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[Scene: The house next door to Chandler and Monica's new house. Chandler is pacing worriedly through the living room when Janice enters.]
チャンドラーとモニカの新居の隣の家。チャンドラーが心配そうにリビングを歩いていると、ジャニスが入ってくる。
ジャニス: Well... I just talked to Sid. We are definitely putting in an offer on the house. A-a-and I'll bet we get it! (私、ちょうどシド(ジャニスの夫の名前)と話したところなの。この家に絶対に申し込むわ。そして私たちが間違いなくゲットするわ。)
チャンドラー: The Hitlers will be so disappointed. (ヒトラー夫妻はすごくがっかりするだろうね。)
ジャニス: All right, I gotta run. Tell Monica I say goodbye. And... I'll see you later, neighbor. (Janice laugh) (いいわ、私行かなきゃ。私がさよならって言ってたって、モニカに言っといて。そして…また後でね、ご近所さん。[ジャニスは笑う])
チャンドラー: Wait! I just want you to know that... I'm so happy you're going to be here. (待って! ただ君に知っておいて欲しいんだ… 俺はすごく幸せだよ、君がここに来ることになって。)
ジャニス: Oh, me too! (laughs) (まぁ、私もよ! [笑う])
チャンドラー: Because... that way... we can pick up where we left off. (だって… そうすれば… 俺たちは、やめたところ(終わったところ)からまた始められるだろ。)
ジャニス: Huh? (は?)
チャンドラー: I never stopped loving you. (俺は君を愛することをやめてなかったんだ。)
ジャニス: Oh...my-- (オー、マイ…)
チャンドラー: Yeah, yeah, yeah, yeah! I want you. I need you. I must have you, Janice Litman-Goralnik nee Hosenstein. (そうそうそう、そうなんだ! 俺は君が欲しい。俺には君が必要だ。俺には君がいなくちゃだめなんだよ、ジャニス・リットマン・ゴラルニック、旧姓ホーゼンスティーン。)
We are definitely putting in an offer on the house. の put in は「中に入れる」ことから「申し込む、申請する、応募する」というニュアンス。
夫のシドと話して、「この家に絶対に申し込みをするわ」と言っていることになります。
bet は元々、「金を賭ける」という意味なので、「(人に賭けて)断言する」という意味にもなり、この場合は、「私たちがこの家をゲットすると断言する。私たちは間違いなく・確実にこの家をゲットするわ」という意味になります。
「この家に申し込んで、もう1組のライバルを蹴落として絶対にゲットするんだから!」と強気な発言のジャニスに対し、チャンドラーは、The Hitlers will be so disappointed. と言っています。
The Hilters の Hitler は、あのナチスドイツのヒトラーのこと。
ここでヒトラーの名前が出て来たのは、これより前のシーンで、ジャニスと驚きの再会をした後、モニカがつい「私たち隣の家を買う予定なの」としゃべってしまったシーンと関係しています。
「何でジャニスにしゃべっちゃうんだ」と言われ、モニカ自身も「何でそんなことを言っちゃったのかわからない」と困惑した様子でしたが、その後、
モニカ: Okay, the realtor said another couple made an offer. Maybe the Janices won't get it! Maybe the other couple will. (ねぇ、不動産屋が言ってたでしょ、もう一組のカップルが申し込みをした、って。多分、ジャニス夫婦はこの家をゲットできないわよ!多分もう一方のカップルがゲットするわね。)
チャンドラー: The only way that that is going to happen is if the other couple are the Hitlers! (そういうことが起こる唯一の方法は、もしもう一方のカップルがヒトラー夫婦だった場合だけどね。)
モニカは「もう一組のカップルがゲットするわよ、きっと」と言っているのですが、チャンドラーは「ジャニスに勝てそうなのは、相手がヒトラー(夫婦)だった場合くらいだね」みたいに、「喧嘩して負けなさそうな例」としてヒトラーの名前を挙げたことになります。
このやりとりで注目すべきは、the Janices, the Hitlers という「the+名前の複数形」の形。
英語では「the+名字の複数形」で、「(名字)一家」という意味を表します。
その名字の人がたくさんいる集団だからですね。
「一家」ほど大きくなくて、夫婦、兄弟姉妹の場合でも、同じ名字の人が2人以上いる場合には使えます。
ヒトラーの場合は、アドルフ・ヒトラーでヒトラーが名字ですから、まさに「ヒトラー夫婦」と表現していることになるのですが、ジャニスの方は名字ではなく名前の方の複数形で表現されています。
これはモニカが、ジャニスの名字を知らないからでしょう。
ジャニス夫婦は、夫シドと妻ジャニスで、その夫婦(一家)にはジャニスという名前は複数存在しないので、the Janices という表現は、厳密に言うとおかしいわけですが、モニカのイメージとしては「ジャニスとその夫のあの夫婦」なので、名字のように the Janices と表現したことになります。
