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チャンドラーとモニカは、今夜ここで結婚することを決心します。
[Scene: A Little White Chapel, Chandler and Monica are entering.]
ア・リトル・ホワイト・チャペル。チャンドラーとモニカが入ってくる。
チャンドラー: Hello! One marriage, please. (ハロー! 結婚を1つ、お願い。)
モニカ: Yep, we wanna get married! (そうなの、私たち、結婚したいの!)
接客係(The Attendant): Well, there's a service in progress. Have a seat. (あのー、式が1つ進行中なんです。席にかけて(お待ち)下さい。)
チャンドラーとモニカ: All right. (了解。)
(They both sit down.)
二人とも座る。
チャンドラー: (singing) Dum! Dum-dum-dum! Dum! Dum! Dum! Dum-dum-dum! ([歌いながら] ♪ダーン! ダダダン、ダーン! ダーン! ダーン! ダダダン、ダーン♪)
モニカ: What are you doing? (何やってるの?[それは何?])
チャンドラー: Oh, that's the "Wedding March." Does, does that freak you out? (あぁ、今のは「結婚行進曲」だよ。今の曲でモニカはパニクる?)
モニカ: No, only because that's the graduation song. (いいえ(パニクらないわ)、だって、それはただ、卒業式の曲だから。)
(The real Wedding March begins playing from behind the closed doors of the chapel.)
閉じたチャペルのドアの後ろから、本物の結婚行進曲が流れ始める。
チャンドラー: Okay! (Stands up and claps his hands) This is it! We're gonna get married! (よし![立ち上がり、手を叩く] いよいよだ! 俺たちは結婚するぞ!)
モニカ: Are you sure you wanna do this? (結婚したいっていう気持ちは確かなの?)
(Suddenly the doors burst open, and ROSS AND RACHEL COME OUT ARM-IN-ARM!!!!! And Rachel's carrying a bouquet!!! THEY GOT MARRIED!!!!)
突然、ドアが勢いよくパッと開いて、ロスとレイチェルが腕を組んで出てくる!! そして、レイチェルはブーケを持っている!! 二人は結婚したのだ!!)
ロス: Well, hello, Mrs. Ross! (Throws some rice.) (あぁ、ハロー、ミセス・ロス[ロス夫人]! [ライスを投げる])
レイチェル: Well, hello, Mr. Rachel! (Throws some more rice.) (あぁ、ハロー、ミセス・レイチェル[レイチェル氏]! [さらにライスを投げる])
(They storm out into the street.)
二人は(教会の外の)道に勢いよく飛び出す。
レイチェル: Wait. (Gets her bearings) Okay. (待って。[方向を確かめて] よし。)
サイコロでハード8の目が出たため、宣言通り、今夜ここで結婚することにしたチャンドラーとモニカ。
ト書きにもあるように、A Little White Chapel というチャペルが画面に映りますが、これはラスベガスに実在する有名なチャペルです。
公式サイトはこちら。
A Little White Wedding Chapel, Las Vegas, Nevada
ウィキペディアもあります。
Wikipedia 英語版: The Little White Wedding Chapel
そのウィキペディアでは、このチャペルについて、最初にこう説明されています。
... has been the site of many "quickie" celebrity weddings. It is noted for its Drive-Thru Tunnel of Vows.
