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16:24
[Enter Chandler]
チャンドラー登場。(慌てて出て行ったモニカとフィービーを見ながら、店に入ってきて)
チャンドラー: What the hell was that? (今のは一体何だったんだ?)
ロス: Oh, uh, Phoebe just started her... (あぁ、その、フィービーがちょうど彼女の(ライブ)を始めたところで…)
チャンドラー: Yeah, I believe I was talking to Joey. All right, there, mother-kisser? [Goes to the counter] (あぁ、俺はジョーイに話してたつもりだったんだけどな。いいか、マザー・キッサー[ママにキスするやつ]? [カウンターのほうに行く])
ジョーイ: [Laughing] "Mother-kisser." [Sees Ross's look] I'll shut up. ([笑いながら]「マザー・キッサー」(だって)。[ロスの視線を見る] 俺、黙るよ。)
ロス: Chandler, can I just say something? I-I know you're still mad at me, I just wanna say that there were two people there that night. Okay? There were two sets of lips. (チャンドラー、ちょっと言わせてもらっていいか? 君が僕にまだ怒ってるのはわかってるけど、ただこう言いたいんだよ、あの夜あの場所には2人の人間がいたんだ、って。だろ? 2組の唇があったんだよ。)
チャンドラー: Yes, well, I expect this from her. Okay? She's always been a Freudian nightmare. (あぁ、そうだな、こういうこと(が起こりえること)はあの人から予想できるよ。だろ? あの人はずーっとフロイト的悪夢だったんだ。)
モニカとフィービーが店から走って出て行ったので、チャンドラーは「今のは一体何だったんだ?」と言いながら、店に入ってきます。
ロスが「フィービーがライブを始めたところで…」と説明しようとすると、チャンドラーは「俺はジョーイに話してたんだけど」と言った後、ロスに mother-kisser と言います。
その後、その言葉を聞いたジョーイは大ウケしてその言葉を繰り返し、ロスに睨まれて「俺、口閉じとくよ[黙っとくよ]」と言います。
mother-f*cker(または ハイフンなしの motherf*cker)という卑語があり(f*ckがかなりキツい卑語なので伏字にしています)、mother-kisser は、それをもじったもの。
f*ck は、アクション系やマフィア系の荒っぽい映画などで、f*cking の形で「ひどい、いまいましい」という強調語として登場したりする単語ですが、f*ck というのは「性交(する)」という意味を最も直接的に表現する卑語なので、f*cking などと一部が伏せ字にされることも多い、いわゆる「タブー(taboo)語」です。
F*ck you! などの「ののしり言葉」を知っている人は日本人にも多いですが、日本人が想像している以上にキツい表現ですから、そういう単語を知ったかぶりして使うのは大きなトラブルの元になるので気をつけたいところ。
ゴールデンタイムに放送されていたテレビドラマであるフレンズでは、当然、f*ck のような単語は出てきませんが、今回のセリフは、「motherf*cker という卑語を知っているから、motherkisser という言葉に笑える」という、放送コードを巧妙にクリアした感じの、ある種の変化球とも言えるもので、いかにもフレンズっぽい表現だと思います。
上で説明したように、f*ck は「エッチする」を露骨に表現した卑語ですから、motherf*cker は「自分の母親とエッチするような最低のやつ、軽蔑すべきやつ」という、相手をののしる言葉です。
ここでは、実際に、ロスはママ(自分のママではなく、友人チャンドラーのママではありますが)とキスしているので、f*ck を kiss に変えて使って、「お前は最低なやつだ」と、ののしっているわけです。
よく使われる卑語とかけた形で、なおかつ、ロスが実際にしたことも盛り込まれているという二重の非難が込められた言葉、それが、mother-kisser だということです。
なお、motherf*cker という卑語は、「最低なやつ」と人をののしる言葉として使われる以外に、物や出来事に対して「ちくしょう、くそっ、ふざけるな」と毒づく言葉としても使われます。
映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』[2:28:41] では(ネタバレになるので状況の説明は伏せますが)、
ニック・フューリー: Oh, no. Mother... (あぁ、だめだ。ちくしょう……)
