2018年04月06日

フロイト的精神分析を歌にする フレンズ1-6改その2

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(LIGHTS GO UP ON THE STAGE: JOEY (AS FREUD) TALKING TO A FEMALE PATIENT)
舞台に照明がつく。(フロイト役の)ジョーイが女性患者に話しかけている。
ジョーイ: Well, Eva... we've done some excellent work here. And I would have to say, your problem is quite clear. (あぁ、エヴァ… ここで我々は素晴らしい仕事をした。そして私はこう言わないといけないだろう、君の問題は全く明白であるとね。)
(GOES INTO A SONG AND DANCE NUMBER)
歌とダンスナンバーに移る。
All you want is a dinkle (君が欲しいのは、おちんちんだけ)
What you envy's a schwang (君がうらやましいのは、おちんちん)
A thing through which you can tinkle (それを通じておしっこできるもの)
To play with or simply let hang (もて遊んだり、ただぶら下げておいたり)

今回のお芝居のタイトルが FREUD!(フロイト!)となっている通り、ここからのお芝居の中で、ジョーイは精神分析学者ジークムント・フロイト(Sigmund Freud)を演じています。
フロイトはオーストリア人で、オーストリアの公用語はドイツ語であるために、ジョーイは英語のセリフをわざとドイツ語っぽく発音しています。
そのわざとらしい感じがまた、コメディーとしては笑いを誘うのでしょうね。
ドイツ語では、母音の前の s は z と発音し、w は v と発音しますので、エクセレント・ワーク(excellent work)が、エグゼレント・ヴァークのように聞こえるのはドイツ風発音だということです。

「我々は良い仕事をし、君の問題が明白になった」というのは、フロイトの精神分析により、患者である君の問題が何であるか明らかになった、ということですね。
その後、ジョーイが演じるフロイトが歌い始めると、観客からは笑い声が起きています。

dinkle と schwang はどちらも penis を指すスラングです。
(この後、それ系の単語や表現がたくさん出てきますが、それを避けるとこの歌詞が説明できないのでご容赦下さい)
一般的な英英辞典には載っていませんでしたが、オンラインスラング辞典である Urban Dictionary には以下のように出ていました。
Urban Dictionary : dinkle
その2番目に出ている語義では、以下のように説明されています。
dinkle : A small penis, especially on a male who is past puberty. Another term for weenie.
つまり「小さな penis、特に思春期を過ぎた男性の。weenie の別の語」。
ちなみに、weenie という単語は、後のフレンズで確かに penis の意味で出てきます。

この Urban Dictionary の例文は、
Bob's 5 inch penis is a dinkle.
のようになっていて、4インチから8インチまでが5つの例文で書かれており、それぞれ penis を表す違った単語が使われています。
長さと単語の組み合わせに興味のある方(笑)は、併せてご参照下さい。

schwang も同じく、Urban Dictionary で。
Urban Dictionary : schwang
schwang : a slang form of the word penis

envy は「人・ものをうらやむ、うらやましいと思う」。
歌の最初の2行で、「君が欲しいと思っているのは、君がうらやましいと思っているのは」と表現し、それぞれ penis を表す2種類のスラングを使っているわけですね。

A thing through which you can tinkle の which は関係代名詞で、「それを通じて・通して tinkle できるもの」という構造。
tinkle は「おしっこをする」という意味で、こちらは普通に英和、英英辞典に載っています。
「ティンクル」という響きから想像されるように、「(鈴などが)チリンチリンと鳴る」という意味があり、それと同時に「おしっこ(をする)」という意味でも使われます。

LAAD (Longman Advanced American Dictionary) で、おしっこの意味を見てみると、
tinkle : a word meaning to urinate (= pass liquid waste from your body), used especially by and to children
つまり「排尿する(体から液体の排泄物を出す)ことを意味する単語、特に子供によって、または子供に対して使われる」。

子供が使う言葉ということですからやはり「おしっこ」という訳がふさわしいでしょう。

ちなみに「フルハウス」でも、tinkle が使われているセリフがありましたので、併せてご紹介しておきます。
フルハウス1-4 で、みんなが玄関ドアの外に出た後、ミシェルを抱っこして家の中に戻ったパパのダニーが、怒ったように言っています。
ダニー: How many times do I have to tell you? Make a tinkle before you leave the house. (何回言わなきゃいけないんだ[何回言えばわかるんだ]? 家を出る前におしっこをしろって(いつも言ってるだろ)。)
その後、ジョーイ(・グラッドストーン)が速足で家の中に入ってくる。

パパであるダニーが幼児語である tinkle を使い、「家を出る前におしっこしとけって、何回言ったらわかるんだ?」と表現していることから、(末っ子のミシェルは赤ちゃんで、おしめをする年齢なので違うとして)次女のステフなどに対して言っているように思えるセリフとなっています。
その後、開けたドアから、急いで入って来たのが大人のジョーイで、「出かける前におしっこしとけ、って言っただろ!」と叱られてるのはジョーイかよ! というオチになります。