つまり、「(そのチャペルは)、多くの「急ごしらえの(急ぎの)」セレブの結婚式の場所となってきた。その「誓いのドライブスルー・トンネル」で有名である。」
その説明の横に、その「ドライブスルー・トンネル」の写真も出ています。
また、少し後の説明には、そこで結婚式を挙げた有名人として、フランク・シナトラ、ブリトニー・スピアーズ、ブルース・ウィリス&デミ・ムーアなどの名前が挙げられています。
また、テレビ番組にもよく使われる例として、「フレンズ」の名前が出ているのも、嬉しいところですね。
quickie と説明されていたように、「簡単に、すぐに結婚できちゃう」というのがこのチャペルのウリのようです。
その「すぐに」が究極の形になったのが、「ドライブスルー」なんですねぇ。
「ドライブスルーで結婚式?!」と普通は驚いてしまうところですが、このチャペル、日本のテレビ番組でも取り上げられていたことがあります。
その番組は、2010年10月31日に放映された「世界の果てまでイッテQ!」。
その時の放映内容が、以下のサイトで紹介されています。
世界の果てまでイッテQ! 放送内容 珍獣ハンターイモトワールドツアー 〜アメリカ横断ツアー〜
内容をスクロールしていくと、6番目に出てくる写真、それが今回フレンズに出てきた、「ア・リトル・ホワイト・チャペル」です。
私はこの番組を生で見ていたのですが、「あ、これって、フレンズに出てきたチャペルだ!」と気づいて、すごく嬉しかったのを覚えています。
その「イッテQ!」の説明にもあるように、「ラスベガスには結婚式場が多い」「ラスベガスのあるネバダ州は身分証明書さえあれば簡単に結婚ができ、法的にも認められる」のですね。
「イッテQ!」では実際に、イモトさんがその「ドライブスルー結婚式」を再現していました。
オープンカーのリムジンに乗ってきた新郎新婦が窓口の前に車を止めると、牧師さんが窓から身を乗り出して「永遠の愛を誓いますか?」と語りかける…みたいな感じでした。
その番組では、「式の費用は今ならなんと、8,000円ポッキリ」(笑)と説明されていましたので、ほんとにお手軽なんですね。
ちょっと、このチャペルの説明が長くなってしまいましたが、そのようにベガスには結婚式場がたくさんあって、他の州に比べるとものすごく簡単に結婚できてしまう、ということが意識の中にあるために、チャンドラーも、「今度、ハード8の目が出たら、今晩ここで結婚しよう」ということを言ってしまったわけですね。
で、実際に結婚するぞ、となった時に、登場したのがこの quickie で有名な、ア・リトル・ホワイト・チャペルだった、というのも自然な流れになるわけです。
チャンドラーがチャペルに入ってきた時、"One marriage, please." のように、まるでファストフードでメニューを注文するみたいに気軽な感じで言っているのも、「お手軽で早い」のがウリのチャペルに合わせて言ってみたセリフなのでしょう。
there's a service in progress の service は「(礼拝の)式、儀式」。
memorial service なら「告別式、追悼式」ですね。
in progress は「進行中で」なので、「進行中の式が1つあります、式が1つ進行中です」ということになります。
今、別の人が挙式中なので、座って待ってて下さい、ということです。
チャンドラーは、ダーン♪と言いながら、ある曲を歌っています。
「何それ?」と聞かれたチャンドラーは、「結婚行進曲だよ。そんなのを俺が歌うと、モニカはビビっちゃうかな?」と、余裕のある発言をしていますが、モニカは No. と否定して「ううん、ビビったりしないわよ」と言った後、only because that's the graduation song と言っています。
only because は「ただ…だから、ただ…という理由で」。
ビビらないのは、結婚するのにまだ躊躇する気持ちがあるとかないとかの問題じゃなくて、あなたが今歌ったのが、結婚行進曲じゃなくて、卒業式の曲だからよ、と言っていることになります。
モニカの言う通り、チャンドラーが歌っていたのは、卒業式で使われる、エルガー作曲の「威風堂々」(Pomp and Circumstance)ですね。
この曲は、過去記事、アメリカの卒業式の曲 フレンズ3-10その32 にも出てきました。
レイチェルがウェイトレスを卒業する最後の仕事の時に、フレンズたちがこの曲をハミングしていたんでしたね。
その記事でこの曲についてもう少し詳しく説明してありますので、興味のある方は合わせてご覧下さい。
チャンドラーは自分が余裕なところを見せようと、結婚行進曲を歌ったつもりが、実はそれは卒業式の曲だった、というオチなわけです。
私も聞いた瞬間、「それは卒業式の曲やろっ!」とツッコミを入れそうになりましたので(笑)、この曲を知っている人にとっては比較的わかりやすいジョークだったと言えそうです。
チャンドラーが歌うはずだった結婚行進曲が厳か(おごそか)に流れてきて、This is it! 「いよいよだ!」と立ち上がるチャンドラー。
コミットメント恐怖症のかけらも見えないチャンドラーに、モニカは最後の確認として、Are you sure you wanna do this? と聞いています。
「あなたがこれをしたい[こんな風に結婚式を挙げたい]と思っているのは自分で確かだと思う?」みたいなことですね。
ほんとにこんな風に結婚したいと思ってるの?、大丈夫?、本気なの?という確認です。
それに対してチャンドラーが何かを答える前に、式場のドアがバーンと開いて(まさに、burst open という形容がふさわしい)、何と、ロスとレイチェルの二人が登場します。
それも腕を組んで、レイチェルはブーケまで持って!
