2013年12月12日

小さなことの良さがわかるようになった フレンズ8-4その3

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レイチェルが妊娠することになったいきさつを語り始めた後、その出来事が起こった6週間前のシーンになります。
SIX WEEKS EARLIER
[Scene: Joey and Rachel's, Joey is reading a cereal box as Ross enters wearing the red sweater.]
6週間前。ジョーイとレイチェルの家。ジョーイはシリアルの箱を読んでいる、そこにロスが赤いセーターを着て入ってくる。
ロス: Do you have a minute? I'd like to talk to you about something I'm, I'm really uncomfortable talking about. (時間ある? あることについてジョーイと話をしたいんだ。僕には実に話しにくいことについて。)
ジョーイ: Sure. What? How about uh, you showering with your mom? (わかった。で、何? お前が自分のママと一緒にシャワーを浴びること、っていうのはどう?)
ロス: I actually had a topic in mind! I'm, I'm kinda going through a dry spell, sex-wise. (実際、僕は(話そうとする)トピックがあったんだよ! 僕はちょっと日照り続きなんだよね、エッチ的に[エッチ方面で]。)
ジョーイ: Whoa, for, like, months? (おぉ、何か月くらい?)
ロス: Five, to be... ...lying. Six. (5か月になる… 嘘だ、6か月だよ。)
ジョーイ: Six months? Whoa, that's rough. (6か月? わぁ、それはつらいな。)
ロス: Well, I mean it's not all bad. I'm learning to appreciate the uh, smaller things in life. Like the sound of a bird... and the color of the sky. (うーん、全く最悪ってことでもないよ。僕は(毎日の)生活における、より小さなことの良さがわかるようになってきたんだ。例えば、鳥のさえずりとか…空の色とか。)
ジョーイ: The sky's blue, Ross. And I had sex yesterday! (空は青だ、ロス。で、俺は昨日エッチしたぞ!)

ジョーイの家にやってきたロスは、「時間ある? あることについて君と話したいと思ってるんだ」と言います。
I'd like to talk to you about something I'm, I'm really uncomfortable talking about. というのは、この長い文章が1文になっています。
I'm really uncomfortable talking about が前の something にかかっている構造ですね。
「あること(something)について、ジョーイと話したいと思ってる」ですが、その something について、後置修飾の形で、「それについて話すことが本当に不快・居心地が悪い(あること)」と説明していることになります。
つまり、「それについて話をするのはあまり楽しくはないことなんだけど、でもそういう件でジョーイと話したいんだ」と言っていることになります。
「話したいことがある、でも、話してて愉快・楽しい話題じゃない」ということをあらかじめ前振りで言っておく感覚ですね。

「話しにくいことについて話したい」と言われたジョーイは、How about...? を使って、自ら話題を提供(笑)しています。
その内容が you showering with your mom で、showering は動名詞、you はその動名詞の主語ですね。
書き言葉(文語体)では動名詞の主語が所有格になることが多いですが、話し言葉(口語体、会話文)では、動名詞の主語がこのように「目的格」になることが多く、今回の you も「目的格」であることに注意しましょう。

ですからジョーイのセリフは、「お前がお前のママと一緒にシャワーを浴びることについて、ってのはどう?」と言っていることになります。
勝手に話の内容を決められそうになったロスが、I actually had a topic in mind! と怒ったように言うのが面白いですね。
have ... in mind は「心の中に…を持っている」という直訳通り、「…を考えている」ということですから、「実際、僕はあるトピックを考えていたんだ」ということ。

「気まずい話をしたいなら、ロスのことだし、”今でもママと一緒にシャワーを浴びるのって、やっぱりヘンかなぁ?”みたいなことでも話してみるか?」と先走って例を出されたことに腹を立て、「ジョーイと話したいと思ってる件については、すでに心の中にあるんだよ、勝手に話題を決めないでよ」と言っていることになります。

I'm kinda going through a dry spell, sex-wise. について。
kinda = kind of で、ちょっとはぐらかす表現。
go through は「〜を通って、行く」という感覚から、I'm kinda going through は、「僕は(今)〜を経験中、って感じなんだよね」と言っているニュアンスになります。
何を経験中かについては、a dry spell と言っていますが、これは通常、「乾期、日照り続き」という意味。
その後、かなり間を置いてから、sex-wise と言っていますが、-wise は「…関連で、…に関しては」という「関連」を表す接尾辞なので、sex-wise は「エッチ関連で、エッチ方面で」と言っていることになります。
「僕はずっと日照り続きなんだよね…エッチ方面で」と言っているわけで、つまり、長らくエッチをしていないと、ロスは言いたいわけですね。

