2014年07月16日

チップを半分にしたのは彼自身 フレンズ8-16その5

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ジョーイと話したロスは、ジョーイがレイチェルのことを真剣に思っていることを知り、「それほど思っているなら、レイチェルに自分の気持ちを伝えるべきだ」とアドバイスします。
ジョーイは、レイチェルの家に行って、気持ちを告白しようとしますが、レイチェルが急いでいたこともあり、「今夜、食事しよう」と約束するのが精一杯。
その後、二人がレストランで話しているシーン。
レイチェル: ... and I know Chandler is kidding but it happens every time he touches my stomach. I mean I'm really worried the baby's not going to like him. (Joey is staring at the table.) Are you okay? (…それで、チャンドラーは冗談を言ってるってわかるけど、でもそれって、チャンドラーが私のお腹を触るたびに起きるのよ。私、ほんとに心配してるの、(お腹の)赤ちゃんが彼を好きにならないんじゃないかって。[ジョーイはテーブルを見つめている] 大丈夫?)
ジョーイ: What? Yeah! Sure! Uh, look, uh, the reason... (Exhales slowly)-Is it hot in here? (何? ああ! もちろん! それは[俺の様子がちょっと変な理由は]… [ゆっくり息を吐いて] ここ、暑くない?)
レイチェル: No. Not-not for me, but why don't you take off your sweater? (いいえ、私には暑くないわ。でも、(それならあなたは)セーターを脱いだらどう?)
ジョーイ: I would, but this is a nice place and my T-shirt has a picture of Calvin doing Hobbes. (そうしたいんだけど、でも、ここは高級な店だろ。それで、俺のTシャツは、カルヴィンがホッブズをヤッてる絵が書いてあるんだよ。)
レイチェル: Oh, my God! Really?! Can I see it? (なんてこと! ほんとに? 見てもいい?)
ジョーイ: Yeah. Sure. (They both half stand up, Joey pulls the neck of his sweater out, and Rachel looks down it to see his T-shirt.) (あぁ、もちろん。[二人とも半分立ち上がって、ジョーイはセーターの首を引っ張り、レイチェルはTシャツを見るためにそれを覗き込む])
レイチェルl: Huh. Wow, I wouldn't think Hobbes would like that so much. (はぁ。まぁ。私には、ホッブズはそういうのあんまり好きじゃないように思えるけどね。)
ジョーイ: Uh... How long have we known each other? (あー… 俺たち、知り合って何年かな?)
レイチェル: Um, seven... e-e-eight, eight years. Wow. (うーん、7年、8、8年ね。わぉ。)
ジョーイ: Uh-huh, long time. (あぁ、長いよね。)
レイチェル: Yeah. (そうね。)
ジョーイ: But over the past few weeks, I-- (でも、この数週間、俺は…)
(A waiter runs over interrupting Joey.)
一人のウェイターがこちらに走ってきて、ジョーイの邪魔をする。
ウェイター: Okay. Hah, sorry about the wait, but it is mega-jammed in here! We have a couple of specials tonight-- (はーい、お待たせしてすみません。でもここは超、混み合ってて! 今夜のお薦めは2つで…)
ジョーイ: Actually uh, could you give us a second? (実はその… ちょっとだけ(1秒)時間をもらえる?)
ウェイター: Sure. Sure. (Turns away, then turns back) Second's up! (Joey glares at him.) Not... that kind of table. (He walks away.) (もちろん、もちろんです。[違う方向を向いて、またこちらを振り返って] ちょっとの時間(1秒)、終わり! [ジョーイは彼をにらむ] そういう[その手の]テーブルじゃない、ですね。[ウェイターは歩いて去る])
レイチェル: So you were saying? (それで、あなたは何を言おうとしてたの?)
ジョーイ: I'm not quite sure. (よくわかんないや。)
レイチェル: Okay, well, you had asked me how long we knew each other, and I said, "Eight years." And the um, waiter came over and cut his tip in half, and umm... now here we are. (いいわ、そうね、あなたは私に、私たちがどれくらい知り合いかを尋ねて、私が「8年」って言った。それから、ウェイターがやってきて、自らのチップを半分にした。それで、うーん… 今に至る。)

レイチェルは、「チャンドラーが私のお腹に触るたびに起きること」について話をしていますが、これは、これより前のシーンに出てきた、以下のやりとりを踏まえての話になっています。
ブログの解説ではカットしてしまった部分なので、ここで説明しておくと、
[Scene: Central Perk, Rachel and Chandler are on the couch.]
セントラルパーク。レイチェルとチャンドラーはカウチに座っている。
レイチェル: Oh-oh! Okay, she's kicking! (ああ! ほら、この子(お腹の赤ちゃん)が蹴ってるわ!)
チャンドラー: Oh! (Puts his hand on her belly.) She's growing inside you. (おぉ! [チャンドラーはレイチェルのお腹に手を当てる] この子は君の中で育ってるんだね。)
レイチェル: Whoa!! (うわ!)
チャンドラー: Oh! (Pulls his hand away.) (おお! [手を引っ込める])
レイチェル: Wow, that was a big one. (わぉ、今のは大きかったわ。)
チャンドラー: I think that's the youngest girl ever to reject me. (今のは、これまで俺を拒絶した女の子の中で最年少だと思うよ。)

