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フレンズの中で一番若いレイチェルが30歳になったのをきっかけに、それぞれが30歳になった時の様子が、フラッシュバックシーンとして流れます。
30歳になるモニカのために、チャンドラーがサプライズパーティーを企画し、みんなフォーマルウェアを着ているのですが、ジョーイがネクタイを外そうとしているところ。
チャンドラー: (To Joey) Would you put that back on?! Monica's gonna be here any minute! ([ジョーイに] それ[そのネクタイ]を元通りつけてくれないか? 間もなくモニカがここに来るんだよ。)
ジョーイ: But it hurts my Joey's apple. (でも、俺のジョーイのリンゴ[ジョーイズ・アップル]が痛いんだよ。)
チャンドラー: (frustrated) Okay, for the last time. It's not named for each individual man. ([いらいらした様子で] よし、これで最後だぞ。それは個々人の人間の名前をつけるんじゃないんだ。)
(Joey walks away and Mr. and Mrs. Geller walk up. Mr. Geller is wearing this ancient velvet tuxedo.)
ジョーイは立ち去り、ゲラー夫妻が歩いてくる。ゲラー氏(ゲラーパパ)は、古風なベルベットのタキシードを着ている。
ゲラー夫人(ゲラーママ): (To Chandler) You've done a wonderful job with this party, Chandler. Everything looks so lovely. ([チャンドラーに] このパーティーでは素晴らしい仕事をしたわね、チャンドラー。全てがとってもラブリーよ。)
チャンドラー: Oh well, not as lovely as you. I mean, I can't believe you would have a thirty-year-old daughter! (To Mr. Geller) And you! I can't believe you would have a tux that's thirty years old! (Puts his hand on Mr. Geller's shoulder.) (あぁ、そうですね、(でも)あなたほどラブリーじゃないですよ。だって、あなたに30歳の娘さんがいるなんて僕には信じられません。[ゲラーパパに] そして、あなた! 30年もののタキシードを持ってるなんて僕には信じられません! [ゲラーパパの肩に手を置く])
ゲラー氏: It's older than that. Ross was actually conceived right near this tuxedo. (それより古いよ。実際、このタキシードのちょうど隣で(母さんは)ロスを身ごもったんだ。)
チャンドラー: Ohh! (He quickly removes his hand and looks at it.) (おぉ! [チャンドラーは(ゲラー氏の肩に置いていた)手をすばやくどけて、手を見る])
フォーマルウェアだと首がつまる、というように、ネクタイを外そうとするジョーイに、チャンドラーは、put that back on してくれないか?みたいに言っています。
put on は「つける」ということですが、back が入ることで、「元の位置に戻してつけろ」という感じがより出るように思います。
it hurts の hurt は他動詞「〜に苦痛を与える」なので、it hurts my Joey's apple. は「ネクタイが(ネクタイを締めることが)俺のジョーイのリンゴを痛くする、痛みを与える」という感じになります。
ネクタイ締めると、俺のジョーイのリンゴが痛いんだよ、と言っているわけですね。
ジョーイのリンゴって何?というところですが、ジョーイのしぐさから、それが喉仏(のどぼとけ)を指していることはわかるでしょう。
実際には、喉仏のことは英語で、Adam's apple と言います。
研究社 新英和中辞典では以下のように出ています。
Adam's apple
【名】【C】 のどぼとけ (由来 Adam が禁断の木の実を食べたとき、その一片がのどにつかえたという伝説から)
チャンドラーは、ジョーイの間違いを指摘していますね。
for the last time は「(これを)最後に」という感覚。for the first time の正反対バージョンと言えるでしょうか。
for the first time が「初めて」だと言うことは皆さんよくご存じだと思いますが、意外と、for the last time って使わない気がしますよね。
実際、LAAD (Longman Advanced American Dictionary) で調べると、for the first time は載っていますが、for the last time は項目としては載っていませんでした。
文字通り、最後の時に、ということで、チャンドラーは、「今までも何度も言ってきたけど、これで最後にするぞ、最後にもう一度言っとくぞ」みたいな感覚で、for the last time と言ったのでしょう。
It's not named for each individual man. の it は、ジョーイが言おうとしている喉仏のこと。
「それは、各個人のために名前をつけられるものじゃない、命名されるものじゃない」と言っていることになります。