今回のセリフでは、はっきりと sex-wise と付け加えて、より意味を明確(笑)にしていますが、実はこの dry spell という言葉は前にもフレンズで出てきたことがあります。
まさにそのものズバリの、日照り続き フレンズ6-15その5 というタイトルの記事で、dry spell について詳しく解説しています。
spell というのは「(天候などの)一時、ひと続き」という意味でしたよね。

その時のやりとりは以下のようなものでした。
フィービー: Still going through that dry spell with Carol? (キャロルとの例の日照り(続き)状態はまだ続いてるの?)
ロス: Yeah. (ああ。)
フィービー: How long has it been since you had sex? (あなたがエッチしてからどのくらいになるの?)

最初のフィービーの質問の中では、sex という言葉は使われていませんが、ロスはそっち系の話だと瞬時に理解し、普通に会話が進行しています。
ですから、あえて sex という言葉を出さなくても、「乾いてる、日照り続き」みたいに言えば、そっち方面がごぶさたなんだな、ということはお互いにわかる、ということになるでしょう。
今回のエピソードでは、ロスは誤解のないように念押しのつもりで、sex-wise と言いにくそうに付け加えたのだろうと思います。
また、前回も今回も、going through a/that dry spell という同じフレーズが使われているのも興味深いですね。

「長らくごぶさた」というのを聞いて、ジョーイは「何か月くらい?」と for で期間を尋ねています。
ロスはいったんは「5か月」と言うのですが、その後、「今のは嘘、6か月」と訂正していますね。
that's rough の rough は「ラフ」で、「雑な、荒っぽい」という意味でよく使われますが、ここでは「つらい、苦しい」という意味で使われています。

「うわぁ、そりゃつらいよな」みたいに同情されたからでしょうか、ロスは「全く悪いってわけでもないんだ」と言っています。
I'm learning to appreciate the uh, smaller things in life. の learn to は、「〜することを学ぶ」ということから、「〜できるようになる、〜するようになる」というニュアンスになります。
appreciate は「感謝する、ありがたく思う」という意味でも使われますが、ここでは「〜の良さがわかる、高く評価する」という感覚。
日々の生活、人生における、より小さなこと・事柄の良さがわかるようになってきた、だから、悪いことばかりでもないんだよ、ということですね。

その後、the smaller things in life について、例えば、と例を2つ挙げています。
the sound of a bird は「鳥の音」、つまり、「鳥の鳴き声、鳥のさえずり」、the color of the sky は文字通り「空の色」ですね。
エッチしなくなってから、鳥のさえずりとか、空の色とかの素敵さに気付くようになったんだ、と説明するのですが、ジョーイは怒ったように、The sky's blue, Ross. And I had sex yesterday! と言っています。
「空の色の良さがわかったとか言ってるけど、空の色は青だよ。それを知ってる俺は昨日、エッチしたんだけどね」みたいに言って、「エッチしててもしなくてもそんなことは誰でも知ってる。エッチしてないからわかるんだ、みたいなきれいごと、というか、負け惜しみみたいなことを言うなよ」とジョーイは言いたいわけですね。


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posted by Rach at 15:51| Comment(8) | フレンズ シーズン8 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Rachさんこんにちは、鈴木です。先日はセミナーありがとうございました。

動名詞の意味上の主語って目的格のことが多いんですよね。特に仰るように話し言葉だと。学生の頃「所有格」って習ったのに!って始めて知った時に憤りました笑)
Posted by 鈴木 大介 at 2013年12月13日 20:33
鈴木大介さんへ
コメントありがとうございます。こちらこそ、先日はセミナーにご参加いただけて光栄でした。ありがとうございました(^^)

