2016年12月02日

本当のデートでは一体何するの? フレンズ1-1改その28

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14:33
(ENTER MONICA FROM HER ROOM)
自分の部屋(寝室)からモニカ登場。
みんな: Morning. Good morning. (おはよう。おはよう。)
(ENTER PAUL FROM MONICA'S ROOM)
モニカの部屋からポール登場。
ポール: Morning. (おはよう。)
ジョーイ: Morning, Paul. (おはよう、ポール。)
レイチェル: Hello, Paul. (ハロー、ポール。)
チャンドラー: Hi, Paul, is it? (はーい、ポールだよね?)
(MONICA AND PAUL WALK TO THE DOOR AND TALK IN A LOW VOICE SO THE OTHERS CAN'T HEAR. THE OTHERS SHUNT MONICA'S TABLE CLOSER TO THE DOOR SO THEY CAN)
モニカとポールはドアのところに歩いて行って、他の人に聞こえないように低い声で話している。他のみんなは(二人の話が聞こえるように)(自分たちが今、座っている)モニカのテーブルをドアのより近くに押しやる。
モニカ: I had a really great time last night. (昨日の夜は、本当に素敵な時間を過ごしたわ。)
ポール: Thank you. Thank you so much. (ありがとう。本当にありがとう。)
モニカ: We'll talk later. (また後で話しましょう。)
ポール: Yeah. (THEY KISS) Thank you. (EXIT PAUL) (そうだね。[二人はキスする] ありがとう。[ポール退場])
ジョーイ: That wasn't a real date! What the hell do you do on a real date? (今のは本当のデートじゃなかったんだ! (じゃあ)本当のデートでは一体何するの?)
モニカ: Shut up and put my table back. (黙って[口を閉じて]私のテーブルを元に戻して。)
みんな: Okayyy! (THEY DO) (オッケー! [彼らはそうする(テーブルを元に戻す)]

寝室からモニカが登場し、リビングにいるフレンズたちは、おはようと声を掛けます。
ちなみに、ネットスクリプト(ファンがネット上に書き起こしたもの)のト書きでは、モニカの登場部分は、(ENTER MONICA FROM HER ROOM) と表記されています。
また、少し後では、(EXIT PAUL) というト書きも出てくるのですが、この Enter Monica, Exit Paul という語順がちょっと気になる、という方もおられるでしょうか?
この件につきましては、「ト書きの Enter と Exit 」として、今日の記事の最後にまとめていますので、興味のある方はお読み下さい。

モニカに続いて同じ部屋からポールが少し照れたような顔で出てきたので、「二人は昨晩をその部屋で一緒に過ごしたんだね」という感じで、フレンズたちはポールにもおはようの挨拶をしています。
そんな中、チャンドラーが、Hi, Paul, is it? 「はーい、ポール、、だよね?」と言ってニコニコしています。
みんなが「おはよう、ポール」と呼び掛けているので、名前はポールに決まってるわけですが(笑)、これはポールとの初対面の時に以下のような会話があったことと関係しています。
過去記事、Dear Diaryの瞬間 フレンズ1-1改その14 で、ポールが初めてモニカの部屋にやってきた時、
みんな: Hey! Paul! Hi! The wine guy! Hey! (やあ! ポール! はーい! ワインガイ[ワインの人]! やあ!)
チャンドラー: I'm sorry, I didn't catch your name. Paul, was it? (申し訳ない、君の名前聞き取れなかった。ポール、だったっけ?)
ポールという聞き取りやすい名前なのに、まるでわかりにくい名前であるかのようにわざと聞き返したようなジョークでしたが、それを踏まえて今回は「俺またここでもそのネタ使ってるよ」みたいに言ってみせた感覚なのでしょう。

モニカは帰るポールを見送る形で一緒にドアのところまで行って、そこでヒソヒソ声で話しています。
チャンドラーとジョーイは、ドアが見える距離まで、自分たちが座っているテーブルを動かしています。
モニカが「昨晩は、本当に素敵な時を過ごしたわ」と言った後に、ポールが、Thank you. Thank you so much. と何度も感謝の言葉を述べている様子から、「ポールとモニカが昨日の晩エッチしたこと」→「妻が出て行って以来、不能になってしまったと言っていたポールが、昨日は(モニカのおかげで)不能が治ったのであろうこと」が想像されます。

