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レイチェルが出産のために来ている病院で、フレンズたちも一緒に出産を待っています。
[Scene: Outside the Nursery, Chandler is looking at the babies as Monica walks up.]
育児室の外。チャンドラーが赤ちゃんたちを見ていると、モニカが歩いて近づいてくる。
モニカ: Oh, good God! If you want a baby so bad, just go steal it! (まぁ、なんてこと! あなたが赤ちゃんをそんなに欲しいなら、ただ行って盗んできなさいよ!)
(The nurse attending to the babies hears this, turns and stares at Chandler. Chandler moves Monica to the side and away from the nurse.)
赤ちゃんの世話をしている看護師がこれを聞き、振り向いてチャンドラーをじっと見る。チャンドラーはモニカを脇に移動させ、看護師から離れる。
モニカ: What is going on with you? Since when are you so crazy about babies? (あなた、どうしたの? いつからそんなに赤ちゃんに夢中なの?)
チャンドラー: I'm not crazy about babies. I'm crazy about us. (赤ちゃんに夢中なんじゃない。俺は俺たち二人に夢中なんだよ。)
モニカ: What? (まぁ、なあに?)
チャンドラー: Look, we've always talked about having babies someday. I'm not saying it has to be right now, but I'm starting to think that we can handle it. We're good. We're really good. (ねぇ、いつか子供を持とうって、俺たちずっと話してきたよね。今じゃないといけないって言ってるわけじゃないけど、でも、そうすることができるようになったって思い始めてるんだ。俺たちは最高だ。俺たちってほんと最高だろ。)
モニカ: We are pretty good. (私たちはかなり最高よ。)
チャンドラー: But nothing has to happen until you're ready. (でも君の心の準備ができるまでは、何も起こらなくていい。)
モニカ: Well, maybe I'm ready now. I mean, it's a little scary, but maybe it's right. (そうね、多分、私は今、心の準備ができてるわ。ほら、ちょっと怖いけど、でも、多分、それって正しいわ。)
チャンドラー: What?! It's not right! We're not ready to have a kid now!! (何だって? そんなの正しくないよ! 俺たちは今、子供を持つ準備なんかできてないよ!!)
モニカ: What?!! (何ですって?)
チャンドラー: I'm kidding. This is going to be fun. (冗談だよ。こういうのは楽しくなるな[これからも楽しくなりそうだな]。)
モニカ: So we're gonna try? I mean, we're trying? (それじゃあ、私たち、トライすることになるの? ほら、私たちはトライするの?)
チャンドラー: We're trying to get pregnant. (They start kissing, but Chandler stops it.) Y'know I'm not really comfortable doing this in front of the babies. So when do you want to start trying? (俺たちは妊娠しようとトライするんだ。[二人はキスし始めるが、チャンドラーがそれをやめる] ほら、赤ちゃんたちの前でこんなことをしてるのって、あんまりいい気分じゃないな。で、いつトライを始めたいと思う?)
モニカ: All right, hold on a sec. (いいわ。ちょっと待って。)
チャンドラー: Period math? (生理日の計算?)
モニカ: Yeah. (ええ。)
チャンドラー: Yeah. (そうか。)
モニカ: Well, we could start trying... now. (そうね、私たちはトライを始めることができるわ…今。)
チャンドラー: Right here? (今ここで?)
モニカ: No, not here. Maybe here. (いいえ、ここでじゃないわ。(いえ)多分、ここね。)
チャンドラー: Wait a minute, it's perfect. We got a lot of time to kill and we're in a building that's full of beds! (ちょっと待って、完璧だよ。つぶす時間はたくさんあるし、俺たちはベッドがいっぱいのビルにいるんだ!)
モニカ: And it's so clean!! (それに、すっごく清潔だわ!)
(They run off in search of a bed.)
