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[Scene: Central Perk, Ross enters]
セントラルパーク。ロスが入ってくる。
ロス: Hey, you guys won't believe what I have to do for work today. (ねぇ、今日僕が仕事ですること[内容]を、君らは信じられないと思うよ。)
チャンドラー: Yes, but, Ross, you chose a career of talking about dinosaurs. (そうだな。でもな、ロス、お前が、恐竜のことを話すという職業を選んだんだぞ。)
ロス: (covering with his hand Chandler's face, like pretending he's not there) (to Monica) There're these two professors who are joining my department and I have to meet them here and show them around campus. ([ロスは自分の手でチャンドラーの顔を覆う、まるでチャンドラーがそこにいないようなふりをして] [モニカに] 僕の学部に入ってくる二人の教授がいるんだけど、ここで彼らと会って、彼らにキャンパスを案内しないといけないんだ。)
モニカ: What's so bad about that? (それの何がそんなにダメなの?)
ロス: I just know they're gonna be a couple of old windbags wearing tweed jackets with suede elbow patches. (僕には(ただ)わかるんだよ、彼らはおしゃべりな老人の二人組で、ツイードのジャケットを着てて、スエードの肘当て(ひじあて)をしてる、ってね。)
モニカ: (fingering her elbow) Ross? ([自分のひじを指さしながら] ロス?)
ロス: (looking his elbow, where there's a patch) What? These aren't suede. ([自分のひじを見る、そこには肘当てがある] 何? これはスエードじゃないよ。)
セントラルパークに入ってきたロスは、そこにいたチャンドラーとモニカに、you guys won't believe... 以下のセリフを言っています。
直訳すると、「君らは信じられないだろう、今日、僕が仕事のためにしなければならないことを」になるでしょうか。
「今日僕は、仕事としてあることをしないといけないんだけど、その内容を聞いたら、”信じられない”って言うだろうと思うな」というところでしょう。
「信じられないほど〜な仕事」ということですが、ロスの浮かない表情から、それが「信じられないほどひどい仕事」であることが想像されます。
その後のチャンドラーのセリフが、実にチャンドラーらしくて面白いですね。
チャンドラーのセリフを直訳すると、「そうだな(お前の言いたいことはわかるよ)、でもな、ロス、お前が、恐竜について話すという職業を選んだんだ」ということになるでしょう。
「今日の仕事、君らが聞いたら信じられないと思うくらい、ひどい仕事なんだよ」と言ったロスに対して、「でも、”恐竜について話す”という職業を選んだのは、お前だろ?」と返した感覚になりますね。
chose を強調して発音することで、「選んだのは(他でもない)お前自身だ」と言っているニュアンスになるでしょう。
ロスは、恐竜オタクですから、恐竜にまつわることであれば、「今日の仕事は最悪」だなんて言うはずがないのに、チャンドラーはそのロスをセリフを聞いて、「でも、それを職業として選んだのは自分だろ?」と表現することで、「あぁ、確かに、”恐竜について話す”っていうお前の仕事は最悪だよな」と言ったことになるわけです。
ロス「今日の仕事は最悪なんだ」
チャンドラー「あぁ、確かにお前がいつもやってる恐竜の仕事は最悪だよな」
と返したことになるので、ト書きにあるように、ロスはチャンドラーの目を手で隠し、俺を見るな、お前はいないものとして話を続けるよ、というように、今度はモニカに向けて話を続けます。
There're these two professors who are joining my department は、「僕の学部に加わる[加入する・入る]予定の二人の教授がいる」ということですね。
these two professors の these ですが、この部分を日本語で「これらの」と訳してしまうと、違和感が出てしまいます。
この these は this の複数形で、その this は「これ」というよりは、不定冠詞の a のニュアンスになります。
日本語の「この」「これらの」のように、自分のすぐそばにあるものを指し示す指示形容詞ではなくて、物語風に何かを語る時に、話者が自分の頭の中でイメージしているものに this をつけて語るという感覚ですね。
