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俳優のジョーイは、自分が出演しているソープオペラ Days of our Lives のパーティーがアパートメントの屋上で開かれることを、フレンズたちに内緒にしていました。
フレンズたちには、その時間帯に行なわれる女性の一人芝居(a one-woman play)のチケット、そのタイトルは、Why Don't You Like Me? A Bitter Woman's Journey Through Life. (訳:私を愛したらどう?[どうして私を愛さないの?] 怒りと憎しみに満ちた一人の女の人生の旅)を渡して、パーティーのことを気づかれないようにしていたのですが、出席者からの留守電メッセージで、そのパーティーのことがルームメイトのレイチェルにバレてしまい、結局、他のフレンズたちにも知られてしまうことになります。
夜のそのパーティー会場で、ソープオペラの俳優たちがたくさんいて、大興奮のモニカ。
モニカ: (Excited) Oh, my God, can you believe we're surrounded by all this? I can barely control myself. ([興奮して] なんてこと、私たちがこの全部(の人たち)に囲まれてるなんて信じられる? ほとんど自分を制御できないわ!)
フィービー: Monica, you might want to remember that you are married. Where is Chandler anyway? (Looks around) (モニカ、あなたは結婚してるって[既婚者だって]思い出した方がいいんじゃないの? ところでチャンドラーはどこよ? [あたりを見回す])
モニカ: (Shocked) Oh, my God! Chandler! ([ショックを受けて] なんてこと! チャンドラー!)
[Scene: The theater. Chandler is sitting in the otherwise empty front row, looking around nervously]
劇場。チャンドラーは自分以外は空席の最前列に座っていて、ナーバスにあたりを見回している。
チャンドラー: Where the hell is everybody? (一体、みんなはどこだ?)
(The lights dim and Chandler tries to get away but as the bitter lady comes on stage and starts yelling he promptly changes his mind and sits down)
ライトが薄暗くなり、チャンドラーは逃げようとするが、怒りに満ちた女性がステージに上がり、叫び始めると、チャンドラーはすぐに考えを変えて、座る。
怒りに満ちた女性(Bitter lady): (yelling) Why don't you like me?! Chapter One: My first period. ([叫びながら] 私を愛したらどう?[どうして私を愛さないの?] 第1章:初めての生理(初潮)。)
モニカは興奮した様子で、can you believe we're surrounded by all this? と言っています。
直訳すると、「私たちがこの全てに囲まれているっていうことを信じられる?」ということですね。
テレビで見ているソープオペラの俳優たちがこの会場のあちこちにいて、その中に自分たちがいるということについて、驚きと喜びを語っていることになります。
barely は「かろうじて」「ほとんど〜ない」という意味で、not を使わずに否定のニュアンスが出る副詞ですね。
「自分をほとんどコントロールすることができない」→「自制心がほとんどなくなっている」という意味になります。
はしゃぎ過ぎのモニカを見て、フィービーは、you might want to remember that you are married. と言っています。
you might want to を直訳すると、「あなたは〜したいかもしれない」ということですが、この場合は、「あなたは〜したほうがいい」と相手に助言するニュアンスになります。
「自分は結婚しているということを、自分は既婚者であるということを、あなたは思い出した方がいいわよ」と忠告している感じですね。
そう言って、「で(ところで)、そのあなたの夫であるチャンドラーはどこにいるの?」と周囲を見回すフィービーですが、そう言われて初めて、モニカはチャンドラーがいないことに気づいた様子で、「なんてこと、チャンドラー!」と言っています。
すると画面が切り替わり、そのチャンドラーが映るのですが、チャンドラーは劇場の最前列に座り、あたりをキョロキョロと見回しています。
最前列はチャンドラー以外の席は空席で、ジョーイがフレンズたちを招待した女性の一人芝居に、チャンドラーだけが来てしまっている、ということがそれでわかる仕組みですね。
ジョーイはソープオペラパーティーがあることを隠すためにそのチケットをフレンズたちに配ったので、そのからくりを知った人は一人芝居ではなくパーティーに参加しているわけですが、ジョーイのパーティーの存在を知らなかったチャンドラーだけが、真面目に一人芝居に来てしまった、ということになります。
このシーンのト書きの、Chandler is sitting in the otherwise empty front row の otherwise の使い方が興味深いですね。
otherwise は「さもなければ」という意味で使われることが多いですが、研究社 新英和中辞典では、以下の意味も出ていました。
otherwise 【副】=その他の点で
He skinned his shins, but otherwise he was uninjured. 彼はすねをすりむいたが、そのほかはけがはなかった。
今回のト書きの otherwise も、「チャンドラーが一人座っているけれどもその他の点では空席となっている最前列」という感覚で、「それ(チャンドラーが座っている)以外は空席の最前列で、チャンドラーは座っている」という意味のト書きになっているということでしょう。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
otherwise [adverb] : except for what has just been mentioned
[adj./adv.]
