2013年08月29日

もうスタンディング・オベーションなの? フレンズ7-22その6

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モニカは、チャンドラーの父親に結婚式に出席してもらいたいと言い、ラスベガスにいるチャンドラーの父親に二人で会いに行きます。
これまでの「フレンズ」でも何度か言及されていた通り、チャンドラーの父親はゲイで、ラスベガスのショーで働いているのですが、ちょうど二人が見ようとしていたショーが、その父親のショーだったのでびっくり。
チャンドラーのパパのベガスでの芸名は、ヘレナ・ハンドバスケットというのですが、それを演じるのは、ゴールデングローブ賞も受賞している名女優「キャスリーン・ターナー」。
「女優」さんが、「ゲイのパパ」を演じているのがポイントですね。
身長173cmで、声もハスキーで低いので、「男性が女装している」という設定にも自然にマッチしている感じです。

パパ(ヘレナ)は歌い終わった後、客席に近づいてきます。
チャンドラー: He's coming into the audience. He's coming into the audience. (パパが客席に来ようとしてる。客席に来ようとしてる。)
モニカ: Relax! You'll be fine. (Chandler exhales and turns off the table light.) Oh, much better. You're invisible now. (リラックスしてよ! 大丈夫よ。[チャンドラーは息を吐いて、テーブルの明かりを消す] あぁ、さらに良くなったわね。今、あなたは(誰からも)見えないわよ。)
ヘレナ: (standing at a table and asking the guy sitting there) Where are you from? ([あるテーブルの近くに立ち、そこに座っている人に質問している] あなたはどこから来たの?)
男性: Bakersfield. (ベーカーズフィールド。)
ヘレナ: I'm sorry? (Holds out the mike.) (アイム・ソーリー? [マイクを差し出す])
男性: Bakersfield! (ベーカーズフィールドだよ!)
ヘレナ: No-no, I heard! I'm just sorry. (いえいえ、聞こえたわ! 私はただ、お気の毒に、って言ったのよ。)
チャンドラー: It can't happen like this. Okay? I'll meet you back at the hotel. (こんなの無理だよ。いいかい、君とはホテルで会おう。)
(He gets up to walk out, but Helena spots and stops him.)
チャンドラーは立ち去ろうとして立ち上がる、が、ヘレナがそれを見つけ、彼を止める。
ヘレナ: (to Chandler's back) Oh look, a standing ovation already! So early in the show. Oh, turn around, darling. Let me see your pretty face. (He slowly turns around. Helena recognizes him.) ([チャンドラーの背中に向かって] ねえ、見て、もうスタンディング・オベーションよ! ショーは始まったばかりなのに。ねぇ、こっちを向いて、ダーリン。あなたの可愛いお顔を私に見せてよ。[チャンドラーはゆっくりと振り返る。ヘレナは彼を(自分の息子だと)認識する])
モニカ: Can we have our drinks, please?! Waiter? --tress? (飲み物持ってきてくれる? ウェイター…トレス?)

歌い終わって、観客に挨拶したチャンドラーのパパ(芸名はヘレナ)が、客席の方に歩いて来ます。
パパに会いに来たとは言え、こんな形で会うのは困る、と慌てているチャンドラーに、モニカは「リラックスして。大丈夫よ」と言うのですが、チャンドラーは、自分たちが座っているテーブルの上に置いてあるライトの電気を消しています。
それを見たモニカが、「さらに良くなったわね。今、あなたは誰からも見えないわよ」と言っているのが面白いです。
テーブルのライトを消したところで、チャンドラーが見えなくなるわけでもないのに、近づいてくるパパに見つかるまいとして、ささいな抵抗をしているチャンドラーに、「あーら、良かったわね。ライトを消したおかげで、あなたの姿がすっかり見えなくなったわ」みたいに皮肉を言っているわけです。

ヘレナは観客のところにきて、そのお客と会話を交わしているのが、いかにもラスベガスのショーという感じですね。
「お客さんはどちらから?」みたいな決まり文句の質問をするヘレナに、客の男性は「ベーカーズフィールド」と答えます。
ベーカーズフィールドはカリフォルニア州にある都市の名前で、ウィキペディアの情報によると、「一帯には肥沃な農地が広がり」とのことなので、農業がさかんな地域というイメージのようですね。
出身地を答えた男性に対して、ヘレナは、I'm sorry? と語尾を上げ調子にして言いますが、誰かが何かを答えた後に、こんな風に語尾を上げて I'm sorry? と言うと、I'm sorry I can't hear you. Could you say that again? 「ごめんなさい、聞こえなかったわ。もう一度言って下さるかしら?」のようなニュアンスに聞こえるはずです。
Excuse me? を上げ調子で言うのと似た感覚になるでしょう。