この状況を見れば明らかに「ここで今、結婚式を挙げたばかりの二人」であることは明白ですね。
ト書きを書いた方も興奮気味に大文字で書いておられますが、まさに観客も、チャンドラー&モニカもびっくりの展開になっています。
二人はお互いを、Mrs. Ross, Mr. Rachel などとトンチンカンな名前で呼び合い、結婚式で恒例のライスシャワーをお互いにかけあっています。
そのままチャペルのドアを開けて、一瞬、我に返ったように静かになった後、二人は左右別々の方向に歩いていってしまいます。
今回のエピソードでは、ロスとレイチェルがかなりのお酒を飲んでいましたので、その酔っぱらった状態がまだ続いていることがこの行動からわかりますね。
さあ、結婚するぞ!と意気込んでいたはずのチャンドラーとモニカは、思いがけない先客に、声も出ない様子で茫然としています。
エルビス・プレスリーの、Viva Las Vegas が流れ、二人の驚いた顔を映しながら、シーズン5は終了します。
結婚しようとしていたチャンドラーとモニカはこの後どうするの?、酔っぱらった勢いで結婚してしまったらしいロスとレイチェルはどうなるの?というクリフハンガー状態で、シーズン6へと続きます。
チャンドラーとモニカが結婚を決意するという話もびっくりでしたが、ロスとレイチェルがそれより先に式を挙げてしまっていたのも、「簡単に結婚できる」ベガスならではのお話ですね。
ア・リトル・ホワイト・チャペルが象徴する、そういうベガスのイメージが、シーズン5のラストにうまく結びつき、次のシーズンへと続く盛り上がりを生んでいる…。シーズン終わりの舞台をベガスに設定したことで出来た、効果的な演出だと思いました。
今日でシーズン5は終わりです。
来週からは、シーズン6に突入します。
1つのシーズンが終了し、次のシーズンに突入できる時、いつもとても幸せな気持ちになれます。
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2011年07月08日
2011年07月06日
あなたが決めて フレンズ5-24その5
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次にハード8(2つのサイコロで4のぞろ目)が出たら、今夜ここで結婚しよう!と言ったチャンドラー。
モニカはびっくりしながらも、チャンドラーが本気でそう言っていると知り、次のサイコロを投げます。
(She rolls the dice, but one bounces out of the table.)
モニカはサイコロを転がす、が、一つはテーブルの外に飛び出る。
チャンドラー: (spots one) Okay! That's a four! And where-where's the other one? ([1つ目を見つけて] よし! それは4だ! で、もう1つのはどこ?)
酔っ払いギャンブラー: It went under the table. (テーブルの下に行ったぞ。)
モニカ: Nobody move! (To Chandler) Okay, you look that way, I look this way! (誰も動かないで! [チャンドラーに] いいわ、あなたはそっちを見て、私はこっちを見る!)
チャンドラー: All right! (わかった!)
(He searches to his right; she searches to her left. They're both on their hands and knees when they spot the die. It's propped up against the table leg, and it's not lying flat. Both the four and the five are showing.)
チャンドラーは右側を捜し、モニカは左側を捜す。二人ともサイコロを見つけるのに、四つん這い(よつんばい)になっている。そのサイコロはテーブルの脚に寄りかかっていて平らになっていない。4の面と5の面の両方が見えている。
チャンドラー: Here it is! Here it is! (ここだ! ここにある!)
