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チャンドラーとモニカは、精子提供者としてザックが適切かどうかを知るため、健康に関する細かいことを、あれこれザックに尋ねて質問攻めにします。
それにうんざりしたザックが逃げるように帰った後、
チャンドラー: I think we found our sperm! (俺たちの精子を見つけたよね。)
モニカ: He does seem pretty perfect. (確かに彼はかなり完璧(パーフェクト)に見えるわね。)
チャンドラー: Yeah? You think so? Well? Should I ask him? (そうだろ? 君もそう思う? で? 彼に頼もうか?)
モニカ: (pause) No. ([間があって] いいえ。)
チャンドラー: Why not? Just because his great-grandmother was obese? Our kids are gonna get that from you anyway! (どうしてノーなの? ただ彼のひいおばあちゃんが肥満だったから? どのみち、君に似て、俺たちの子供はそんな風になるよ!)
モニカ: No, that's not it. It's just that when we were asking him all those questions before, I just... I just realized I don't care if he is the most perfect guy in the world. He's not you. (いいえ、そういうことじゃないの。ただ、さっき私たちが、彼にああいう質問をしていた時、私はただわかったの、彼が世界中で最も完璧な男性かどうかなんて関係ない、って。彼はあなたじゃないもの。)
チャンドラー: Yeah, he's better! (あぁ、彼は俺よりいいよ。)
モニカ: No, he's not. And if I can't get pregnant with you, then I don't want to get pregnant by... him or anyone else. (いいえ、そんなことないわ。それにもし私があなたとの子供を妊娠できないのなら、彼とか他の誰かによって妊娠したくはないの。)
チャンドラー: Really? Are you sure? (ほんとに? 本気なの?)
モニカ: Yeah, I'm sure. (えぇ、本気よ。)
ザックが帰った後、チャンドラーはモニカに、「俺たちの精子を見つけた、って思うよ」と言います。
それに対してモニカは、He does seem pretty perfect. と返します。
does は seem を強調していて、「彼はかなり完璧に見える、思える」の「そう見える、そう思える」というところを強調していることになります。
seem については、研究社 新英和中辞典に、以下のような言葉で説明されています。
seem は通例話し手の推量をこめた見方・判断を示す語
seem は通例話し手の主観的判断を表わす
He is pretty perfect. 「彼はかなり完璧ね」のように be動詞を使うのではなく、あえて seem を使うことで、「実際にそうであるかどうかではなく、とりあえず、私の目にはそう見える」のように、「見たところ、思うに、彼は完璧みたいね」と言った感覚になるわけですね。
seem を使い、さらにはそれを強調する does まで加えているので、「確かにそう見えるわね」という部分を強調していることになり、また、それを言っているモニカの言い方や表情が、嬉しそうなチャンドラーとは対照的に、どこか冷静であることも、このセリフのポイントとなるでしょう。
「確かにそう見える」という何だか含みのある言い回しを使っていますが、彼に対する評価が悪くないことは明らかなので、チャンドラーは、「君もそう思うよね? 俺が彼に(ドナーの件を)頼もうか?」と言っています。
それに対してモニカは、非常に真剣な顔をして、しばらく間を置いてから、No. としっかり否定します。
Why not? は文字通り、「どうして not なの? どうしてダメなの?」ということですね。
Just because his great-grandmother was obese? の obese は「太った、太りすぎの、肥満した」という形容詞で、名詞形は obesity 「肥満」になります。
Just because...? は、「それってただ、〜(という理由)だから?」と問い返す感覚ですね。
つまり、「彼をドナーにすることを拒否する理由は、彼のひいおばあちゃんが肥満だったから?」と言っていることになります。
ザックが精子ドナーとして最適かどうかを確認するのに、彼の家系の人の病歴などを尋ねまくっていたシーンがこの前にあったので、その流れで「そんな縁遠い人の肥満がどうのこうの」と言っている面白さになるでしょう。
Our kids are gonna get that from you anyway! を直訳すると、「俺たちの子供は、どのみち(どうせ、いずれにしても)、君から受け継いで(from you)、そうなる(get that、肥満になる)ことになる」というところですね。
「ザックが精子提供者となった場合でも、卵子を提供するのは君(モニカ)だから、ザックのひいおばあちゃんの肥満歴があるなしにかかわらず、どうせ君の遺伝子を受け継いで、その子(俺たちの子)は肥満になっちゃうんだから」→「相手が誰であっても、君の子なんだから太るに決まってる」と言っているわけで、それで観客からも、「それを言っちゃうかぁ〜?」みたいな歓声が起こっているわけですね。
「君の子供は肥満になると約束されてる」みたいに言われたモニカは、本来ならば少し怒っても良いところですが、今回はそれを聞いて何だか嬉しそうに笑っています。
「もし彼の家系の肥満の遺伝子を気にしてるんだとしたら、そんなの気にする必要ないよ」みたいなことを、チャンドラーらしいジョークで言ってみせたのが、何だか微笑ましいと感じた、というような笑顔ですね。
その後、モニカは、「そういうことじゃないの。ただこういうことなの」と言って、モニカが感じている正直な気持ちを語り始めることになるのですが、最初の No, that's not it. という表現が、とてもネイティブっぽいなと感じました。
that はその前にチャンドラーが言った内容を指しており、it は「今、話者の頭の中で、重要なポイント・焦点となっている事柄」を指します。
