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ロスとモニカのいとこにあたるキャシーという女性が、モニカとチャンドラーの家に数日泊まることになります。
キャシーを演じるのは、今回のゲスト、デニス・リチャーズ。
ピアース・ブロスナン主演の『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』(The World Is Not Enough)では、ソフィー・マルソーと共にボンドガールを演じました。
それで、今回のエピソードの邦題が、”いとこはボンド・ガール”になっているわけですね。
キャシー: I thought I heard voices. You must be Chandler. (声が聞こえたと思った。あなたがチャンドラーね[チャンドラーに違いないわね]。)
チャンドラー: (transfixed) Hi! Nice to meet you! ([立ちすくんで] はーい。こんにちは!)
キャシー: Nice to meet you too. (こんにちわ。)
モニカ: So, are you ready to go? (それじゃあ、行く準備はいい?)
キャシー: Yeah. (ええ。)
(She lets her hair down and whips her hair around in Baywatch-esque slow motion with a Barry White song in the background. Chandler needless to say can't help but stare along with the rest of the male and lesbian population of North America.)
キャシーは(アップにしていたピンを外して)髪の毛を下ろし、髪をさっと動かしてふりほどく。「ベイウォッチ」風のスローモーションで、バックにバリー・ホワイトの歌が流れている。言うまでもなくチャンドラーは、彼以外の北米の男性及びレズビアンの人々と共に、(彼女を)凝視しないではいられない。
モニカ: (catching him) Chandler! ([彼に気付いて] チャンドラー!)
チャンドラー: I'll be right with you. (すぐに行くよ。)
[Scene: Central Perk, Ross is there as Chandler and Monica enters.]
セントラルパーク。ロスがいて、チャンドラーとモニカが入ってくる。
モニカ: (To Ross) Cassie needs to stay at your place. ([ロスに] キャシーはあなたのところに泊まらないといけないの。)
ロス: What-why? (何、どうして?)
モニカ: Because "Pervie Perverson" over here can't stop staring at her. (なぜなら、ここにいる「パーヴィー・パーヴァーソン」が、彼女を見つめるのをやめることができないからよ。)
ロス: What?! Chandler, she's our cousin! (何だって? チャンドラー、彼女は僕らのいとこだぞ!)
初めに、ボンドガール経験者である、デニス・リチャーズ(Denise Richards)について簡単に説明しましたが、詳しくは以下のウィキペディアで。
Wikipedia 日本語版: デニス・リチャーズ
ボンドガールとしての 007 への出演以外では、チャーリー・シーンとの結婚・離婚問題でも、いろいろと話題になりました。
チャーリー・シーンは、フレンズ2-23 に、フィービーの恋人ライアン役でゲスト出演していましたね。
今回取り上げた最初の部分、会話はありきたりなものですが、チャンドラーが、セクシーなキャシーに見とれてしまうシーンのネットスクリプトのト書きが面白いですね。
後半部分の説明は、北米の男性、そして、女性を愛するレズビアンの人たちも見とれずにはいられない、という感じで、キャシーのセクシーさにみんな目が釘付けになる様子が語られていますが、ポイントは前半の in Baywatch-esque slow motion with a Barry White song in the background の部分。
Baywatch-esque の -esque は「〜風の、〜的な、〜のような」。
picturesque (ピクチャレスク)は「絵のような」、arabesque (アラベスク)は「アラビア風の」という意味になります。
ですから、in Baywatch-esque slow motion は、ドラマ「ベイウォッチ」風のスローモーションで、ということ。
「ベイウォッチ」は、ジョーイとチャンドラーが大好きなドラマで、これまでに何度もフレンズ内で言及されてきました。
その番組の一番の見どころは、水難救助隊の女性隊員ヤスミン・ブリースらが、ビキニ姿で砂浜を走るシーン…それがいつもスローモーションになっていて、それがベイウォッチのお約束ともなっているわけです。
ボンドガールになったこともあるようなデニス・リチャーズの魅力を画面で表現するために、「ベイウォッチお約束のスローモーション」にすることで、そのセクシーさを存分に見せているわけです。
ちなみに、「フレンズ」と共に英語学習者の間で人気が高いドラマ「アリー my Love」(Ally McBeal)でも、「ベイウォッチ風のスローモーション」が使われたことがあります。
それについては、過去記事、フレンズ2-17その7 で説明しています。
さらに、ト書きには、with a Barry White song in the background とも書いてあります。
つまり、「バックに(BGMとして)バリー・ホワイトの歌を伴って」という感じですね。
バリー・ホワイト(Barry White)は、「愛の伝道師」とも呼ばれる歌手で、その名の通り、この場面では、その低音ボイスが、画面にセクシーさを加味しています。
今回のフレンズで使われているのは、「つのりゆく愛」(原題:I'm Gonna Love You Just A Little More Baby)という曲です。
ところで、バリー・ホワイトと言えば、先ほども言及した「アリー my Love」に登場したことでご存じの方も多いのではないでしょうか?