モニカ: That could be a four or a five.... It's your call. (それだと4にも見えるし、5にも見えるわ…。あなたが決めて。)
(Pause.)
しばしの間(沈黙)。
チャンドラー: It's a four. (4だ。)
モニカ: I think so too. (私もそう思うわ。)
ト書きの spot は「…を見つける」ですね。名詞では「場所、地点」という意味なので、ある地点に何かがあるのを見つける、という感覚です。
1つは4で、もう1つは机の下に転がったと知り、二人はそのサイコロを捜します。
Nobody Move! と手を広げて叫んだり、「あなたはそっちを見て、私はこっちを見るから」のようにチャンドラーに指図している様子が、いかにもモニカ、な感じですね。
こういう場合にモニカが仕切り、チャンドラーがそれに従う、というのが、このカップルらしいところなのでしょう。
二人が机の下を捜して、サイコロがどんな状態になっているかを書いているネットスクリプトのト書き、こういう文章は参考になる部分が多いですね。
on their hands and knees というのは「手と膝をついて」ということですから、つまりは「四つん這いになって」ということ。
It's propped up against the table leg の prop は「〜を(…で)(倒れないように)支える、つっかい棒をする」「〜を(…に)立てかける、寄りかからせる、もたせかける、支える」。
研究社 新英和中辞典には、
He propped his bicycle (up) against the wall. 「彼は自転車を壁に立てかけた」
という例文が出ています。
壁にもたれる、壁で支える形にして、自転車が倒れないように立てている感覚ですね。
It's propped up against the table leg. は、受動態の形になっていて、「それ(2つ目のサイコロ)は、テーブルの脚に寄りかかる形で支えられていた」のような意味になるでしょう。
今回のエピソードでは、フレンズ5-24その2 にも、この be propped という表現が以下のト書きに出てきました。
He's propped up with his hand on a statute of a naked guy.
そのト書きの日本語訳を、私は「チャンドラーは、裸体の男性像の上に手を置いて自分の体を支える」と書きましたが、厳密に訳すと、「チャンドラーは裸体の男性像の上に[像に接触する形で]自分の手で支えられている」となるでしょうか。
前から意味を取っていくと、「彼はどこかに寄りかかり支えられていて、それは自分の手を使って支えられていて、接触している対象物は裸体の男性像である」という流れになるでしょう。
TOEIC Part 1 の写真問題で「(はしごなどが)(ビルなどに)立てかけられている、寄りかかっている」という場合に、lean against (be leaning against) というフレーズがよく出てくるように思います。
lean は基本的に「もたれる、もたれかかる、寄りかかる」という自動詞で使われるので lean agasint という能動態の形、prop は「〜を支える、…を寄りかからせる」という他動詞なので、be propped up against という受動態の形になる、という違いにも注意したいところです。
lie flat は「平らに横たわる」ですから、it's not lying flat は、通常のサイコロのように、1面が下になってその反対面が真上を向く形になっていないことを指します。
つまり、平らな状態ではなくて、テーブルの脚にもたれたように斜めになっていた、ということですね。
斜めになっているために、4の面と5の面の両方が見えている、ということになります。
そのサイコロの状態を映像で見ていれば、このト書きの意味はすんなり理解できますが、逆にこのサイコロの状態を英語で表現しろと言われて、be propped up against や lie flat を使ったこういう文章がすっと出てくるかと言われると、ノンネイティブにはなかなか難しいような気がします。
「ト書き」は、映像で見えている状態や動作を文字として的確に表現してくれているわけですから、そういうものも積極的に自分の表現として取り入れていけるといいですね。
That could be a four or a five. は、「それは4の面にもなりうるし、5の面にもなりうる」というような感覚。どちらにとることも可能だ、というようなニュアンスです。
It's your call. は「あなたが決めて」。It's your choice. や、It's up to you. と同じような意味です。
元々は、スポーツでの「(審判員の)判定、決定」という意味から、「それはあなたの判定よ、あなたが決めることよ」→「あなたが決めて」というニュアンスになるわけですね。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
call [noun] :
DECISION
a) a decision made by a referee (= judge) in a sport game
b) (informal) a decision
例) "Where should we eat tonight?" "I don't know, it's your call."
a hard/easy call (= a difficult or easy decision)
例) This is not an easy call.