やっぱり学生の頃、「動名詞の主語は所有格」って習いましたよねぇ? 私もずーっとそうだと信じていたのに、「フレンズ」DVD で学ぶようになってから、「実際の英会話では圧倒的に”目的格”が多い」ということに気づきました。your/you だと見た目が似ているので気がつかないのですが、our/us みたいに違うとすごく違和感があるので、us doing の形を最初見た時は、本当にびっくりしたものです。「学校で習ったんと違うぅ〜」と思うこと、結構ありますよね^^
Posted by Rach at 2013年12月16日 16:25
いつもお世話になっています。最近サボっていました。。。
まだシーズン2をやってますので、最新記事の内容はなるべく読みたくないのですが、
つい来てしまった…
記事の内容はなるべく見ないようにしながらも、気になった点を書かせてくださいね。

you showering や、us doing のshowering doingは動名詞ではなく
現在分詞の形容詞的用法(名詞を修飾する現在分詞)ではないでしょうか?
例えば、 Look at the girl standing over there!のstandingと同じで。
この場合、Look at her standing....の意味ですから、the girlは目的格のはず。

How about you showering with your motherは、
あなたのシャワーリングではなく、シャワー「している」あなた、と解釈すれば、
youが目的格であって自然だと思うのですがいかがでしょうか。
Posted by keiko at 2013年12月21日 19:55
keikoさんへ
コメントありがとうございます。
いただいたコメントをじっくり読ませていただいて、私ももう一度よく考えてみたのですが、How about you showering の showering は、私はやはり動名詞だろうと思うのです。あくまで私個人の意見ではありますが、以下に見解を述べさせていただきますね。

研究社 新英和中辞典では、How about...? について以下のように説明されています。

How about…?
…はいかがですか、…についてはどうお考えですか
How about the results? それで結果はどう(だった)ですか。
How about a game of chess? チェスを一番どうですか。
How about going for a swim? 泳ぎに行きませんか。

例文の上の2つは、about の後が名詞なので、How about going... の形も going が名詞、つまり、動名詞になっているはずだと思うわけです。
How about going for a swim? の場合は、go for a swim するのは、提案者である話し手と、それを聞いている聞き手であり、あえて主語をつけるとすると our/us になるのでしょうが、話の内容から主語が誰であるかは明白なのであえて動名詞の主語を入れていないことになるでしょう。

今回の場合は、「人が(一般的に)自分の母親と一緒にシャワーを浴びること」ではなくて、「ロスがママと一緒にシャワーを浴びていること」と特定した感じになっているところがポイントなのかなと思いました。you showering with your mom とはっきり動名詞の主語を付けたことで、ロスが実際にママとシャワーを浴びていると決めつけている感じがする、そこがこのセリフの面白さなのかなぁ、と。

ご指摘のような「現在分詞の形容詞的用法(名詞を修飾する現在分詞)」であるとすると、How about you (showering with your mom) ということで、形容詞的用法っぽく訳すと、「自分のママと一緒にシャワーを浴びている(そういう)”君について”どう思う?」みたいになるように思うのですね。ですが、ジョーイが言いたいのは、「そういうことをしている君(自分自身)についてどう思う?」かではなくて、「君がそういうことをしていることについてどう思う?」というように、相手の「行為」に対して、How about...? で尋ねているように私は思うわけです。

keikoさんにとってはネタバレになるかもしれないので、以下のリンク先の記事を読んでいただく必要はありませんが、
過去記事、フレンズ7-20その6
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388472103.html
に、
I was looking forward to us wearing our celebrity tuxes together.
というセリフが出てきました。
このフレーズは、look forward to doing の形になる(to do だと間違いになる)ことで、試験によく出てくる項目ですが、それは look forward to+名詞、の形が基本で、動詞を続けたい場合には動名詞にしないといけないから、ですよね。

この us wearing は明らかに「動名詞の主語(目的格)+動名詞」の形で、口語英語ではこのように「動名詞の主語が目的格」というのが頻出するので、その頻出具合を考えると、今回のセリフも、How about doing? の動名詞に、特に主語を付けた形として、How about 目的格(=動名詞の主語) doing? の形だと理解するのが、自然なんだろうな、と私は思ったわけです。

あくまで私の考えであって「絶対」ではないのですが、一つの意見としてお聞きいただければ幸いです。
文法的解釈を一緒に考えていただけること、とても嬉しいです。貴重なご意見ありがとうございました!
Posted by Rach at 2013年12月24日 16:47
Rachさん、これは面白いテーマですね!
How about…? や、looking forward to に続くのが名詞(または動名詞)であることはここで議論しても無意味です。と言いますのは、その点に関してはRachさんと私はまったく同意見ですからね。

