2015年10月30日

これで残された選択肢は〜になる フレンズ9-22その6

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チャンドラーは、精子ドナーの候補として、同僚のザックを家の夕食に招待し、モニカに彼のことを知るチャンスを与えようとします。
いろいろ質問攻めにされたザックが帰った後、「ザックに精子ドナーの件を頼もうか?」と言ったチャンドラーに、モニカははっきり「いいえ」と返事し、「もしあなたとの子供を妊娠できないのなら、彼とか他の誰かによって妊娠したくはない」と言います。
チャンドラー: (sighs with relief) Oh. Thank God, because I don't wanna do this either. You know, I was just doing it because I thought that was what you wanted to do. You know, I'm the husband. I'm supposed to... bring the sperm. ([安心したようにため息をついて] あぁ、良かった。だって俺もこんなことはしたくなかったから。ほら、俺はただ、それが君のしたいことだと思ってたから、そうしただけなんだ。ほら、俺は夫だろ。夫は精子を運んでくることになってるからさ。)
モニカ: That is so sweet. I love you. (they kiss) (それってとっても優しいわ。愛してる。[二人はキスする])
チャンドラー: So you know this leaves us with.... (それじゃあ、これで俺たちに残されたのは…)
モニカ: Adoption. (養子ね。)
チャンドラー: How do you feel about that? (それについてはどう思う?)
モニカ: I think I feel okay about it. Actually, I think I feel really good about it. (それについては問題ないと思うわ。実際、それってすごくいい感じだと思うの。)
チャンドラー: Me too. I wanna find a baby that needs a home, and I wanna raise it with you. And I wanna mess it up in our own specific way. (俺もだよ。家が必要な赤ちゃんを見つけたいし、そしてその子を君と一緒に育てたい。それから俺ら独自のやり方で、その子をいじくり回したいよ。)
モニカ: So this is it? We're really gonna adopt? (じゃあ、これで決まりね? 私たち本当に養子を迎えるのね?)
チャンドラー: (smiling) Yeah. ([微笑みながら] あぁ。)
モニカ: (excitedly) Oh, my God! We're gonna be parents! ([興奮して] なんてこと! 私たち、親になるのよ!)
チャンドラー: We are gonna be great parents. (俺たちは素晴らしい親になるよ。)
モニカ: And it could be soon. I mean, think about it. Right now, somewhere out there (they go look through the window) our baby could be being conceived. (それに、それはすぐかもしれないわ。ほら、考えてみて。たった今、世界のどこかで [窓越しに外を見る] 私たちの赤ちゃんがみごもられている最中かもしれないわよ。)
チャンドラー: Wait. If we're lucky, and we're really, really, really quiet, we may be able to hear the sound of a condom breaking! (待って。もし俺たちに運があって、本当に本当に本当に静かにしていたら、聞こえるかもしれないよ、コンドームの破れる音が。)
(they hug)
二人はハグする。

精子ドナーの候補として、ザックを推薦することにばかり気を取られていたチャンドラーでしたが、モニカがはっきり「あなたとの子供でなければ、妊娠したくない」と言ったので、チャンドラーはモニカの本心にようやく気付いた様子で、「あぁ良かった(ありがたい)、だって俺もこんなことはしたくなかったから」と言っています。
続いて、「したくなかったけれど、そうした理由」について語っていますね。
その理由は、「それが君のしたいこと(望むこと)だと俺は思っていたから(俺はただそうしただけだ)」。
その後も、「俺は夫だ。夫である俺は精子を運んでくることになっているから」と続けます。
DVDの日本語訳では、
(字幕)夫として精子を調達した/(音声)だって、夫のつとめだろ。精子を運ぶのは。
と訳されていましたが、まさにそういうニュアンスですね。
本来、妊娠のために夫は精子を提供するけれど、俺は自ら提供できないとわかったので、他から調達できるように夫として頑張った、みたいなことを、ちょっと冗談めかして言っていることになります。

「俺はこんなことしたくなかったけど、君が望んでいるんだと思ってそうした」「調達するのが夫のつとめだと思った」という発言は(冗談めかしているものの)彼の正直な気持ちだったのでしょうね。
チャンドラーが必死にザックを推薦し、モニカが前向きではない態度を見せると、「俺より彼の方がずっといいじゃん!」という自虐的発言までして、彼をプッシュし続けたのも、「子供が欲しいというモニカの望みを叶えたかった」一心なのだろうと思います。
「彼(ザック)はあなたじゃないもの」というモニカの発言の意図に気づくことなく、「俺よりザックの方がいいって!」と彼を推薦し続けた、という描写も(もちろんコメディとしての面白さを出す目的もあるでしょうが)、「チャンドラーはモニカの願いを叶えてあげたくて必死だった」部分が出ていた気がします。

