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バルバドスの湿気で髪の毛が爆発してしまったモニカは、帰る日の朝に美容院に行き、コーンロウ(三つ編みの細かい編み込み)の髪型にしてもらって、毛先には貝殻を付けた状態で戻ってきます。
バルバドスからマンハッタンに帰ってきた後も、その髪型でモニカはゴキゲンなのですが、、
[Scene: Chandler and Monica's apartment. Monica's carrying the laundry hamper to their coffee table.]
チャンドラーとモニカのアパートメント。モニカはコーヒーテーブルに、洗濯かごを運んでいるところ。
モニカ: Oh, I can't wait for everyone at work to see these! (plays with her hair to make the shells tingle again) Ow! (あぁ、職場のみんながこれを見るのが待ちきれないわ! [(髪につけた)貝殻の音をまた立てるため、髪の毛で遊ぶ] アォ!)
チャンドラー: You go back to work tomorrow night, right? (明日の晩、仕事に戻るんだよね?)
モニカ: Yeah! (そうよ!)
チャンドラー: So if you want people to see them, then by definition you're not having them taken out, say, at the break of dawn? (それじゃあ、もし君がみんなにそれを見て欲しいと思うなら、定義から考えて(当然のことながら)、君はそれを外す予定はないんだよね、ほら、明け方とかには?)
モニカ: Well, if I had them taken out, then I wouldn't be able to do this. (she pushes Chandler on the couch and brushes her hair and shells against Chandler's chest) You like that, right? (again, she brushes her hair against his chest and hums...) (えぇ、もし私がそれを取っちゃったら、こういうこと、できないわよ。[モニカはチャンドラーをカウチの方に押して座らせて、チャンドラーの胸に、自分の髪の毛と貝殻を(ブラシのように)触れさせる] そういうの、好きでしょ? [再び、モニカは自分の髪の毛をチャンドラーの胸に触れさせ、ハミングする])
チャンドラー: What are you singing? (何を歌ってるの?)
モニカ: It's "Bolero" from "10". (映画「テン」の「ボレロ」よ。)
チャンドラー: It's "Ride of the Valkyries" from "Apocalypse Now". See, here's the thing. The cornrows were really a solution to your frizzy-hair problem. And now that we're home, you don't have that problem anymore. So if you think about it, I hate them! (それは「地獄の黙示録」の「ワルキューレの騎行」だよ。ほら、こういうことなんだ。そのコーンロウは、君の縮れ毛問題のまさに(見事な)解決となった。そして今や俺たちは家にいるんだから、その(縮れ毛)問題はもうないだろ。だから考えたらわかると思うけど、俺はそれ(その髪型)が大嫌いなんだ!)
モニカは洗濯かごを持ちながら、「職場のみんながこの髪型を見るのが待ちきれない」と言って、毛先についた貝殻が鳴るように、髪をゆすってみせています。
それを見たチャンドラーは、「君が仕事に戻るのは、明日の晩だったよね?」と確認した後、So if you want people to see them, then by definition... というセリフを言っています。
前から順番に訳すと、まず最初の文は、「それじゃあ、もし君が人々にそれ(君のその髪型)を見せたいと思うなら」。
by definition は「定義によって、定義によれば」ということから、「定義上は、当然」という意味になります。
dawn は「夜明け、暁(あかつき)」で、at the break of dawn は「明け方に、夜が明けた時」という意味。
take out はここでは「取り除く、取り外す」ということで、have them taken out は「そのコーンロウの髪型を解く、やめる、(普通の髪型に)戻す」と言っていることになります。
ですから、you're not having them taken out, say, at the break of dawn? を直訳すると、「君はその髪型を解かないんだよね、ほら、明け方には?」と言っていることになります。
「明日の晩、みんなに見せるまでその髪型でいるってことは、夜明けにその髪型を解くってことにはならないんだよね」と言っているわけですが、ここでわざわざ、「例えば、夜が明けた時には」と言っているのは、「夜寝て、翌朝起きた時に、君はまだその髪型のままってことだよね(それを見て俺はまた、朝いちからギョッとしなくちゃいけないのか)」みたいに言っているような気がしました。
