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チャンドラーとモニカの家にジョーイが入ってきます。
ジョーイ: (entering) Hey! ([入ってきて] よぉ!)
レイチェル: Hi. (はーい。)
モニカ: Uh, I really don't know what to tell you, Rach, I really don't. I mean, maybe Joey could help you out with your, with your big work problem. (あぁ、ほんとに、あなたに何て言ったらいいかわからないわ、レイチェル。ほら、多分、ジョーイがあなたを助けてくれるかも、あなたの仕事の大問題のことでね。)
レイチェル: What? (何?)
モニカ: Yeah, Joey, she's... Rachel's got this really big work problem, and it is a head-scratcher. Wow! (To Chandler) Y'know what, if we're gonna make dinner, we're gonna have to leave. Yeah. (She and Chandler exit.) (そうなのよ、ジョーイ、彼女は…レイチェルは本当に大きな仕事の問題を抱えてるの。頭を悩ますものよ。ワォ! [チャンドラーに] ねぇ、私たちが夕食を作るなら、私たちは行かないと。そうよね。[モニカとチャンドラーは部屋を出る])
ジョーイ: So you uh, have a... big work problem? (それじゃあ、レイチェルは…仕事の大問題を抱えてるの?)
レイチェル: Yeah. It's umm... Yeah, it's uh... It-it's y'know-It's nothing. (えぇ。それは…そうなの、それは…大したことじゃないわ。)
ジョーイ: Huh. Okay. (Awkward silence.) So uh, I think I'm gonna take off. (そうか。わかった。[気まずい沈黙] それじゃあ、俺は行くことにするね。)
レイチェル: Yeah-No, wait! Joey, no, wait, it is. It's something. It's-it's umm... it's my boss. (そうね、いえ、待って! ジョーイ、違うの、待って。重要なことなの。それは… 私の上司(ボス)なの[私の上司のことなの]。)
ジョーイ: Yeah? (そうなの?)
レイチェル: Yeah, and umm my baby. (そうよ、そして私の赤ちゃんのこと。)
ジョーイ: Yeah? (そうなの?)
レイチェル: My boss wants to buy my baby! (私の上司が私の赤ちゃんを買いたがってるの!)
ジョーイ: What?! Oh my-oh my God! (何? なんて、なんてこった!)
レイチェル: I know, I told you, it's a really big problem! (そうなのよ、言ったでしょ、本当に大問題だ、って!)
ジョーイ: What, he wants to buy your baby?! (何? 君の上司は君の赤ちゃんを買いたい、って?)
レイチェル: Can you believe that?! (信じられる?)
ジョーイ: That's crazy! (そんなのクレイジーだよ!)
レイチェル: That's what I told him! (私も上司にそう言ったのよ!)
ジョーイ: Okay, how did this even happen? (わかった、で、どうして[どんな風にして]こんなことが起こったの?)
レイチェル: Well, I'll tell ya! (Pause) See, uh my-my boss and his wife-They-they can't have children. So umm, and that-we were at the Christmas party, and he got drunk and he said to me, "Rachel, I want to buy your baby." (そうね、今から言うわね! [間があって] ほら、私の上司とその奥さんは…二人には子供ができないの。それで、私たちはクリスマスパーティーにいて、上司が酔っぱらって、彼は私に言ったのよ。「レイチェル、君の赤ちゃんを買いたい」って。)
ジョーイ: Man! When you said it was a problem about your boss and the baby I figured it was something about maternity leave. (なんてこった! レイチェルが、君の上司と君の赤ちゃんのことで問題があるって言った時、俺は産休の話かと思ったのに。)
レイチェル: Ohh! Yeah! (Pause) Yeah, that-that would've been a much simpler problem. (ああ! そうねぇ〜! [(かなり長い)間(ま)があって] そうね、それならもっとずっとシンプルな問題だっただろうにね。)
ジョーイが入って来たのを見たモニカは、少し前に自分がレイチェルに言ったアドバイス「ジョーイに仕事の件で相談したら?」を実行しています。
ジョーイが入ってくる前に、レイチェルが仕事の問題をモニカに相談していたかのようなふりをして、「何て言ったらいいか私にはわからないわ」と言った後、今気づいたかのように、「そうだ、今来たジョーイなら助けてくれるかも」みたいに話を進めています。
help you out with... は、「…の件であなたを助ける」という感覚。
ちょっとわざとらしい感じながらも、your big work problem 「あなたの大きな、仕事の問題」のように表現することで、その話題を続けてジョーイとの会話を始めさせようとしているわけです。
ですが、レイチェルは、モニカがさっきくれたアドバイスをすっかり忘れているようで、間の抜けた声(笑)で、What? と返していますね。
せっかく話を振ったのに、それに合わせてくれないことにいらいらした感じで、モニカは「レイチェルは仕事での大問題を抱えてるのよ」のように言った後、it is a head-scratcher. と言っています。
まず、scratch という動詞は、スクラッチというカタカナ英語にもなっていますが、「かく、ひっかく」ということですね。
そして、scratch one's head だと「頭をかく」になりますが、これは「困って頭をかく、途方に暮れる」という意味になります。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
scratch your head : (informal) to not know the answer or solution to something, and to have to think hard about it
例1) The last question really left us scratching our heads.
例2) Budget directors are scratching their heads about how to deal with the shortfall.
