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コーヒーハウスのセントラルパークで、ジョーイとレイチェルが話をしています。
レイチェル: Hey, Joey, can I ask you something? (ねぇ、ジョーイ、ちょっと質問していい?)
ジョーイ: Yeah. (ああ。)
レイチェル: After our date last night, did you feel a little weird? (昨夜の私たちのデートの後、ちょっと変な気分にならなかった?)
ジョーイ: Oh, my God! You did too? It totally freaked me out. What was that?! (なんてこった。レイチェルもなの? すっかりパニクっちゃってさ。あれって何だったんだ?)
レイチェル: I don't know! (Pause) I'm-I'm kinda thinking it-it was the lobster.... (わからないわ! [間があって] 私が思うに…ロブスターね…)
ジョーイ: Oh, yeah-yeah, the lobster. (あぁ、そうだ、そうだ。ロブスターだ。)
レイチェル: Yeah, I mean I was up sick all night. (そうなの、私、気分が悪くて、一晩中、起きてたわ。)
ジョーイ: Yeah, me too. All night. (あぁ、俺もだよ。一晩中。)
レイチェル: Really?! How come we didn't cross paths? (ほんとに? じゃあどうして私たち、ばったり会わなかったの?)
ジョーイ: Yeah, well, that's because uh... I stayed in my room. Yeah, you don't want to look in my hamper. (あぁ、それは…俺は自分の部屋にずっといたからだよ。あぁ、レイチェルは俺の洗濯かごの中を見ないほうがいいよ。)
レイチェルはジョーイに、「ちょっと聞いていい?」と言って、昨日の晩の二人のデートの後、feel a little weird にならなかった?と尋ねています。
weird は「変な」という意味で、フレンズに頻出する単語ですね。
ですから、レイチェルは、「ちょっと変な気持ち・気分にならなかった?」と尋ねていることになります。
ジョーイはそれを聞いて、「レイチェルもそうなの?、レイチェルもそんな”変な気持ち”になってたの?」と言っています。
It totally freaked me out. を直訳すると、「そのことが、俺をすっかりパニクらせた」ということなので、「変な気持ちになったことで、俺はすっかりパニクっちゃったんだよ」と言っていることになります。
前回の記事で解説したように、「レイチェルがデートの最後に使う手」をジョーイに披露していて、レイチェルが色っぽい声を出した時に、ジョーイは、stunned and turned on 「ぼうぜんとして、そそられてしまった様子」になり、レイチェルが彼女の寝室に入って行った後、He then starts to freak out. 「ジョーイはそれから、パニクった様子になる」という状態になっていました。
レイチェルが、feel a little weird 「ちょっと変な感じがした、変な気持ちになった」と言ったので、ジョーイは、その時の自分と同じように、レイチェルも、「友達である相手に、異性を感じてしまう」という気持ちになったのかな、と思ったわけですね。
ジョーイのほうはレイチェルに「そうか、レイチェルも俺と同じ気持ちになってたんだ」というつもりで返事したのですが、その後、レイチェルが、lobster の話を出したことで、レイチェルが言っていた、feel a little weird は、「変な気持ちになる」→「気持ち悪い、具合が悪い」という意味で使っていたことがわかることになります。
feel という動詞は、「心で感じる」という emotion の意味と、「身体で感じる」という physical な意味の両方を表わすことができる単語です。
日本語でも、「気持ち悪い」「気分が悪い」と言った場合には、感情の話(嫌悪感など)も、体調の話(しんどい、吐き気がする、など)も、両方カバーしていることになりますので、似た感覚だと言えるでしょうか。
「レイチェルも俺と同じ気持ちだったんだ!」と、一瞬喜んだであろうジョーイも、「ロブスター」という言葉を聞いて、「吐き気がする、という意味の、変な気持ち・感じ」だとわかり、「あぁ、そうだ、ロブスターだよね、デートの時に食べた、ロブスターがあたったんだよね」と話を合わせています。
その後、レイチェルは、もっと的確な言葉 sick を使って、I was up sick all night. と表現することになります。
sick は「病気で」と訳されることが多いですが、この場合は「吐き気がする、むかつく」ということですね。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
sick : NOT FEELING WELL having an unpleasant feeling in your stomach, especially as if you might vomit
つまり、「胃に不快感、特にまるで吐いてしまうかのような不快感を持っていること」。