How about…? や、looking forward toに直接続く「…ing」が文法上動名詞であることに異論はありません。問題は、「…ing」の前に名詞が入った場合ですよね。私の考えは、

  1.「所有格+…ing」 ○○が…すること(動名詞)
  2.「目的格+…ing」 …する○○(○○が名詞で、続くingはそれを修飾する現在分詞)

つまり、「所有格+…ing」も「目的格+…ing」どちらも使えるが「強調すべき要素が違う」のだと思っています。たとえば、
How about my showering?  俺がシャワーするってどう思う?(シャワーの行為を強調)
How about me showering?  シャワーする俺、どう思う?(シャワーしている人物そのものを強調)

今回の「What? How about uh, you showering with your mom?」では、
How about +目的格you ママとシャワーしている恥ずかしい「お前」を強調
質問文の「want to talk to about something」 の 「something」=「you」という解釈で、
意味は「何だよ。言いにくいことって、ママとシャワーしている恥ずかしいお前のこととか?」

そして、以前の「I was looking forward to us wearing our celebrity tuxes together.」
looking forward to + 目的格us タキシード着た素敵な「俺たち」を強調
意味は「タキシード着た素敵な俺たちっ!!を楽しみにしてたんだよ。」

英語圏の人は「○○が〜するのを楽しみにする」と言いたい時、人物○○を強調する言い回しにする人が多のではないかなぁと…。で、和訳では日本語らしくするために名詞の強調をさけるのではないかと。
日本でも最近「誘ってほしいなと思っています」を「誘ってほしいなと思っている自分が居ます」のように表現する人がありますよね。

……とまぁ、ここまで持論を展開して来てナンなんですが、実はこれを打っている最中、Rachさん説が正しいことを裏付けるサイトを次々と発見してしまいました(泣)
「動名詞 目的格」などの用語で検索するとたくさん出てきます。
なんと、wikipediaにも「意味上の主語」という項目があり、その中の「動名詞の意味上の主語」の個所には「ただし、口語では目的格を用いる場合も多い」と書かれているではありませんか。

あ、これは私の負け(勝ち負け?)か〜〜と一瞬思ったんですけど、そのあと「いや、そうでもないかも〜」という記事を1つだけ見つけ、ちょっと嬉しくもなっています。

↓負けた〜と一瞬思った記事です
http://delta-scope.com/reading/domeishi/02.html

↓いや、待てよ、と思い直した記事です
http://english-writing-theaters.com/1_nou_pro_case.html
http://www.alc.co.jp/eng/grammar/kaisetsu/grammar54.html ←2の(6)

Rachさん、ただでさえお忙しいお方ですのに、この年末の気ぜわしい時にこのような面倒くさいコメント書いてスミマセン。
Posted by 三原圭子 at 2013年12月24日 19:30
三原圭子さんへ
ご丁寧なお返事ありがとうございます。おっしゃる通り、これは面白いテーマですよね(^^)
非常に長くなってしまいましたので、またお時間のある時にでも読んでいただければ幸いです。

まず、「口語の場合、動名詞の主語が所有格ではなくて、目的格になる」という話は、私が使っている英文法の本にちゃんと書いてあるんですよね。それで、この目的格は所有格の代わりに使っている口語表現だ、という前提で話をしているわけです。

ただ、ご紹介いただいた「いや、待てよ、と思い直した記事」の説明も、非常に興味深いと思いました。「所有格の代わりに目的格を使う」と解釈するか、「目的格の後は現在分詞だと考えるか」という違いなわけですよね。

英文法というのは、「まず英文法ありき」ではなく、現在使われている英語を、英語学者の方々がわかりやすく体系立ててカテゴライズしたものであるはずなので、ある英語学者がそう言っているからと言って、必ずしもそれが全ての人に受け入られているものではない、という可能性はもちろんあります。が、私が持っているというその英文法の本は、スタンダードな受験英語の参考書なので、「口語では、動名詞の主語が目的格になる」という話は、一般的に受け入れられていることだと考えて問題ない気がするのです。

その本は、
数研出版 基礎と完成 新英文法 (安藤貞雄 著)
で、私が受験時代によく使っていた受験参考書です。32歳で英語やり直し学習を始めた後に、懐かしくて買い直したものを今もずっと使っているのですが、
動名詞の意味上の主語 317. 主語を表現する場合 (p.404)
に以下の記述があります。