喉仏は、Adam's apple (アダムのリンゴ)って言うけど、それは別に、アダムさんの喉仏ってことじゃなくて、誰の喉仏でもそう言うんだよ、ジョーイの喉仏だからって、ジョーイのリンゴにはならないの!とチャンドラーは言いたいのですね。
Adam's apple という言葉は、過去記事、フレンズ2-3その1 でも、以下のセリフで出てきました。
ジョーイ: When I first moved here, I went out with this girl. Really hot. Great kisser...but she had the biggest Adam's apple. (初めてここに引っ越して来た時に、ある女の子とデートしたんだ。本当に色っぽくて、キスもうまくて・・・でも彼女、すごく大きいのどぼとけがあってさ。)
ジョーイは女の子と思ってるようだけど、のどぼとけがあるって…それは男やろっ!とみんながツッコミたくなるようなセリフですが、この時はちゃんと、Adam's apple と言っていますよね。
長いシリーズにありがちな、「設定の不一致」というヤツですが(笑)、まぁ、自分のものを言う時は自分の名前をつけると思ってた、みたいにここは軽く流しておきましょう^^
チャンドラーは今度は、ロスとモニカの両親(ゲラー夫妻)と話しています。
モニカのためにフォーマルな誕生パーティーを準備したチャンドラーのことを、両親は褒めていますね。
褒められたチャンドラーは気を良くして、モニカの両親にお世辞を言っています。
「パーティーがラブリーって褒めて下さいますけど、お母さんのラブリーさにはかないません」みたいなことですね。
30歳の娘さんがいる人には見えませんよ、みたいにも言っています。そんな年齢には見えません、いつまでも若々しくてお美しいですね、みたいなお世辞です。
そして今度はモニカパパに話しかけるチャンドラー。ママに言ったのと同じように「30歳の娘さんがいるようには見えません」でもいいわけですが、30年を使った別の言葉をジョークっぽく言っているのがチャンドラーらしいですよね。
ママの場合は、30歳の娘を持ってるなんて!という驚きで、パパに対しては、30年物のタックス(タキシード)を持ってるなんて!と驚いて見せていることになります。
thirty years old は日本語では「30歳」という訳が真っ先に浮かびますが、人間の年齢だけに限らず、物の古さを表すのにも普通に使われる表現です。
「年齢30歳のタキシード」のような比喩表現ではなく、「30年物のタキシード」というごく普通の表現なのですね。
フレンズ2-20その6 では、
チャンドラー: Richard's really nice. We just don't know him really well. Plus, he's old...er than some people. But younger than some buildings. (リチャードは本当に素敵だよ。ただ彼をよく知らないだけなんだ。プラス、彼は年をとってて・・・何人かの人たちよりはね。でも、若いよ、いくつかの建物よりは。)
というセリフがありましたが、人間の年齢と建物の築何年の比較をしているセリフが成り立つのも、どちらも普通に ... yeas old で表現するから、なわけですね。
チャンドラーは、ゲラーパパがちょっと古くさいタキシードを着ているのを見て冗談ぽく、「30年物のタキシードをお持ちだなんてすごいですね」と言ったのですが、パパは「いや、30年よりもっと古いよ。モニカが生まれる前から持ってるよ」みたいに言っています。
どうしてそう断言できるかが、以下のセリフからわかる仕組みになっています。
パパの説明では、「実際、ロスは、このタキシードのすぐそばで、conceive された」。
このジョークで笑うには、conceive という単語の意味がわかっていないといけませんね。
conceive は「考える、思う」「(考えを)抱く、思いつく」という意味で使われることが多いですが、「子をはらむ、子を宿す」という意味で使われることもあり、今回はまさにその意味で使われています。
ですから、その名詞形の conception も「概念、考え」という意味と同時に、「妊娠、受胎」という意味もあるのですね。(concept 「コンセプト」も conceive の関連語です)
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
conceive : BIOLOGY to become pregnant
つまり、「妊娠する」ということですね。
ですから、ゲラーパパは、このタキシードの置いてあるそばで、ママはロスを妊娠した、と言っている、つまり、このタキシードを脱いだ後のエッチでロスができたんだ、と言っていることになります。
タキシードを着るようなフォーマルなパーティーの後、酔っぱらった勢いで…みたいなことも想像されて、余計に笑えるわけですね。
ロスはモニカの兄なので、だから、30歳を迎えたモニカよりもこのタキシードの方が古いんだよ、ということがパパにはわかるということです。
「30年物のタキシードを今でもお持ちなんて!」と言いながら、そのタキシードの肩に手を置いたチャンドラーでしたが、あまりにも生々しい話(笑)を聞かされて、思わず置いた手を離しています。
チャンドラーよりもゲラーパパの方が一枚上手だった、というところですね。
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2013年03月29日
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