one excellent performance in an otherwise boring show
つまり、「ちょうど言及されたばかりのことは除いて」。例文は、「それ以外は退屈な舞台の中での、一つの秀逸な演技」。
語順のままにイメージすると、「一つの秀逸な演技、それ以外は退屈な舞台の中の」になる感覚ですね。
今回のト書きも、語順の通りに訳すと、「チャンドラーは座っている、それ以外は空席の最前列で」になる、ということです。
チャンドラーはオロオロして周りを見渡していて、電気が薄暗くなったため、その暗闇に乗じて席を離れようとするのですが、すぐ目の前で野太い声の女性の一人芝居が始まってしまい、逃げるに逃げられず、また席に座り直しています。
ト書きやセリフの話者として、(the) bitter lady という名前が使われていますが、これはこの「女性の一人芝居」のタイトルである、Why Don't You Like Me? A Bitter Woman's Journey Through Life. の a bitter woman から取ったものですね。
「ビター」というと、日本人のイメージでは「苦い(にがい)」が真っ先に浮かぶでしょうか。
今回の a/the bitter woman/lady の bitter のイメージは、「厳しい、激しい、辛辣な」「怒り・憎しみ・敵意に満ちた」という感覚が近いように思います。
sweet 「甘くて優しくて甘美で親切な」の正反対のイメージでしょうね。
LAAD で bitter の意味を見ると、大きな意味としては、angry/upset, full of hate, causing unhappiness などが並んでいます。つまり、「怒っている、憎しみでいっぱい、不幸を引き起こす」というところですね。
なので、いろいろな日本語訳が可能だろうとは思うのですが、とりあえずは「怒りと憎しみに満ちた厳しい女性」みたいなニュアンスが近いのかなぁ、と思いました。
この女性の雰囲気も「世界、そしてあらゆるものに対して怒りと憎しみを感じている」みたいな風ですしねぇ。
女性の最初のセリフ、Why don't you like me?! は、この一人芝居のタイトルにもなっていますね。
Why Don't You Like Me? の Why don't you...? は「なぜ〜しないの?」ということから、「〜したらどう?」のように、提案や勧誘のフレーズとして使われますが、この場合は文字通りの直訳の、「どうして私を愛さないの?」でもいいのかなぁ、という気がします。
DVDの日本語訳では「私を愛して/私を愛してよ」のように訳されていましたが、まさにそういうことで、「どうして私を嫌うの? 私のどこがいけないの? どうして私を愛してくれないの?」みたいなニュアンスになるのでしょう。
Chapter One は、「チャプター1」「第1章」ということですね。
そして、my first period と言っていますが、この first period は「最初の生理(月経)」、すなわち「初潮」という意味になります。
period という単語は、日本語にもなっている「ピリオド、終止符」以外にも、「期間」という意味がありますね。
そして、今回のように「生理、月経」という意味もあります。
まぁ、受験英語ではそんな意味として使われることはまずないと思うのですが(笑)、フレンズではその意味で何度か出てきたことがあります。
留守電応答メッセージの話 フレンズ3-2その31
モニカ: Hi, uh, Richard. It's Monica. Um, listen, I did something kind of crazy tonight. Um, maybe I'm getting my period or something. (はい、リチャード。私、モニカよ。ねぇ、聞いて。私、今夜、ちょっとバカなことをしちゃったの。多分、今、生理中だからとかそんなことだと思うわ。)
今じゃないといけないって言ってるわけじゃないけど フレンズ8-23その2
子作りについての会話で、
チャンドラー: So when do you want to start trying? (で、いつトライを始めたいと思う?)
