2015年04月28日

妄想的になる資格がある フレンズ9-10その5

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NYのモニカからの電話を切った後、チャンドラーは一緒にいるウェンディーに、「電話してきた妻(モニカ)が、クリスマスに俺が君と二人きりだからって、何か起こるんじゃないかと心配してるんだ」と説明します。
それを聞いたウェンディーは、否定するどころか、チャンドラーのネクタイを少し引っ張って、セクシーな顔で近づいて来たので…
チャンドラー: Whoa-ho, back off, missy! (He takes a step back, but she still keeps her grip on his tie.) (わーお、下がって、お嬢ちゃん! [チャンドラーは一歩下がるが、ウェンディーはいぜんとしてチャンドラーのネクタイを握ったままである])
ウェンディー: (laughs) Missy? ([笑って] お嬢ちゃん、ですって?)
チャンドラー: I don't know. I'm not used to girls making passes at me! ... (She lets go of his tie) Wait a minute. Am I sexy in Oklahoma? (よくわからないんだよ。女の子が俺に迫ってくるのには慣れてなくて! [ウェンディーはチャンドラーのネクタイを放す] ちょっと待って。俺ってオクラホマではセクシーなの?)
ウェンディー: You are to me. (She gets closer again, putting her arms around his waist/chest.) (私には、あなたはセクシーよ。[ウェンディーはまた近づく、腕をチャンドラーの腰・胸に回しながら])
チャンドラー: (flattered) No,... no... (realizing) NO! (He quickly gets several steps away from her.) Look, I'm, I'm married! ([褒められて嬉しそうに] だめだ、だめだよ… [(状況に改めて)気付いて] だめだ! [チャンドラーは素早く数歩彼女から離れる] ねぇ、俺は、俺は既婚者なんだよ!)
ウェンディー: So? I'm married. (Showing him the ring on her finger.) (それで? 私も既婚者よ。[チャンドラーに指のリングを見せながら])
チャンドラー: I'm *happily* married. (俺は幸せな結婚をしてるんだ。)
ウェンディー: Oh. What's *that* like? (まぁ、それってどんな感じ?)
チャンドラー: Right. So, I'm sorry, but-- (そうだね。で、悪いんだけど…)
ウェンディー: Seriously? Happily married? So that phone call before, that was... happy? (ほんとに? 幸せな結婚をしてる、って? さっきのあの電話、あれは…幸せだったかしら?)
チャンドラー: Well, look, it's not easy to spend this much time apart, you know. She's entitled to be a little paranoid. Or, in this case, right on the money! You know, she's amazing and beautiful and smart. And if she were here right now, ...she'd kick your ass. Look, you're a really nice person... ham-stealing and adultery aside. But what I have with my wife is pretty great. So nothing's ever gonna happen between us. (ねぇ、長い時間離れて暮らすのは簡単なことじゃないんだよ。妻はちょっとぐらい誇大妄想的になる資格(権利)がある(追記:「誇大妄想的」という訳語について、以下の解説に訂正と追記があります)。または、今回の場合は、ぴったり当たってる[的中してる]し! モニカは素晴らしくて美しくて頭がいいんだ。そしてもしモニカがまさに今ここにいるとしたら… 彼女は君のケツを蹴り上げるだろうね。ねぇ、君はほんとにいい人だ… ハム盗難と不貞(不義)は別にして。でも俺が妻と持っていることはほんとにすごいんだ。だから、俺と君の間には何も起こらないよ。)
ウェンディー: Okay, let me ask you something. If what you and your wife have is so great, then why are you spending Christmas with me? (じゃあ、あなたにちょっと質問させて。もしあなたと奥さんとが持っているものがそんなに素晴らしいのなら、じゃあ、どうしてあなたは(今)私と一緒にクリスマスを過ごしてるの?)
(Chandler starts to think about it...)
チャンドラーはそれについて考え始める。

back off は「後ろに下がる」。missy は「お嬢さん」。
「妻は君と俺との仲を誤解してるんだ」と言ったところ、それを笑い飛ばすどころか逆に色っぽく迫ってきたので、チャンドラーは慌てて、「離れてよ、お嬢さん」みたいに言ったわけですね。
ウェンディーが「Missy ですって」みたいに笑いながら言ったことからも、女性が男性を誘っているようなこの場の雰囲気にはそぐわない呼び掛け語だったことが想像できます。
日本語の「お嬢さん」のような、少し距離のある呼び掛け語の感覚なのでしょう。