アリーの同僚のジョン・ケイジ(演じるのはピーター・マクニコル)は、自分をバリー・ホワイトだと思い込むことで、自分を奮い立たせる、という癖があり、バリーをイメージするためのテーマソングとして、「マイ・エヴリシング」(原題:You're The First, The Last, My Everything)が、アリーの劇中で何度もかかっていました。
ジョン・ケイジの英語版ウィキペディアにも、バリー・ホワイトに関する記述があります。
Wikipedia 英語版: John Cage (character) / John's eccentricities / Barry White
以下の説明がわかりやすいですね。
Barry White is John's idol and he cannot perform properly in court or in the bedroom if he cannot draw inspiration from the persona of White.
つまり、「バリー・ホワイトはジョン・ケイジのアイドル(偶像)で、バリー・ホワイトのペルソナ(仮面・人格)からインスピレーションを受けることができない場合には、裁判所や寝室で適切に活動することができない」。
アリー2-18 の「愛しくて虚しくて」(原題:Those Lips, That Hand)では、バリー・ホワイトご本人が登場して歌うシーンも出てきます。
また、アリー4-19 のタイトルは「バリーにおまかせ」(原題:In Search Of Barry White)というもので、ジョンが自信の源であるバリー・ホワイトの幻影を呼び出そうと頑張る話になっています。
ちなみに、さきほど、「アリーでも、ベイウォッチ風のスローモーションが使われたことがある」と書きましたが、それが使われた回がまさにこの、アリー4-19 「バリーにおまかせ」なのですね。
「フレンズ」と「アリー my Love」は、どちらも英語学習者に人気のある作品ですが(私はどちらも全シーズン見ました)、どちらの作品にも「ベイウォッチ風のスローモーション」「バリー・ホワイト」が使われたことになります。
フレンズ7-19 とアリー4-19 の共通点は?と聞かれたら、"Baywatch-esque slow motion & Barry White" が答えになるわけですね。
スローモーションとバリー・ホワイト(の曲)が、どちらも「セクシーさ」をイメージさせる材料となっているわけですが、そういうサブカル的なネタも、アメリカの複数の作品を見ることで、「あれに出てたのがここにも出てる!」という発見をすることができるのです。
もちろん、そんなことを覚えても、英語の資格試験には絶対に出ませんが(笑)、「そういうことがわかると、英語のドラマがもっと面白くなる」のは間違いないし、そういう気持ちが英語学習を続けて行く原動力になると私は思っています。
フレンズのセリフに戻ります。
モニカは兄のロスに、「キャシーは(うちじゃなくて)ロスの家に泊まらなくちゃいけないの」みたいに言っています。
理由を問うロスに、モニカは、ここにいる Pervie Perverson が、キャシーを見つめることを止めることができないの、と説明します。
Pervie Perverson は、モニカが皮肉を込めてチャンドラーにつけたあだ名ですね。
pervert は「性的倒錯者、変質者」のことで、perv と略されることもあります。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
pervert : someone whose sexual behavior is considered unnatural and unacceptable
つまり、「その人の性行動が不自然(異常)で受け入れがたい、そういう人のこと」。
その perv を名前に入れて、Pervie Perverson という名前を創作したわけですね。
これと似たようなあだ名の、Smokey Smokerson というのが、過去記事、フレンズ5-18その3 に出てきたことがありました。
その時は、「タバコばかり吸っている女性」を「スモーキー・スモーカーソン」と呼んだのですね。
今回の「パーヴィー・パーヴァーソン」も音的に同じ感覚で、婚約者のいとこをいやらしい目つきで見ていたチャンドラーのことを、「エロ田エロ男くん」みたいなニックネームで呼んだ感覚になります。
Pervie Perverson と聞いて、Smokey Smokerson という名前を思い出した方もおられるかと思いますが、そういうネーミングの法則みたいなものに気づけると、いい感じ!ですね。
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質問があります!