動名詞の意味上の主語は、<文章体>では(代)名詞の所有格(John's, his)を用い、<口語体>では、名詞は -'s のつかない形(John)、代名詞は目的格(him)が好まれる。
(1) a) I tried to stop John's [his] hitting Bob. <文章体>
b) I tried to stop John [him] hitting Bob. <口語体>
(私はジョンがボブをぶつのを止めようとした。)

また、主語が入るか入らないかの話でも、興味深いことが書いてあります。

316. 主語を表現しない場合 (p.403)
(1) 文の主語と一致している場合
動名詞の意味上の主語が文の主語と一致しているときは、表現されない、というよりも、表現してはいけない。

安藤先生の解釈では、「所有格も目的格もどちらも動名詞の主語であり、目的格を使う方が口語的である」ということになります。

その流れに沿って考えると、
How about doing? の doing は動名詞
How about you doing? の doing も動名詞、you は動名詞の意味上の主語(ここでは目的格を使っている)
と解釈する方が、よりシンプルだと私は思うわけです。

私は学校英語で、「動名詞の意味上の主語は(動名詞という名詞にかかるから)所有格になる」と習った記憶が強くあって、でもフレンズでそれに当てはまらない例(ここは所有格を使うんじゃないの?という部分で目的格が使われているセリフ)を見た時に、安藤先生の文法書を見たら、「口語体では目的格が好まれる」と書いてあったので、それはもう(笑)びっくりしたんですよ。受験時代にこの参考書を使っていたと言いましたが、その当時にもそう書いてあったのかどうかは記憶にありません。多分書いてあったんだろうけど、学校英語でそう習った記憶が強いのと、「口語体」はあまり受験英語では関係ないということでスルーしていたんだろうと思うのですね。
文法事項の理解としては、安藤先生の説明のように、「動名詞の主語は、口語体では目的格になる」と考えていた方がシンプルでわかりやすいと思うので、これまでの解説記事でもそのように説明してきました。

ただ、圭子さんのおっしゃる「強調すべき要素が違う」というお話には私も大変興味があります。仮に「動名詞の意味上の主語が目的格になる」という理解で考えたとして、「どうして口語体では目的格を使うのか?」という話に繋がりそうに思ったからです。

私は「口語では目的格を使う傾向にある」のは、I see him cross the street. I see him crossing the street. のような知覚動詞の I see+目的語+do/doing の形のイメージから来たんだろうと思っています。
him crossing というのはまさに、目的語(目的格)+現在分詞の形で、それと同じように理解すると、How about you showering も、「目的語+現在分詞」だと解釈することも可能ですね。

知覚動詞 see と、How about...? の違いは、
1. see は、「see+目的語+原形」の形も取る
2. see は、see his crossing とは表現しない(目的格のみ)
でしょうか。
私はこういう知覚動詞の感覚(動詞+目的語+doing<現在分詞>)があるために、動名詞の主語の位置に来る代名詞を(口語では)目的格にしてしまうんだろうな、と思っています。

「目的格」であることを最重要視するならば、その後の doing は現在分詞として理解されるのだろうし、「動名詞」であることを最重要視するならば、その前についている意味上の主語が「口語だから目的格を使っている」という理解になるのだろうと思います。

「目的格」を使っている時の「ネイティブの気持ち」は、やはり焦点がその「人物」の置かれているということでしょうね。I see him crossing と同様に、「私が見たのは彼」であって、その彼は今、道路を渡っているところである、という風に補語として彼の行動が説明されていることになるのと同じことでしょう。

私がフレンズのセリフを見る限り、doing の前に付くのは圧倒的に目的格が多くて、所有格のものを見ることはほとんどありません。実際のネイティブのニュアンスは、「何が、誰が」を強調したい時に目的格を使っている、ということなのだろうと思うのですが、フレンズのセリフではその「使い分け」がなされていないような気がするのです(常に目的格ばかりが使われているという意味で)。それを考えると、「動名詞の主語は目的格を使う」と理解した方がシンプルなのかなぁ、と。

