ブログを続ける原動力となります。どうか今日も応援クリックをよろしくお願いします。


結婚式に着るタキシードを探していたチャンドラーは、セレブが着たタキシードを見ているところ。
レイチェル: (Chandler nods and Rachel grabs another tux) Ooh, this one was Pierce Brosnan! [チャンドラーはうなずき、レイチェルは別のタキシードを掴む] あぁ、これはピアース・ブロスナンだわ!)
チャンドラー: Pierce Brosnan? (ピアース・ブロスナン?)
レイチェル: Uh-huh. (ええ。)
チャンドラー: Are you serious? (まじで?)
レイチェル: Yeah. (そうよ。)
チャンドラー: 007?! This is James Bond's tux?! (007? これはジェームズ・ボンドのタキシードなの?)
レイチェル: Yeah. (ええ。)
チャンドラー: Oh, I have to get married in James Bond's tux! (おぉ、俺はジェームズ・ボンドのタキシードで結婚しなくちゃな!)
レイチェル: It's a pretty cool tux. (すごくかっこいいタキシードよ。)
チャンドラー: Oh, it's not just that. I would be England's most powerful weapon. Jet-setting heartbreaker on Her Majesty's secret service. A man who fears no one, with a license to kill. (Worried.) Would Monica let me wear this? (あぁ、それだけじゃないよ。俺は英国のもっともパワフルな武器になるんだ。女王陛下のシークレットサービス(諜報部)の、飛行機で世界を飛び回り、女心を張り裂けさせる男。何ものをも恐れない、殺しのライセンスを持った男。[心配そうに] 俺がこれを着るのを、モニカは許してくれるかな?)
ピアース・ブロスナンが来たタキシードと聞いて、チャンドラーは興奮気味。
007 は日本でも有名ですから、英語のセリフで聞いていてもわかった方も多いでしょう。
007、ジェームズ・ボンドのタキシードと知って、「俺はこのボンドのタキシードを着て、結婚しなければならない、結婚しなきゃ」みたいに言っています。
「そうよね、すっごくクール(かっこいい)タキシードだもんね」と同意するレイチェルに、チャンドラーは、it's not just that. 「それだけじゃない」と言い、デザインのカッコよさだけじゃなく、他にもいろいろ理由があるんだ、ということを、その後、説明することになります。
I would be England's most powerful weapon. の I would be は、If I wore this, I would be... 「もし俺がこの007のタキシードを着たら、俺は(007として)英国のもっとも強力な武器になるだろう」という仮定のニュアンスが入っていると考えられます。
Jet-setting heartbreaker on Her Majesty's secret service. について。
まず、Her Majesty は「女王陛下」という意味ですね。
このチャンドラーの一連のセリフで出てくるフレーズは、どれも、007 というキャラクターの描写に関係ある言葉ですから、日本人にもイメージしやすくなっていると思います。
on Her Majesty's secret service は、be on ... service のような感覚で、「〜のサービスに就く」、ここでは、「女王陛下のシークレットサービスという仕事に就く」という感じでしょう。
そして、On Her Majesty's Secret Service というのは、ジョージ・レーゼンビーが演じた映画『女王陛下の007』の原題でもあります。
jet-setting は「ジェット機で(世界中を)飛び回っている」という感覚。
研究社 新英和中辞典では、
jet set 【名】[the 〜; 集合的に] ジェット族 《ジェット機などで豪快に遊び回る富裕な有閑階級》
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
the jet set : rich and fashionable people who travel a lot
つまり、「たくさん旅行する、裕福で上流社会の人々」。
heartbreaker は「ハートブレイクさせる人、胸が張り裂けるような思いをさせる人」という感じで、007 の場合ですと、「女心を虜にする色男」みたいな感じで使っていることになるでしょう。
A man who fears no one, with a license to kill. について。
「何ものをも恐れない男で、a license to kill を持っている」ということですが、a license to kill も「殺しのライセンス」として日本語になっていますよね。
日本語では「殺しのライセンス」と訳されていて、それを英訳しようとする場合に、日本人はどうしても、「〜の」の部分に、of などを使いたくなってしまうと思うのですが、この場合は、「〜する許可、免許、ライセンス」ということなので、(a) license to do という形を取ることになります。
少々脱線ですが、漫画及びアニメ「パタリロ!」に出てくる、イギリス情報局秘密情報部(MI6)所属のバンコラン少佐も「殺しのライセンス」を持っていて、アニメ版第23話の「殺しのライセンス」というエピソードでは、実際に殺人許可証を見せるというシーンも出てきました。
映画007の邦題では、「殺しのライセンス」というタイトルのものはないようですが、ティモシー・ダルトンがボンドを演じた『007 消されたライセンス』の原題が、License to Kill になります。
ボンドが辞職する、というストーリーらしいので、直訳の「殺しのライセンス」ではなく、わざと「消されたライセンス」という邦題に変えた、ということなのでしょうね。
そんな風に、ボンドのタキシードを着ることで、俺もボンドみたいにかっこよくなれちゃうぞ!と妄想中のチャンドラーでしたが、ふと我に返ったように、気弱そうな小さな声で、Would Monica let me wear this? というのが楽しいですね。
「もし俺がこれを着たいと言った場合、モニカは俺がこれを着るのを許してくれるだろうか?」という仮定のニュアンスが would に込められていることになります。
「何ものをも恐れない、人を殺すことさえ平然とできる男」みたいに言った直後なのに、婚約者モニカの顔色をついうかがってしまう…チャンドラーらしい微笑ましいオチですね。
ランキングをクリックして、応援していただけると嬉しいです。

