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次々と別の妊婦さんに抜かされてしまったレイチェルでしたが、とうとう子宮口が10cmになり、分娩室に来ました。
レイチェルの出産を、担当医のロング先生と、ロスが見守っています。
ロス: No! Come on, let's go. One more time! One final push! Ready? 1... 2... 3! (Rachel pushes so hard her head snaps up head-butting Ross and knocking him down.) (だめだよ! ほら、行こう。もう一度だ! 最後にいきむんだよ。いいかい? 1、2、3! [レイチェルは思い切りいきんで、レイチェルの頭が勢いよく動き、ロスを頭突きして、ロスが倒れる])
ロング先生: Good! (いいわよ!)
ロス: (from the floor) Keep pushing! ([(倒れた)床から] いきみ続けて!)
レイチェル: Are you okay? (大丈夫?)
ロス: You have no idea how much this hurts. (All of the women in the room turn and glare at him.) Keep going! Keep going! (これがどんなに痛いか、君にはわからないだろうね。[その部屋にいる女性は全員、振り向いてロスをにらむ] 続けて。続けて。)
ロング先生: Here we go! (いくわよ!)
ロス: Oh! Oh! She's upside down, but she's coming! She's coming! (あぁ、この子は逆さまになってる、でも出てきてるよ、出てきてるよ!)
レイチェル: Oh God! (ああ!)
ロス: Oh! Oh, my God oh! Oh, my God, she's here. (あぁ、なんてことだ! なんてことだ! 彼女が(今)ここにいる。)
(The newest friend cries.)
最も新しいフレンドが泣く。
ロス: Oh she's... she's perfect. (彼女は…彼女は完璧だ。)
レイチェル: Oh, wow! Oh, she's so tiny. (Starts crying) Where'd she go? (あぁ、まあ! あぁ、すっごくちっちゃいわ。[泣き始める] 彼女はどこに行くの?)
ロス: Oh it's okay. They're just-they're just wrapping her up. (あぁ、大丈夫だよ。ただ彼女をくるむだけだから。)
レイチェル: Okay. Well, be careful with her, she's really tiny. (いいわ、でも彼女に気を付けてね、彼女はほんとにちっちゃいのよ。)
ロング先生: Here she is! (ほら、彼女よ。)
(Dr. Long hands her to Rachel.)
ロング先生は、赤ちゃんをレイチェルに手渡す。
レイチェル: Oh hey you. Thanks for coming out of me. (The baby cries.) I know. Oh. Yeah. Oh, she's looking at me. Hi! I know you. (あぁ、あなた。私から出てきてくれてありがとう。[赤ちゃんが泣く] わかってるわ。あぁ、彼女が私を見てる。はーい。私はあなたを知ってるわよ。)
ロング先生: Do we have a name yet? (もう名前はあるの?)
レイチェル: No, not yet. (いいえ、まだないの。)
ロング先生: That's fine. For now we'll just call her Baby Girl Green. (それでいいわ。差し当たり、彼女をグリーンちゃん[ベイビーガール・グリーン]と呼びましょう。)
レイチェル: Oh, no. Baby Girl Geller-Green. (あぁ、いいえ、ゲラー・グリーンちゃん[ベイビーガール・ゲラー・グリーン]よ。)
(Ross and Rachel look into each other's eyes and kiss.)