というセリフがありました。
このマザーは「お母さーん…」ではなく、motherf*cker と言おうとして、セリフが途中で途切れていることを示しています。
「くそっ! ちくしょう!」のような、悪態をつく、ののしり言葉(curse word)ということです。
フューリー役の俳優サミュエル・L・ジャクソンが様々な作品で使っている、彼の代名詞とも言えるフレーズであることもポイントの一つでしょう。
このセリフをよく聞いてみると(字幕には出ていませんが)Mother の後にかすかに f の摩擦音が聞こえます。文字にすると、Motherf... のような感じです。
卑語の話の流れで、同じく映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』[1:19:57] では、
ピーター・クイル: Chill the eff out. (落ち着きやがれ[落ち着けってんだ]。)
というセリフが出てきました。
chill out は「落ち着く、冷静になる」。chill は動詞で「冷える、冷やす」、名詞で「冷え、冷たさ、寒さ」という意味があります。
「落ち着け」と言いたい場合には、Chill out. の他に、Take a chill pill.(直訳すると「鎮静剤を飲め」)も使えます。また、一語で Chill. と表現することもできます。
Chill out. の間に入っている the eff の eff の読みは「エフ」。
卑語 f*ck の頭文字 f (エフ)から来た単語で、f と表現することで、f*ck(または f*cking)の意味だということを示唆しています。
このクイルのセリフは、意味としては f*cking で強調している感覚で、でも、その言葉を直接使うのははばかられるため、頭文字の f = eff だけにとどめたことになります。
和訳を通常より、荒っぽく下品な言い方にしてみると、卑語で強調したニュアンスが出るように思います。
ピーター・クイルはガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのメンバーで、彼らはラフで下品な言葉もあまり抵抗なく使う人たちですが、そのクイルでさえ(実際には、放送・上映コードの問題ですが)、Chill the eff out. のように、ダイレクトに f*ck という言葉を使うのは避け、eff で代用した、ということになります。
アベンジャーズはヒーロー映画で、ちびっこたちにも広く見てもらいたいわけですから、卑語っぽい表現であっても、Mother(f)... のように卑語が出てくる直前で止めたり、eff = f を使って卑語の代わりであることを示したりと、表現に様々な工夫を凝らしているのに注目してみるのも面白いなと思います。
フレンズの解説に戻ります。
一方的に責められたので、ロスは反論しています。
I just wanna say that 「僕は言いたいことはこうだ」と言って、
there were two people there that night. 「あの晩、あの場所には2人の人間がいた」
There were two sets of lips. 「2組の唇があった」
と続けます。
lip は「唇」で、単数形の a lip は「上唇または下唇(上下の唇の片方)」を示します。
上唇なら the upper lip、下唇なら the lower lip で、「彼は彼女の唇にキスした」なら He kissed her on the lips. と複数形になります。
ですから、two sets of lips は「上下の唇(一人の人間の唇)が2セット」という感覚で、キスする唇を持った人間が2人いた、ということ。
2人の人間がいて、唇だって2つあった。君は1つの方の僕ばかりを責めるけど、君のママの方はどうなんだよ? とロスは言いたいわけです。
Freudian nightmare は「フロイト的な悪夢」。
Freudian は「フロイトの、フロイト的な」。
フロイトは、精神分析学者ジークムント・フロイト(Sigmund Freud)のこと。
研究社 新英和中辞典では、Freudian は「フロイト(派)の」という意味以外にも、
《口語》〈言動が〉無意識層における性に関する[から生じる]
という意味も出ています。
また、同じく研究社 新英和中辞典には、以下のような表現も出ていました。
Freudian slip=【名】【C】 フロイト的失言 《無意識の動機・願望などを露呈するような失言》
LAAD では、
Freudian [adjective] :
2. a Freudian remark or action is connected with the ideas about sex that people have in their minds but do not usually talk about
つまり「フロイト的発言・行動は、人が心に抱く、しかし普段はそれについて語らない、性についての考えに関係している」。