自分でも何で思わずそんなこと言っちゃったのかわけがわからないんだよ、というように I don't know. と言った後、チャンドラーは、"I'm not used to girls making passes at me!" と言っています。
「be used to+名詞」は、「〜に慣れている」という意味ですね。
今回はその名詞に当たる部分が、girls making passes at me になります。
「girls が、俺に make passes at すること」というような動名詞ですね。
girls は動名詞 making の意味上の主語となります。
make passes at のように今回は、名詞 pass が複数形 passes になっていますが、基本形は、make a pass at という単数形で「(異性に)言い寄る、ナンパする、モーションをかける、ちょっかいを出す」という意味になります。
今回 passes と複数形になっているのは、意味上の主語が girls と複数形になっていることを受けてのものですね。
ですからこのセリフは、「女の子たちが俺にモーションをかけてくることに慣れてない」というような意味になります。

その後、ふと気づいたように、「ちょっと待って。俺ってオクラホマではセクシーなの?」と言っています。
NYでは、こんな風に女の子に迫られたりすることなかったんだけど、もしかして俺ってオクラホマではモテ男になるタイプなのかな? みたいなことですね。
チャンドラーはいつものように、冗談半分で言ったのでしょうが、ウェンディーはその発言を笑うこともなく、You are to me. と言っています。
Am I sexy in Oklahoma? を受けての、You are なので、You are sexy to me. ということですね。
私はあなたをセクシーだと思うわ、とかなりダイレクトに言ったことになり、その言葉通り、いったんは離れたのにまたチャンドラーに近づき、彼の身体に手を触れたりしています。

最初は照れたように、No,... no... と言っていたチャンドラーですが、相手の迫り方が冗談ではない様子なので、強い調子で NO! と言って、ウェンディーから、さっと距離をとります。
I'm married! は「俺は結婚してる、俺は既婚者だ」ですね。
「俺は妻のいる身で、君とこんなことはできない」と言いたいわけですが、ウェンディーは、「そう、それで?」みたいに言った後、自分の薬指の指輪を見せながら、「私も既婚者よ」と言っています。

「私だって結婚してるけど、別にこんなこと、どうってことない」みたいにウェンディーが思っているのがわかるので、チャンドラーは、I'm *happily* married. 「俺は幸せな結婚をしてるんだ。俺たちは夫婦円満なんだ」と説明しています。

ウェンディーは、「それって(その幸せな結婚って)どんな感じ?」と尋ねていますね。
それに対して、チャンドラーは明確な説明をすることなく、「俺は幸せな結婚をしてるんで、悪いんだけど、君の誘いには乗れない」というように、とにかく拒絶の方向に話を持って行こうとしていますが、それは恐らくウェンディーのそのセリフを「えぇ、あなたの思っている通り、私の結婚生活は楽しくないわ。その「幸せな結婚」っていうのはどんなものなのかしら?(私にはわからないから知りたい)」というような、多少自虐の入った言葉だと解釈したからだ、と私には思えました。
そうやって、その質問を流されそうになったので、ウェンディーは再度、その質問を繰り返し、「ほんとに(本気で)そう言ってるの? 幸せな結婚をしてるってのはほんと?」みたいに続けたのだろうと。
「さっきのあの(奥さんからの)電話、あれはハッピー(なもの)だった?」と痛いところを突かれてしまったチャンドラーですが、それでもウェンディーに正直に自分の考えを伝えようとしています。

it's not easy to spend this much time apart は、「このような多くの時間を離れて(別々に)過ごすことは簡単・容易ではない」。
She's entitled to be a little paranoid. の paranoid は「誇大妄想・被害妄想的な」ですね。

(2015.4.28 追記)
上のセリフの日本語訳で、paranoid を「誇大妄想的」と訳したのですが、「誇大妄想」という言葉の意味について、下のコメント欄でご意見をいただきました。
「誇大妄想」は「自己の状態・能力・地位を誇大に想像・空想する」というような意味であり、今回の paranoid は「疑心暗鬼」の方がふさわしいようです。
下のコメント欄に訂正と追加説明がありますので、詳しくはそちらをご覧下さい。
(追記はここまで)

LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
paranoid : believing that you cannot trust other people, that other people want to harm you, or that you are always in danger.
つまり、「他人を信じることができない、他人が自分を傷つけようとしている、自分は常に危険な状態にある、と信じている(状態)」。

entitle の基本語義は「タイトルをつける」ということで「表題をつける」という意味ですが、「(人に)〜の資格・権利を与える」という意味にもなります。
ですから、be entitled to (be) は、「〜である資格・権利がある」ということですね。

