3:55
(Joey enters with his dad...)
ジョーイが父親と一緒に入ってくる。
ジョーイ: Hey, you guys. You all know my dad, right? (やあ、みんな。みんなは俺の親父を知ってるよな?)
(all greet Joey’s dad...)
全員がジョーイの父に挨拶する。
モニカ: Hey, how long are you in the city? (あの、どのくらい街(ここ)にいるんですか?)
ジョーイパパ: Just for a couple of days. I got a job midtown. I figure, I'm better off staying with the kid than hauling my ass back and forth on a ferry. (Looks at Rog...) I don't know this one. (ちょっと2、3日だけ。ミッドタウンで仕事があるんだ。思うに、フェリーに乗って移動するより、子供と一緒に滞在する[子供のところに泊まる]方がいいだろう、って。[ロジャーを見る] この人は知らないな。)
フィービー: Oh. This is my friend Roger. (あぁ、こちらは私の友達のロジャーよ。)
ロジャー: Hi. (どうも。)
ジョーイパパ: Hey. Hey, good to meet you, Roger. (やあ。やあ、君に会えて嬉しいよ(こんにちは)、ロジャー。)
ロジャー: You too, sir. (僕もあなたにお会いできて嬉しいです。)
ジョーイパパ: What happened to the, er, puppet guy? (例の、ほら、パペット男はどうしたんだ?[パペット男はどうなった?])
ジョーイ: Dad! Er... (Gesturing...) (パパ! えーっと…[(その話題はダメという)ジェスチャーをしながら])
ジョーイパパ: Oh. Oh. excuse me. So, Ross, er, how’s the wife? (おぉ。あぁ、失礼。それで、ロス、えーっと、奥さんは元気か?)
ジョーイ: Uuuuhhh!! (Ross cringes, Joey gestures again...) (あーーー! [ロスは体をすくめ、ジョーイは再び(さっきの)ジェスチャーをする]
ジョーイパパ: 0 for 2, huh? Er, Chandler, quick, say something funny! (2戦0勝、だな? えーっと、チャンドラー、(すぐに)急げ、何か面白いことを言え!)
チャンドラー: (Stony faced, tight lipped. Says nothing) [(石のような)無表情で、口をつぐんで、何も言わない]
Just for a couple of days. I got a job midtown. は「ちょっと2、3日だけ。ミッドタウンで仕事があるんだ」。
got は have の意味。
midtown は uptown と downtown の間の「中間地区、ミッドタウン」ということですが、このセリフでは、副詞「ミッドタウンで」という意味で使われています。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) の midtown の説明にも、noun(名詞)と並んで、adjective(形容詞)、adverb(副詞)の品詞も出ています。
I figure の figure は動詞で、アメリカ口語では I think のような「(…だと)思う、考える」という意味で使われます。
LAAD では、
figure [verb] : [transitive] (informal) to form a particular opinion after thinking about a situation
つまり、「ある状況について考えた後、特定の意見を形成すること」。
語義を和訳すると何だかいかついですが、LAAD にも informal と書いてある通り、インフォーマル、口語表現、となります。
I figure SV で「(文)だと思う」ということですが、figure の後に続く文 I'm better off ... 以下が長いので、「…だと思う」を和訳の最後につけるよりも、セリフを発した順序通りに、「思うに」と訳しておいてから、その内容を続ける方が、実際の英語のニュアンスが感じられるように思いました。
be better off は「もっと良い状態になる、楽になる」。
LAAD では、
better off : happier, improved, more successful etc.