モニカ: All right, hold on a sec. (いいわ。ちょっと待って。)
チャンドラー: Period math? (生理日の計算?)
モニカ: Yeah. (ええ。)
このように過去のフレンズで、period にそういう意味があると知った方は、今回のこの一人芝居の Chapter One: My first period. を聞いた時にも、その意味がピンと来た、と思うのですね。
period=期間、という意味を思い浮かべてしまった方は、「第1章:私の第一期間」みたいな意味に聞こえてしまい、「自分の人生を、期間で区切って話して行くのかなぁ?」みたいな印象しか受けないことになるでしょう。
DVDの日本語訳では、きっちりと「初めての生理」と訳されていましたが、そういう日本語訳がついていない素材で first period という単語が出てきた場合には、「なんとなくわかる単語」ということで、流してしまっていた可能性もある気がします。
この女性の人生の旅、という一人芝居がいきなり、「第1章:初潮」で始まっているところが、まさにこの女性のビターさをよく表していて、「自分が女であるということを強く自覚するきっかけとなる出来事」から、女として生きていく苦しさ、辛さ、みたいな話に繋がって行くであろうことが想像できるわけですね。
チャンドラーもその言葉を聞いて、「これは、どえらい一人芝居に来てしまった、、」ということを悟ったに違いない、というところです。
その手の話は同性である女性が聞いてもけっこうキツそうな感じなのに、今チャンドラーは、友達もいない中、最前列で男一人でそれを聞いていることになるので、まさに地獄というところでしょう。
period という単語に「生理」という意味があることを知っているかどうかで、このセリフの衝撃度が全然違ってきます。
日常会話では結構普通に出てくる言葉ですが、受験英語だとなかなか知るチャンスもない、という典型的な単語だと言えそうですね。
日本語の「生理」という言葉も、本来は「生理的」「生理現象」のように、生物の身体の働きを指す言葉で、「ノーベル生理学・医学賞」「生理的食塩水」のように科学分野でも普通に使われている言葉ですね。
日本語を学んでいる外国の方が、まずはそういう学術的な意味として覚えていた場合には、日本人が日常会話の中で、「今日、生理なの」と言っているのを聞いて、月経(menstruation)の意味だとわからないかもしれない、というのと同じですね。
あまりダイレクトに表現するのもはばかられる感じの言葉(いくつになっても、言う方も聞く方もちょっぴり恥ずかしい^^)なので、抽象的で一般的に使われる、「生理」や "period" という言葉で表現するのが、国は違えど共通の心理だなぁ、と私はいつも思うわけです。
くどいようですが、まずテストには出ないでしょう。
ですが、日常会話では「普通に」そういう意味で使われる、ということを知らないと、このセリフの意味がわからない、この一言の強烈さと衝撃度がわからない、ここでネイティブと一緒に笑えない、この時のチャンドラーがどんな状態に置かれているかがわからない、、ということになるのですね。
ずっと受験英語、テスト英語の世界だけで生きて行くのなら、特に必要のない言葉ですが、日常会話としては重要な表現だと言えると思います。
こんな風にセリフの中で学べば、二度と忘れることはないでしょう。
私は、period という単語を見るたびに、この一人芝居の女性の力強い声を思い出さずにはいられません^^
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