二人はベッドを探しに、足早に立ち去る。
病院の育児室の中にはたくさんの赤ちゃんが並んでいます。
チャンドラーがそれを見つめているのを見て、モニカは、「赤ちゃんをじーっと見つめるほど、そんなに赤ちゃんが欲しいなら、盗んじゃいなさいよ!」と冗談っぽく言っていますね。
ほんの冗談だったのですが、その声が聞こえた看護師は、チャンドラーを不審者でもあるかのような目でじっと見ることになります。
勘違いされたら困るとばかりに、看護師から離れたチャンドラー。
モニカにとっては、特定の異性とのコミットメント(深い付き合い)が苦手で、ましてや赤ちゃんも苦手だったはずのチャンドラーが赤ちゃんを見つめていたのがよほど不思議だったようで、ここでもまた、「あなた、どうしたの? いつから赤ちゃんに夢中なの?」と言っています。
それに対してのチャンドラーの返事がちょっとしゃれていますね。
「俺は赤ちゃんに夢中なんじゃない。俺は俺たちに夢中なんだ」と言っています。
言葉としては、ちょっと漠然とした感じもありますが、既婚者であるチャンドラーが赤ちゃんを見る時には、自然と「自分たちにもいつかこういう赤ちゃんが、、」という視点で見ているでしょうから、このセリフでは、「とにかく赤ちゃんなら何でもいい、みたいなことじゃなくて、俺たち二人のことを考えてると、自然と赤ちゃんに目が行っちゃうんだよ」みたいなことを言っているのだろうと想像できる気がします。
モニカが What? と聞き直したので、チャンドラーはその後、もう少し具体的に、赤ちゃんを見ていた理由を述べることになります。
「俺たちはいつか赤ちゃんを持とう・作ろうって、いつもずっと話してた。今でなければならない、って俺は言っているわけじゃないけど、でも、俺たちにもできる[赤ちゃんを持つということに対処できる・対応できる]って思い始めてきてる」ということですね。
「俺たちは good だ。本当に good だ」というのは、カップルとして、夫婦として、俺たち二人はいい感じじゃん、最高じゃん、と言っていることになるでしょう。
モニカがそれを受けて、「私たちって、かなりいい感じよね」と同意すると、チャンドラーは、「でも、何も起こる必要はない、君が(心の)準備ができるまでは」と言います。
つまり、「俺たちはもう、赤ちゃんを持つことを考えてもいいところにきたんじゃないかって俺は思ってるけど、モニカにまだそのつもりがない、まだ心構えができてない、っていうんなら、何も今すぐ何か行動を起こさないといけない、っていうことはないんだよ」のように、妻の意志を尊重し、無理強いはしないよ、と言っていることになります。
そのように言ってくれたチャンドラーに対して、モニカは「私は準備できてるわ。ちょっと怖いけど、でも多分それが正しいのよ」と返します。
自分の気持ちを尊重してくれようとしているチャンドラーに対しての感謝の気持ちもあり、嬉しそうにそう答えるモニカですが、それに対して、「何だって? 正しくないよ! 今、俺たちは子供を持つ準備なんかできてない!」と、昔のチャンドラーのような発言が飛び出したので、モニカは驚いています。
チャンドラーが「冗談だよ」と言っていることから、チャンドラーがわざと昔の「コミットメント恐怖症のチャンドラー」に戻ったかのようなセリフを言ってみせたことがわかりますね。
This is going to be fun. について。
これがシンプルな、This is fun. なら、「これって楽しいな」ということになりますが、ここでは、This is going to be fun. となっていますので、直訳すると「これは(これから)楽しいものとなる」と言っていることになるでしょう。
この部分、DVDの日本語音声(吹替)では、
これ使えるね。冗談だ
と訳されていたのですが、そういう「これ使えるね」的なニュアンスでこのセリフを言っているような気が私にもしました。
「この先も、こういうことしたら楽しくなるだろうね」というようなことで、こんな風に、「コミットメント恐怖症のチャンドラーが復活したふり」をすることで、モニカを今度も何度か驚かすことができそう、それって楽しいだろうね、と言っているように思うわけです。
チャンドラーの発言が冗談だとわかったところで、モニカは、So we're gonna try? I mean, we're trying? と言っています。
try というのは、「子作りにトライする、子作りを頑張ってみる」ということですね。
be gonna try = be going to try と、are trying というちょっと違った形が連続して使われていいて、I mean 「それってつまり」のように「より正しいニュアンスに言い直した」感じもあるため、we're gonna try というよりも、we're trying ってことかしら?と言っているニュアンスになります。
この2つのニュアンスの違いについて。
まず、are trying という現在完了形は「(今)〜しているところである、〜している最中である」という、現在行っている最中の行為を示す意味がありますね。
ですが、今の二人が子作りにトライしている「最中」ではないことは明らかなのでw ここでは、「少し先の(決まった)予定を表す」現在進行形だと考えるのが妥当だろうと思います。
ですから、are going to do 「〜する予定である、〜することになっている」よりも、are doing という現在進行形の方が、「実現可能性が(限りなく)高い、それもすぐに行われる予定である」というニュアンスが強まる気がするわけです。
are going to try 「トライすることになるのねー」という表現には少し先をイメージするような「距離感」があって、でもこんな風に話が盛り上がった状況では、もう今すぐにでもトライを始めましょう!というような「直近」の感覚がある、「もうトライするということに動き出している」「トライするという行為に対して、すでに何かが始まっている」感じが、この現在進行形に出ている気がする、ということですね。
この部分、DVDの日本語音声では、
んー。それじゃあ、、トライしてみる? ほんとに? トライするー?
