2014年08月27日

メントスとメンター フレンズ8-19その2

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ジョーイは、コーヒーハウスのセントラルパークで、女性のインタビュアーから質問を受けています。
フレンズたちは、他人のふりをしながらも、すぐそばのソファに座って、ジョーイが失言しないかを心配しながら、二人の話を耳をそばだてて聞いています。
インタビュアー(The Interviewer): Okay, how about when you're not working. What do you do in your spare time? (それじゃあ、あなたが仕事をしていない時はどう? 空いた時間には何をするの?)
(ここに、過去エピソードの回想シーンが入りますが、ブログ解説では省略します)
ジョーイ: In my spare time, I uh, read to the blind. And I'm also a mento for kids. (The gang shake their heads.) ((仕事のない)空いた時間には、俺は目の見えない人に本を読んでる。それから子供たちのメントー[メントス]でもあるよ。[フレンズたちは首を振る(と、ト書きには書いてありますが、実際には「え?」という顔をする程度)])
インタビュアー: A mento? (メントー?)
ジョーイ: Y'know, a mento. A role model. (Chandler bites his fist to keep from talking.) (ほら、メントー。ロールモデル(手本・模範になる人)のことだよ。[チャンドラーはしゃべりたいのを我慢するのにこぶしを噛む])
インタビュアー: A mento? (メントーなの?)
ジョーイ: Right. (そうだ。)

spare time は「空き時間、余暇」ですね。
「仕事をしていない余暇(空き時間)には、あなたは何をするの?」ということで、「暇な時とかは、普段は何をしているのかしら?」と尋ねている感覚になります。

ジョーイは、I read to the blind. と答えています。
the blind は「盲目の人、目が見えない・目の不自由な人」ということですね。
the+形容詞で、「(形容詞の状態)の人」を指すことになります。
read to someone は「人に(何かを)読んで聞かせる」という意味で、「人に何かを読んで聞かせる」という場合には、read someone something という、SVOO の形を取ることもできます。

LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
read : READ AND SPEAK
to say the written words in a book, newspaper etc. so that people can hear them
read somebody something
例1) Daddy, will you read me a story?
read (something) to somebody
例2) Mom always read to us at bedtime.

つまり、「本や新聞などに書かれた文字を口に出す。そうすることで人がそれを聞くことができるように」。
例文1は、「パパ、私にお話を読んで(聞かせて)くれる?」。例文2は、「ママはいつも寝る前に、私たちに(本を)読んで聞かせてくれた」。
(ちなみに、例文2の read は過去形(発音は [red](レッド))。「いつも読んで聞かせてくれる」という現在形なら、reads のように3単現の -s がつくことになります。)

文字が読めない目の不自由な人のために、本を読み聞かせるボランティアをしている、とジョーイは言いたいのですね。
雑誌の読者に良い印象を持ってもらうために、そういう活動をしていると言っていることになります。

次の、And I'm also a mento for kids. について。
ジョーイがそう言った後、フレンズたちは「え?」という感じで固まり、インタビュアーも、「あなた、今、a mento って言った?」のように聞き返していますね。
その後、ジョーイが、"Y'know, a mento. A role model." 「ほら、メントーだよ。ロール・モデル(のこと)」と答えたことで、ジョーイが言葉を間違って使っていたことがわかる仕組みです。

ジョーイは、a mento (発音は「メントウ、メントゥ」という感じで、語尾の o は二重母音の「オウ、オゥ」[ou])と言っていますが、それだと、mentos 「メントス」というお菓子の「単数形」を指すことになってしまいます。
メントスは日本でも売っているのでご存知の方も多いでしょう。
Wikipedia 日本語版: メントス