「あなたが言った内容は、私が言おうとしたことじゃない」「私が言いたかったのは、私が思っているのは、そういうこと(あなたが言ったようなこと)じゃない」という感覚ですね。
このような、that や it が何を指すかという感覚については、(宣伝になって申し訳ないのですが)拙著「読むだけ なるほど! 英文法」の p.69 This is it. That's it. の部分で詳しく説明しています。
次のセリフ、It's just that... は長い文章ですが、シンプルな構造にすると、It's just that when..., I (just) realized 〜 「ただ、…した時に、私は〜だと気づいた(わかった)というだけのことなの」になるでしょう。
それぞれの内容を詳しく見ていくと、when 以下は、「さっき私たちが彼(ザック)にああいう(全ての)質問をしていた時」、そして、「〜だと気づいた」内容は、「彼が世界で一番完璧な男性かどうかなんて関係ない(どうでもいい)」ということ。
その後、「彼はあなたじゃないもの」とも言っています。
ここで、「彼が世界で一番(最も)完璧な男性であるかどうかなんかどうでもいい」と表現していることで、少し前の He does seem pretty perfect. という意味ありげな言い回しをした理由がわかった気がしますね。
モニカがわざわざ、「確かにかなり完璧に見えるわね」というように、「彼が実際にパーフェクトかどうか」ではなく、「そんなふうに確かに見える、思える」という主観的な意見を述べたのは、「見たところはそんな風に見えるけれど、実際のところはわからないし、実際に彼が完璧であるかどうかは私にとっては重要ではない」という意識が、その時にすでにあったから、ということになるでしょう。
ザックをベタ褒めしているチャンドラーに話を合わせる形で「確かに完璧に見えるわね」と言っただけで、「実際に、本質的にそうであるかどうかはモニカにとっては興味のないことである」ということが、does seem という持って回った言い回しに出ていた、ということになると思うわけです。
「彼がどんなに素敵な人であっても、そんなことはどうでもいい。彼はあなたじゃないんだもの」というのは、「私にはあなたじゃなきゃだめなの」と言いたい感じが滲み出ていて、普通なら聞いている方もそのニュアンスを察しても良さそうなところですが、とにかくここでのチャンドラーは「俺の連れてきた友達が、ドナーとして最適かどうか」で頭がいっぱいらしく、「ドナーとして彼が否定されないように、されないように」と説得することに必死の様子。
「彼はあなたじゃない、あなたとは違う」みたいに言われたのを受けて、「あぁ、彼は俺と同じなんかじゃない。彼の方が(男性として)いいよ(ベターだよ)!」とまで言っています。
「俺なんかより、彼の方がずっといいじゃん!」という自虐的なことまで言って、ザックの「男性としての良さ」をアピールしているわけですね。
次のモニカの、No, he's not. は、その前のチャンドラーの発言、he's better を受けてのものなので、No, he's not better. 「いいえ、彼はあなたよりベターなんかじゃない」と言っていることになるでしょう。
「俺より彼の方がいい男だよ」みたいに言った自虐的発言を、「そんなことないわ。あなたの方が素敵よ」と、妻としてまずは訂正してあげた感じですね。
その次のモニカのセリフ、And if I can't get pregnant with you, then I don't want to get pregnant by... him or anyone else. について。
これも構造をシンプルにしてみると、if I can't... I don't want to〜 「もし…できないのなら、私は〜したくない」になりますね。
get pregnant 「妊娠する」という表現が出ていますが、前半の文では、get pregnant with で、後半の文では、get pregnant by のように、前置詞が異なっているところもポイントになると思います。
with と by の違いをあまり意識しないで、まずは大意を取ってみると、「もしあなたと妊娠できないのなら、彼(ザック)や他の誰かとも妊娠したくはない」という感じになるでしょう。
つまりは、「あなたとの間の子供を妊娠することができないのなら、他の人との間の子供を妊娠したくない」ということですね。
「あなた以外の人との子供なら要らない」と言っているわけですが、「妊娠して子供ができる」ことを get pregnant という言葉で表現する際、チャンドラーとの間の子供を妊娠する場合には、get pregnant with you と表現し、他の人の場合は、get pregnant by him/anyone else と表現しています。
with の方は、「あなたと一緒に、あなたの子供を二人で作って妊娠する」という共同作業的ニュアンス、「あなたと私の間にできた子供」という感覚が感じられますが、get pregnant by him のように by が使われた場合は、「彼によって妊娠するという状態になる、彼によって妊娠させられる」という感じが出て、by 以下の人物が、モニカが妊娠するという結果をもたらしたわけだけれど、そこには「その人との間の子供」というニュアンスは感じられない気がします。
with の場合は、二人の子供を作りたいと願う相手で、by の場合は、子供を作るのに必要な男性、という感覚の違いに思えます。
子供が欲しいということで、精子ドナーの件を考えてみたけれど、「とにかく子供を作りたい」ということであれば、by him で妊娠できるけど、「私はあなたとの間の子供が欲しかった(with you)」ので、with you が不可能であれば、by him という手段は選びたくない、と言っていることになるでしょう。
妊娠すること、子供を身ごもることがまずは先決、みたいになってしまっていたけれど、自分が望んでいたことは何だったか? に今になって気づいた、ということなのだろうと思います。
チャンドラーとの間に子供ができることと、ドナーの男性の助けを借りて子供ができることの違いを、with/by という前置詞の違いで表現した、ということですね。
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2015年10月28日
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