「精子を運ぶのは夫のつとめ」などとジョークにしながらも、自分の気持ちや考えを伝えたチャンドラーに、モニカは「それってとっても優しいわ。愛してる」と言ってキスします。
ザックを紹介し、推薦するという一連の行動は、コメディとしてところどころで笑いのポイントになっていましたが、その根底に流れる「モニカのためにやった」という部分を、モニカがしっかり理解し、それに対して感謝の言葉を述べたということですね。

チャンドラーとモニカは、"So you know this leaves us with...." "Adoption." と言っていますが、モニカが Adoption と言うことで、文章が完成した形ですね。
leave A with B の形で、「A(人)に B(もの)を残す」という意味になります。
leave A B のように、前置詞なしで「A に B を残す」という形でも使えるのですが、今回のような with B という形も可能です。
これについては、研究社 新英和中辞典に、以下のように出ています。

leave
(3) 〔+目+目 / +目+for+【(代)名】〕〈人に〉〈…を〉残す
He left her nothing.=He left nothing for her. 彼は彼女に何も残さなかった。
I was left no choice.=No choice was left (for) me. 私には選ぶべき道が残されていなかった。
(5) 〔+目+with+【(代)名】〕〈人に〉〔ものを〕残す
The payment left me with only one dollar. 支払ったら1ドルしか残らなかった。
They were left with nothing to eat. 彼らには食べ物は何も残されていなかった。


今回のセリフは、this leaves us with adoption なので、「これ(このこと=精子ドナーの方法は採用しないこと)が、俺たちに養子(という方法)を残す」と言っていることになります。
つまり、「これで俺たちに残されたのは…」「養子ね(養子ってことになるわね)」と二人で言っているわけですね。

「養子という方法について、どう感じる? どう思う?」と聞かれて、モニカは、I think I feel okay about it. Actually, I think I feel really good about it. と言っています。
どちらも feel 〜 で、「〜だと感じる・思う」と言っているのですが、前半で okay と言った後、後半で、okay というよりも、really good ね、と言い直している感覚ですね。
feel okay の方は、「オーケーと思う」ですから、「悪くないと思う、問題ないと思う」というところでしょう。
そう言った後、「でもよく考えてみたら、実際にはこっちね」という感じで、「養子については、すっごくいいなと感じると思う」と言い直したことになります。
他に方法がないから、それでいいんじゃない? のような消極的な賛成ではなく、「養子って方法は、実はすごくいい方法なんじゃないかしら」と言ったわけですね。

チャンドラーもそれに同意して、I wanna という言葉を3回連続して使って、「あれもしたい、これもしたい、それもしたい」と、あれこれしたいことを挙げることになります。
I wanna find a baby that needs a home は、「家(家庭)が必要な赤ちゃんを見つけたい」、I wanna raise it with you は、「その赤ちゃんを君と育てたい」ですね。
親に事情があって子供を育てられない場合に、他の夫婦の養子として養子縁組を行うことになるので、それを「自分を育ててくれる家庭を求めている赤ちゃんを探したい。自分たちがその子を受け入れる家庭になりたい」と言っていることになります。
raise は「持ち上げる」「高める」という他動詞ですが、子供の話だと、「子供を育てる、養う」という意味になります。
raise it の it = a baby ですが、この場合は、その養子となる赤ちゃんの性別がわからないので、中性の代名詞である it を使っていることになりますね。
性別がわかった時点で、him/her などの人称代名詞を使うことになりますが、わからない間は it を使う、ということになります。
mess up は「めちゃめちゃにする」というニュアンス。
チャンドラーのセリフを直訳すると、「俺たち独自のやり方で、その子をめちゃくちゃにしたいよ」と言っていることになりますが、これは「破壊する、傷つける」タイプのめちゃくちゃにする、ということではなく、かわいらしい赤ちゃんにいろいろちょっかいかけて、こねくり回していじくり回して、、ってしてみたいな、と言っている感覚になるでしょう。
よその子だったら、好き放題にいじくれないけれど、うちの子になったら自分たちの好きなようにできちゃうよね、というのを、mess up という表現を使って言っていることになるでしょう。

So this is it? We're really gonna adopt? の So this is it? は、自然な日本語にすると、「それじゃあ、これで決まりね?」が一番しっくり来るでしょうか。
this は「養子を迎えること」で、it は「自分たちが求めているもの、自分たちが頭の中でイメージしているもの」という感覚です。
待ちに待っていたものがついにやってきた、という場合にも、This is it! 「いよいよだ!」と言ったりしますが、「これが、自分(たち)が望んでいたもの、求めていたものである」という感覚が、this is it なわけですね。

