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[SCENE: Cuts back to Chandler in the ATM vestibule]
シーン:ATMコーナーのチャンドラーに画面がカット。
チャンドラー: (Voice over. Thinking to himself) Oh, my God! It's her. It's that Victoria's Secret model. Something, something Goodacre. ([ボイスオーバー:心の中でひそかに考えている] なんてことだ。彼女だ。あのヴィクトリアズ・シークレットのモデル。何とか、何とか・グッドエーカーだ。)
[Jill is on her mobile phone]
ジルは自分の携帯電話で話している。
ジル: Hi, Mom, it's Jill. (はーい、ママ。ジルよ。)
チャンドラー: (Voice over) She's right. It's Jill. Jill Goodacre. Oh, my God! I am trapped in an ATM vestibule with Jill Goodacre. Is it a vestibule? Maybe it’s an atrium? Oh, yeah, that is the part to focus on, you idiot. (彼女が正解。ジル、ジル・グッドエーカーだ。なんてこった! 俺はATMベスタビュールにジル・グッドエーカーと閉じ込められてる。(それって)ベスタビュールかな? もしかしてアトリウムかな? あぁ、そうかい、それが、お前が焦点を当てている[フォーカスする、気になる]部分なんだな、このおバカ。)
ジル: Yeah I'm fine. I'm just stuck at the bank in an ATM vestibule. (えぇ、私は大丈夫。銀行で ATMベスタビュールの中に足止めされてるの。)
チャンドラー: (Voice over) Jill says vestibule, I'm going with vestibule. (ジルがベスタビュールと言うのなら、俺は[俺も]ベスタビュールで行こう[行くぞ]。)
ジル: I'm fine. No, I'm not alone. I don't know, some guy. (私は大丈夫。いいえ、一人じゃないわ。わからないけど、ある男性[名前の知らない男の人]よ。)
チャンドラー: (Voice over) Oh, some guy. I am some guy. Hey Jill, I saw you with some guy last night. Yes, he was some guy. (As he is saying this to himself, he starts to walk towards Jill, smiling. Jill gives him a strange look, and he turns back and pretends to dance) (おぉ、ある男性。俺は”ある男性”なんだ。ねぇ、ジル、私、昨日の晩、あなたがある男性と一緒にいるのを見たわ。そうよ、彼はある男性なの。[独り言で(心の中で)こう言いながら、チャンドラーはジルに向かって歩き始める、微笑みながら。ジルはチャンドラーに怪訝そうな視線を送り、チャンドラーは向きを変え後戻りし、ダンスをしている真似をする])
過去記事のト書きに書いてあったので既に説明しましたが、ヴィクトリアズ・シークレットは下着(ランジェリー)のブランドでしたね。
正しくは Victoria's Secret ですが、DVD英語字幕では、Victoria Secret のように所有格の -'s がない表記になっていました(Netflix では -'s ありの表記)。
something Goodacre は「なんとか・グッドエーカー」というニュアンス。
名前の一部が思い出せない時には、わからない部分をこのように something で置き換えるのですね。
日本語でも「なんとか[なんちゃら]太郎」のように「なんとか」という言葉で置き換えるのと同じ感覚になるでしょう。
She's right. は「彼女は正しい」。
ジルはママとの電話で「私よ、ジルよ」と自分の名前を名乗っただけですが、彼女の名前何だったっけ〜、、と悩んでいるまさにその時に正解を言ってもらえたので、「そう、彼女が正解」みたいに言っているのが面白いということですね。
trap は名詞で「わな」。他動詞では「わなで捕らえる」「人を狭いところに閉じ込める」という意味なので、受身形では「〜の中に閉じ込められている」になります。
ATM vestibule / atrium は日本語で言うところの「ATMコーナー」ですが、それを ATM vestibule と呼ぶか、ATM atrium と呼ぶかでチャンドラーは悩んでいます。