ジョーイ(・トリビアーニ)が歌う歌詞の内容に戻ります。
To play with or simply let hang の前半は「それを使ってプレイする、それをおもちゃにする」→「もて遊ぶ、いじる」のような感じでしょう。
simply let hang は「単に吊り下げておく」→「ただぶら下げておく」ですね。

歌詞全体を見てみると、penis を持っていない女性患者に対して「おしっこができたり、もて遊んだり、単にぶら下げたりできる penis を、君は欲しいと思ってる、うらやましいと思ってる」ということが分析の結果わかった、と言っていることになります。

フロイトの精神分析論では、リビドー(性衝動)などの性に関係した理論が述べられていることが多いですね。
フロイトの精神分析論を学問として詳しく知らない人は、フロイトと言えば性的な事柄…という連想が働いてしまいがち。
それでエッチな方面の安易な連想として、ひたすら penis のことを語る歌を歌っている、という流れになります。
フロイトを題材にしていながら、何とも深みのない軽薄な演劇に成り下がってしまっている、というのがよくわかる歌だということですね。

これより後のエピソード、フレンズ1-11 の中で、
She's always been a Freudian nightmare.
というセリフが出てきます。
Freudian は「フロイトの」という形容詞で、研究社 新英和中辞典では「フロイト(派)の」という意味以外にも、
《口語》〈言動が〉無意識層における性に関する[から生じる]
という意味も出ています。
また、同じく研究社 新英和中辞典には、以下のような表現も出ていました。
Freudian slip=【名】【C】 フロイト的失言 《無意識の動機・願望などを露呈するような失言》

LAAD では、
Freudian [adjective] :
2. a Freudian remark or action is connected with the ideas about sex that people have in their minds but do not usually talk about

つまり「フロイト的発言・行動は、人が心に抱く、しかし普段はそれについて語らない、性についての考えに関係している」。

フレンズ1-11 の She's always been a Freudian nightmare. というセリフは、日本語字幕では「エロエロ魔」と訳されていました。
「彼女は常にフロイト的悪夢だった」ということですから「無意識のうちに性的なことに指向する」さまを、悪い意味でそのように表現したのでしょうね。
「フロイトの」という形容詞がそのような意味で使われることからも、フロイトの名前には「無意識下での性に関する〜」というイメージを持つ人が多いことがうかがえますね。


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posted by Rach at 16:42| Comment(4) | フレンズ シーズン1改 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Rachさん、こんばんは

tinkle(ティンクル)と聞くとつい「きらきら星(ティンクル、ティンクル、リトルスター)」を連想してしまいますがそっちは twinkle(トゥインクル) でしたね。(^^;)

演劇内容はジョーイにぴったりなのに dinkle と tinkle、schwang と hang が韻を踏んでいるところはジョーイらしくないと思いました。(笑)

では。
Posted by aki-kiyo at 2018年04月06日 21:53
aki-kiyoさんへ
こんにちは。コメントありがとうございます。

まずは、tinkle と twinkle の2つ、音が似ていますよね。私も、tinkle の音を聞いた時は、きらきら星の歌が頭に浮かびました☆

それから「韻を踏んでいる」のお話、おっしゃる通りですね。英語の歌と言えば押韻なのに、私はスラングの説明にばかり気を取られ(笑)、押韻について考えるのをすっかり忘れていました。

それぞれ、-inkle, -ang という部分がきちんと韻を踏んでいますね。大事な部分を意味する2種類のスラングが、「おしっこをする」「ぶら下がる」という、それを連想させる動詞とうまく押韻しているのはあっぱれですね^^
使われている単語のレベルが(お下品という意味で)低いのに、押韻の音と意味のマッチ具合はかなり高度で、さすがはフレンズの脚本! と思いました。

貴重なご指摘、ありがとうございました<(_ _)>
Posted by Rach at 2018年04月07日 14:35
Rachさん、おはようございます。

>さすがはフレンズの脚本! と思いました。

そうですね。ボキャ貧キャラのジョーイの押韻と才媛(Rachさん)のぶら下がり解説というミスマッチクロスオーバーも大変楽しく勉強になりました。(^^)

ありがとうございます。

では。
Posted by aki-kiyo at 2018年04月08日 09:53
aki-kiyoさんへ
おはようございます。ご丁寧なお返事ありがとうございます。

まずは「才媛」とのお褒めのお言葉、誠にありがとうございます♪
それから、一つひとつのセリフにくっついて追いかけている感じの私の解説スタイルと、今回の hang の話ともかけての「ぶら下がり解説」という表現、大変気に入りました(^^)

改シリーズになり、セリフにじっくり取り組むようになったことで、この手のセリフも避けることなく解説するぞ! という気持ちにもなれるわけですが、興味深い押韻の話もいただけたことで、これからも恥ずかしがらずに解説していきたいと気持ちを新たにしました。

温かいコメントありがとうございました!
Posted by Rach at 2018年04月09日 09:28
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