大きな意味としては「気分が悪い(not feeling well)ということですが、語義にもはっきりと、stomach 「胃」の不快感や、vomit 「吐く」という言葉が使われていることから、「漠然と気分がすぐれない」以上の「吐き気」をはっきり意味する言葉であることがよくわかります。
レイチェルが最初から、sick という言葉を使っていれば、ジョーイが誤解することもなかったわけですよね。
feel a little weird という、いろんな意味に取れる、いわばあいまいな表現をレイチェルが使ったことで、ジョーイは「レイチェルは俺と同じ、変な気持ちになったんだ」と誤解し、見ている観客も「レイチェルももしかしてジョーイと同じ気持ちになってたの?」と一瞬、期待してしまうという、脚本上のテクニックになるでしょう。
I was up sick all night. の up は「起きている」、all night は「一晩中、夜通し」なので、「私は一晩中、吐きそうな状態で(吐き気を催しながら)起きていた」と言っていることになります。
all night という言葉を聞いて、ジョーイも、"Yeah, me too. All night." と言っていますね。
ジョーイの方は、胃の調子は悪くなかったので、「あぁ、俺も一晩中、起きてた」みたいなセリフは、ただ、レイチェルの話に合わせただけのようにも聞こえるのですが、その後のセリフを聞くことで、ジョーイは別の意味で「一晩中、ずっと起きていた」ことがわかる仕組みになっています。
How come...? は、Why...? と同じ感覚で、「なぜ? どうして?」という意味ですね。
How come...? の場合は、How come SV...? という語順になることにも注意しましょう。
cross paths の path は「道」「通り道、進路、コース」ですね。
cross someone's path で「人に偶然・ばったり会う」という意味になります。
「誰かの進路と交わる、交差する、クロスする」ということですね。
主語が we 「私たち」なので、we didn't cross paths 「私たちは、私たち(それぞれの)進路と交わらなかった」と表現していることになり、要は、How come I didn't cross your path? 「どうして私はあなたとばったり会わなかったのかしら?」と同じ内容になります。
二人とも、気分が悪くて、眠れずに起きていたのなら、トイレに行くとか、薬や飲み物を飲みにキッチンに出てくるとかして、会ってもおかしくなかったはずなのに、夜の間、私は一度もジョーイを見なかったわ、ジョーイが起きてるなんて知らなかったわ、みたいなことになるでしょう。
「会わなかったわね」と言われたジョーイは、ちょっと口ごもりながら、「それは…俺が自分の部屋にずっといたからだ、とどまっていたからだ」と説明しています。
その後の、you don't want to は「君は〜しないほうがいい」という助言のニュアンスですね。
hamper は「(洗濯物を入れる)洗濯かご」なので、you don't want to look in my hamper. は「レイチェルは、俺の洗濯かごの中を見ないほうがいい」と言っていることになります。
「一晩中、起きてたけど、部屋にずっといた(部屋にこもっていた)」、「洗濯かごの中を見ないほうがいい(俺の洗濯物を見ないほうがいい)」というジョーイの発言から、ジョーイは眠れなくて、「ある行為」をしていたことが想像されます。
前回とりあげたやりとりで、turned on というト書きでの説明があったように、ジョーイがレイチェルに「女性」を感じてしまったことは、観客にしっかりわかるように描写されていました。
そのことがあるために、ジョーイはそういう「変な気持ち」になってしまって眠れなくなって、「そういうことまでしてた」ということが「洗濯かご」という言葉ではっきりわかるわけです。
そういうジョーイの気持ちに気づいていないレイチェルだけが、その発言の意味がわからず、不思議そうな顔をしているわけですね。
hamper という単語は、過去記事、リフォーム フレンズ3-5その12 の以下のセリフで出てきました。
ジョーイ: If you ah, move your hamper, you see what color the tile used to be. (もし、その洗濯かごをどけたら[動かしたら]、そのタイルの元の色がどんな色だったかがわかるよ。)
hamper という単語の意味を知らなかった場合には、今回のジョーイのセリフを聞いても、その「衝撃度」はわかりませんよね。
私自身、フレンズに出てきた単語の全てを覚えているわけではありませんが、hamper=洗濯かご、というのは結構しっかりインプットされていたので、今回のジョーイのセリフを初めて聞いた時には、「え?そんなことまで言っちゃっていいの?」とかなり驚いたものでした。
このシーンの最後のセリフ、hamper で観客が驚くのと同じタイミングで、自分も「え?」と思えるということが、「ネイティブと同じ感覚で、英語でドラマを楽しめる」ということなのですね。
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いつも詳細な解説ありがとうございます。
ジョーイの you don't want to look in my hamper.
