2016年11月25日

悲しみのヒーロー Billy Don't Be a Hero フレンズ1-1改その26

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13:34
(CUT TO ROSS')
ロスのアパートメントに画面がカット。
ロス: (SCORNFUL) "Grab a spoon." Do you know how long it's been since I've grabbed a spoon? Do the words, "Billy, don't be a hero," mean anything to you? Y'know, here's the thing. Even if I could get it together enough to- to ask a woman out... who am I gonna ask? (GAZES OUT OF THE WINDOW) ([冷笑的に] 「スプーンを掴め」って? 僕がスプーンを掴んで以来、どのくらいの時間が経ったか知ってる? 「ビリー、ヒーローにならないで」って言葉は君たちに何かを意味する?[その言葉にピンとくる?] ほら、こういうことなんだよ。僕が、ある女性をデートに誘えるほどの気持ちになったとしても[誘えるほどに気持ちが落ち着いても]… 僕は誰を誘うことになるの?[誰を誘えばいいの?] [窓の外を見つめる])
(CUT TO RACHEL STARING OUT OF HER WINDOW)
レイチェルが(自分がいる部屋の)窓から外を見つめている画面にカット。

"Grab a spoon." とロスが言っているのは、過去記事、結婚したの、8歳くらいだっけ? フレンズ1-1改その22 で、
ジョーイ: This is the best thing that ever happened to you! You got married. You were, like, what? 8? Welcome back to the world. Grab a spoon! (このこと[今回のキャロルとの別れ]は、ロスにこれまで起こった出来事の中で、最高の出来事なんだぞ! ロスは結婚した、その時、ロスは、ほら、8歳くらいだったっけ? (現実の)世界によく戻ってきた! スプーンを掴めよ!)
と言ったことを受けてのものですね。

ジョーイは、女性をたくさんのフレーバーがあるアイスクリームに例え、「スプーンを掴めよ」と言うことで、「キャロルが人生たった一人の女性だったなんて言わず、世間にいるたくさんの女性に目を向けて、アタックしてみろよ」のように言ったわけで、そのジョーイの言葉をここで持ち出していることになります。

Do you know how long it's been since I've grabbed a spoon? は、「僕がスプーンを掴んでからどのくらいの時間になるか[時間が経ったか]知ってる?」ということ。

その次の Do the words, "Billy, don't be a hero," mean anything to you? について。
直訳すると、「”ビリー、ヒーローにならないで”って言葉が、君たち(ジョーイとチャンドラー)にとって何かを意味する?」になるでしょう。

まず、Billy Don't Be A Hero というのは、1974年の反戦歌で、邦題は「悲しみのヒーロー」。
詳しくは以下のウィキペディアで。
Wikipedia 英語版 : Billy Don't Be a Hero

元々は、イギリスの Paper Lace(ペーパー・レース)というバンドの曲で、その曲がイギリスで大ヒットした後、アメリカで Bo Donaldson and The Heywoods(ボー・ドナルドソン&ザ・ヘイウッズ)によってカバーされ、その曲はアメリカで大ヒットとなりました。
アメリカに続いて日本でヒットしたのも、「ヘイウッズ」バージョンで、70年代洋楽オムニバスなどには、ヘイウッズ版が収録されています。
反戦歌なのですが、どちらのバージョンも、明るい曲調の歌です。

英語版ウィキペディアに、以下の興味深い情報が載っていました。
引用させていただきますと、
Because the song was released in 1974, it was associated by some listeners with the Vietnam War, though it actually refers to an unidentified war. But the drum pattern, references to a marching band leading soldiers in blue, and "riding out" (cavalry) would seem to be referencing the American Civil War.
訳しますと、「その歌は1974年にリリースされたため、リスナーの中にはベトナム戦争を連想する人もいた。実際には特定されていない戦争のことを言っているけれども。しかし、ドラムパターン、青い服を着た戦士を先導するマーチングバンドの言及、「ライディングアウト」(騎兵隊)は、アメリカ南北戦争のことを言っているように思われる」。

つまり、1974年リリースということで、当時のベトナム戦争(1955年〜1975年)(ベトナムからのアメリカ軍撤退は1973年)を連想する人もいたけれど、実際にはどれと特定しない戦争のことを歌っており、楽曲や歌詞は南北戦争をイメージさせる、ということになるでしょう。
(この曲が「南北戦争をイメージ」している件については、ここで書くと長くなってしまうので、記事の最後に書くことにします。)