「その髪型、解かないの? ほどかないの?」みたいに言われたので、モニカは、「もし私がこれを取ったら、そしたらこんなことできなくなるわよ」と仮定法過去を使って言っています。
モニカはこの髪型をほどくつもりがないので、「(実際にはこの髪型のままでいるけど)もしこの髪型をほどくとしたら」と仮定法を使っていることになります。
そして、毛先に貝殻がついたその髪型で、チャンドラーの胸をブラッシングするように髪の毛を動かしています。
「あなた、こういうの好きでしょ?」と言いながら、また髪の毛でブラッシングして、今度は何かの歌をハミングで歌っていますね。
そのメロディーを聞いたチャンドラーが、「何を歌ってんの?」と尋ねると、モニカは It's "Bolero" from "10". と答えています。
直訳すると、「”10”からの”ボレロ”」ということですが、これは「”テン”という映画(から)の曲[映画で使われた曲]である”ボレロ”よ」ということですね。
ちなみに、その後のチャンドラーのセリフで、モニカがハミングしていた曲は「ボレロ」ではないことがわかるのですが、とりあえず、モニカが言っていた、「テンのボレロ」の話から説明させていただきます。
「テン」(原題:10)は、ダドリー・ムーア主演の映画。
Wikipedia 日本語版: テン (映画)
ダドリー・ムーアと言えば、フレンズ2-1その4 の、フィービーがフレンズたちのヘアカットをしてあげる話の中で、「モニカは、デミ・ムーアをリクエストしたのに、ダドリー・ムーアの髪型にされてしまった(!)」というシーンが出てきます。
モニカ: Even Mary Tyler Moore would've been better. (メアリー・タイラー・ムーアの方がまだ良かったでしょうね。)
ロス: I like it. I do. I think it's a 10! (僕はその髪型気に入ってるよ。好きだよ。「テン!」(10点満点!)って思えるよ。)
というやりとりがあったのですが、そこで言及された「10」が、今回、ご紹介しているこの映画のことですね。
ボレロは、あの有名な、ラヴェル(モーリス・ラヴェル)のボレロです。とても美しい曲で、私も大好きな曲です。
「愛と哀しみのボレロ」で使われていることで有名ですが、モニカが言っているように、映画「テン」でも使われています。
この作品のことは以前から知っていたのですが、ちゃんと見たことなかったので、今回使命感に燃えて(笑)、レンタルして見てみました。(以下、ネタバレありますので、これからこの映画を見ようという方はご注意下さい)
まず、モニカがどうして映画「テン」にまつわる歌を歌おうとしていたのか? については、アマゾンに出ている以下の「テン」のジャケットを見ればすぐにわかりますね。
Amazon.co.jp: 10 (テン) [Blu-ray]
ボー・デレク演じる美女(名前はジェニファー)の水着姿が映っていますが、髪型がまさにモニカのやっているような「コーンロウ」です。
前半には花嫁姿で登場しますが、後半のメキシコでのシーンでは、ジェニファーは多少飾りをアレンジしつつも、ずっとこのコーンロウの髪型です。
よく見てみると、毛先についているのは貝殻ではなく、それ専用のアクセサリーみたいなもののようですが、見た目の感じは、モニカの「貝殻付きコーンロウ」とそっくりです。
約2時間の映画ですが、1時間38分頃から、ボー・デレク演じるジェニファーが、ダドリー・ムーア演じるジョージに「ボレロ」について語り始めます。そのセリフをいくつか挙げてみると、
ジェニファー: Did you ever do it to Ravel's "Bolero"? (ラヴェルのボレロに合わせて(エッチ)したことある?)
ジェニファー: Uncle Fred said "The Bolero" was the most descriptive sex music ever written, and he proved it. (おじのフレッドは言ってたわ。「ボレロ」はこれまで作られた曲の中で、最も叙述的な sex music だ、って。そして彼はそれを証明してくれたの。)
その後、ボレロのレコードをかけながら、二人はベッドイン、、となるのですが、ジェニファーが、"It's better if I'm on top." と言って上になり、飾りのついた髪の毛で、ジョージの顔をなでるようにするシーンがあります。(時間にして、1:41:55 あたり)
飾りについていた羽根が口に入って、ジョージは咳込むことになるのですが、飾りがジャラジャラ音を立てる感じなどからも、ここが、今回のモニカが真似しようとしていたシーンなんだろうなと思いました。
「ボレロが流れるラブシーン」ということなので、ものすごくロマンティックなものを想像していたのですが、実際には「メイクラブの際に、ボレロという音楽のかけ方、流し方にこだわりすぎるジェニファーを見て、ジョージが違和感を感じてしまう」という流れになっています。
エンドクレジットの前にも、またこの「ボレロ」が使われるのですが、そちらの方は微笑ましいラストシーンとなっています。
そんな風に、「映画テンのボー・デレクのイメージ」で、ラヴェルの「ボレロ」を歌ったつもりのモニカでしたが、モニカが歌っていたのは明らかに曲調が違う別の曲で、チャンドラーにも「それはボレロじゃなくて、この曲だろ」とツッコミを入れられています。