「メントゥ?(メントスの単数形?)」みたいに聞き返されたジョーイは、その単語が間違っていることに気づかず、「a mento だよ。A role model のことだよ」と別の言葉で言い換えています。
a role model 「ロールモデル。お手本・模範となる人」という意味で、a mento と間違えそうな単語と言えば、それは、a mentor になります。
意味は「良き指導者・助言者」。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
mentor : an experienced person who advises, encourages, and helps a less experienced person
つまり、「より経験の少ない人にアドバイスしたり、励ましたり、助けたりする、経験豊かな人」。

日本語でも「メンター」のようなカタカナの言葉で使われることがありますが、英語の mentor の発音は、「メントァ または メンター」のようになります。
Merriam-Webster Dictionary : mentor では、その2種類の発音記号が表示されています。

ジョーイはどこかで、a role model と同じ意味である、a mentor という言葉を聞いたことがあって、知的な感じでそれをインタビューの答えに使おうとして、間違ってお菓子の名前を言ってしまった、ということになります。

そのジョーイの発言を聞いた後の、チャンドラーのト書きが面白いですね。
keep from doing は「〜することを避ける、〜しないようにする」という感覚。
「お前が言おうとしているのは、a mentor だろ!」と言ってしまいたくなるのを我慢して、こぶしをぐぐっと噛んでいることになります。

ジョーイが言い間違いに気づかないので、インタビュアーはもう一度、「あなたが言いたいのは、本当に a mento なの?」と聞き返していますが、ジョーイはその質問を不思議に思うことなく、「そうだ」と答えます。

インタビュアーが "A mento?" と聞き返すセリフは、DVDの日本語訳では「メンターじゃなくて?」と訳されていました。
これは、訳者の方が、日本人にわかりやすいように、「情報を補足する形で訳した」ことになりますね。
今回の英語のやりとりでは、本来ジョーイが使うべき言葉だった mentor という正しい単語は、実は一度も登場しません。
"You mean a mento? Not a mentor?" 「あなたが言っているのは、メントー[メントス]? メンター(ロールモデル)じゃなくて?」のように、「正しい単語」を出して、丁寧に聞き返してしまうと、さすがのジョーイも気づいてしまう、、というか、「ジョーイはずっと、メンターをメントーだと勘違いしている」ということで笑いを取るのが難しくなってしまいます。
ずっとジョーイに勘違いさせたままにするためにも mentor という正しい単語は使えないし、また、英語圏の人は、ジョーイが、a role model だと言い換えたことで、ジョーイは本当はメンターと言いたかったことがわかるので、わざわざ説明チックに、「それって、mentor の間違いよね」とセリフで言わせる必要もないわけです。

ですが! その「あえて mentor という言葉を使わない」という英語のセリフをそのまま日本語に訳すと、role model の意味を持つ、mentor という単語を知っている人以外は、「ジョーイはメントスを何と勘違いしてるの?」となってしまいますよね。
だから、英語では「メントー?(メントス?)」みたいにおうむ返しに聞き返したセリフを、「メンターじゃなくて?」と「正しい言葉はこっちよね?」と聞き返した風に訳さないと、日本人には説明不足になってしまうわけです。
英語では一切、mentor という単語を出していないという「面白さ」は、やはり「英語で見る」ことでしか気づけないということで、そこが「英語のコメディーを英語で理解する楽しさ、面白さ」ということにもなるでしょう。

また、今回のように「よく似た音の英単語を使ったジョーク」は、日本語でカタカナ表記にするのも難しい部分です。
英語のセリフでは、a mento と a mentor とを間違っていることになっていますが、DVDの日本語訳ではそれぞれ、「メントス」「メンター」と訳されていました。
日本人は「メントス」という複数形なら、あのお菓子の名前だとわかるけれど、ジョーイの言った通りの単数形で「メントゥ(メントー)」とカタカナにしてしまうと、それが「メントス」のことだとわかりませんよね。
ただ、実際の英語のセリフでは、「メントス」の単数形である「ア・メントゥ」と言っているから、それとよく似た a mentor 「ア・メントァ」と間違っているのが瞬時にわかって面白いわけで、日本語訳の「メントス」と「メンター」ほどには、実際の英語の発音は違わない、というのがポイントでもあるわけです。
こういう英語のダジャレ的な部分は、やはり原語である英語を確認しないことには、脚本家が意図した本当の面白さはわからないのだな、ということがよくわかります。
「メントス」と複数形にしてしまうと「よく似た発音」であることがわかりにくくなる、でも「メントゥ」としてしまうと「メントス」というお菓子だとわからなくなる、、というところが、「英語のセリフの面白さを、100%、日本語訳に反映することはできない」という葛藤であるとも言えそうですね。