ですからこのセリフを直訳すると、「妻モニカは、paranoid になる権利がある」、つまり、「モニカはそんな妄想を抱いても構わない立場にいるんだよ。そんな妄想を抱いても構わない、許されるんだ」と言っていることになります。
長い時間離れて暮らしている夫婦なんだから、自分のいないところで相手が何をしているか、とあれこれ心配するのも無理はない、ということです。
相手が自分に対して paranoid な言動をすることは、チャンドラーにとっては困ったことではあるのですが、そういうことをしてもしょうがない、と理解してあげる度量の広さみたいなものが感じられるセリフだなぁ、と思いました。
今回の She's entitled to be a little paranoid. というセリフを聞いて、何となく同じニュアンスを感じる別エピソードのセリフを思い出しました。
それが、過去記事、私が呼ぶのに常に備えていて欲しい フレンズ8-21その6 の以下のセリフです。
レイチェル: Really? But I'm being so unreasonable. (ほんとに? でも私はすっごく理不尽になってるのに。)
ロス: True, but you're allowed to be unreasonable. You're having our baby. (そうだね。でも、君は理不尽でいてもいいんだよ。君は僕たちの赤ちゃんを産むんだから。)

フレンズ8-21 の You're allowed to be unreasonable. と、今回(9-10)の She's entitled to be a little paranoid. の2つの文が、「使われている単語は異なるけれども、言っている内容に共通のニュアンスを感じる」と私は思ったわけです。
unreasonable と paranoid というネガティブな形容詞で形容される状態のそれぞれの女性に対して、男性側が、be allowed to 「そうであることが許される」、be entitled to 「そうである資格がある」と表現して、そういう状態になっていることを許し受け入れているというところに、同じようなイメージを感じるわけですね。
unreasonable または paranoid になっている状態の女性側も、相手の男性がこんな風に「理不尽でもいいんだよ」「妄想してもいいんだよ」と「受け入れてくれている、受け止めてくれている」と知ると、ずいぶん気持ちが楽になるだろうなぁ、と思ったりもしますので^^ なかなか良い表現だなぁ、と感じました。

チャンドラーは、She's entitled to be a little paranoid. と言った後、Or, in this case, right on the money! と続けていますね。
right on the money は「まさにその通りで、ぴったりで、的中して」という意味。
LAAD では、
be (right) on the money : used when something is perfect or exactly right for the situation.
つまり、「何かが完璧である、またはその状況にまさにぴったりである時に使われる」。

ですから、Or, in this case... のセリフは、「もしくは今回の場合・ケースでは、まさにその通り! 的中してる!」という意味になります。
夫が女性と二人きりだということで、妻がいろいろ妄想を巡らせて心配してしまうのはしょうがないし、今回の(タルサでの君と俺の)場合においては、実際にウェンディーが俺にモーションかけてきた、という点で、それが「ただの妄想」ではなく、「モニカの心配が的中」してるわけだしね、と言っているわけですね。

実際にこんな事態になってしまっているのを考えても、モニカが心配し不安になるのは無理もないから、あんな電話になってしまったけど、そのことでモニカを責めるつもりはない、と言っていることになります。

「モニカは素晴らしくて美しくて頭がいいんだ」と自分の妻を褒めた後、「もし今、彼女がここにいたら、君のケツを蹴り上げているだろうね」と言っています。
実際には遠く離れたNYにいるので、right now に here にいることは不可能であることから、if she were と「仮定法過去」が使われているのもポイントですね。
amazing, beautiful, smart という素晴らしい形容をした後で、そのイメージとは真逆の「乱暴でお下品」な感じの「夫にモーションかけた女のお尻を蹴り上げる」という言葉で、「妻の怒り」を表現しているという、そのギャップの面白さになるでしょう。

you're a really nice person... ham-stealing and adultery aside. について。
aside は「わきへ」ということから、「別にして」という意味で使われます。
aside from だと「〜は別にして、〜はさておき」。
今回のような、ham-stealing and adultery aside は、以下の研究社の語義説明がわかりやすいと思います。

aside 【副】 [(動)名詞の後に置いて](…は)別として、さておいて
Joking aside… 冗談はさておき…


Joking aside はよく使われる表現ですが、それは文法的に言うと、「動名詞+aside」の形になるわけですね。
-ing のような動名詞以外の一般の名詞でも使える、ということで、今回のセリフは、ham-stealing (動名詞「ハムを盗むこと」) and adultery (名詞「不義、不貞」)という「動名詞と名詞の両方」が使われていることになります。