キャシーに会う前段階でチャンドラーとモニカがわざと口げんかしてるシーンがあると思うんですが、そこでのモニカのセリフで
"Shrill? The wedding is back on."
というのがあるんですが、これは結婚式は延期よ!みたいな意味でとっていいんでしょうか??
コメントありがとうございます。
先に結論から言いますと、"The wedding is back on." は、「結婚式は元の通り(予定通り)実施するわ」ということです。
このやりとりは、「結婚式までエッチしない」という誓いを立てた二人が、「喧嘩して一時的に別れたら、エッチしてもいいよね?」みたいな話をしているシーンでしたね。
そういう誓いを立てながらも、やっぱりエッチしたいと思っている二人(笑)は、お互いの悪口を言い合って、口先だけの喧嘩をしています。
その際に、
モニカ: The wedding is off, sloppy and immature! (結婚式は中止よ、だらしない未熟者!)
というセリフがありました。off 「オフ」というのは、スイッチオフのイメージで、この場合は「結婚式をやめる、取りやめる」ということですね。婚約中の二人にとって、「結婚式を中止する」というのは最大の喧嘩になりますから、わざとそう言っているわけです。
問題のモニカのセリフ、
モニカ: Shrill?! The wedding is back on!
の back on は「オンにバックする、オンに戻る」ということで、つまり、いったんは「結婚式はやめ!」(The wedding is off)と決裂宣言、大喧嘩をして、エッチができそうになったところ、チャンドラーが悪口ついでにモニカのことを shrill 「金切り声の、甲高い」と言ったのに怒って、「結婚式はオンに戻った」→「結婚式をとりやめる件はなしになった」→「前の通り結婚することになったから、喧嘩も終わり、だからエッチもなし」という結論になった、ということです。
The wedding is off. の反対の意味としての、The wedding is (back) on. だということですね。
DVDの日本語訳では、「トゲトゲ? やっぱりエッチはなしよ」となっていて、shrill という言葉を使われたことに怒って、「喧嘩したことにしてエッチしようと思ったけど、そんなこと言うならエッチはしない(喧嘩したふりするのはやめる)」と言ったことになります。
いろいろ言われた悪口の中で、どうして shrill という言葉にだけ反応したのかはよくわからないのですが(笑)、「エッチはしない」みたいにエッチ系の言葉を使わずに、「結婚式はやっぱり行なうわ(オンに戻ったわ)」と表現することで、「そんなこと言うあなたとはエッチしてあげない」みたいに言った面白さ、ということになります。
完全にbackに気を取られていました(笑)
back on で何かの意味だとずーっと思ってて笑
onとoffの関係だったんですね!
ありがとうございます!
ご丁寧なお返事ありがとうございます。
(be) back on だけだと、漠然とし過ぎていて、確かにピンと来にくいですよね。その前に、(be) on という言い回しが出てきているからこそわかる、的な、「会話のやりとりから判断できる」というセリフの典型例のように思います。
興味深い部分をご質問いただき、ありがとうございました!