チャンドラーの言ったことが正解で、It's "Ride of the Valkyries" from "Apocalypse Now". は、「映画「地獄の黙示録」(から)の「ワルキューレの騎行」」ということですね。
「地獄の黙示録」(原題:Apocalypse Now )は、ご存知、フランシス・フォード・コッポラ監督の戦争映画の名作。
Wikipedia 日本語版: 地獄の黙示録
上のウィキペディアの「評価」に、この曲の情報が出ています。引用させていただくと、
キルゴア中佐率いる部隊がワーグナーの「ワルキューレの騎行」をオープンリールで鳴らしながら、9機の武装したUH-1ヘリが、南ベトナム解放民族戦線の拠点であるベトナムの村落を攻撃していくシーン(以下略)
また、ワーグナーの曲としての「ワルキューレ」のウィキペディア、Wikipedia 日本語版: ワルキューレ (楽劇) にも、この楽曲と映画との関係が説明されています。
フランシス・フォード・コッポラ監督による映画『地獄の黙示録』では、べトコンの拠点となっている村にヘリコプターで奇襲攻撃を掛ける際に、兵士の士気を高め、住民の恐怖心を煽る為に、兵士に「ヴァルキューレの騎行」の音楽をテープでかけさせ、映画のBGMとしてでなく実際にその場で流れている音楽として使われる。
私は「地獄の黙示録」も見たことなかったので、今回、こちらも見てみました。
(レンタルには1979年公開の「劇場公開版」がなくて、2001年公開の「特別完全版」(202分)しかありませんでしたので、以下の時間表示は 202分版の方になります)
0:36:53 くらいに、
キルゴア中佐: About a mile out, we'll put on the music. (約1マイル離れたところで、音楽をかけるぞ。)
部下: Music? (音楽ですか?)
キルゴア中佐: Yeah, I use Wagner. (あぁ、ワーグナーを使う。)
そして、0:37:32 くらいから、実際に「ワルキューレの騎行」が流れ始めます。
名セリフとして有名な "I love the smell of napalm in the morning." (朝のナパーム(弾の匂い)は格別だ)というのは、この奇襲の後(10分後くらい)に出てくるセリフなんですね。
Valkyrie は「ワルキューレ」という、北欧神話に出てくる乙女の名前。
研究社 新英和中辞典では、以下のように出ています。
Valkyrie 【名】=〔北欧神話〕 ワルキューレ 《Odinの侍女である武装した乙女たちの一人; 空中に馬を走らせ、戦死した英雄たちの霊を Valhalla に招いたという》
Wikipedia 日本語版: ワルキューレ の「名称」には、(ドイツ語のヴァルキューレが由来の)「ワルキューレ」以外にも、「ヴァルキリー」(英語読み)、「ヴァルキュリヤ」(古ノルド語)などのさまざまな読み方が出ています。
実際のチャンドラーの発音も、「ヴァルカリー、ヴァルキリー」みたいな発音になっていますが、「バルキリー」と言えば、「超時空要塞マクロス」に始まるマクロスシリーズに出てくる「ファイター(戦闘機)、ガウォーク、バトロイド(人型ロボット)」の3形態に変形する可変戦闘機の名前でもありますね^^
(オタク話に脱線して申し訳ないのですが)マクロスF(フロンティア)の曲の中に「サヨナラノツバサ〜the end of triangle〜」という歌があり、その歌詞に、
その翼は ヴァルキュリア (中略) 恋人その魂 導くため虹の橋を渡る
という言葉が出てきます。
戦闘機の名前である「バルキリー」ではなく、あえて「ヴァルキュリア」という違う読みをして、名前の由来となった北欧神話の乙女のイメージを出した歌詞になっている、ということのようです。(オタク話は以上)
モニカは「テン」のベッドシーンの曲「ボレロ」を歌ったつもりが、「戦争を象徴する曲」として有名な「ワルキューレの騎行」を歌ってしまっていたわけで、間違えるにしても間違えすぎだろ! 的なギャップの大きさが笑いのポイントになっている、ということでしょう。
セリフに戻ります。
モニカの曲の間違いを指摘したチャンドラーは、See, here's the thing. 「ほら、こういうことなんだよ」と言って、The cornrows were really a solution to your frizzy-hair problem. と言っています。
cornrow は既に説明したように、モニカが今している髪型のコーンロウのことですね。
frizzy hair は「縮れた毛、縮れ毛」ですから、「そのコーンロウの髪型は、君の縮れ毛問題を本当に解決するものとなった」ということになります。
その後、「湿気の多いバルバドスでは、そういう縮れ毛問題があったけど、今はもう俺たちは家に帰って来ていて、もうそんな問題はない」と言った後、So if you think about it, I hate them! と言っています。
if you think about it を直訳すると、「もし君がそのことについて考えるなら」ということですが、これは、「今の状況を考えてみてよ、そしたらわかると思うけど」みたいなニュアンスのように感じました。
「ちょっと考えてみて。わかるだろ。俺、その髪型、嫌いなんだよね!」みたいな感じでしょうね。
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