仮に名字を知っていたところで、the+名字と表現しても、視聴者がジャニス夫婦のことだとピンとこないから、という脚本上の都合もあるでしょうが、モニカがジャニスの名字を知らないことを示唆しているのは間違いないと思います。
今回のシーンに戻ります。
少し前のシーンで、「ジャニスのライバルとなるもう1組のカップル」のことをヒトラー夫婦と表現したことを受けて、チャンドラーはここで、「ライバルのヒトラー夫婦はすっごくがっかりするだろうね」と言っていることになりますね。
「ジャニスに勝てそうなのはヒトラーぐらい」と思っていたチャンドラーですが、ジャニスが買う気満々、勝つ気満々のパワー全開モードなので、これはもう相手に勝ち目はないな、という意味で、「さすがのヒトラー夫婦でも、がっかりしちゃうだろうね」と言ったことになります。
I gotta run. を直訳すると、「私、走らなくちゃ」ということですが、これは「急いで行かなきゃ」というニュアンス。
I gotta go. はよく聞きますが、それを I gotta run. と表現すると「もう走ってでも行かなくちゃ」という感じが出て、より急ぎのニュアンスが出ると言えるでしょう。
ささいな表現の違いではありますが、いつもの表現をちょこっとアレンジすることで、言葉の幅が広がる気がしますよね。
ジャニスは「また後でね、neighbor (ご近所さん)」と言って、あの独特の「ジャニス笑い(Janice Laugh)」をしながら家を出ようとしますが、チャンドラーはそれを引き留め、「ただ君に知っておいてほしいんだ、君がここに来ることになって、俺はとっても幸せだってこと」と言います。
ジャニスは「私もよ」と言ってそのまま家を出ようとしますが、チャンドラーは、Because... と意味ありげに言葉を続けてから、that way... we can pick up where we left off. と言っていますね。
that way は「そのように、その方が」という感覚。
「俺たちが leave off したところを pick up できる」のように表現していますが、leave 「離れる」+off 「分離」ですから、leave off は「やめる」という意味。
pick up は「拾い上げる」が原義で、落ちたものを拾い上げる感覚から来るのでしょうね、「(話や活動などを)(中断後に)再び始める」という意味があります。
よって、チャンドラーのセリフは、「俺たちがやめたところからまた始められる」というような意味になるのですが、表現が抽象的であるため、それを聞いたジャニスは、まじで何のことかわからない、という顔で、Huh? と言っています。
するとチャンドラーは、先ほどの抽象的な言い方ではなく、もっと直接的に、I never stopped loving you. 「俺は君を愛することをやめていなかった」→「君のことをあれからもずっと愛してた」と言います。
既婚者である元カレから、愛の告白をされたことになるので、ジャニスはお得意の Oh, my God! を言おうとするのですが、チャンドラーが早口で Yeah, yeah, yeah, yeah! と言って、God まで言わせないのが面白いですね。
「もう、それ聞くのめんどくさいからやめて」みたいな感じの止め方です。
その態度を見ていると、「ジャニスを今でも愛してると嘘をついて、その場を切り抜けようとしている」のは明らかなのですが、チャンドラーはとにかく言葉上では、「ジャニスを愛してる」的な言葉をいくつも繰り出します。
I want you. I need you. I must have you と言った後、呼び掛け語としてジャニスの名前を言っていますが、それがやたらと長いフルネームなので笑ってしまいますね。
フレンズ8-24 で、レイチェルとジャニスが同じ病院で出産した時、ジャニスは自分の生まれたばかりの息子を連れて、レイチェルと娘エマの部屋に、以下のように挨拶に来ていました。
ジャニス: (entering) Yoo-hoo! Aaron Lipman-Guralnick would like to say hello to his future bride. ([入ってきて] やっほー! アーロン・リップマン=グラルニックが、未来の花嫁に挨拶したいって。)
この名前の部分、DVD英語字幕では、Aaron Lipman-Guralnick、ネットスクリプトでは、Aaron Litman-Neurolic と表記されていました。
多少綴りは異なっていますが、今回の 10-15 でチャンドラーが言ったフルネームの中の、Litman-Goralnik とほぼ同じですね。
基本的にスペルは、DVD字幕の方がオフィシャルであると考えるべきですが、サブキャラのフルネームなので、いまいち統一が取れていない、ということのようです。
そして、おまけのように最後についている、nee Hosenstein について。
この nee は、発音は「ネイ」で、「(結婚前の)旧姓は」という意味。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
nee [adjective] : (old-fashioned) used in order to show the family name that a woman had before she was married.
例) Mrs. Carol Cook, nee Williams
つまり、「(古い表現) ある女性が結婚する前に持っていた名字を表すために使われる」。例文は、「ミセス・キャロル・クック、旧姓ウィリアムズ」。
ですからチャンドラーは、ジャニスのフルネームを呼び掛ける時に、わざわざ旧姓まで言った、ということですね。
ジャニスとの再会におののいているわりには、その長いフルネームを旧姓まで含めてちゃんと覚えてるやん! という面白さになるのでしょう。
二人のくされ縁の深さがよく表れている感じですね。
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