フレンズ1-6 では、俳優であるジョーイが Freud! 「フロイト!」というタイトルの芝居に主演しており、過去記事、フロイト的精神分析を歌にする フレンズ1-6改その2 でも、フロイト的精神分析について触れました。
フロイトの精神分析論では、リビドー(性衝動)などに関する性理論が有名で、そのため日常会話で性的な話題になった場合にもフロイトの名前が持ち出されることが多いです。
拙著『リアルな英語の9割はアカデミー賞映画で学べる!』の p178-179 では、「性的な話題で名前が挙がるフロイト」という項目で、映画『タイタニック』のイズメイとローズの会話を取り上げています。
タイタニック号を建造した会社の社長であるイズメイが、タイタニック号の「サイズ」について語るのを聞いて、
ローズ: Do you know of Dr. Freud, Mr. Ismay? His ideas about the male preoccupation with size might be of particular interest to you. (フロイト博士のことをご存じですか、イズメイさん? 男性がサイズにこだわることについてのフロイト博士の考えは、あなたにとっては特に興味のあるものとなるかもしれませんね。)
男性がサイズ(大きさ)の話をしている時に、「フロイト」という性を連想しがちな言葉を持ち出すことで、「男性の象徴である部位のサイズに男性はこだわりがち」という話題にすり替えたことになります。
今回のフレンズのセリフでも、チャンドラーは「性的な事柄と関連づけられやすい」フロイトの名前を持ち出して、母親が性に奔放な人であるために息子の自分はずっと悩み苦しんできたことを言っていることになるでしょう。
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Fワードで思い出すのが、10年以上前の学生時代に学会でメイン州に1週間ほど滞在した時の話で、その最後の日の打ち上げ飲み会の時に、折角だからと思って日本人のいないテーブルに混ざってみたんです。そうしたら、みんな飲んでいるからか結構よく使うんですよね。
それで、思い切って拙い英語で聞いてみたんです『その…みんなFなんとかって使いまくってるけどさ、学校で先生に絶対使うなって習ったんだよ。実際、それ使っていいの?どんな風に使うの?』って。実際はもっとたどたどしい感じだった筈ですけどね、当時(笑)
彼らが言うには「いやーまあ、俺たちは結構カジュアルに使うよ、実際意味はvery×6みたいなものだし。でも、うん、ノンネイティヴのお前は使わない方がいいだろうなー。」とのことでした。
なるほど〜、と思っていたら「でも、ここは例外だ!さあ、俺たちの前では言っていいぞ、言っとけ!」みたいな、みんな酔っ払いだったのでそんなノリでした。僕も酔っぱらっていたので「This beer is fxxkin’ good!!」とか言ったらみんな大喜びしてくれました。いい経験でした(笑)
あとは、フロイトの話もわかります!実はうちでも、嫁様との会話でたまにフロイトの名前が出るんです。話題を何でも下ネタにする人間の代名詞としてor今から話を下ネタにするときに「フロイトちゃうけど、これって…」みたいな使い方で(笑)
そうそう、もうワンダヴィジョンの最終回見られましたか?あれは泣けました…、親になってからかな、この手の話にはすっかり弱くなっちゃいました…><
コメントありがとうございます。お返事遅くなり申し訳ありません。
Fワードの扱いは難しいですよね。IW のセリフは、サミュエル・L・ジャクソンがよく使うフレーズだからこそ、f の音がかすかに聞こえるところで途切れてるいるのが余計に面白いセリフになっていると思います。
メイン州での体験談、興味深いお話をありがとうございます。
ノンネイティブにそういうタブー語を面白がって教えるような人もいるかもしれませんから、「ノンネイティヴのお前は使わない方がいいだろうなー」とアドバイスして下さる方の存在はありがたいですね。ネイティブなら「使っていい時と悪い時」の見極めもできますが、ノンネイティブにはその辺りが難しいだろうと思います。
そんな風に正しい使い方を説明した後に「俺たちなら構わないから言っとけ」と言ってくれるのもまた、いい方たちですよねぇ〜(としみじみ)。それはもう、ものすごくいい思い出になったことだろうと思います。
フロイトをそれ系の話の代名詞に使う感覚は日本人にもありますね。私はフロイトと言うと、フレンズ1-6 でのあのジョーイの歌(笑)と、『タイタニック』のローズのセリフを思い出してしまいます。ローズのセリフは、それを言った後の周りの人の反応も面白く、みんながローズに対してどういう印象を持っているのかを示す、試金石のようなセリフになっているところも素晴らしいなと思いました。
それから『ワンダヴィジョン』の最終回、良かったですよね!(私からのお返事が遅くなってしまったせいで、今はもう次の「バキ翼」がかなり進んでしまっていますが…)。
親の視線で見ると本当に切なくて泣けます。次のMCUにあれこれ繋がっていくんだな、というのが感じられる、実にいいドラマシリーズでした。6月には『ロキ』もありますし、楽しみですね♪
楽しいコメントありがとうございました!