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シーズン10 第15話
The One Where Estelle Dies (ジョーイに教えるな!)
原題は「エステルが死ぬ話」
前回のエピソードのラストで、「ルイ・ヴィトンから仕事のオファーがあった!」と喜びの報告をしたレイチェル。
ですが、The job is in Paris. 「パリでの仕事なの」と言うのを聞いて、フレンズたちは驚きと戸惑いを隠せません。その続きのシーン。
レイチェル: Oh, God, please, somebody say something. (ねぇ、お願いよ、誰か何か言ってよ。)
ロス: So if you take this job, you'll be moving to Paris? (それじゃあ、もし君がこの仕事を受けると、君はパリに引っ越すことになるの?)
チャンドラー: Or facing a bitch of a commute. (もしくは、大変な通勤に直面するか、だな。)
レイチェル: I know, it's huge, and it's scary and it's... really far, far away from you guys. But this is such an incredible opportunity for me. And I've already talked to them about our situation with Emma, and they said they'll do whatever we need to make us feel comfortable. (大ごとだし、怖いし、それにあなたたちから本当に本当に離れちゃうってわかってる。でも、これは私にとって、本当に素晴らしいチャンスなのよ。それでエマがいるっていう私たちの状況については、既に彼ら(先方)に話したの。そしたら、私たちが快適でいるのに必要なことは何でもしてくれるって言ってくれたのよ。)
ロス: Okay. (そうか。)
レイチェル: I mean, I'll fly back and forth, they'll fly you out. Anything we want. (例えば、私は飛行機で行き来できるし、あなたを飛行機に乗せてくれる[あなたの飛行機代も持ってくれる]。私たちが望むこと、何でもしてもらえるわ。)
チャンドラー: My boss said I might be getting a new lamp in my cubicle. (Monica looks at him and can't really place what he just said) (俺の上司は、俺のキュービクルの新しいランプ(電灯)を買えるかもしれないって言ったよ。[モニカはチャンドラーを見て、彼がたった今言ったことがよくわからない(という顔をする)])
ロス: All right. We'll work it out. (わかったよ。僕たちで何とか頑張ろう。)
レイチェル: Oh, thank you! Thank you! (あぁ、ありがとう! ありがとう!)
ロス: Yeah, yeah! (they hug) You sure this is what you want? (あぁ、あぁ。[二人はハグする] これが君のやりたいことだ、っていうのは間違いないんだね[確かに、これが君のやりたいことなんだね]。)
レイチェル: I think it is. (Ross looks very sad.) (そうだと思うわ。[ロスは非常に悲しそうな顔をする])
「新しい職場がパリになる」と聞き、フレンズたちは言葉を発することができません。
please, somebody say something. は「お願いだから、誰か何か言って」ということですが、「誰か何か言って」の英語は、日本語の直訳でオッケーなんだな、ということがわかりますね。
「この(パリでの)仕事を受けると、君はパリに引っ越すことになるの?」とロスはレイチェルに尋ねます。
「職場がパリになる」と聞いた場合に想定される当然の質問をしたことになりますが、そんなシリアスな状況の中、「当たり前の質問に対してチャチャを入れる」ことで場の空気を和まそうと思ったのか、チャンドラーは彼らしいジョークを言っています。
Or facing a bitch of a commute. は、Or you'll be facing a bitch of a commute. ということ。
bitch は「あま、尻軽女」のように女性を侮辱する言葉として使われますが、この場合は「とても嫌なこと、大変なこと、難しいこと」という意味で使われています。
Macmillan Dictionary では、
bitch : [singular] (very informal) something difficult or unpleasant
例) These milk cartons are a real bitch to open.
つまり、「(単数形で)(非常にインフォーマル) とても難しい、または不快なこと」。例文は、「このミルクカートンは、本当にとても開けにくい」。
commute は動詞では「通勤する、通学する」という意味で、commuter なら「(定期券利用の)通勤者」になりますね。
今回のセリフでは、a commute と不定冠詞が付いていますので、名詞で「通勤」という意味になります。
動詞 face は、「(問題・困難)に直面する」なので、チャンドラーのセリフは、「ものすごく大変な通勤に直面することになるだろう」→「通勤がめちゃくちゃ大変になるだろう」と言っていることになります。
「もしパリに引っ越すんじゃなかったら、NYからパリまで通うのに(通勤代、かかる時間など含めて)通勤がものすごく大変なことになるよね」と言ってみせたことになるでしょう。
職場がパリ=パリに引っ越す、ということは明らかで、いくらロスがショックを受けているとは言え、「パリに引っ越すの?」と当たり前の質問を口に出したことを少しからかう感じで、チャンドラーはそのセリフを言ったことになるでしょうね。
「パリに引っ越しちゃうの?」とみんなが驚いていることを意識しつつ、「私もわかってるの、(パリに引っ越すってことは)ものすごく大ごとだし、怖いし、それに本当にあなたたちみんなから遠く遠く離れちゃうってことは」と言います。
それを認めた上で、「でもこれは私にとってとても素晴らしいチャンスなのよ」と続けます。
I've already talked to them about の them は、「パリでの仕事をオファーしてきたルイ・ヴィトンの人々」を指す感覚。