戦争に参加する男性(ビリー)に向かって、婚約者が Billy, don't be a hero, Come back to me. 「ビリー、ヒーローにならないで。私のところに戻ってきて」と呼び掛ける歌で、歌の最後では、「ビリーは戦死した、彼はヒーローだった」という手紙を受け取った婚約者はその手紙を破り捨てた、という歌詞になっています。

ウィキペディア英語版の Quoted in other media 「他のメディアで引用された」の4番目に、今回のフレンズ1-1 で言及されたことが載っています。
引用させていただきますと、
In the first episode of Friends, Ross is sad because it has been so long since he last picked up a woman, saying "Do the words 'Billy, Don't Be a Hero' mean anything to you?"
訳しますと、「フレンズの最初のエピソードで、ロスは、最後に女性を誘ってから随分長い時間が経ってしまったという理由で悲しんでいる、"Do the words 'Billy, Don't Be a Hero' mean anything to you?" と言いながら」。

「悲しみのヒーロー」という歌のことだとわかったところで、Do the words, "Billy, don't be a hero," mean anything to you? の意味について、改めて考えてみます。
直訳すると、「”ビリー、ヒーローにならないで”って言葉が、君たち(ジョーイとチャンドラー)にとって何か意味がある[何かを意味する]?」になりますが、”ビリー、ヒーローにならないで”という歌詞や、そこから連想される「戦争に行く恋人を引き留める婚約者」という歌詞全体の内容が、君たちには何かを意味する? というようなことではなく、「その言葉(歌のタイトル)を聞いて、君たち何かピンとくる? あぁ、それか、ってわかる?」みたいなことを言っているのだろうと思います。

僕がスプーンを掴んで以来、どのくらいの時間が経ったか知ってる? の後に、その歌のタイトルを出すという流れから考えて、「"Billy, don't be a hero" って言葉を聞いてピンとくる?」→「ほら、そんなタイトルの歌が流行ってた頃の話だよ。僕が最後にスプーンを掴んだのは、その歌が流行った頃だったよ」という意味で言っていると私は考えました。
ウィキペディア英語版の説明にも「ロスはそのセリフを言いながら、最後に女性を誘ってから随分長い時間が経ってしまった、という理由で悲しんでいる」とあるように、最後に女性を誘ったのはどれほど前だったかの説明として、年代を示す流行歌を出した、ということになると思うのですね。

上にも書いたように、Billy Don't Be a Hero は 1974年の曲で、(フレンズ第1話ではまだわかりませんが、後からわかる設定では)ロスは1967年生まれということになっています。
第1話ではロスの生年が未設定だったと仮定して、演じる俳優さんとほぼ同年齢のキャラクターだと考えると、ロスを演じる俳優の David Schwimmer (デヴィッド・シュワイマー、英語読みでは「シュウィマー」が正しいそうです)は1966年生まれ。
つまり、その歌が流行った時に、ロスは7歳くらいだった(俳優のデヴィッドの年齢だと8歳くらいだった)ということになりますね。

最後に女性を誘ったのが7、8歳、ということはないはずですが、これより前のシーンでジョーイが、「お前が結婚したのは、ほら、8歳だったっけ?」と言ったことを受けて、今度はロス自身が自虐的に「僕が最後に女性をナンパしたのは8歳頃、ほら、悲しみのヒーローって曲が流行ってたあの頃だよ。ナンパしろ、って言われても僕は8歳からずっと女性を誘ったりしていないんだよ」と、女性を最後に誘ってからものすごく長い時間が経つと大袈裟に言ってみせたジョークなんだろうと思います。
先ほども書いたように、「パイロット版の第1話ではロスの生年は未設定」だったと思われるので、ジョーイの8歳ネタを受ける形で、「ロス役の1966年生まれのデヴィッドが8歳の頃というと、単純計算で1974年になるから」という発想で、1974年の流行歌を脚本家が使った、ということなのだろうと思いました。

そして、1974年の流行歌はいくつかあっただろうと思いますが、その中で特にこの曲が選ばれたのは、先ほど説明した「南北戦争をイメージした歌だったが、当時のベトナム戦争と関連付ける人もいた」という部分が大きいように思います。
年代を感じさせる流行歌はいろいろあるでしょうが、ベトナム戦争末期に流行った反戦歌であるこの歌なら、その世代の人でなくても、「ベトナム戦争の終わりごろ」のようなイメージが浮かび、この年齢のロスがベトナム戦争の時期を言っているというその「昔」具合みたいなものが分かりやすかったのではないかなと思います。
「特定の年」より「その時代」を感じさせる歌の方が、何年前という古さを実感できるということではないかなぁ、と。


Here's the thing は、これから大事なことを切り出そうとする時の表現。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
the thing is also here's the thing : used when explaining a problem or the reason for something
例) The thing is, I'm allergic to seafood.