つまり、「より幸せな、より改良された、より成功した、など」。
今回のように be better off A-ing than B-ing だと「Bするより…Aする方がいい」という意味になります。
haul は「運ぶ、運搬する」。
hauling my ass back and forth on a ferry を直訳すると「フェリーに乗せて俺のケツを後ろに前に運ぶこと」みたいな感じでしょうか。
自分自身がフェリーに乗って行ったり来たりすることを、ass という卑語を使って、ちょっと下品に表現していることになるでしょう。
ミッドタウンで2、3日仕事があって、毎日往復するような面倒くさいことをするよりも、the kid、つまり、息子のジョーイのところに滞在した方が楽だから、2、3日はここにいるよ、と言っていることになります。
ジョーイのパパはフレンズたちのことは知っているようですが、見慣れない顔のロジャーがいるので、この人は知らないなと言っています。
フィービーから紹介されて、ジョーイのパパが Hey, good to meet you, Roger. と挨拶すると、ロジャーは You too, sir. と返します。
これは、good to meet you too, sir. 「僕もあなたにお会いできて嬉しいです」という意味で、初対面の目上の人であるジョーイのパパに対してきちんと sir を使っているのも、知的な職業である精神科医らしさが出ているような気がします。
What happened to ...? は「…に何があった? …はどうした?」
手をゆらゆらさせながら、「人形をこうやって動かすあのパペット使いの男」のように言っていることになりますが、「パペットを使う・操る男」の
「操る」という表現がすぐに出てこなくても、ジョーイパパのように the puppet guy と表現すれば(そしてこのように身振り手振りを加えれば、より)イメージが湧きやすいでしょう。
今の彼氏であるロジャーの前で、フィービーの元カレのパペット男の話をするのはまずい、とジョーイが必死に止めると、パパはそれに気づいたようで話題を変え、今度はロスに話しかけます。
how’s the wife? は「(ロスの)奥さんはどう? 元気?」ということ。
基本的な挨拶、How are you? は多くの方が使い慣れていると思いますが、目の前にいる you だけではなく、会話相手の家族などの様子(元気かどうか)を尋ねる場合にも、How is 人? のように使えるということです。
ロスは離婚しているため、離婚した元妻の話題は禁句ですから、ここでもジョーイは必死にその話題はダメだと訴えます。
0 for 2 を「オー・フォー・トゥー」のように発音していますが、これは、007を「ダブル・オー・セブン」と読むように、0(ゼロ)をよく似た文字のO(オー)に読み替えた感覚。
日本語でも、自衛隊の時刻の読み方で、12:00を「ひとふたまるまる」のように、0(ゼロ)を〇(まる)と読み替えることがありますが、それと同じに考えればよいでしょう。
for+数詞で「(数詞)に対して」となるので、0 for 2 は「2に対して0」ですから「2回やって成功0回、2戦0勝」ということ。
挨拶として楽しく会話しようとしたのに、2回ともしてはいけない話題をして地雷を踏んだような形になってしまったことを、このように表現したことになるでしょう。
困った時はチャンドラーのジョークに助けてもらおう、とばかりに、ジョーイパパは Chandler, quick, say something funny! 「チャンドラー、急いで、何か面白いことを言え!」と言います。
ここでの quick は「急げ、早く、さあさあ」というニュアンス。
LAAD では以下のように interjection 「間投詞」として分類されています。
quick [interjection] : used to tell someone to hurry or come quickly
例)Quick! We'll miss the bus!
つまり、「誰かに、急げ、または早く来いと言うために使われる」。例文は「急げ! 僕ら、バスに乗り遅れちゃう!」
ところが「ほら、何か面白いことを言え」と言われたチャンドラーは、ぶすっとした顔をしています。
ロック、ハードプレイス、俺 フレンズ1-13改その3 で解説した、これより少し前のシーンで、精神科医ロジャーから、チャンドラーは以下のようなことを言われていました。
ロジャー: Huh. Just seems as though that maybe you have intimacy issues. You know, that you use your humor as a way of keeping people at a distance. (うーん、ただ、まるで、多分君には、人との親密さについて問題があるかのように見えるね。ほら、人から距離を保つための手段として、ユーモアを使ってるんだ。)
「ほら、チャンドラー、この気まずい空気を打ち消すために、いつものように何か面白いこと言ってくれよ」と言われても、人との距離を保つために笑いを使っている、と精神的な部分を指摘された直後で、その指摘をした精神科医の目の前でジョークを言うわけにもいかず、むすっとした顔にならざるを得ないわけです。
フィービーの元カレ、ロスの元妻、チャンドラーのユーモア、と地雷を3つ踏んでしまったジョーイパパですが、笑いの定番の3段オチで、最後のオチに直前のネタをうまく使っている、という流れが、コメディとして実によくできた脚本だなと改めて思いました。
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