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チャンドラーは、もらい物の趣味の悪いパンチボウルをしまおうしている時に、鍵がかかっていて、中に何が入っているかわからないクローゼットを発見します。
モニカに尋ねても、中に何が入っているか教えてくれないので、モニカには内緒で、ジョーイと一緒に開けようとしているところ。
[Scene: Monica and Chandler's, Joey and Chandler are still working on the door.]
モニカとチャンドラーの家。ジョーイとチャンドラーはまだ(クローゼットの)ドアに取り組んでいる。
チャンドラー: There has got to be a way! (何か方法があるはずだ!)
ジョーイ: Easy there, Captain Kirk. Oh, do you have a bobby pin? (落ち着けよ、カーク船長。あぁ、お前、ヘアピン(ボビーピン)持ってる?)
チャンドラー: Yeah. (Checks his hair.) Oh, no, wait. I'm not an 9-year-old girl. (あぁ。[自分の髪の毛を調べる] あぁ、違う、待てよ。俺は9歳の女の子じゃないんだぞ。)
ジョーイ: Then why do you throw like one? (それじゃあ、どうしてお前は、9歳の女の子みたいに、さっと手を動かすんだよ[とっさにあんな行動をするんだよ]?)
チャンドラー: Maybe Monica has a bobby pin. (多分、モニカがヘアピンを持ってる。)
ジョーイ: Oh, sure, "Monica." (あぁ、そうだな、”モニカ”がね。)
チャンドラー: So, how's the hideously inappropriate crush on Rachel coming? (それで、忌まわしいほど不適切なレイチェルへの恋心はどんな風になってるの?)
ジョーイ: Uh, really good. Really good. Yeah, I should be ready to kill myself any day now. (あぁ、すごくいいよ。すごくいい。あぁ、俺は今すぐにでも自殺する準備をすべきだな。)
開かずのドアがなかなか開かないことにイライラしているチャンドラーは、「(何か)方法があるはずだ!」と叫んでいます。
それに対して、ジョーイが、Easy there, Captain Kirk. と言っていますが、Captain Kirk は、Star Trek (The Original Series、略称 TOS) (邦題:宇宙大作戦)の宇宙船エンタープライズ号(NCC-1701)の船長である、ジェームズ・T・カーク(James Tiberius Kirk)のこと。
私はスタートレックが好きなのですが、中でも特に好きなのは、新スタートレック(Star Trek: The Next Generation)という、ピカード艦長とデータ少佐が出てくるシリーズで、実はカーク船長の TOS は、残念ながらそれほど詳しくはないのです、、、。
ちなみに、日本語版では、Captain Kirk は「カーク船長」、Captain Picard は「ピカード艦長」(それ以降の時代の Captain もすべて艦長)と訳されたため、カークの場合だけ、「カーク船長」と訳すのが、トレッキーのお約束みたいになっています。
There has got to be a way! というチャンドラーのセリフを聞いて、ジョーイは「お前はカーク船長かよ」みたいに茶化したわけですが、実際にカーク船長がこれと似たセリフをどこかで言っていたら楽しいな、と思って調べてみたところ、似たようなセリフが、
テレビ版「宇宙大作戦」シーズン2第24話 「恐怖のコンピューターM-5」(原題:The Ultimate Computer)
映画「スタートレックV 新たなる未知へ」(原題:Star Trek V: The Final Frontier)
などに出てくるらしいことがわかりました。(トレッキーの方が、ネットスクリプトを公開して下さっていたおかげです。ありがとうございます)
その映画は見ていないのですが、宇宙大作戦のほうは、Hulu で見ることができる(音声は英語、字幕は英語と日本語)ので、早速確認してみました。
50分のエピソード中、37:25 あたりのシーン。
カーク: There's got to be a way of getting to the M-5. There's got to be a way! (日本語字幕:M5を停止できないのか)
M-5 というコンピューターを開発したデイストロム博士の腕をがしっと掴んで、熱い感じで語っているセリフでした。
論理的で冷静なスポックとは対照的に、カーク船長というのは「人間っぽくて熱い男」というイメージなので^^、その船長のイメージに合ったセリフだという気がしますね。
開かないドアにいらついているチャンドラーに対して、「落ち着けよ、熱くなるなよ」とジョーイも言っていますし、チャンドラーの "There has got to be a way!" は、2-24 のカーク船長のセリフのイメージに非常に近いと言える気がしました。
私の記憶にある限り、「フレンズにはスタートレックネタが5回出てきた」はずで、今回がその5回目になります。過去の4回は以下の記事で。
フレンズ1-2その2、フレンズ2-8その11、転送して、神様 フレンズ3-17その11、スポックの産児制限 フレンズ4-3その5
5回全部説明できるまで、ブログを続けられて良かった、、、^^
その後、ジョーイは、「お前、a bobby pin 持ってる?」と尋ねています。
bobby pin は「ヘアピン」のことですね。アメリカでは bobby pin で、イギリスでは hairgrip と言うそうです。
こういうものは、bobby pin で 「Google画像検索」すると、写真がたくさん表示されて、ああこれね!とすぐわかりますよね。
そういうものを、英英辞典ではどう説明しているのかを見てみると、
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
bobby pin : a thin piece of metal bent into a narrow U shape that a woman uses to hold her hair in place
つまり、「女性が髪の毛の形を保つために使う、細いU字型に曲げられた金属の薄い部品」