「私たち、本当に養子を迎えることになるのね?」と嬉しそうにモニカが言い、チャンドラーも優しく微笑みながら、それに同意しています。
モニカが興奮気味に、We're gonna be parents! と言うと、チャンドラーは、それに great を付け足して、We are gonna be great parents. と言っていますね。
直訳すると、「私たちは親になる!」「俺たちは素晴らしい親になる」ということですが、もう少し、ドラマティックな感じにすると、「私たちは親になる!」「あぁ、それも素晴らしい親にね」という感じになるでしょう。
モニカとほぼ同じセリフを言っているのですが、great を強調して強めに発音することで、「ただ、親になるだけじゃない、俺たちは”素晴らしい親”になるんだよ」と言っていることになりますね。
俺たちならきっといい親になれるさ、だからこれから二人で頑張って行こう、という気持ちから出た言葉でしょう。

it could be soon は「間もなく、という可能性もある」ということですから、「私たちが親になるのは、もうすぐかもしれない」ということ。
「だってほら、考えてみて。たった今、(外の、この世界の)どこかで」と言いながら、二人で窓の方へ行き、our baby could be being conceived. と言っています。
conceive は「考える、思う」という動詞ですが、妊娠出産関係では「子をはらむ、宿す、みごもる」という意味で使われます。
could は「可能性」を表わし、be being conceived は、be being の部分が「be動詞+ -ing 形」の「進行形」で、be conceived は「be動詞+過去分詞」で「受動態」を表わしていることになります。
つまり、be being conceived は「(私たちの赤ちゃんが)みごもられているところである、みごもられている最中である」という「受動態の進行形」(〜されているところである)になりますね。
赤ちゃんがみごもられているところである、というのは、カップルが赤ちゃんができるような行為をしているところである、ということで、要はエッチしているところ、ということですが、そのカップルではなく、赤ちゃんの方にモニカの意識は向いていますので、赤ちゃんを主語にした「受動態の進行形」が使われたことになります。
ダイレクトに言ってしまえば「今、どこかのカップルが、私たちの子供を作っている最中かもしれないわ」という内容を、赤ちゃんを主語にして、conceive 「みごもる」という言葉を受身形にして使っているという表現の面白さになるでしょう。

それを聞いたチャンドラーは、「待って。もし俺たちがラッキーで、俺たちがすっごくすっごく静かにしていたら、〜の音が聞こえるかもしれないよ」と言っています。
「静かにしていたら、聞こえるかもしれない」ということなので、これがクリスマスであれば、「サンタさんのソリの鈴(sleigh bells)の音が遠くからかすかに聞こえる」と続きそうなロマンティックな雰囲気なのですが、最後まで聞いてみると、その音とは、the sound of a condom breaking 「コンドームの破れる音」のことだった、というオチですね。

「ついに私たちは親になるのね。子供が持てるのね!」と喜び合っている時に、ロマンティックとは言い難いリアルな話のオチですが、それもまた、フレンズっぽいところなんだろうなと思います。
日本のドラマでは、「妊娠したこととコンドームとの関係」などが言及されることはあまりなく、「妊娠した=避妊していなかった(コンドームを使っていなかった)」ということが暗黙の了解みたいになっていて、劇中でわざわざその部分が説明されることなどありませんが、アメリカのドラマでは(性教育上も使用を促すことが必要だからでしょう)コンドームなどの避妊の話がはっきり出てきます。
レイチェルが、ロスとの間の娘エマを妊娠した時、ロスは「僕たち、コンドームを使ったのに、どうして妊娠したの?」と大騒ぎしていました。レイチェルに「コンドームが有効なのは 97% くらい」と言われ、さらに大騒ぎしていましたね。
ロスから 97% の話を聞いたジョーイは、その注意書きを確かめるために、ポケットから大量のコンドームを取り出していましたが、「プレイボーイのジョーイだからこそ、常に携帯している」みたいな描写をするところも、アメリカ的だな、と思うわけです。
養子に迎えることになる赤ちゃんは、実の親に事情があって育てられない環境にあるわけで、「予期せぬ妊娠」だった場合が多いわけですね。
そういう意味でも、「コンドームを使用していたが、それが破れてしまった」というのは、「妊娠しないようにしていたが、子供ができてしまった」という予期せぬ妊娠と大きく関連しているわけで、わざわざ「コンドームが破れた」と言及することで、「そういう行為をする場合は、普通はコンドームを使っているはず」という大前提が存在することを示唆している気がします。
日本のドラマだと、避妊方法うんぬんの話をするのはリアル過ぎる、ということで敬遠されるのでしょうが、アメリカではそういう部分をはっきり言いますし、今回のセリフもその一環だと感じました。


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posted by Rach at 14:57| Comment(0) | フレンズ シーズン9 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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