つまり、「何かに対する解答や解決策がわからないこと、そして、それについてよく考えないといけないこと」。
例文1は、「最後の質問は本当に私たちを途方に暮れさせた」。
例文2は、「予算管理者(予算担当役員)たちは、不足額をどう扱うかで途方に暮れている(困っている・悩んでいる)」。
scratch your head が「困って頭をかく」ということですから、head scratcher は「頭をかくという状態にさせるもの」ということで、「頭を悩ませるもの」という意味になるでしょう。
実際、英辞郎には、
head scratcher=難問、難題
と出ていました。
英英辞典では、Merriam-Webster Dictionary: head-scratcher で以下のように説明されています。
head-scratcher [noun] : something hard to understand or explain
例) why he chose to sink all of his money into a failing business is a real head-scratcher
つまり、「理解したり説明したりするのが難しい何か」。
例文は、「彼がなぜ、自分の金の全て(全財産)を、業績が悪化しているビジネスにつぎ込む[投資する]ことを選んだのかは、本当に難問だ(説明も理解もできない)」。
モニカはとりあえず、「レイチェルがジョーイに相談しなければいけないような仕事上の大問題がある」ということだけを、大袈裟に言ってみせているわけですね。
具体的な内容は、レイチェルが考えるとして、その会話を始めるきっかけだけをモニカが与えた感じになります。
その後、モニカは「夕食を作るのに、ここを出なくちゃ」みたいに言って、チャンドラーと共に部屋を出て行きます。
ここはチャンドラーとモニカの家なので、夕食を作るならなおさら、自宅のキッチンにいないといけないわけですが、何か理由をつけて、ジョーイとレイチェルの二人きりにしてあげないといけないために、トンチンカンな理由を言って部屋を出て行った感じですね。
「仕事で大問題を抱えてるの?」と、ジョーイは予定通りの反応をしてくれていますが、レイチェルは何を相談したらいいか決めていなかったらしく、「たいしたことないの」と言っています。
それを聞いたジョーイが、「大問題じゃないなら、俺は行くね」みたいに出て行こうとするので、レイチェルは nothing ではなく、something 「大したこと、重要なこと」だと言って、とりあえず、it's my boss. 「(その問題っていうのは)ボスなの。ボスのことなの」と言っています。
その後、and my baby 「そして、私の赤ちゃん(のこと)」と言ってから、「私の上司(ボス)が私の赤ちゃんを買いたがってるの、買いたいって言ってるの!」と言っています。
非現実的で突拍子もない話ですが、どんな問題を相談するか考えておらず、またジョーイと話すチャンスをつかめずに終わってしまいそうと焦ったレイチェルの様子がよく出ていますね。
思いがけない話に、ジョーイも oh, my God! と言い、口から出まかせに適当なことを言ってしまったレイチェルも、「そうでしょ! 私はあなたに言ったでしょ、本当に大きな問題だって!」と言っています。
how did this even happen? は、「この件・このことは一体どんな風にして起こったの?」というところ。
why で理由を問うのではなく、how 「どのようにしてそれは起こったか?」という顛末(てんまつ)を聞いていることになるので、聞かれたレイチェルは、because 「なぜなら〜だから」というような「理由」を答えるのではなく、そういうことになった事情を順序立てて説明することになるのですね。
I'll tell ya! は、「これから言うわね」的なニュアンスで、普通は何か言いたいことがある場合の前振りの言葉として使うものなので、I'll tell ya の後には、すぐに言いたい内容が続くのが自然です。
ですが、今回の場合は、レイチェルが「とにかく何かジョーイに相談できるような問題を考えなきゃ」ととっさに口から出た話だったので、「どうしてこんなことになったわけ?」と聞かれても、その事情まで詳しく練っていなかったので、言葉に詰まっていることになります。
しばらく沈黙した後、レイチェルなりに何とか話を考えて、「上司夫妻には子供ができなくて、パーティーで酔っぱらった上司に、”君の赤ちゃんを買いたい”って言われたの」と説明しています。
その後のジョーイのセリフ、When you said it was a problem about your boss and the baby I figured it was something about maternity leave. について。
まず、maternity leave は「産休、出産休暇」のことですね。
このジョーイのセリフを直訳すると、「君の上司と(君の)赤ちゃんについての問題だと君が言った時、産休に関する何かだと思ったのに」みたいになります。
I figured 「俺は…だと思った」という「過去形」は、聞いた瞬間はそうだと思ったんだけど、実際には違ってたんだね、本当はそんな問題だったんだね、というニュアンスになります。
それを聞いたレイチェルは、あぁ、そうねぇ〜みたいに言葉を伸ばした感じで、自分でも何度か軽くうなずいています。
そしてかなり長い間沈黙した後、that would've been a much simpler problem. と言っていますね。
would have been は「(もしそうなら)…だっただろう」という感覚。
ジョーイが「産休の話かと思ってた」と言ったのを受けて、「もし今回の問題が、赤ちゃんを買いたい、ではなく、産休の話だったなら、問題はもっとずっとシンプルだっただろうに」ということになります。
つまりレイチェルは、仕事上の大問題を何か思いつこうとする時に、「上司と赤ちゃん」にまつわる問題として「上司が私の赤ちゃんを買いたがってる」という問題をでっち上げたわけですが、「上司と赤ちゃん」の問題であれば、産休の話をすればそっちの方がもっと普通でずっとシンプルだったのに、、ということに、ジョーイの発言で気づいたということですね。
「あぁ、そうか、そう言えば良かったんだ、そうよね、うんうん」みたいに、かすかにうなずいているレイチェルも面白いですね。
ジョーイは普段は「人より何かに気付くのが遅い」という描写が多いキャラですが、そんなジョーイに、「産休の問題かと思ってたら、そんな思いがけない問題だったんだね」と言われてしまった面白さ、今回はジョーイの方がまともなことを言っている面白さ、ということですね。
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2014年07月30日
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