お決まりフレーズの How about...? や、look forward to... については、... の部分には「名詞」が入る、というのがいわば決まりになっていると思います。そこに目的格が入ってきた場合に、「How about 目的語+現在分詞」のように構造がドラスティックに変化すると考えるよりも、How about donig? というお決まりの動名詞に意味上の主語がついた、口語ではその主語が目的格になる、と理解する方が、シンプルだと思うわけです。

我ながら「シンプル、シンプル」とうるさいですが(笑)、文法というのは「場合分け」みたいなものなので、「目的格を使う気持ちの裏にはこういう細かいニュアンスの違いがあるが、実際の使用例を分類すると、口語では動名詞の主語は目的格になることが多い」と理解した方が、「文法という法則」としてはシンプルで、受け入れやすい気がするわけです。

ただ、目的格+doing を、「動名詞の意味上の主語+動名詞」という解釈だけではなく、「目的語+現在分詞」と解釈することもできる、というお話については、私は今回しっかり納得!させていただきました。参考になる記事をいろいろとご紹介していただけたこと、心より感謝しております。

私的には、どちらが勝った(笑)というか、どちらが正しいかではなくて、この「目的格+doing」の文法的解釈には二通りある、ということにしたいです。
私の今の最終的な見解は、

「(知覚動詞で使われるような)目的語+現在分詞」のイメージがあるために、同じような単語の配置になった場合の動名詞の主語も所有格ではなく目的格を使う傾向にある。

というところですね。
私は see him crossing のイメージに通じるものを感じるけれど、それと同じカテゴリーには分類せず、あくまで「そのイメージから来た口語表現」だと理解している、ということです。

こちらこそ、年末の気ぜわしいw 時に、文法事項を一緒に考えていただけて嬉しいです。クリスマスにこういうことを延々書いている自分が、とっても自分らしくて微笑ましいです(^^)
貴重なコメント、ありがとうございました!
Posted by Rach at 2013年12月25日 18:02
安藤先生の解釈ですと、
  How about doing? の doing は動名詞
  How about you doing? の doing も動名詞。
私の解釈(?!)ですと、
  How about doing? の doing は動名詞
  How about you doing? の you がそれと同等の名詞(doing はそれを修飾するだけの飾り)

私にはどうしても、
  How about *** D O I N G ***
  How about *** Y O U ***... doing  の感じがしてしまうのです。

しかし、○○ing に視点を置くと、私の解釈は確かにシンプルではありませんね。
「文法」の役目はおっしゃる通り、後付けでわかりやすく体系立てるためだけに存在するのですから、
その点を突かれますとちょっと辛いですねぇ。。。。

> 「(知覚動詞で使われるような)目的語+現在分詞」のイメージがあるために、
> 同じような単語の配置になった場合の動名詞の主語も所有格ではなく目的格を使う傾向にある。
これも説得力ありますね。言語の世界では良くある流れのように思いますし。

後付けの文法的解釈と言う点では、動名詞である方が説明がしやすく、その説が圧倒的に多いようなので、やはり私の負け(笑)かもしれません。

「目的格+doing」の文法的解釈は、Rachさんは二通りあると結論付けてくださってますが、
私はむしろ、圧倒的に「doing=動名詞・目的格=意味上の主語」がメジャーである、ということに納得しました。ありがとうございました。
ただ「doing=現在分詞として目的格を修飾」という説もあり得る(矛盾はしない)ということですよね。

楽しい会話の場を提供してくだり、詳しく解説してくださって、本当にありがとうございます。
年末にのんびりブログに書き込みしたりして、Rachさんにご迷惑でなかったことをただただ祈ります。
どうぞ良いお年をお迎えください。(……あ〜、楽しかった!)
Posted by 三原圭子 at 2013年12月28日 16:35
三原圭子さんへ
ご丁寧なお返事ありがとうございます。

私は安藤先生の解釈を先に読んでしまっていたので、doing が現在分詞である可能性というのを考えることすらありませんでした。今回、圭子さんのコメントで、そのような解釈もあることを知って、大変勉強になりました。その説も「あり得るし、矛盾しない」というのもその通りだと思います。

また、迷惑だなんてとんでもないです。いろいろと調べていただけたこと、本当に感謝しています。ありがとうございました。
圭子さんも、どうか良いお年をお迎えくださいね。私もとっても楽しかったです!(^^)
Posted by Rach at 2013年12月29日 08:34
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