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前回の記事、ワンとア・ホール・ナザー フレンズ1-5改その15 で取り上げた a whole nother という表現について、非公開コメントで興味深いご意見を頂戴しました。
前の記事の訂正と追加の解説として、a whole nother について、今日新たに1つの記事として投稿させていただきます。
a whole nother が出てきたセリフは以下のものでした。
ロス: Okay, um, basically, you wanna use one machine for all your whites, okay? A whole nother machine for, for your colors. (よし、基本的に、洗濯機の一つは白物に使うといいよ。別の洗濯機は色物用に。)
日本語訳としては、a whole nother =別の、という意味になるのですが、その単語の成り立ちと、細かいニュアンスについてご意見をいただき、私ももう一度考えてみました。
その結論をまずは簡単に説明させていただきますと、
1. a whole nother の造られ方
another という単語の間に、whole という単語を挿入して強調したものである。
2. a whole nother の意味
「全く同じ別のもの」というより、シンプルに「違うもの、別のもの」を強調したニュアンスが近いと思われる。
まず、1. の「単語の造られ方」について。
私は前回の記事で「'nother は another の語頭の a が取れたもの」と説明したのですが、非公開コメントで教えていただいた以下のサイト情報によると、どうやら「another に whole をはめ込んで」造られた語のようです。
参考サイト、まずは Wiktionary から。
Wiktionary : a whole nother
a whole nother
Etymology : Insertion of whole into another by tmesis.
つまり「語源:分語法による whole の another への挿入」
参考までに、tmesis という単語(発音はトゥミースィス)は「分語法、複合語分割」と呼ばれるもので、「単語やフレーズを2分割した間に別の単語を挿入すること」。
次に、LDOCE(Longman Dictionary of Contemporary English)から。
LDOCE online.com : a whole nother
a whole nother ... : (informal) used humorously when emphasizing that something is completely different from what you have been talking about. It is a changed form of ‘another whole’
つまり「自分が話していたこととは全く違うということを強調する時にユーモラスに使われる。'another whole' が変化した形」。
another whole が変化した形、ということですから、この LDOCE の説明も「another の間に whole が割り込む形で、a whole nother になった」ということだと解釈できそうですね。
確かに、another は、an other で、元々 a/an の意味が含まれているので、a whole another だと考えると、a/an が重複することになってしまいますよね。
a whole nother を a whole 'nother のように、アポストロフィー付きで表記してあるものがあったので、前回の記事で私は(about を 'bout と表記するのと同様に)'nother = another だと考えてしまったのですが、そのアポストロフィーは a の省略を示すものであろうけれども、完全に省略されてしまっているのではなくて、whole の前に離れた形で既に出ている、ということになるだろうと思います。
ご意見をいただいて私もさらに調べてみて、興味深い記述を見つけたのでご紹介します。
オンラインスラング辞典の Urban Dictionary の説明が以下。
Urban Dictionary : nother
Derivative of "another" usually used when someone says "that's a whole nother issue" or something along those lines. The correct way to say it is "a whole other issue". "Another" translates to "an other", but people mistakenly believe it translates to "a nother". When you put a word like "whole" in-between "an other" the "an" changes to an "a" because "whole" starts with a consonant instead of a vowel.
訳させていただきますと、「"that's a whole nother issue" などのようなセリフを言う時に使われる、another の派生語。正しい言い方は "a whole other issue" である。another は an other に言い換えられるが、人は a nother と言い換えられると間違って信じている。an other の間に whole のような単語を挿入する時、whole は母音ではなく子音で始まるので、an は a に変わる」。
ネイティブなら an other のように切れ目が入るとわかっているような気がするので、「another=a nother だと勘違いしている人がいる」とは言い切れないと思うのですが、それ以外の部分について上の説明を言い換えると、、、
元々、another という単語は an other から来た言葉で、another を2分割するとすれば、本来なら an-other になるはずだが、その2分割で whole を挿入しようとすると、an whole other のように、whole という子音始まりなのに an が付いてしまうことになるので、a whole nother のように whole の前は a にして、whole の後に残りの nother が来るという言い回しになった、、、
ということなのでしょう。
前回書いたように、DVD英語字幕では、a whole other と表記されていました。
本来、another の間に whole を挿入するのであれば、an whole other →(an whole はおかしいので an を a に変えて)a whole other という流れになるはずで、文法的にも、それぞれの単語の意味的にも、そちらが正しいということになるでしょう。
それで、公式な字幕となる DVD英語字幕ではそのように表記してあると思われるのですが、実際のロスの発音は「ア・ホール・ナザー」と言っているようですし、Netflix の字幕も a whole nother と表記されていました。
オンライン辞書などにも出ていますし、非標準的用法であるけれども、この言い回しを使うネイティブは多いということでしょうね。
いただいた非公開コメントの中では、このような「ある単語を、2分割した単語の間にはめ込む」例として、SATC (Sex and the City)の abso-f*cking-lutely. を挙げて下さっていました。
(SATC の英語字幕では伏字なしで表示されていましたが、卑語なのでここでは f*ck のように伏字にしておきます)
この表現は、SATC 1-1 の最後のセリフで、私の最新刊「リアルな英語の9割は海外ドラマで学べる!」の p.133 でご紹介した、Thanks for the ride. - Anytime. という会話のすぐ後に出てくるものなので、私も強く印象に残っていました。
そのやりとりは以下のようになっていました。
キャリー:Wait. Have you ever been in love? (待って。今まで(本気で)恋愛したことある?)