Wikipedia 英語版: Bobby pin では、写真と共により詳しい説明が載っています。
bobby pin の bobby というのは、bob 「ショートヘア、ボブ(カット))」と関係あるようです。
上の英語版ウィキペディアにも、bobbed hair/hairstyles との関連性が書いてありますし、LAAD の Etymology (Word Origin) にも、1900-2000 Probably from BOB と書いてありました。
ヘアピン持ってる?と言われたチャンドラーは、「ああ」と言って自分の髪の毛を探るようにした後、「ちょっと待て。俺は9歳の女の子じゃないんだぞ」と言っています。
とりあえず自分の髪の毛を探してみるふりをするのは、「ひとまずボケてみて、その後、自分でツッコむ」という、一人ボケツッコミ(ノリツッコミ)みたいなものですね。
ちなみに、扉の鍵を開けるのにヘアピンを使おうとしているところは、日本の時代劇で、錠前を開ける時に、女性のかんざしを借りたりしている(そんなシーン、たまにありますよね?)のと似た雰囲気があるように思いました。
「俺は9歳の少女じゃないんだから、ボビーピンを頭にさしてるわけないだろ」と言いたげなチャンドラーに、ジョーイは、Then why do you throw like one? と言っています。
throw という動詞の基本的な意味は「投げる」ですね。
そこから、「さっと、すばやく〜する」のようなニュアンスで、文脈によっていろいろな意味で使われます。
その質問をしないことに全力を注いでる フレンズ8-2その4 では、throw our tuxes back on 「タキシードをまた、パッと羽織って(着込んで)」というフレーズも出てきました。
put on ではなく、throw on を使うことで、「さっと着る、すばやく着る」というニュアンスが出るわけですね。
ですから、今回のジョーイの場合、like one は、like an 9-year-old girl 「9歳の女の子のように」ということですから、「9歳の女の子じゃない、とか言いながら、9歳の女の子みたいに throw してるじゃないか」と言っている感覚になるでしょう。
「ヘアピン持ってる?」と言われて、うん、と躊躇なく髪の毛に手をやったその「素早い行動、とっさの行動」のことを、throw という動詞で表現しているのだろうと思います。
このように「さっと動く、動かす」というニュアンスは、英英辞典では以下のように出ています。
LAAD では、
throw: MOVE HANDS/HEAD ETC.
to suddenly and quickly move your body or a part of your body into a new position
つまり、「手や頭などを動かす。突然にまたは素早く、自分の体、または体の一部を新しい位置に動かすこと」。
今回はまさに、to quickly move your hands のニュアンスになるのでしょう。
そんな風にからかわれながらも、チャンドラーは、「モニカがボビーピンを持ってるかも」と言います。
それに対して、ジョーイは、Oh, sure, "Monica." と言いながら、Monica の部分で、手でカニバサミのようなしぐさをしていますね。
これは、これまでのフレンズにも何度も出てきたしぐさで、air quote などと言われますが、直訳の「エア引用」でイメージできるように、そのしぐさをしながら言った部分を、引用符でくくったイメージで話している、ということになります。
まさに、その引用符を文字化したような、「あぁ、そうだな、”モニカ”がね」というニュアンスになり、「モニカが持ってる、って言い張るんなら、まぁ、”モニカ”ってことにしといてやろう」的な感覚が出るわけですね。
「モニカが持ってるかも、とか言いながら、自分のを持ってくるつもりなんだろう?」という気持ちがその、"Monica" に出ていることになります。
そんな話をしながら、チャンドラーは、「ジョーイがレイチェルに恋心を抱いている」という件について、ジョーイ本人に尋ねています。
So, how's the hideously inappropriate crush on Rachel coming? について。
inappropriate は「不適切な」ですね。crush は「(一時的な)首ったけ、べたぼれ」。
hideously は「恐ろしいほど、ぞっとするほど、忌まわしいほど」。
ですから、「レイチェルへの忌まわしいほど不適切なべたぼれ(首ったけになっている恋心)は、どんな感じに進んでるの?」と尋ねている感覚になるでしょう。
恋心の状況を尋ねつつ、「友達であるレイチェルに恋心を抱くなんて、ぞっとするほど不適切だよね」みたいに言ってみせたわけで、言葉だけ見ていると、「悩んでいるであろうジョーイに対して、えらくひどい言いようだ」とも取れるのですが、ジョーイ自身が「こんな気持ちを抱いちゃいけないのに」と思っているのをよくわかっている親友だからこそ、言えた表現なのかな、とも思います。
ジョーイの辛い気持ちを知っているからこそ、ジョーイが自分の気持ちをどう表現したらいいかとためらう前に、先に言ってやった、みたいなところで、そんな風に話題を振られた方が逆に話しやすくなるだろ、というような。
「おぞましいほど不適切な恋心はどうなった?」などと、ちょっとキツい表現で聞かれたジョーイは、Uh, really good. Really good. と言っています。
これは文字だけ見ていると、「ほんとにいい、すごくいい」と肯定的な返事をしているように見えますが、その後のセリフを聞くと、自虐的に good と言っただけ、ということがわかります。
I should be ready to kill myself any day now. について。
any day now は「今すぐに(でも)」という感覚。
LAAD では、
any day/minute etc. now : very soon
と出ています。
つまり、「俺は今すぐにでも、自殺する準備をするべきだ」と言っていることになりますね。
その前に、really good と軽い感じで言っていたので、「もう彼女への恋心は落ち着いた、大丈夫だよ」という話が続くのかと思ったら、「いやもう最高なんだよ。そろそろ自殺の準備をしなきゃ」という話になっていて、自分の存在を消さない限り、この大変な状況から抜け出せない、というほど、気持ちがどんどん深くなっていっていることがわかるわけですね。
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