なのですが、これは turned on してある行為をしていたからではなく、単純に sick だったけど、部屋にこもってた、つまり漏らしちゃったからhamper を見ないほうがいいよと誤魔化したのではないでしょうか?
レイチェルのなんでcross pathsしなかったの?というのも、レイチェルは気分が悪くてしょっちゅうトイレに行ってたけど、ジョーイはいかなったみたね?という感じで、流れ的にお漏らしのほうかな〜と。。。
シーズン6の14エピソードで、ジョーイとロスがアースラのポルノビデオを借りてきたとき、
You didn’t get more movies that are gonna have us reaching for the tissues all night did you? とチャンドラーが言っていたように、フレンズではある行為の場合ティシュが使われるようなので(ま〜たぶん一般的にそうですが)、もしある行為をしていたことをジョーイがここで誤魔化すのなら、hamperではなくゴミ箱の中は見ないほうがいいよ、と言うのかなと思ったのですが、どうでしょうか?
最後に、ただでさえお忙しいのに、今回あまり英語とは関係ないコメントを書いてしまってスミマセン。
こんにちは。コメントありがとうございます。
「詳細な解説」と言っていただけて嬉しいです。
そして、hamper の件について、興味深いご意見ありがとうございます。
「洗濯かごを見ない方がいい」というのは、「汚れた洗濯物がある」ということですよね。私は「このエピソードのジョーイの様子」(笑)から、そういう行為をしていて下着が汚れた、という意味が浮かんで、それ以外の「汚れた洗濯物」のイメージが湧かなかったのですが、確かに「大の方をお漏らし」的な場合も、汚れた洗濯物になりますよね。
そういう「別の可能性」を意識しつつ、もう一度、私なりにこのやりとりを考え直してみました。
「お互い一晩中起きてたのに、どうして会わなかったの?」というのは、まめさんの解釈では「私はトイレに何度も行ったけど、ジョーイがトイレに行っている様子はなかった」ということですね。私が「トイレ」をイメージしなかったのは、「気分が悪い」→「吐き気がする」という連想の方が働いたようで、気分が悪いのでキッチンで何か飲み物でも飲もうかと寝室から出てくる、、ということを考えていました。
「食べ物に当たる」→「お腹をこわす」→「トイレに行く」という連想だと、「部屋から出なかった」→「トイレではなく部屋でお漏らししちゃった」と捉えることも十分可能ですよね。
それに、例に挙げていただいた フレンズ6-14 のセリフのように、「ティッシュに手を伸ばす」というイメージの方が、その行為の連想に直結するのは間違いないですよね。
今回の hamper のセリフは、DVDでは以下のように訳されていました。
(字幕)洗濯カゴは見ないで/(音声)部屋ん中のゴミ箱、見ないでね
音声で「ゴミ箱」と訳されていたのは、訳者の方も「そっち系」を連想されたということなのかな、と思うのですが、私自身がこの日本語訳のイメージを引きずって、自分の解釈をそっち系に近づけてしまったのかもしれません。
両方の可能性が存在することを踏まえ、再度、このシーンを「ジョークのオチへの流れ」で考えてみました。
「明らかに turn on した様子だったジョーイは、やっぱりあの晩、そういう行為をしていた」ということがセリフからわかる、方が、「フレンズっぽいジョーク」になるのかな、という気がします。