aside というのは、日本語で言うと「(それは)こっちに置いておいて」みたいな感覚ですが、チャンドラーも、手で「こっちに置いとく」ようなしぐさをしながらその aside のセリフを言っているのが、日本人にもわかりやすい感覚だなと思いました。

what I have with my wife is pretty great. を直訳すると、「私が妻と一緒に持っているものはとても素晴らしい・素敵である」というところでしょうか。
日本語に直訳すると、なんとも抽象的な表現になってしまいますが、要は「二人で素晴らしい毎日を送っている、素晴らしい人生を過ごしている」というようなことを言いたいのでしょう。
そして、「だから、俺と君の間には、何も起こらない」と説明します。

妻との絆が固いことを理解したらしいウェンディーですが、「ちょっと質問させて」と言います。
質問は、「もしあなたが言ったように、あなたとあなたの奥さんが持っているものがそんなに素晴らしいなら、どうしてあなたは(今)私と一緒にクリスマスを過ごしてるの?」。
そう言われたチャンドラーは、そのことについて思いを巡らす様子で、過去のフレンズの回想シーンへと場面が移る、、、という流れになっているわけですね。


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posted by Rach at 16:12| Comment(4) | フレンズ シーズン9 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつも詳しい解説ありがとうございます。一つだけ,付け加えさせてください。paranoidは「疑心暗鬼」といった訳が当てられることもあります。もう一つの「誇大妄想」は,ご存知のようにmegalomaniaで,こちらは「自分は重要な存在であり,他の人は自分に従って当然といった妄想を抱いた」精神状態を意味します。
Posted by Lingo-Field at 2015年04月28日 16:40
Lingo-Fieldさんへ
コメント、そして貴重なご指摘ありがとうございます。
私は paranoid を「誇大妄想的な」と訳してしまいましたが、おっしゃる通り、「誇大妄想」は「自分は重要な存在であり、、」という意味で、その場合の英単語は megalomania でしたね。

私も改めて手持ちの辞書で「誇大妄想」の意味を調べてみました。
広辞苑では、
「自己の現在の状態を誇大して想像し、それを事実のように信じこむこと」
三省堂 新明解国語辞典では、
「自己の能力・地位などを誇大に空想する精神病」
と出ています。
いずれも「自己の状態・能力・地位を誇大に想像・空想する」ということで、今回のセリフのニュアンスとは異なりますね。

今回のセリフの paranoid は、コメントで例に挙げて下さった「疑心暗鬼」のニュアンスに確かに近いと私も思いました。私自身、前回の記事「フレンズ9-10その4」で「疑心暗鬼」という言葉を解説中に使っていたにもかかわらず、英和辞典の訳語から選ぼうとして、間違った方向に行ってしまったようです。

上の記事内の「誇大妄想」の部分には、追記と訂正をさせていただきました。記事タイトルにも「誇大妄想」という言葉を使っていたのですが、それについては「誇大」の部分を削除させていただきました。

貴重なご指摘に感謝いたします。ありがとうございました!
Posted by Rach at 2015年04月28日 18:57
心の広く,常に向学心で溢れている南谷さんの対応に,いたく感銘を受けております。と言うのも,老婆心(私自身はオッサンですが)から提言をしても,無視されたり,逆切れされたりすることもあるからです。まだまだお若い南谷さんの今後ますますのご活躍を楽しみにしております。
Posted by Lingo-Field at 2015年04月30日 22:40
Lingo-Fieldさんへ
お返事ありがとうございます。
私の対応について、そのようにおっしゃっていただけたこと、とても光栄で嬉しく思っております。コメント欄で意見交換ができる双方向性がブログの一番の長所だと思っていて、これまでいろんな方から頂戴したさまざまなご指摘や情報が、今の私を育ててくれたと感じています。
今回も、貴重なご指摘とご意見をいただけたことで、こうして無事に軌道修正することができました。本当にありがとうございました。

「まだまだお若い」と言われることはめっきり減ってしまったのですが(笑)、英語学習者としての初心を忘れずに、若い方々のように貪欲に柔軟に、これからも英語を学んで行ければいいなと思っています。

ご丁寧で温かいコメント、ありがとうございました!
Posted by Rach at 2015年05月02日 09:25
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