満ち足りた幸せそうな様子でキスし、ポールが帰った後、部屋に戻ってきたモニカに、ジョーイは That wasn't a real date! 以下のセリフを言っています。
That wasn't a real date! は、「今の(今回のモニカとポールのデート)は、本当のデートじゃなかったんだ!」ということで、What the hell do you do on a real date? は「本当のデートでは一体何するの?」という意味。
これは、過去記事、フレンズ シーズン1改、始めます フレンズ1-1改その1 で、
モニカ: Okay, everybody relax. This is not even a date. It's just two people going out to dinner and... not having sex. (わかった。みんな、落ち着いて。これはデートでさえないわ。ただ、二人の人間がディナーに出かけて、エッチをしない、っていうだけなの。)
チャンドラー: Sounds like a date to me. (俺にはデートに聞こえるけどな。)
というやりとりがあったことを受けてのものですね。
二人の男女が食事に出かけるだけで、エッチはしないから、デートじゃないわ、とデートであることを否定していたモニカのセリフを受ける形で、「今回のポールとのことはデートじゃない、ってモニカは言ってたから、今のはデートじゃなかったんだよね」と言ってから、「今のがデートじゃないとしたら、じゃあ、本当のデートってやつでは、一体何を[どんなことを]するんだよ?」と言ったことになります。
デート前は not having sex 「エッチはしないの」と言ってたけど、実際にはエッチしたんだろ、明らかにエッチした今回のデートをデートじゃないって言い張るんなら、本当のデートってやつでは一体どんなすごいことをするんだろうなぁ? みたいに茶化したわけですね。
そう言ってからかうジョーイに、「そんなバカなこと言ってないで(黙って)、盗み聞きするために動かした私のテーブルを元に戻しなさい」とモニカは返したことになります。


(今日のおまけ) ト書きの Enter と Exit

ト書きの (ENTER MONICA FROM HER ROOM) という表現について。
ネットスクリプト(ファンがネット上に書き起こしたもの)のト書きでは、(ENTER MONICA FROM HER ROOM) と書かれています。
enter は「(ある場所に)入る」という意味の動詞で、このト書きが指している状況としては「モニカが自分の部屋(寝室)から、画面に映っている、みんながいるリビングに入る」ということになりますが、今回のト書きの enter は「〜登場」という意味で使われています。
研究社 新英和中辞典では、
enter=【動】【自】 [Enter で] 〔演劇〕 登場する (注:脚本のト書きではしばしば3人称命令法で用いる; ⇔exit)
Enter Hamlet. ハムレット登場。


観客から見えている部屋や場所にその人が入ってくる、ということですから、演劇的に言うと「登場」が確かにしっくり来ます。
enter という単語については、ト書きでは、
モニカ : (entering) Morning.
のような形で表記されることもあります。
その場合は、セリフの主であるモニカが、「(画面に映っている)部屋に入りながら、画面に登場しながら」、おはようと言っていることになりますね。
その行動の主語はセリフの話者であることが明白なので、doing という -ing 形だけで表現していることになるでしょう。

また、今回のエピソード フレンズ1-1 では、ロスがセントラルパークに入ってきて、どんよりした Hi. を言う時の最初のト書きで、
(CUT TO SAME SET. ROSS HAS NOW ENTERED)
と表記されていました。
こちらは、Ross has now entered. という完了形になっており、has entered した主語が Ross であることがはっきりしています。

entering や Ross has now entered. という形と比較すると、Enter Monica from her room という語順は「動詞+主語」の形になっていて、何となく違和感がありますよね。
このような語順について説明してくれているのが、上で引用した研究社 新英和中辞典の「3人称命令法」になると思います。
この辞典では、「3人称命令法」の用法について詳しくは書いてありませんが、恐らくそれは、Enter, Hamlet. 「登場せよ、ハムレット」のようなニュアンスのことなんだろうと。
ハムレットが登場する(Hamlet enters.)という動きの描写・説明ではなく、「ここで(このタイミングで)誰々、登場!」という「(脚本家または監督からの)役者に対する指示」的な感覚としての「命令法」という意味だと思うのですね。
命令法・命令文だから、いきなり動詞で始まるという表記になっているということでしょう。

また、辞典の説明にあったように、enter の対義語は exit で、実際、このシーンの後のト書きに、(EXIT PAUL) というものが出てきます。
登場の反対ですから、「ポール退場」ということですね。
その exit については、研究社 新英和中辞典では、以下のように出ています。
exit=【動】【自】 [Exit で] 〔演劇〕 退場する (注:脚本の卜書きで単数の主語の前に用いる; ⇔enter; 参照: exeunt)
Exit Hamlet. ハムレット退場。