それで男性も、もう一度、今度はさらにはっきりと、「ベーカーズフィールドだよ!」と答えるのですが、それに対するヘレナの返事は、No-no, I heard! I'm just sorry. でした。
これは、ベガスのショーっぽく、「お客さんをイジって笑わせる」みたいなやり取りのようです。
ヘレナの返事の内容は、「いいえ、私は(あなたがさっき言ったことは)聞こえてたわ。私はただ、sorry なだけよ」みたいになるでしょう。
さっき私が I'm sorry. と言ったのは、聞き直したんじゃなくて、あなたの出身地を聞いて、ただ、I'm sorry. だと言っただけなのよ、というところです。
この場合の I'm sorry. は「ごめんなさい」という謝罪のニュアンスではなく、「大変ね。お気の毒に。同情するわ」みたいな感覚ですね。
フレンズでも、誰かに悲しい出来事が起こった場合に、謝るニュアンスではなく、共感・同情するニュアンスとして、I'm sorry. がよく使われますが、今回のヘレナの I'm sorry. もそれと同じ感覚になるでしょう。
つまり、「ベーカーズフィールドだよ!」「ええ、聞こえてたわ。私はただ、あなたに同情するわ、まぁそれはお気の毒に、って言ったのよ」みたいなやり取りになります。
聞き直したのかと思って、さらに大きな声で答えたところ、その出身地をネタにして、からかっていたことがわかる、というオチですね。
さきほど説明したように、農業地帯のようなので、ベガスというきらびやかな大都会に比べて、「田舎」のイメージがある、ということなのでしょう(ベーカーズフィールドの関係者の方、すみません)。
DVDの日本語音声(吹替)が、「ベーカーズフィールドだぁ」みたいに、田舎訛り(なまり)の音声になっていたのも、まさにそれをイメージしてのことでしょう。

USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)のアトラクション「ターミネーター2:3-D」の最初に登場する綾小路麗華さんというナビゲーターのお姉さんが、ちょうどこんな風に、「どちらから来られました?」とお客さんに質問し、その地名をイジる、、みたいなことをするのがお決まりになっていますが(ここ最近は見てないのですが、今でもされてますかね?^^)、これは「お客イジリ」の定番ということなのでしょう。
発言が聞こえなかったのかと思って、さらに大きな声で言い直したところ、その地名をからかったジョークだったことがわかった、という、二段構えになっているところがポイントで、I'm sorry. を上げ調子にすると、聞き返すニュアンスになることを利用しての、辛辣なジョークになるわけですね。

パパが、ベガスのエンターテイナーらしく、客とそんなやりとりをしている間に、チャンドラーはそこから逃げ出そうとしています。
俺は先に帰ってるから、後でホテルで会おう、みたいにモニカに言い残して立ち去ろうとすると、それをヘレナに見つかってしまい、声を掛けられてしまいます。
その時のセリフ、"Oh look, a standing ovation already! So early in the show." というのがまた、ベガスっぽくて面白いです。
ovation は「大歓迎、大喝采」という意味で、スタンディング・オベーションはすでに日本語化していますので、このセリフは日本人にもわかりやすかったと思います。
「ほら見て。もうスタンディング・オベーションよ。ショーのすごく早い段階で」みたいな意味で、「このショーは今始まったばかりだと言うのに、もうスタンディング・オベーションで立ち上がってる人がいるわ」みたいなことですね。
ショーで客が立ち上がる、というのは、ショーがつまらないから帰る、という意味で、こういうショーをしているエンターテイナーにとっては何よりいやなことでしょうが、それを逆手にとって、「まぁ、もうスタンディング・オベーション?!」みたいに言ってみせるのが、エンタメ界で長年生きてきた人っぽくて面白いなと思うわけです。
転んでもただでは起きないと言うか、いろんなお客を相手にしてきた百戦錬磨を感じさせると言うか。
背中を見せて立ち去ろうとした相手に「振り向いて、お顔を見せてちょうだいよ」と言うヘレナ。
チャンドラーもそれを拒むことはできず、ついには顔を見せることになります。
ト書きの Helena recognizes him. は、ヘレナは自分の息子であるチャンドラーをそれだと認める、つまり、自分の息子であるとわかる、ということですね。
こんな形で親子の対面を果たしてしまい、沈黙が流れてしまったのに耐え切れず、モニカは、「ドリンク持ってきてくれる?」と、とにかく何か言葉を言わないではいられない様子。
ここで働いている人はみんなゲイなので、waiter/waitress のどちらで呼べばいいのかわかんない、みたいになっているところにも、モニカの動揺が見え隠れしていますね。


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posted by Rach at 15:26| Comment(2) | フレンズ シーズン7 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。いつもいろいろ勉強させて頂いております。短い間でしたが、21年程前にベーカーズフィールドに留学したことがあります。私にとっては”夢の国”でしたので、このやりとりで苦笑いしたことがあります。確か、シュワルツネッガーの映画でも”田舎”扱いされていたことがありました。9年前にも、遊びに出掛けたのですが、メキシカンな感じになってきていました。
Posted by Emma at 2013年09月01日 07:33
Emmaさんへ
コメント、そして貴重な情報ありがとうございます!

話の流れ的に、ベーカーズフィールドが”田舎”扱いされている様子が伺えるのですが、私には全くその土地のイメージがありませんし、また、その場所にゆかりのある方にとっては「田舎」と断言されるのも気分がよろしくないだろうし、、などといろいろ思っていたのですが、実際にベーカーズフィールドに住んでおられた方にそのように説明していただけると、本当にありがたいです。

ご自分の留学先なら、当然、憧れや素敵なイメージがありますよね。「このやりとりで苦笑い」というのが非常によくわかります^^
他の映画でもそんな扱いをされていた、ということも、今回のセリフのイメージと重なりますね。アメリカは広いですから、都会だの田舎だのの話になると、ありとあらゆる場所が候補に挙がりそうですが、よく引き合いに出される場所、みたいなものがきっとアメリカ人のイメージの中にあって、今回のベーカーズフィールドもその一つだったのだろうと思います。

こういう「土地のイメージ」については、実際に行かれた方のご意見が何よりありがたいので、非常に参考になりました。ありがとうございました! また、そのような方に拙ブログを読んでいただけていることもとても嬉しく光栄です。ありがとうございます!(^^)
Posted by Rach at 2013年09月02日 15:03
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