるでしょう。
また、「これから、船の方向を変えるつもりである、変えようとしている」という「予定」を言っていると考えると、「船の方向を変えるには、どうしたらいいか?」を質問していることになりますね。
セーリングの専門用語の話なので、深入りは避けますが(笑)、とにかく、この場面ではレイチェルは船の向きをどうするか、みたいな話をしていることがわかれば良いということになるでしょう。
それに対するジョーイの返事は、I'd say, "Come again?"
これは、「俺なら、"Come again?" って言うね」という感じ。
come about という表現を使ったレイチェルに対して、同じ動詞 come を使って返したわけですが、これはジョーイなりのジョークです。
Come again? というのは、相手の発言が聞き取れなかった時に聞き返す時の定番のセリフで、「何だって? (聞き取れなかったので)もう一度言ってくれ」という意味。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
come again? : used to ask someone to repeat what they just said
例) "She's a paleontologist." "Come again?"
つまり、「誰かがたった今言ったことを繰り返すように頼む時に使われる」
例文は、「彼女は古生物学者なんだ」「何だって?(もう一度言って)」
この例文の中で、paleontologist 「古生物学者」が、「一瞬聞いただけではパッと理解できず、聞き直されてしまう」ような学者名の例に出されているのに、ちょっとウケてしまいました。
古生物学者と言えば、「フレンズ」のロスの職業なので、フレンズでは何度も耳にしている単語です。
この例文を読んで、I wouldn't say, "Come again?" 「私なら、「何だって?」って聞き直したりしない」と勝ち誇ったような気分になったフレンズファンは多いかもしれませんね。
ということで、レイチェルがセーリングの専門用語である、come about を使ったことに対して、ジョーイは、セーリング用語ではない、通常会話のフレーズ、"Come again?" を使って、「その come なんちゃら、ってのは何? もっかい(もう1回)言って!」と、動詞 come つながりのジョークで返した、ということになります。
Come again? と言った後、自分でハハと笑っているジョーイですが、レイチェルが怒っているらしいのを感じ取って、慌てて、「いや、待ってよ、これは俺、知ってるんだ、知ってるんだよ…」と時間稼ぎしながら、正しい答えを言おうとします。
もたもたしている間に、レイチェルはキレてしまって、ジョーイの耳の横で、ラッパみたいなものをプオーッと大音量で鳴らしています。
Time's up. Now you're dead. 「時間切れ。あなたはもう死んでいる」みたいな容赦のない言い方をされたジョーイは、you're dead と言われたことに付け加えて、And deaf! と言っています。
deaf は「耳が聞こえない」という意味ですね。
俺が dead だと言うけど、今のラッパの大きな音で、耳まで聞こえなくなっちゃったよ、と言っているわけです。
dead と deaf が dea- で始まる音的に似た言葉なので、dead & deaf のように表現したのですね。
you just go on and make your little jokey-jokes は、「ただそうやって、くだらない冗談を続けてなさい、続けてればいいわ」みたいな、ちょっと突き放したようなニュアンスでしょう。
その後に、でも、と続けて、「海に出て、自分がしていることがわからなかったら、海で死ぬわ」とも言っていますね。
you do not know what you are doing は、「あなたは自分のやっていることがわかっていない」ということで、さっきのジョーイみたいに、船の操作が全くわかっていない様子を指します。
out は at sea の方にかかっていて、out at sea で、「海に出て」というニュアンスですね。
実際に、船で海に出てしまってから、そんな風にやるべきこともわかってなくて、何も操作できなかったら、死んじゃうわよ、と警告しているわけです。
Am I getting through to you, sailor?! は、「私の言ってることがわかる? セイラー!」という感覚。
get through は文字通り、「通り抜ける、切り抜ける」という意味でよく使われますが、ここでは、「(相手に自分の)考えを理解させる」という意味になります。
get though to someone で「人に考えを理解させる、人に話(言っていること)をわかってもらう」というニュアンスになります。
私の言っていることが、あなたに通じているか?、私の話をちゃんと理解しているか?と怒鳴っているわけですね。
あまりの剣幕に、ジョーイは、おとなしく、Yes. と言うしかありません。
その返事にすらキレているレイチェルも面白いですね。
Don't just say yes! は「ただ、イエスと言うな!」という感じで、「はいはい、って返事すりゃあいいってもんじゃない」みたいなニュアンスでしょう。
これはゲーム(お遊び)じゃない、と言って、You can really get hurt out here. とも言っています。
この can は「できる」ではなくて、「可能性がある」ということですね。
out here つまり、out at sea で、「本当にけがをする可能性がある」と言っているわけです。
さらに、"Okay, so do you want to A, or do you want to B?" 「よし、それじゃあ、Aしたいか、それともBしたいか?」みたいにレイチェルは言っています。
二択の質問形式になっていますが、これは、Pay attention, or you'll die. 「注意を集中しろ、さもないと死ぬぞ」と言っているのと同じです。
日本語でも、誰かを脅す時に、「全部白状するか、それともこのままここで死にたいか?」みたいに言うセリフがあったりしますので、感覚はよく似ている気がします。
Aしたい? それともBしたい?と問われて、ジョーイは、全く別のことをしたいと言っています。
a ship-to-shore call は文字通り「船から陸へのコール」、つまり、「船から陸への無線電話」の意味。
こんなところで、レイチェルにキャンキャン怒鳴られて、俺は今すぐチャンドラーに電話して、この顛末を聞いてもらいたい…と弱気なことを言っている、というオチになるわけですね。
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最初はただ怒ってたレイチェルですが、後半のセリフはただ怒ってるだけじゃなくて、まるでマリーン(海軍)の上官が部下に怒ってる感じでしたねww
そういう意味ではこの怒りは優しさと理解出来るかもしれませんw
それにしてもシーズン3?だっけな、レイチェルの誕生日会で両親がばらばらに来た時、確か家族で海に出たときの話をしてたんですが、お父さんは家族が手伝わないと怒るし、手伝ったら、色々間違ってるからやっぱり怒るって言ってたと思うんですが、ここまで詳しいレイチェルをも怒る父親って航海について相当厳しいんでしょうねww
コメントありがとうございます。温かいねぎらいのお言葉もありがとうございます。
そうです、まさに軍隊チックな怒り方でしたよね。ですから、"Don't just say yes!" なども、レイチェルが女性なので、普通は女性言葉で、「ただ、ハイ、って言わないで」と書きたくなるところですが、実際のニュアンスは「言わないで」なんて可愛らしいものではなくて(笑)、やっぱり、「ただ、はい、とだけ言うな!」みたいな厳しい口調の方がニュアンスが出るんだろうな、と思って、上のような訳にしてみたりもしました。
そのレイチェルの誕生日会は、2-22 のエピソードですね。
懐かしいので、下にそのセリフを紹介しておきます。
レイチェル: Every year we would go out on my dad's boat and watch the fireworks. Mom always hated it because the ocean air made her hair all big. My sister Jill would be throwing up over the side and my dad would be upset because nobody was helping and then when we did help, he'd scream at us for doing it wrong. (毎年(独立記念日には)、パパの船に乗って、花火を見たものだったわ。ママはいつもそれが嫌いでね、海の空気(海風)が髪の毛をデカくする、って。妹のジルは船のへりで吐いてたし、パパは誰も手伝わないから怒って、で、私たちが手伝ったら、やり方が間違ってると言って私たちに怒鳴ったのよ。)
本当に厳しいお父さんですね。家族も大変だっただろうと(笑)。
懐かしいシーンを思い出させて下さって、ありがとうございました。:-)