こちらの説明では「3人称命令法」という用語ではなく、「単数の主語の前に用いる」と書かれていますが、いずれにしても、「Enter/Exit+主語(人物名)」という特殊な形で用いられることがわかりますね。
Enter Monica や、Exit Paul というト書きは、ト書き特有の表記方法だった、ということになります。
シーズン10のファイナルを迎えるまで、entering というト書きについては、「(画面に映っている部屋に)入ってきて」という感じで私は訳していました。
キャラの行動も実際に「(部屋に)入ってきて)」という感じなので、その訳で特に問題なかったとは思うのですが、それらもト書き的には「(画面に・舞台に)登場しながら」のニュアンスが近かったのかな、と今さらながら(笑)思ったりします。

今回のエピソード フレンズ1-1 では、ここに至るまでの解説で、既に「Enter+人物名」という形が登場していました。
過去記事、そして俺は百万ドル欲しい フレンズ1-1改その5 で、レイチェルがウェディングドレスで入って来た時のト書きで、それは以下のようになっていました。
(ENTER RACHEL IN A WET WEDDING DRESS. SHE STARTS TO SEARCH AROUND THE ROOM)
Enter Rachel という表記と、She starts という表記とを見比べると、その Enter+人物名という書き方が独特である(通常の文体ではない)ことがよくわかりますね。
この部分の解説を書いた時には、「濡れたウェディングドレスを着たレイチェルが入ってくる」と訳したのですが、ここも「濡れたウェディングドレスを着たレイチェル登場」と書いた方がよりト書きっぽかったということになるでしょう。

今回、Enter Monica の語順に引っかかったのは、フレンズ8-23 で、
フィービー: Enter Pheebs! (フィービー登場!)
というセリフが出てきたことがあったからです。
まさにその語順の「Enter+人物名」のト書きが、フレンズ1-1 のト書きに実際に出てきたので解説させていただきました。

フレンズ8-23 でもご紹介したのですが、この「Enter+人物名」が英語の原題になっている有名な映画があります。
原題が Enter the Dragon であるその映画の邦題は、ブルース・リーの「燃えよドラゴン」です。
つまり、原題は「ザ・ドラゴン登場」というニュアンスのタイトルであるということですね。


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posted by Rach at 13:47| Comment(2) | フレンズ シーズン1改 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは

enter と exit で文法的な扱いが違うのはなぜだろうと不思議に思い、少し調べてみました。

enter も exit も、主語が単数のときに -s を付けない点で見かけは同じですが、enter は英文法の命令法、exit はラテン語文法の直説法ということのようです。ラテン語の直説法・3人称の単数が exit で、複数が exeunt です。おそらく、シェイクスピアの時代には enter が英語、exit がラテン語と認識されていたのでしょう。

1-1改その30 に (EXIT JOEY AND CHANDLER) と出てきますが、伝統的には (EXEUNT JOEY AND CHANDLER) と書くべきことになります。

現代もシェイクスピアは読まれているはずなので、倒置のト書きを好む脚本家もいるかもしれませんが、Warner Bros. Television の台本は普通の書き方になっています。

Posted by mq at 2016年12月10日 08:54
mqさんへ
こんにちは。コメントありがとうございます。

英文法の命令法と、ラテン語文法の直説法のように、それぞれの文法事項が異なっているという件、非常に興味深いです。
上で引用させていただいた 研究社 新英和中辞典 では、exit の語義に参照として、exeunt も出ていました。
その辞典では、それぞれの語源として、
exit (語源)ラテン語「出て行くこと」の意
exeunt (語源)ラテン語 ‘they exit' の意
と出ており、exeunt の語義には以下の説明がありました。
exeunt 【動】【自】〔演劇〕 退場する 《昔の脚本の卜書きで複数の主語の前に用いた。参照: exit2》

exeunt は「複数の主語の前に用いる」ということであれば、ご指摘の通り、(EXEUNT JOEY AND CHANDLER) と書くべきになりますね。
exeunt は、LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
exeunt : a word written in the instructions of a play to tell two or more actors to leave the stage
つまり、「二人以上の俳優に、舞台を去れと言う[舞台を去るように言う]ために芝居の指示に書かれる言葉」。

exeunt は英和でも英英でも、この意味でしか載っておらず、「脚本に使う専門用語」になるのでしょうね。シェイクスピア的な伝統に則って、今でも厳密に複数の場合には使い分けている人もいるでしょうが、enter と同様に、一般的な単語である exit を単複の区別なしに使うことが、通例となってきている、ということなのでしょうね。

興味深いコメントありがとうございました!
Posted by Rach at 2016年12月12日 15:09
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