ミスター・ビッグ:Abso-f*cking-lutely. (もちろんだよ。)
誰かが質問してきた時に Absolutely. と答えると「もちろん。まったくそのとおり。そうですとも/そうだとも」のように Yes. を強調したニュアンスになりますね。
このミスター・ビッグの返事も、「もちろん本気の恋愛をしたことあるさ」という意味で Absolutely. と答えるところを、それをさらに強調、しかも恋愛行為を意味する卑語(f*ck)を使った強調語 f*cking を分語法で挿入する形で強めているというのが、下品とされる卑語を使っていながらも、どこかしゃれている、センスがある印象を与えている気がします。
普段から言葉の端々に強調として f*cking をつけてしゃべるキャラであれば「いつもの強調」ということで済んでしまうのですが、ミスター・ビッグは洗練された紳士の雰囲気を漂わせている男性で、あまり下品な言い回しは使わない印象ですから、その彼が第1話の最後の最後のセリフで「恋愛したことある?」の答えとして、Abso-f*cking-lutely. と言ったのが余計に際立ち、強い印象を与えると思うのですね。
少し脱線しますが、日本語で「もちろん」を強調する時に「モチのロン」と表現することがあります(今はもう死語のようですが ^^)。
上のミスター・ビッグのセリフを「モチのロン」と訳してしまうと、雰囲気ぶち壊しになりそうなのでやめましたが、2分割した間に別の言葉を挟むという分語法の観点で見ると、日英二つの言葉の成り立ちに似たものを感じられる気がしました。
次に、2. の「意味」について。
先にご紹介した、Wiktionary では以下のように出ていました。
a whole nother : (informal, proscribed) An entirely different; an intensified version of another.
つまり「(インフォーマル、規定外用法)全く違う、another を強めたもの(強化版)」。
Dictionary.com では、
Dictionary.com : whole 'nother, a
whole 'nother, a : (adjective phrase) Completely different; new
つまり「全く違う、新しい」。
Merriam-Webster.com では、
Merriam-Webster.com : whole nother
whole nother : (US, informal) completely different
つまり「全く違う」。
これらのオンライン辞書を見ると、completely different 「全く違う」というニュアンスで共通していますね。
前回引用した LAAD の語義では「全く同じタイプの別のもの」「全く違うもの」という2種の語義があって、「コインランドリーという同じタイプの洗濯機がずらっと並んでいる場所だから”同じタイプ”のニュアンスで使っているんだろう」と私は解釈したのですが、それに対して、非公開コメントで「ロスの台詞も、洗濯物を分けることに重点があって、洗濯機の型式は同じでなくてもよいわけですから (洗濯物込みで) different の意味にとる方が良いのではないでしょうか」というご意見を頂戴しました。
オンライン辞書に出ているように、completely different という意味でもっぱら使われているのであれば、「洗濯機の型式が同じ」ということは特に関係なく、単に洗濯物を分ける説明においての「1つは白物、”別の”洗濯機は色物」という different の意味だと捉えた方が自然な解釈だと、私も今は思えます。
ということで、まとめますと、
a whole nother は、another の間に whole を挿入した形の、another の強調語。
意味は、completely different 「全く違う」。
ということになります。
以上、長くなりましたが、前回の訂正と追加解説でした。
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コメントありがとうございます。
tmesis という言葉、見た瞬間に「これ、何て読むの?」と思うような不思議な単語ですよね^^
Abso-f*cking-lutely. という表現もずっと面白いなと思っていたので、分語法の流れで一緒にご紹介できたこともとても嬉しく、その記事を興味深くお読みいただけたとしたら、本当に光栄で嬉しく思います。
こちらこそ、温かいコメントありがとうございました<(_ _)>