と訳されていましたが、「トライしてみる?」と「トライする?」という言葉の変化に、2つのニュアンスの違いがうまく出ているような気がしました。
繰り返しになりますが、「トライする」という行為に対する、意識上での距離感が、are gonna try と are trying にはある、ということです。
チャンドラーも、モニカの現在進行形を受ける形で、We're trying to get pregnant. 「妊娠するようにトライしよう」と言い、二人はキスをします。
ですが、そのキスをやめたチャンドラーは、「こういうことを赤ちゃんの前でするのはあんまり居心地がいいとは言えないな」のように言っていますね。
「子供を作ろう」と言った上でキスしているので、その後の行為が連想されたのでしょう、生まれたばかりの無垢な赤ちゃんたちの前で、子作りを連想しながらキスしていることが「いけないこと」だと思えたようです。
チャンドラーが「いつ、トライを始めたい?」と尋ねると、モニカは何かを考えるように「ちょっと待って」と言っています。
Period math? は、ズバリ言ってしまうと、「生理日の計算?」ということ。
period は「期間」「ピリオド」などの意味がありますが、恋愛ドラマではよくこの「生理」の意味で出てきます。
過去記事、留守電応答メッセージの話 フレンズ3-2その31 では、
モニカ: Um, listen, I did something kind of crazy tonight. Um, maybe I'm getting my period or something. (ねぇ、聞いて。私、今夜、ちょっとバカなことをしちゃったの。多分、今、生理中だからとかそんなことだと思うわ。)
というセリフもありましたね。
「生理」とはつまり「月経」(menstruation)のことですが、日本語でも英語でも、他にいろんな意味で使われる単語である、period や生理(生理現象、生理的に嫌いw など) で表現するところに共通点があるなぁ、と私はいつも思っています。
女性側も、また男性側も、ダイレクトにその単語を言うのはちょっとはばかられるという思いが、そういう「複数の意味で使われる普遍的な単語」で表現することに繋がったのだろう、と。
生理日や排卵日などの日数計算を頭の中でしていたモニカは、「私たち、トライを始めることができるわ…今」と言っています。
「今」と言うので、チャンドラーも反射的に「今ここで?」と返し、モニカもまた「いいえ、(もちろん)ここでじゃないわ」と答えるのですが、ちょっと考えた後、「(いえ、ここじゃないって今言ったけど)多分、(今)ここで、ね」と答えを変えます。
そう言ったモニカの意図がわかった様子で、チャンドラーも、「(そうだよ、ここなら)完璧だよ」と言っています。
We got a lot of time to kill の kill は「殺す」ですが、時間の話になると、「時間をつぶす」という意味。
なので、「俺たちは、つぶす(べき)時間がたくさんある」と言っていることになります。
we're in a building that's full of beds! は、「ベッドでいっぱいの・ベッドで満たされた、ビルの中に俺たちはいる!」ですね。
「そして(病院だから)すっごく清潔だわ」とモニカも言っています。
レイチェルの赤ちゃんはなかなか生まれそうにないから、待ち時間が退屈、することもない。病院だから、あちこちにたくさんベッドがある。
そして、きれい好きのモニカとしては、消毒されて清潔なシーツが敷いてあるベッドがさらに理想的だったのでしょうね^^
「今すぐここで、なんてありえない」と一笑に付すところだったのに、「ちょっと待ってよ。実はここって、最高の条件が揃ってるんじゃない?」ということに気付いたという面白さで、いそいそとこの場を立ち去る二人が微笑ましいなと思いました。
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2014年10月29日
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