つまり、「ある問題、または、何かの理由を説明する時に使われる」。例文は「実は、僕はシーフードアレルギーなんだ」。

LAAD にあるように、here's the thing は、the thing is と同じような表現ということになります。
この the thing のニュアンスについては、研究社 新英和中辞典では、
thing=【名】[the 〜][通例 the thing is (,) で用いて] 重要[大切]なこと、必要なこと、その理由

thing 「こと、もの」という単語は漠然として抽象的な言葉ですが、そこに the と特定する定冠詞が付くことで、「重要[大切]なこと、必要なこと、その理由」というような意味を持つわけですね。
「ここでポイントとなっているのは」「問題なのは」「私が言いたいことは」「その理由は」など、その時の文脈によって訳はいろいろ変わることになりますが、そのセリフを読み取る側としては、何かしら重要な意見や理由がその後に続くことを示唆している、ということがわかれば良いということになるでしょう。

Even if I could get it together enough to ask a woman out について。
Even if は「たとえ〜でも」という、譲歩の仮定。
enough to do は、「〜するのに十分なほど」ですから、「女性をデートに誘うのに十分なほど」。
get it together は、研究社 新英和中辞典では、以下のように出ています。
get it together=(1) 《口語》 うまくやる、(2) 気を静める、落ち着く
「it を一つにゲットする」という感覚ですから、「うまく一つにまとめて成立させる」や「動揺、混乱していた気持ちを一つにまとめる」のようなことから、上のような語義になるのでしょうね。

Macmillan Dictionary では、
get it together : to be in control of your life, so that you are successful and are doing what you want to do
つまり、「自分の人生をコントロールしていること、その結果、自分は成功し、自分がやりたいことをやっている」。

ですから、Even if I could get it together enough to ask a woman out は「女性をデートに誘うのに十分なほど[女性をデートに誘えるほど]自分の人生をコントロールできたとしても[気持ちが落ち着いたとしても]」になるでしょう。
who am I gonna ask? は、「僕は誰を(デートに)誘うことになるの?」

最後に女性を誘ったのは8歳頃だったっけ? というくらい、長い間女性を誘ってない僕だし、仮に僕が妻が出て行ったショックから立ち直って、他の女性を誘えるほどの気持ちになれたとしても、じゃあ、一体誰を誘えばいいんだよ。「さぁ、女性をナンパしろ」って言われても、誰を誘えばいいのかわかんないよ、そんな人いないだろ、みたいなことですね。

そう言ってロスが窓の外を見つめた後、モニカの家にいるレイチェルが、窓から外を見つめている画面にカットします。
「女性を誘うって一体誰を?」というセリフの後に、女性であるレイチェルが画面に映るという演出は、その女性がレイチェルになる可能性を示していることになりますね。
この時の音楽や映像は、それまでのコメディの雰囲気とは一転した、少し切ない感じの美しいものとなっており、この二人にこの先ロマンスが始まりそうな雰囲気を醸し出していると言えるでしょう。


(「悲しみのヒーロー」は南北戦争をイメージしている、という件について)
※フレンズのセリフの解釈には直接関係しない話なので、これ以降は興味のある方のみお読み下さい(笑)。

先ほど引用した、英語版ウィキペディアでの、南北戦争のイメージに関する部分は以下のようになっていました。
But the drum pattern, references to a marching band leading soldiers in blue, and "riding out" (cavalry) would seem to be referencing the American Civil War.
「しかし、ドラムパターン、青い服を着た戦士を先導するマーチングバンドの言及、「ライディングアウト」(騎兵隊)は、アメリカ南北戦争のことを言っているように思われる」。

曲を聞いてみると、ドラムが鼓笛隊風ですし、歌詞に
The marchin' band came down along Main Street
The soldier blues fell in behind
という部分もあります。
blue は南北戦争の時の北軍の服の色で、
研究社 新英和中辞典にも、
blue=【名】《米》(南北戦争の北軍の)紺色の服
the blue and the gray (南北戦争の)北軍と南軍

と出ています。
ウィキペディアには、Paper Lace 版のジャケット画像が載っていますが、確かに服装が南北戦争のイメージです(南北戦争を舞台にした作品だと「風と共に去りぬ」が有名ですね)。