今回はそのイメージしているものが「二人の教授」なので、this の複数形の these を使っていることになります。
department は「部門」という意味で、会社や企業では「〜部」「〜課」を指し、ロスのような大学の話で言うと「学部」「学科」などを指すことになります。
show them around campus は、「その二人の教授に、キャンパスを見せて回る」ということですから、キャンパスを案内して回る、ということですね。
「学部に新しい教授が二人やってくるから、その人たちを案内しないといけない」という話が、ロスが言うほどひどい仕事にも思えないので、モニカは、「それについて何がそんなに悪いの? ひどいの?」→「その仕事の何がそんなにひどいの? 嫌なの?」と尋ねます。
ロスの I just know they're gonna be... というセリフは長いので、とにかくこういう長いものは、聞いた順番にまとまりごとにイメージしていくと、
I just know they're gonna be 「僕にはただわかるんだ[わかってるんだ]、彼らが〜であるだろうと」
a couple of old windbags 「年とったおしゃべりの二人組」
wearing tweed jackets 「ツイードのジャケットを着ていて」
with suede elbow patches 「(そのジャケットには)スエードの肘当て(ひじあて)がついている」
になるでしょう。
個々の表現を改めて見ていくと、
windbag というのは「おしゃべり(な人)」という意味で、研究社 新英和中辞典には、以下のように出ています。
windbag 《口語》 たわいのない事をしゃべりまくる人、おしゃべり
an old windbag おしゃべりな老人
研究社の例が、an old windbag となっていて、今回のセリフ (a couple of) old windbags と同じ表現になっているのが興味深いです。
「おしゃべりな老人」という意味で、この言い回しがよく使われるらしいことがわかりますね。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
windbag : (informal, disapproving) someone who talks too much and says nothing important
つまり、「(インフォーマル、非難めいた(言葉)) たくさん話し過ぎて、重要なことを何も言わない人」。
disapproving というのは「非とするような、不賛成であるような」ということなので、英英辞典の語義で disapproving と書いてあるものは、非難めいた意味で使うということを意味します。
端的に言うと、「悪口として使う言葉」ということですから、使い方には気をつけましょう。
ロングマンの語義も、「重要でもないことを、やたらとベラベラくっちゃべってる人」みたいなことですから、「話し好きのおしゃべりさん」みたいな微笑ましいニュアンスではなくて、「聞き手に嫌がられるタイプのおしゃべり」だというのもよくわかります。
a couple of は、a few of 「2、3(人)の」と同じようなニュアンスで、「2つの、2人の」という意味がありますね。
研究社 新英和中辞典にも、
a couple of apples リンゴ2個、a couple of girls 女の子二人
という例が出ています。
ただ、今回の場合は、「二人のおしゃべりの老人」のような「二人」というニュアンスよりは、「おしゃべりの老人の二人組」というニュアンスで、「組になっている二人、一対」という感覚の couple として使っているような気がしました。
別の大学から異動してくるのでしょうから、元々ペアとかではないけれど、似たような人が二人いる、「二人揃って同じタイプ」という意味の「二人組」というニュアンスで使っているのだろうと。
tweed, suede はそれぞれ「ツイード」「スエード」として日本語になっていますね。
elbow patches は「肘(ひじ)補強用パッチ」、つまり「肘当て(ひじあて)」のこと。
ロスはいやそうな感じで、「スエードの肘当てがついたツイードのジャケットを着た、おしゃべり老人二人組に決まってるよ」みたいに言うのですが、それを言っているロス本人が、まさに言った通りの「肘当て付きのツイードのジャケット」を着ているのが面白いです。
モニカは自分のひじを指さしながら、「ロス?」と言っていますが、これは「あなたのここ(ひじ)を見てみて? あなたのひじはどうかしら?」と指摘している感覚ですね。
ですがロスはしれっとした顔で、「これはスエードじゃないよ」と言っています。
肘当ての素材がスエードではないだけで、見た目はロスが言ったそのまんまですから、「スエードじゃないから、って、ポイントはそこ?」みたいにツッコミたいところですね。
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2015年09月18日
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