Guilty or innocent? You make the call (= decide).
つまり、a) は、「スポーツの試合で、審判(レフェリー、ジャッジ)によってなされる決定」
b) は、「(インフォーマル) 決定」
例文は、「今夜はどこで食べたらいいかな?」「わからないわ、あなたが決めて」
a hard/easy call は、「難しい決定、簡単な決定」
例文は、「これは簡単に決められることではない」
「有罪か無罪か? 君が決めてくれ」
4とも5ともとれるこの目を、4だと言えばハード8になり、今夜ここで結婚、5だと言えば合計8ではなくなるため、結婚しない、ということになります。
結婚するかしないかの判断がチャンドラーに委(ゆだ)ねられたわけですが、チャンドラーは優しく微笑みながら、「4だ」と断言します。
男女の深く真剣な付き合いに対して尻込みしてしまう「コミットメント恐怖症」だったチャンドラーが、自分の判断でそう宣言したことで、モニカはうっとりした顔になり、観客もおぉ!とどよめいています。
ドラマならではの出来過ぎた演出ではありますが、いつもはモニカが何もかも仕切っている形になっていても、ここぞという時は「モニカがそう言うなら…」という他人任せではなく、チャンドラー自身が判断し決めて欲しいというモニカの女心が感じられ、微笑ましく幸せなシーンだなと思いました。
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(She rolls the dice, but one bounces out of the table.)
モニカはサイコロを転がす、が、一つはテーブルの外に飛び出る。
チャンドラー: (spots one) Okay! That's a four! And where-where's the other one? ([1つ目を見つけて] よし! それは4だ! で、もう1つのはどこ?)
酔っ払いギャンブラー: It went under the table. (テーブルの下に行ったぞ。)
モニカ: Nobody move! (To Chandler) Okay, you look that way, I look this way! (誰も動かないで! [チャンドラーに] いいわ、あなたはそっちを見て、私はこっちを見る!)
チャンドラー: All right! (わかった!)
(He searches to his right; she searches to her left. They're both on their hands and knees when they spot the die. It's propped up against the table leg, and it's not lying flat. Both the four and the five are showing.)
チャンドラーは右側を捜し、モニカは左側を捜す。二人ともサイコロを見つけるのに、四つん這い(よつんばい)になっている。そのサイコロはテーブルの脚に寄りかかっていて平らになっていない。4の面と5の面の両方が見えている。
チャンドラー: Here it is! Here it is! (ここだ! ここにある!)
モニカ: That could be a four or a five.... It's your call. (それだと4にも見えるし、5にも見えるわ…。あなたが決めて。)
(Pause.)
しばしの間(沈黙)。
チャンドラー: It's a four. (4だ。)
モニカ: I think so too. (私もそう思うわ。)
ト書きの spot は「…を見つける」ですね。名詞では「場所、地点」という意味なので、ある地点に何かがあるのを見つける、という感覚です。
1つは4で、もう1つは机の下に転がったと知り、二人はそのサイコロを捜します。
Nobody Move! と手を広げて叫んだり、「あなたはそっちを見て、私はこっちを見るから」のようにチャンドラーに指図している様子が、いかにもモニカ、な感じですね。
こういう場合にモニカが仕切り、チャンドラーがそれに従う、というのが、このカップルらしいところなのでしょう。
二人が机の下を捜して、サイコロがどんな状態になっているかを書いているネットスクリプトのト書き、こういう文章は参考になる部分が多いですね。
on their hands and knees というのは「手と膝をついて」ということですから、つまりは「四つん這いになって」ということ。
It's propped up against the table leg の prop は「〜を(…で)(倒れないように)支える、つっかい棒をする」「〜を(…に)立てかける、寄りかからせる、もたせかける、支える」。
研究社 新英和中辞典には、
He propped his bicycle (up) against the wall. 「彼は自転車を壁に立てかけた」
という例文が出ています。
壁にもたれる、壁で支える形にして、自転車が倒れないように立てている感覚ですね。
It's propped up against the table leg. は、受動態の形になっていて、「それ(2つ目のサイコロ)は、テーブルの脚に寄りかかる形で支えられていた」のような意味になるでしょう。
今回のエピソードでは、フレンズ5-24その2 にも、この be propped という表現が以下のト書きに出てきました。
He's propped up with his hand on a statute of a naked guy.