vestibule は「玄関ホール、ロビー」で、atrium は「天井がガラスになった吹き抜けの空間」を指します。アトリウムは今では日本語になっていますが、発音は「エイトリアム」。
ATM は automated [automatic] teller machine 「現金自動預け払い機」のことですね。teller は「(銀行の)出納係、窓口係」という意味があります。
that is the part to focus on, you idiot は、有名モデルと二人きりで密室に閉じ込められているというこの時に、vestibule か atrium かで悩んでいる、そんなことが焦点になっている、自分自身のバカさ加減にあきれているセリフですね。
「こんな時に、何くだらないことで悩んでるんだ、お前はバカか!」と自分に対して怒っている感覚です。
stuck は「行き詰まって、動かない、動きが取れない」。
身体がつっかえる、のような物理的なものから、「(事情があって)ある場所から動けない、やっかいなものを押し付けられる」という意味もあります。
go with は「〜で行く」なので「〜の線で行く、〜を選ぶ」というニュアンス。
どっちにするか悩んでいたけど、ジルが vestibule と言うのなら、俺も vestibule で行こう、行くぞ、俺もそっちを選ぼう、という感じ。
some guy は「ある男性」。
あえて詳しい情報を言いたくない、もしくは言う必要がない、詳しい情報を知らないから詳しいことは説明できないような場合に、some 「ある、どこかの」という形容詞をつけてぼかす表現です。
また、some には「たいした、なかなかの」という褒め言葉の意味もあり、It / That was some party. なら「なかなかのパーティーだった、なかなかの盛会だった」という意味になります。
その褒め言葉の意味を皮肉っぽく逆の意味に使うこともあり、Some friend you are! なら「君はたいした友人だね!」と、ちっとも友人らしいことをしてくれない相手に対する皮肉になります。
今回のセリフの場合は、「たいした、なかなかの」という褒め言葉ではなくて、「ある、どこかの」というニュアンスでしょう。
ジルが「ある男性に会ったの」と人に語る様子を想像して、「ある見知らぬ男性」という言葉の響きにかっこいいものを感じた、「謎めいたある男性」っぽい響きを感じて喜んでいるのでしょうね。
それで嬉しくなってついジルの方に近寄ってしまうのですが、ジルが怪訝そうな表情を見せたので、「俺はただ踊ってるだけ」のようなふりをしてまた離れていくことになります。
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このエピソードでは、この後にジョーイの電話での不明瞭なアドバイス、チャンドラーの Like that thought never entered my mind. という返事、5人の my weirdest place の話が続きます。
停電で個室状態になった ATM でチャンドラーが妄想するジルとジルの友人との翌日の会話 Yes, he was SOME guy. は、「そうよ、彼はなかなかの男だったわ。」と解釈すると、すべてがつながってくるように思います。
こんにちは。貴重なご意見ありがとうございます。
コメントを読ませていただいて、Yes, he was SOME guy.=「そうよ、彼はなかなかの男だったわ」という解釈が正しいように私にも思えました。
some には「ある、どこかの」とボカす意味と、「たいした、なかなかの」と褒める意味があるわけですが、このチャンドラーの心の中のセリフはその両方の意味を使ったオチになっていた、ということですね。
英語ではずっと some guy という表現でセリフが続いていきますが、それぞれのニュアンスを出して訳すと、
ジル: I don't know, some guy. (わからないけど、ある男性[名前の知らない男の人]よ。)
チャンドラー: Oh, some guy. I am some guy. (おぉ、俺はサム・ガイなんだな。)
ジルの友人: Hey Jill, I saw you with some guy last night. (はーい、ジル。昨日の晩、あなたがある男性と一緒にいるのを見たわよ。)
ジル: Yes, he was SOME guy. (そうよ、彼はなかなかの男だったわ。)
という感じになる、ということですよね?
最後の部分は確かに SOME を強調して発音していますし、友人とジルとの(空想の)会話で「ある男性と一緒だったわね」「ええ、彼はある男性だったわ」ではただのオウム返しで、不自然かつ特に面白みもない会話になってしまいます。
友人が「ある男性」という言葉を使ったことに対して、「えぇ、かれは”なかなかの男”だったわ」と返す → 翌日そんな風に語られるような仲になっている → 停電の個室状態で二人の中が進展する、というチャンドラーの妄想ぶりが、最後の some の意味ありげな強調に出ていた、ということだったわけですね。
貴重なご意見ありがとうございました<(_ _)>