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posted by Rach at 14:51| Comment(4) | フレンズ シーズン8 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。いつも興味深く読ませていただいてます。

>ジョーイは、a mento (発音は「メントウ、メントゥ」という感じで、語尾の o は二重母音の
>「オウ、オゥ」[ou])と言っていますが、それだと、mentos 「メントス」というお菓子の
>「単数形」を指すことになってしまいます。


なるほど・・・
ジョーイとインタビュアーとのやり取り、Rachさんの解説がなければ完全に「???」で
スルーしてしまうところでした。

@お菓子の「メントス」を知らなかった。^^;
Amentoを辞書で引いても「ジャマイカの民族音楽」となっていてなんだか意味がわからなくなる。

二重母音は知識として知っていても、実際音読する時はそれほど意識していなかったですね。
これから少し注意したいと思います。

ところで、Rachさんはあまり音読されないと以前の記事で読んだことがあるのですが
現在もそうなのでしょうか?

私の推測では、
@國弘正雄さん級に500回くらい音読しないと音読したとは言えないと考えている。
 従って気に入った言い回しを何回か音読することはあるが、胸を張って「音読してます」と言えない。
A以前はよくしたが、最近はそれほど頻回にはしていない。
B学習当初よりあまり音読しなくてもそこそこできた。

このうちAの可能性が最も高いとにらんでいるのですが、いかがでしょう。
カテゴリー別アーカイブ「発音」の記事を拝見するに、発音練習もされた様子ですが
Rachさんの音読に対する考え方も聞かせていただけると幸いです。
Posted by aki-kiyo at 2014年08月28日 21:59
aki-kiyoさんへ
コメントありがとうございます。

私は(あまり食べた記憶がないながらもw)お菓子の「メントス」のパッケージの文字はなぜか記憶にありました^^ 今回は、mentos のような複数形ではないので、余計にわかりにくいですよね。
フレンズたちが「あれ?」という顔をしていたり、インタビュアーが「ア・メントゥ?」のように、二重母音を強調して聞き直したりしていることから、a mentor と勘違いして、a mento という言葉を使っていることがわかる仕組みにはなっていますが、a mento という単数形の単語になじみがないため、ノンネイティブには瞬時に理解するのが難しい部分でもあると言えそうです。こういうものは、日本語訳で「メントス」と「メンター」と訳してくれているのを見てから、「あぁ、そういうことか!」とわかるのでも全然オッケーだと思うのですね。それで改めて原語の英語に戻ってみると、「メントス」という複数形ではなく、その単数形が使われていたんだ、と気づいたりすることで、「英語を英語のままで笑える」感覚にまた一歩近づけた気がする、と言いますか^^

それから、「音読」について。
私が「Rach流DVD学習法」として、エピソードを「完全5段階」または「はしょる3段階」で見ている時には、「音読」をするための時間はあえて設けてはいなかったんですよね。音読と言えば、おっしゃるように國弘正雄さんが有名ですよね。私はそのように「何回も何回も音読する」ということを行なっていなかったので、「音読したとは言えないと考えている」というのは、当たっていると思います。