この曲は反戦歌(anti-war song)として認識されていて、Wikipedia 英語版: List of anti-war songs にも載っています。
分類としては、
General peace (普遍的な平和…ちなみに、ボブ・ディランの「風に吹かれて」もここに分類されています)に、Paper Lace 版、Bo Donaldson & the Heywoods 版の両方が載っていて、
American Civil War (アメリカ南北戦争)のカテゴリーに、Paper Lace 版のみが載っています。
この分類を見ると、「Paper Lace 版にはアメリカ南北戦争のイメージがあるが、基本的にはどちらも「普遍的な平和」を歌った反戦歌である」ということになりますね。
歌詞は同じなのですが、Paper Lace 版の方がジャケット写真などで南北戦争のイメージをより強く出していることから、そのように分類されているのでしょう。

分類としてはそういうことになると思いますが、先に引用したように「1974年にリリースされたため、リスナーの中にはベトナム戦争を連想する人もいた」という記載が、当時の時代を語るものとしてポイントになると思います。
イギリスの Paper Lace 版は、歌詞だけではなくジャケットにも南北戦争のイメージを出していますが、もしかするとそれは「ベトナム戦争に対する反戦歌であると思わせないための仕掛け」だったのかもしれないなぁ、と。
当時の世相、世界情勢を考えると、この時期にリリースする反戦歌であれば、どうしてもベトナム戦争をイメージされてしまうと思うのですね。
ですが当時行なわれていた戦争を対象にした歌だと、政治色が出てしまったり、放送禁止になったりすることもあるかもしれませんから、政治利用されたくないとか、純粋に音楽として聞いてほしいとか、時代を問わず愛される曲にしたいとか、、等々の理由で、「ベトナム戦争に対する反戦歌と認識されないように、敢えて過去(1861年〜1865年)の南北戦争のイメージを前面に出した」ということもあり得る気がします。
そのように「設定」としては南北戦争をイメージしているとは言え、戦争を歌った歌であれば自然と、その時期に行なわれていたベトナム戦争を想起してしまうだろうし、(恐らく)反戦運動の高まりが反戦歌としてのこの曲のヒットにも繋がったのでしょうから、「直接ベトナム戦争を歌った反戦歌ではないけれど、ベトナム戦争を連想する人が多い」という点で、「ロスが8歳頃の曲」として「ベトナム戦争末期の時代」をイメージしやすいこの曲を挙げた、というセリフの流れなんだろうな、と思ったということですね。


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posted by Rach at 16:41| Comment(4) | フレンズ シーズン1改 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは

Uncut 版では、ロスの "Billy, don't be a hero" の台詞の前後にチャンドラーとジョーイの台詞があり、二人には女性をデートに誘うことになんのためらいもないことが示唆されています。一方のロスは、数年前に勇気を出してキャロルと付き合い始めたものの、現在の悲惨な状況に至っています。

ロスの台詞は、脚本の段階では「僕はブランクが長かった。君たちは "don't be a hero (危険を冒さないで)" という言葉に何の意味も感じないだろうけど、僕は臆病になっているんだ。」という意味合いで書かれたものと考えられます。
Posted by mq at 2019年09月13日 16:19
mqさんへ
こんにちは。コメントありがとうございます。

歌のタイトルではなく、歌の内容のことを言っているという解釈ですね。
Uncut版ではそのセリフの前後におっしゃるようなやりとりがあったとすると、そのような解釈も成り立つのかもしれません。

これについては、私もいまだによくわからないのですが、記事内で引用させていただいた、ウィキペディア英語版の Quoted in other media での説明文では、「女性を最後に誘ってから随分長い時間が経った」ことの例えとして、このセリフを言っているように解釈されているので、私もそちらに賛同したい気がしました。

あくまで私の見解なので、参考程度にお聞きいただければ幸いです。
Posted by Rach at 2019年09月17日 13:50
こんにちは

ロスが最後に女性を誘ってから長い時間が経ってしまったのは、キャロルと結婚したためです。ロスは長い時間が経ってしまったことを後悔しているわけではありません。この場面でロスが感じているのは、悲しみではなく恐れです。

ロスの台詞の引用符部分が曲名なのか、歌詞の一節なのかは、次の (a) と (b) を対比させるとはっきりするのではないでしょうか。

(a) Does the song, "Billy, Don't Be a Hero" mean anything to you?
(b) Do the words, "Billy, Don't Be a Hero" mean anything to you?
Posted by mq at 2019年09月18日 15:40
mqさんへ
こんにちは。コメントありがとうございます。
歌のタイトルであれば Does the song になるはずというご意見、おっしゃる通りだと思いました。
貴重なご意見ありがとうございました。
Posted by Rach at 2019年09月18日 16:01
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