ロスとレイチェルはお互いの目を見つめ、キスする。
レイチェル: Hello, Baby Girl. (こんにちは、赤ちゃん。)
レイチェルの出産を励ましているロスは、push という言葉を何度も使っています。
フレンズのこれまでの出産シーンでも何度も出てきましたが、出産における「いきむ」ということですね。
日本語の「いきむ」は漢字で書くと「息む」で、広辞苑では「息を込めて腹に力をいれる」と出ています。
出産の「いきむ」という行為は「押し出す」感じがあるので、push という動詞はなるほどなぁ、と思えますね。
「最後にもう一度いきんで!」みたいに言われたレイチェルは、その勢いでそばにいたロスに頭突き(head butt)をしてしまいます。
その衝撃でロスは床に倒れるのですが、カメラからは姿が見えない状態のまま、床から Keep pushing! 「いきみ続けて!」と叫んでいるのが楽しいです。
頭をぶつけてしまったレイチェルはロスに「大丈夫?」と尋ねます。
ロスは、You have no idea how much this hurts. と答えるのですが、その答えを聞いて、まずは女医のロング先生、その後レイチェルが、「なんてこと言うの?」みたいな顔でにらんでいるのが面白いです。
ロスのセリフは、「これがどんなに痛いか君にはわからないだろう」ということで、普通の場合なら、「もう君には想像できないだろうと思うくらい、めちゃくちゃ痛い」ということになるのですが、いくら頭突きが痛かったといっても、目の前のレイチェルは今、人生で一番痛い(笑)出産中なわけで、出産中の妊婦さんを前にして、「君にこの痛さは想像できないだろうと思うよ」と言ったことが、あまりにもKY発言だったので女性陣ににらまれた、ということになります。
出産=痛い、という図式は誰の頭の中にもあるので、出産ではこのように「痛いネタ」のジョークが使われることも多いですね。
「この痛さは君にはわからないだろう」というジョークは、出産シーンのお約束ネタとも言えそうです。
ロスは出てくる赤ちゃんを見て、She's coming! 「彼女が出てきてる、出てくるよ」と言っています。
そうして、she's here. 「彼女はここにいる」は、今目の前に入る、ママのお腹から出てきた、無事生まれた、ということですね。
ト書きの、The newest friend cries. というのがちょっとホロっとしてしまうのですが、この今、生まれたばかりの赤ちゃんを「フレンズたち6人の新しい仲間」と呼んでいることになるでしょう。
その後のセリフでも、この生まれたばかりの女の子の赤ちゃんは、常に she と表現されています。
生まれる前から性別がわかっていたので、生まれる前から女性の代名詞(she, her など)で呼ばれていましたし、無事生まれた後も当然、she/her で呼ぶことになるのですね。
日本語で「彼女」と訳すと、赤ちゃんよりもっと年齢が上の女の子をイメージしてしまいそうで、この見た目性別がわからない生まれたての赤ちゃんの形容としては、日本語的には少々違和感があるのですが、「英語では、she/her と表現している」ことを明確にするために、日本語訳もあえて「彼女」で通してみました。
パパであるロスがその赤ちゃんを見て「完璧だ(perfect)」と言うのも、ママであるレイチェルが「すっごくちっちゃい(tiny)」と言うのも、親の実感がこもっていて感動的ですね。
(入院中、そういう「ちっちゃい赤ちゃん」をずっと見ていた私は、お見舞いに来てくれた姪っ子(1歳)を見た時、小学生かと思いましたw)
tiny は「とても小さい、ちっちゃな」という意味で、LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
tiny: extremely small
と出ています。「きわめて・とても小さい」ということですね。
例にも、a tiny little baby と出ていて、赤ちゃんの形容にぴったりの言葉ですが、PCにインストールしている LAAD では、象の写真とハツカネズミの写真が載っていて、
象 huge ネズミ tiny と書いてありました(←なるほど、よくわかる!)。
看護師さんがその赤ちゃんを連れて行くので、レイチェルは「彼女はどこに行くの?」と言っています。
They're just wrapping her up. の they はそこにいる病院スタッフのことですね。
wrap up の wrap は「サランラップ」などのラップで、wrap up で「包む、くるむ」。
裸の赤ちゃんをブランケットみたいなものでくるんでくれるだけだから心配しないで、とロスは言っていることになります。
それを聞いてレイチェルが、「気を付けてね、彼女はとってもちっちゃいんだから」とまた tiny を連発しているところに、母になったレイチェルの部分がよく見えていると思います。
向こうは赤ちゃんを扱うプロですから任せて安心なわけですが、ちっちゃくて、プルプル震えている赤ちゃんを見ていると「気を付けてね」と言ってしまう気持ちもわかる気がします。