そのト書きの日本語訳を、私は「チャンドラーは、裸体の男性像の上に手を置いて自分の体を支える」と書きましたが、厳密に訳すと、「チャンドラーは裸体の男性像の上に[像に接触する形で]自分の手で支えられている」となるでしょうか。
前から意味を取っていくと、「彼はどこかに寄りかかり支えられていて、それは自分の手を使って支えられていて、接触している対象物は裸体の男性像である」という流れになるでしょう。
TOEIC Part 1 の写真問題で「(はしごなどが)(ビルなどに)立てかけられている、寄りかかっている」という場合に、lean against (be leaning against) というフレーズがよく出てくるように思います。
lean は基本的に「もたれる、もたれかかる、寄りかかる」という自動詞で使われるので lean agasint という能動態の形、prop は「〜を支える、…を寄りかからせる」という他動詞なので、be propped up against という受動態の形になる、という違いにも注意したいところです。
lie flat は「平らに横たわる」ですから、it's not lying flat は、通常のサイコロのように、1面が下になってその反対面が真上を向く形になっていないことを指します。
つまり、平らな状態ではなくて、テーブルの脚にもたれたように斜めになっていた、ということですね。
斜めになっているために、4の面と5の面の両方が見えている、ということになります。
そのサイコロの状態を映像で見ていれば、このト書きの意味はすんなり理解できますが、逆にこのサイコロの状態を英語で表現しろと言われて、be propped up against や lie flat を使ったこういう文章がすっと出てくるかと言われると、ノンネイティブにはなかなか難しいような気がします。
「ト書き」は、映像で見えている状態や動作を文字として的確に表現してくれているわけですから、そういうものも積極的に自分の表現として取り入れていけるといいですね。
That could be a four or a five. は、「それは4の面にもなりうるし、5の面にもなりうる」というような感覚。どちらにとることも可能だ、というようなニュアンスです。
It's your call. は「あなたが決めて」。It's your choice. や、It's up to you. と同じような意味です。
元々は、スポーツでの「(審判員の)判定、決定」という意味から、「それはあなたの判定よ、あなたが決めることよ」→「あなたが決めて」というニュアンスになるわけですね。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
call [noun] :
DECISION
a) a decision made by a referee (= judge) in a sport game
b) (informal) a decision
例) "Where should we eat tonight?" "I don't know, it's your call."
a hard/easy call (= a difficult or easy decision)
例) This is not an easy call.
Guilty or innocent? You make the call (= decide).
つまり、a) は、「スポーツの試合で、審判(レフェリー、ジャッジ)によってなされる決定」
b) は、「(インフォーマル) 決定」
例文は、「今夜はどこで食べたらいいかな?」「わからないわ、あなたが決めて」
a hard/easy call は、「難しい決定、簡単な決定」
例文は、「これは簡単に決められることではない」
「有罪か無罪か? 君が決めてくれ」
4とも5ともとれるこの目を、4だと言えばハード8になり、今夜ここで結婚、5だと言えば合計8ではなくなるため、結婚しない、ということになります。
結婚するかしないかの判断がチャンドラーに委(ゆだ)ねられたわけですが、チャンドラーは優しく微笑みながら、「4だ」と断言します。
男女の深く真剣な付き合いに対して尻込みしてしまう「コミットメント恐怖症」だったチャンドラーが、自分の判断でそう宣言したことで、モニカはうっとりした顔になり、観客もおぉ!とどよめいています。
ドラマならではの出来過ぎた演出ではありますが、いつもはモニカが何もかも仕切っている形になっていても、ここぞという時は「モニカがそう言うなら…」という他人任せではなく、チャンドラー自身が判断し決めて欲しいというモニカの女心が感じられ、微笑ましく幸せなシーンだなと思いました。
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2011年07月04日
ハードエイトとイージーエイト フレンズ5-24その4
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クラップス(サイコロ2つの目を当てるゲーム)で絶好調のモニカ。隣にはチャンドラーがついていて、二人の周りには人だかりができています。
モニカ: Okay, good. Okay, what do I want now? (オッケー。それでいいわ。で、今度は何(の目)が欲しい?)