ジョーイが「トイレに行かず、お漏らしした」と誤魔化したとして、レイチェルがその意味に解釈したならば、レイチェルは顔をしかめるように思うのですが、このセリフを聞いたレイチェルは、「意味がよくわからない」というような顔をしているように思えるのですね。言ったジョーイ自身も、自分でそう説明しておきながら、ちょっと混乱しているような顔をしているように見えました。
実際にあの夜、ジョーイが何をしていたか、についても、「自分でもどうしてこんな気持ちになっちゃってるのかわからない」という、動揺した、自分の気持ちの変化に付いていけてない感じの流れで言うと、やっぱり、そういう行為をしていた、と考えた方が自然かなぁ、と。
「あの夜、変な気持ちにならなかった?」という話なので、「もしかして、レイチェルも同じ気持ち?」と一瞬嬉しくなってしまったけれど、よくよく聞いてみると、「変な気持ち」は「気分が悪い」という意味の方で、とりあえず、「あぁ、ロブスターね」と話を合わせつつ、「俺も(理由は違うけど)一晩中起きてた」という事実を伝えた。
「お互い起きてたのに、会わなかったわね」と言われて、ちょっと躊躇した後、「俺は部屋を出なかったからね」と言って、観客に「部屋を出なかった、っていうのは、部屋でそういう行為をしていた、ということ?」と思わせて、「洗濯かご見ない方がいいよ」というおまけのセリフで、そのことを決定付けた、という流れかな、と。
レイチェルはジョーイがまさか「そんな気持ち」で起きていたとは夢にも思っていませんので、ジョーイの方も「あぁ、俺は部屋を出なかったからね」と言うだけで一応、「夜中に会わなかった」ことの理由は説明できている気がします。ジョーイの中では、「会わなかったのは部屋を出なかったから」で、レイに対する理由の説明は終わっている感じで、そのついでのように「カゴの中は見ないで」と言ったのは、レイチェルに向かって言ってはいるものの、それは観客を笑わせるためのジョークで、「部屋にこもってた。洗濯かごを見られたら何してたかわかる」みたいなことだろうと。
観客はそのセリフの意味に気づいて、笑いが起きるけれども、レイチェル本人だけが「その発言の意味がわからない」という顔をしている面白さを出せる、ということですね。
そういう行為を示唆したい場合は、「洗濯かご」ではなくて、「(ゴミ箱の)ティッシュ」を使ったセリフにしていた方が、よりはっきりしただろうとは思います。例えば、I stayed in my room. I ran out of tissue, by the way. 「俺は部屋にいたんだ。ところで、ティッシュ切らしちゃったんだけど」みたいに言うとか。
「ティッシュ→ゴミ箱」ではなく、「下着→洗濯かご」の方をセリフに使ったのは(ちょっと話が変な方向に行きそうですが^^)、夜中にそういう行為をしていたのではなく、「もんもんとした気持ちで眠れない夜を過ごしていて、エッチな夢を見て、朝起きたら下着が汚れてしまっていた」みたいなことだった、とか、、、
そう言えば、ジョーイは寝る時、下着は履かないって言ってたっけ、、とか考えると、ますます混乱してしまうのですがw 「フレンズ的ジョーク」としては、「あの夜、turned on して、ある行為をしていた」ことを示唆するセリフをジョーイに言わせる、レイチェル以外の観客や視聴者には、その意味がわかる、という流れの方が、しっくりくるような気が(私には)しました。
tissue なら間違いないけど、hamper だとお漏らし系の可能性もある、のはおっしゃる通りで、脚本家が hamper という単語を使った意図は、脚本家ご本人に聞いてみないとわからないですよね。
ですからあくまで「私はこう思う」という意見に過ぎないのですが、一つの解釈としてお聞きいただければ幸いです。
興味深いご意見、ありがとうございました!(^^)