私は受験でリスニングがなかった時代の人間なので、学生時代は英語の音的な部分の勉強は全くと言っていいほどしていませんでした。それで、「フレンズ」DVD学習を始めると同時に、雑誌で紹介されていた発音の本を買って、同時進行のようにして学び始めたところ、「英語の音の省略、リエゾン」などが、実際のセリフで確認できることもあって、すごくしっくり来たんですよね。「音の違いを聞き取るには、自分がその違いを発音できるようになるのが一番」という意見もすごくもっともだと思ったので、発音の本は、CDを聞きながら、真面目に取り組みました。音の違いがわかるようになって、そこで安心してしまったらしく(笑)、本で一通り学んだ後は、あまり「音読」を意識しなくなった、というのが実際のところですね。

ただ、最近は、「音読」のように実際に自分で声を出すことの意義というのを強く感じるようにもなってきています。セミナーをするようになってから、当日スムーズに話ができるようにするために、口慣らしと発声練習も兼ねて、セミナーで取り上げる部分のセリフを家で声に出して読むことが増えたのですが、一つ一つの「音」だけに意識を向けるのではなく、ワンシーンのやりとりのセリフ全体を、シーンに合わせて真似することで、「ああ言えばこう言うという英会話の間(ま)の取り方」のようなものが、以前にも増して体になじんできたような気がしています。

エピソードの全部を音読する、とか、1つのエピソードにつき何回音読する、とかのような「ノルマ」になってしまうのは、私は苦手なんですよね。ですが、何か気に入ったやりとりのシーンがあったりした場合に、二役を自分一人で演じるような感じで真似してみることは、「こう言われたらこう返す」という英語の瞬発力を養うのにとても有効だと思います。
その場合には、「セリフの意味やニュアンスがよくわからない」ものを何度音読しても、あまり効果はないように思います。セリフの意図や話の流れがわかった上でなら、読めば読むほどその英語がしっくり来て、馴染んでくるという効果は大いにあると思います。
音読を行なっている時間の長さや回数にあまりこだわることなく、「好きなシーンを一人で真似てみる」というゲームにトライするような気持ちで音読をする、というのが、今の私がやっていることだ、ということですね(^^)
Posted by Rach at 2014年08月29日 14:54
こんばんは。

音読について実に詳しく書いてくださってありがとうございます。
すっきりしました。

「ノルマ」になってしまうのは苦手とおっしゃるところ、まさにそのとおりだなぁと
痛感するところです。

私は一時期音読回数をノルマにしていました。口に馴染ますという部分ではそれなりに
効果はあったと思うのですが、「回数さえ消化したら自動的に力が付く」と勘違いして
しまって・・・結果「意味やニュアンスを意識しない上滑りの音読」に陥って・・・

学習期間がそれなりなのに結果が伴わないのは音読に限らず、集中力が欠如して上滑りの
時間が多すぎたのかもしれません。

>音読を行なっている時間の長さや回数にあまりこだわることなく、
>「好きなシーンを一人で真似てみる」というゲームにトライするような気持ちで音読をする、
>というのが、今の私がやっていることだ、ということですね(^^)

なるほど。真似してみます。

You're a mentor for me.

では。
Posted by aki-kiyo at 2014年08月29日 22:07
aki-kiyoさんへ
ご丁寧なお返事ありがとうございます。

「何回」と決めると(特に私の場合は)絶対に「ノルマ化」してしまうんですよね。回数という数字ばかりをこなすことに気が向いてしまって、仮に10回何かを繰り返したとしても、結果としては、5回で終わっていたのと何も変わらなかったんじゃないか、のように、途中で、頭がほとんど白紙の状態で「作業をこなす」だけになってしまっている自分が見えるのです。

例えば、腹筋を繰り返すと筋肉が鍛えられるように、「口に馴染ませる」「発音のための筋肉を鍛える」という効果は間違いなくあるとは思っています。ただ、「わからないものは何回聞いてもわからない」が私の口癖の一つで、「音」を繰り返すだけで意味がわかるようにはならない、「意味」を理解した上での「音の反復」なら意味がある、と思うわけですね。

And last but not least, thank you for saying, "You're a mentor for me." So glad and honored. :)
Posted by Rach at 2014年09月01日 12:53
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