our situation with Emma は「エマがいる、という私たちの状況」というところで、「私にはエマという娘がいて、その父親のロスもNYにいる」という状況を先方にちゃんと話したのよ、ということをロスに説明している感覚になるでしょう。
make us feel comfortable は「私たちが快適に感じられるようにする」ということですが、要は「私たちが困らないようにする、私たちが不便や不愉快さを感じないで済むようにする」ということですね。
私たちが嫌な思いをしないで済むように、必要なことは何でもするって言ってくれた、と説明していることになります。
「大ごとなのはわかってるけど、これは私にとってビッグチャンスなの。エマのいる状況を説明したら、何でも協力するって言ってくれたわ」のようにレイチェルが力説するので、ロスは静かに、Okay. と言っています。
ロスは寂しそうな顔をしていますが、怒ったりはせず、妙に落ち着いています。
レイチェルがパリに行ってしまうと聞いて、今のロスの心の中はどんな風になっているんだろう?? とこちらがいろいろ考えてしまいたくなるような「本心を隠した」表情と態度になっている感じですね。
「必要なことは何でもしてくれるって言ってくれた」ことの例として、I mean 「つまり」を使って、レイチェルは具体的に I'll fly back and forth, they'll fly you out. と説明しています。
back and forth は「前後に」「行ったり来たりして、往復して」というニュアンスですから、fly back and forth は「飛行機を使って、パリとNYを往復する・行き来する」。
they'll fly you out. を直訳すると、「ヴィトンの人が、あなた(ロス)を外に出る方向で飛行機で飛ばしてくれる」ということですから、「ロスがNYからパリに行くための飛行機代を、会社が持ってくれる、出してくれる」と言っていることになります。
DVD日本語訳では「あなたがパリに来るとき、旅費出すって」となっていましたが、まさにそういうことですね。
「パリへの飛行機代を会社が出してくれるって」ということを英訳したい場合、「会社が旅費を負担する」的な英語表現を探そうとしてしまいがちですが、fly には「人を飛行機に乗せて運ぶ」という他動詞があるので、「NYから出る方向(out)で、あなたを飛行機に乗せる」と表現すれば、それで事足りるわけですね。
新しい勤務先が、こちらの望むことを何でもしてくれる、という話を聞いて、またチャンドラーは口を挟んでいます。
My boss said I might be getting a new lamp in my cubicle. は、「俺の上司は言った、俺のキュービクルに、俺が新しいランプをゲットするかもしれないって」。
cubicle は「パーティションで区切った個人用オフィス・作業スペース」。
フレンズ1-15 のオープニング直後のシーンで、チャンドラーが入力仕事をしていた場所として、キュービクルが映っていました。
そのエピソードで、チャンドラーは昇進することになり、大きなオフィスを与えてもらえたのですが、それを見学に来たフィービーのセリフが以下のようになっていました。
フィービー: It's so much bigger than the cubicle. This is a cube! (例のキュービクルとか言う小部屋よりもずっと大きいわね。これぞ、キューブだわ!)
その仕事をしていた時は、そんな風に大きな部屋で仕事をしていたチャンドラーでしたが、タルサへの単身赴任に嫌気がさしてその会社をやめてしまいました。
その後、広告代理店のインターンの仕事につき、その後、アシスタントに昇格しましたが、かつての勤務先のような大きな部屋は与えられておらず、仕事部屋はキュービクルなのでしょう。
「レイチェルだけではなく、ロスの飛行機代も持ってくれる」という破格の好待遇の話をレイチェルがした後に、「うちの会社も本人の希望を聞いてくれて、俺の小さな部屋のランプを交換してくれそうなんだ」と、シケた話を持ち出してみた、という自虐的なジョークですね。
レイチェルとロスが、これからの生活に関する真剣な話し合いをしているところに、チャンドラーがそんなどーでもいい話を挟み込んで来たので、彼の妻であるモニカは「は?」というあきれた顔をしています。
レイチェルが必死に訴えるので、内心ものすごく複雑であろうロスも、レイチェルの言い分を理解した様子で、All right. We'll work it out. と言います。
work it out は「うまくやる」というニュアンスなので、「レイチェルがパリに行くことになっても、会社が僕たちのためにいろいろフォローしてくれるらしいのなら、何とか僕たちでうまくやっていこう」と言っていることになるでしょう。
ロスがその話を受け入れてくれたことで、レイチェルは感謝の言葉を述べます。
You sure this is what you want? は「これが君の望むことだってことは間違いないんだね?」というニュアンス。
Is this what you want? 「これは君のやりたいことなんだね?」に、さらに You sure...? をつけることで、「これが君のやりたいことである、という気持ちに間違いはないんだよね? それが君の本当の気持ち・願いなんだよね?」と念押しして尋ねた感覚になります。
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コメントありがとうございます。
「チャンドラー特有のジョークで、現実の話をしているわけではありません」というご指摘、おっしゃる通りだと思います。レイチェルが好待遇の話をしているのとは対照的な、ずいぶんとシケた話を持ち出した、というチャンドラーがよくやるジョークの1つですね。
実際にチャンドラーが今、どういう場所で仕事しているかはわからないのですが、彼がキュービクルではない場所で仕事していてこのジョークを言った場合には、「何もかもが嘘」になってしまい面白みも半減してしまいそうなので、せめて彼が働いている場所が実際にキュービクルであってくれた方が(ランプの話は、その場で思い付いた完全な作り話としても)現実味のあるジョークとして面白い、という気持ちもあって、「仕事部屋はキュービクルなんだろう」という解釈に繋がってしまったようです。
このブログでは、私の解釈を記事として書かせていただいた上で、コメント欄でいただいた他の方からのご意見を参考にして、解釈の追加説明や訂正などをさせていただく形式を取らせていただいております。今回の貴重なご意見にも心より感謝申し上げます。
なお、拙著の内容につきましてご心配いただきありがとうございます。本を出版する際、英文の解釈に係わる部分につきましては、解釈に間違いがないように「日本語のわかる英語ネイティブによるネイティブチェック」を受けておりますので、どうかご安心下さいませ。
貴重なご意見ありがとうございました。