チャンドラーがレイチェルのお腹を触ったら、中の赤ちゃんが思いっきり蹴ってきたので、チャンドラーはそれを「俺を嫌がって蹴った」ように冗談を言ってみせたわけですね。
まだ生まれてもない女の子に、ケリを入れられるなんて、俺を拒否・拒絶した女性の最年少じゃん、と自虐的に言ったことになります。

そのシーンを覚えている観客は、「チャンドラーが私のお腹を触るたびにそれは起こる」というセリフで、レイチェルがそのことについて話しているのがわかるので、「赤ちゃんが(チャンドラーを)蹴る」という説明をしなくても、笑えてしまうわけですね。

チャンドラーは自虐的な冗談っぽく「俺を拒絶した最年少の女だ」と言ってたけど、私、ほんとに心配してるのよ、この子がチャンドラーを好きにならないんじゃないかって、とレイチェルは言って、「たまたまじゃなくて、ほんとにこの子はチャンドラーに対して何かしら違うものを感じてるのかもしれない」と言ってみせているわけですね。
そういう話を聞いたら、いつものジョーイなら、ウケたり笑ったりと、もう少し楽しそうな反応をしそうなのに、ジョーイが無言でテーブルを見つめているので、レイチェルは心配そうに尋ねます。

the reason... というのは、「俺がちょっといつもと様子が違う理由は」みたいなことですね。
レイチェルに告白しようとして緊張しているとも言えず、ジョーイは、「ここ暑くない?」と言っています。
「私は暑くないけど、暑いならそのセーター脱いだら?」とレイチェルが言うと、ジョーイは、「脱げるものなら脱ぎたいところだけど、ここは、良い場所(つまり高級店)だろ」と言って、my T-shirt has a picture of Calvin doing Hobbes. とセリフを続けています。
「俺のTシャツは、誰々が何々している絵が載っている」ということで、「暑いけど、セーターの下にこんな絵の描いてあるTシャツを着ているから、こんな高級店では上のセーターを脱げない」と言っていることがわかるので、その絵がこういう店にはふさわしくない、お下品なものであろうことが想像できます。
今回の、A do B. のような、「do+目的語(人)」は、「人に対してエッチな行為をする」という意味で、もっとお下品な感じで表現すると、「B をヤる」みたいなニュアンスですね。
過去記事、何をしたかではなく誰としたか フレンズ7-11その5 では、do something の代わりに、do someone と表現することで、「その人とエッチする」という意味になることを使ったジョークも出てきました。

A が B とヤってる絵、という時点で、こういう店にふさわしくない絵柄だということは想像できるのですが、そこで使われている二人の名前がまた、アメリカのサブカルネタ的に面白いものとなっています。
ここに出てきた二人の名前は、新聞の連載漫画である「カルビンとホッブス」(原題:Calvin and Hobbes)のこと。
Wikipedia 日本語版: カルビンとホッブス
カルビンが6歳の男の子で、ホッブスはぬいぐるみのトラだそうです。
Calvin and Hobbes で画像検索すると、かわいらしい絵柄の少年とトラの画像がたくさんヒットしますね。

ウィキペディアの「作品の概要」に以下の説明がありました。
作者ワターソンは、反商業主義的な感情を持つとともに、注目を浴びることを嫌がったため、本作品にまつわる商品は、単行本の他にほとんど存在していない。しかしながら、作品への大々的な人気は、多数の「海賊版」グッズを産み出した。これらの多くは猥褻な言葉などを伴っており、ワターソンの作品精神と相容れないものである。

その「猥褻な言葉などを伴う海賊版グッズ」が、まさにジョーイが今着ているTシャツ、ということですね。
絵の中で行われている行為そのものがお下品なだけではなく、それが「作者が認めていない下品な海賊版」という意味で倫理的にも褒められたものではない、というダブルの意味で、このTシャツは見せられないんだよね、と言っている感覚になるのでしょう。

レイチェルはそのジョーイの説明を聞いて、嬉しそうに「見せて!」と言って、ジョーイはレイチェルに見えるように、セーターの首を広げています。
その絵を見た後のレイチェルのセリフ、I wouldn't think Hobbes would like that so much. について。
レイチェルがその絵を見た時の反応は、大喜びしているというよりも、ほぅ、そういう絵なのね、なるほど、、みたいな感じに見えます。
このセリフを直訳しようとすると、「ホッブズがそれをものすごく好きであるようには私には思えない(私なら思わない)」みたいになるのかなぁ、と思います。
「〜であるとは思わない」は、自然な日本語にすると、「〜ではないと思う」ということになるので、ここにもその「自然な日本語への変換」を当てはめてみると、「ホッブズはそれがあまり好きじゃないように私には思える」ということになるでしょう。
ジョーイの説明では、「カルヴィンがホッブズをヤッている」みたいな表現になっていましたから、男女の行為で言うと、少年カルヴィンが男役、トラのホッブズが女役、みたいな状況なわけですね。
それを考えると、レイチェルのセリフは、「そういうエッチな行為を”されている”側のホッブズは、あまり喜んでないみたい、楽しんでないみたいだけど」と言っていることになるんだろうと思います。