くるんでもらった赤ちゃんをロング先生から手渡されて、レイチェルは Oh hey you. と呼び掛けています。
Thanks for coming out of me. の後、観客の笑い声(ラフトラック)が起こっていますね。
「私から出てきてくれてありがとう」という「めったに聞かない言葉」の珍しさと、母親しか言えないセリフであるという感動に加え、「なかなか生まれてくれず、何人もの妊婦さんに先を越されてしまった」という「長時間待たされた」感からの「やっと生まれてくれたわね、ありがとう」という発言であることも、観客の笑いに繋がったのだろうと思います。
I know you. というのもいいセリフですね。
出産後、初めてこうしてご対面したわけだけど、お腹の中にいた頃からずっとあなたを知ってるわ、お腹をポコポコ蹴っていたあなたにようやく会えて嬉しいわ、みたいな気持ちでしょう。
ロング先生は、Do we have a name yet? と言っています。
この we は、私の新刊「読むだけ なるほど! 英文法」の p.88 にも書いた(宣伝すみません)、「親身の we」ですね。
レイチェルの主治医として、一緒に出産を体験したという連帯感もありますし、主語を自分(I)も含めた we と表現することで、親身の気持ちを表していることになるでしょう。
名前はまだない、決めてない、と答えたレイチェルに、「じゃあ、差し当たり・当分は、彼女をベイビーガール・グリーンと呼びましょう」と言っています。
baby girl は「女の赤ちゃん」ということですね。
baby boy なら「男の赤ちゃん」ということで、日本語なら「グリーン坊や」というところですが、baby girl を「グリーン嬢ちゃん」というのも何だかヘンなので、とりあえずは「グリーンちゃん」にしてみました。
名前がないので、レイチェルの名字で「グリーンちゃん」と名付けたわけですが、レイチェルは即座に、「いいえ(グリーンちゃんじゃなくて)ゲラー・グリーンちゃんと呼んで下さい」と言っています。
血縁的に父親であることはもちろん、妊娠中、そして今の出産時も、ロスがこの子のためにいっぱい頑張ってくれた、応援してくれた、という思いが、実際にこの子を目にした時に、どっと溢れてきたのでしょうね。
迷わず「ゲラー・グリーンちゃんと呼んで下さい」と言ったレイチェルの想いがとても感動的だと思います。
その後、ト書きでは、ロスとレイチェルが目を見つめ合ってキスする、と書いてありますが、実際の様子をもう少し細かく描写すると、「ロスは最初、レイチェルのおでこにキスしようとするけれど、レイチェルはそうじゃない、というように顔をまっすぐロスに向けて、二人は見つめ合ってキスをする」という感じでした。
このレイチェルの態度も、「ゲラー・グリーンちゃんと呼んで下さい」というレイチェルのセリフと同じ気持ちから来たものでしょうね。
今回のシーンでは、母になったレイチェル、ロスに対する気持ちの変化などがセリフの端々に表れていて、そういうものを感じながら英語のセリフを味わっていただけたらな、と思います。
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そしてなるほど、Do we have a name yet?がありましたね。親身のweですか。ドクターも一体となった出産ですから、なるほどです。
このシーンは、セリフ全体が洒落たり癖のあるようなものはなく聞き取りやすいし、とても情感があって感激でした。
コメントではなく感想ですみません。
コメントありがとうございます。
そうです、とうとう赤ちゃん生まれましたねー(^^)
出産シーンは、ほんとリアルで臨場感たっぷりでしたね。ロス&レイチェルというカップルは、シーズン1からあれやこれやとあって(笑)、そういう二人の歴史を考えると、シーズン8のラストで「ついに二人の子供が生まれた!」ということが、本当に嬉しく感動的なことだと思えます。
今回の Do we have a name yet? はお医者さんが使う「親身の we」の典型的なパターンだと思うのですが、「患者に寄りそう感覚の we」のニュアンスは、今回のような「ドクターも一体となった出産」によく表れている気がして、そのニュアンスを掴むのに好例だなと思いました。
今回のシーンは、いつものフレンズのような「込み入ったジョーク」などがなく(チャンドラーがいないから余計にそうなっているのか?w)、実はブログで解説する箇所を選ぶ際に、「このシーンを入れようかどうしようか」と悩んだ部分でもありました。面白い表現やジョークを解説できる部分を選ぶべきかな、と思ったのですね。
でも「ロスとレイチェルの子供が生まれる!」というシーンをカットするのはあまりにも忍びなくて、こうして解説することにしたのですが、セリフをじっくり見てみると、難しい表現はなくても、言葉の端々にまさにおっしゃるような「情感」が込められているのがわかって、改めてこのシーンの良さを再認識することができました。わはは、と笑うばかりではない、こういうシーンがあるのもフレンズの魅力ですよね。
拙記事を通じて、このシーンの良さを分かち合えることが本当に嬉しいです。素敵なコメントありがとうございました(^^)