海賊版の下品な絵柄、ということで、もちろんテレビにはその画像は映らないわけですが、ジョーイとレイチェルのやりとりから、「少年の方は喜んでいて、トラのほうは嫌がっているらしいエッチの絵」なんだろうなと想像されるわけですね。
トラの表情からそう思えるのか、その行為が受け手のトラにとって嬉しくないタイプのプレイなのかはわかりませんが、とにかく、可愛らしいはずのカルヴィンとホッブズの絵柄で、そんなえげつない(笑)エッチの絵が描かれているらしいところに、このジョークのポイントはある、ということですね。

そんな話をした後、ジョーイは本題に入る決心をしたようで、「俺たちはお互いをどれぐらいの長さ(の期間)知ってる?」みたいに尋ねています。
もっと自然な日本語で言うと、「俺たちが知り合ってからどのくらい経つ?」ということですね。
「7年、いえ8年ね」みたいにレイチェルは返事していますが、現在シーズン8ですから^^ 確かに二人は7〜8年、お互いを知っていることになります。
「そんなに長い間一緒だったけど、ここんとこの数週間は…」と、その気持ちの変化を語ろうとした時に、ウェイターが飛んできて、specials 「今日のお薦め」を説明しようとします。
mega-jammed のように、jammed 「混んでいる、混雑している」にメガを付けて強調しているのが表現的に面白いですね。
メガマック(Mega Mac)などのメガのニュアンスですが、そういうメガという言葉の感覚は、日本人にもなじみがあるので、理解しやすいところだと思います。

やっと告白しようと話し始めたところを邪魔されたので、ジョーイはムッとしたように、「ちょっと時間をもらえる?」と言っています。
ウェイターは、了解しました!と言うように、後ろを向くのですが、すぐに振り向いて嬉しそうに手をパッと開きながら、Second's up! と言っています。
この up は「終わって」というニュアンスですね。
Time's up. 「時間切れだ」というフレーズでよく使われます。
ジョーイは、「ちょっと時間をくれ」という意味で、a second という言葉を使ったのですが、a second というのは「1秒」という意味なので、ウェイター的には、「はーい、1秒、終わりましたー」というジョークでなごませようと思ったわけです。
ですが、ジョーイは明らかに怒った顔をしているので、「このテーブルは、そういうジョークを喜ぶような類のテーブルじゃないみたいですね」と言いながら、ウェイターは去ることになります。

ウェイターに話を邪魔されたので、レイチェルは「で、ジョーイは何を話してたの? 何を話そうとしてたの?」と尋ねるのですが、話が中断されたことで気が弱ってしまったらしいジョーイは、「よくわかんないや」とはぐらかそうとしています。
そこでレイチェルは、少し前の会話の様子を自ら説明していますね。
「あなたが知り合って何年?って尋ねるから私が8年と答えた」と言った後のセリフが面白いです。
And the um, waiter came over and cut his tip in half は、「そしてウェイターがやってきて、彼のチップを半分にカットした」。
and cut は、and he [the waiter] cut で、主語が同じだから省略されているわけですね。
この後半部分、意味としては、「彼がくだらないことを言って客を怒らせたせいで、チップが半分になってしまった」ということで、「チップが半分になった」ということなら、and his tip was cut in half. のような受動態で表現することも可能だったろうと思うのですが、ここではそれを、he [the waiter] cut his tip in half. のように、ウェイターを主語にした能動態で表現しているのが(日本人英語学習者的には)ポイントかなぁ、と思いました。
つまり、「ウェイターがやってきて、彼自らがチップを半分にした」というようなことで、彼が行った行為のせいで、自分のチップを半分にしてしまった、という、「チップを半分にした行為者(主語)は彼である」というのがこの能動態のニュアンスだと思うわけです。
his tip was cut in half. のような受動態だと、カットしたのは誰かという行為者が明白ではなく、ただ「チップが半分にカットされた」という状態を説明するだけになるので、面白さが半減してしまう気がするのですね。
「あのウェイターがやってきて、自分のチップを半分にして帰って行った」みたいに表現することで、「ウェイターがチップを半減させられるような失敗をした」ことがわかるわけです。
DVDの日本語字幕では、「ウェイターがチップを半額にするヘマを」と訳されていましたが、その「ヘマをする」というニュアンスが、「ウェイター(自身)が自分のもらうべきチップを半額にした」という「能動態」に出ているということです。

now here we are. は「(そして)今、私たちはここにいる」なので、会話の経緯を説明している流れでいうと、「で、今に・現在に至る」という感覚になります。
Where were we? 「(話は)どこまでいってたっけ?」というのもよく使われますね。


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posted by Rach at 15:15| Comment(0) | フレンズ シーズン8 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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