チャンドラー: Ahh, ooh, try a hard eight. (あー、うー、ハード8(エイト)でどう?[ハード8でやってみて])
モニカ: What? (何?)
チャンドラー: Two fours. (4が2つだよ。)
モニカ: Okay. (Rolls the dice) (わかった。[サイコロを転がす])
賭博の胴元(The Croupier): Eight! (8です!)
酔っ払いのギャンブラー(A Drunken Gambler): (To Chandler) Don't you let her go. You're a lucky guy! ([チャンドラーに] 彼女を手放すなよ。お前はラッキーな男だ!)
チャンドラー: Thank you, Mr. Drunken Gambler! Okay, you get this and uh, we get the biggest suite in the place! (Everyone cheers) Wait-wait-wait-wait! We (motions to Monica and him.) get the biggest suite in the place. (ありがとう、ミスター・酔っ払いギャンブラー! よし、モニカがこれをゲットしたら[これに成功したら]、俺たちはこの場所で一番大きなスイート(ルーム)をとるぞ! [みんなは歓声を上げる] 待って待って待って待って! 俺たち[チャンドラーは、モニカとチャンドラー(自身)を身振りで示す]が、この場所で一番大きなスイートをとるんだ!)
モニカ: All right. The biggest suite in the place. Come on! (Rolls the dice.) (わかった。この場所で一番大きなスイートね。来い! [サイコロを転がす])
チャンドラー: (sees the roll) Yes!! I love you! I can't even remember what we were fighting about! ([サイコロの振りを見て] よし! 愛してるよ! 俺たちが何のことで喧嘩してたのか思い出すことすらできないよ!)
モニカ: Oh, that's because I had lunch with Rich-- Me neither! Okay, what do I want now? (あぁ、それは私がランチを食べたからよ、リチャ…。私も思い出せないわ! よし、今度は何の目が欲しい?)
チャンドラー: Another hard eight. (もう1回、ハード8だ。)
モニカ: Hard eight? Let's call it easy eight! (ハード8? イージー8って呼びましょうよ!)
チャンドラー: Okay, okay, I'll tell you what. You roll another hard eight... (pause) and we get married here tonight. (オッケー、オッケー。ねぇ、こういうのはどうかな。モニカがもう一度、ハード8を出したら… [しばしの間] 俺たちは今夜ここで結婚するぞ。)
酔っ払いのギャンブラー: Go! Come on! Roll! (行け! やれ! 転がせ!)
みんな: Roll-roll! (転がせ、転がせ!)
モニカ: Shut up! It just got interesting! (黙って! ちょうど面白くなってきたところなのよ!)
仲直りしたチャンドラーが隣にいる状態で、モニカはサイコロを転がしています。
what do I want now? は、モニカが次はどんな目を出すかを、自分で決めないで隣のチャンドラーに決めてもらっている感覚ですね。
「今度は私は何の目が欲しい?」ということで、これから投げるのにどの目を狙って投げたらいいかなぁ?とチャンドラーに尋ねている感じになるでしょう。
チャンドラーは、hard eight にトライしてみて、と言っています。
モニカは一瞬、何?と聞き返していますが、チャンドラーは4が2つだと説明してくれていますね。
彼の説明によると、2つのサイコロを転がして合計8になる、それも4が2つのぞろ目で8になることを「ハード8(エイト)」と呼ぶようです。
その後、実際に転がして、2つのサイコロの目の合計が8になり、そばで見ていた酔っ払いのおじさんが「彼女を手放すなよ」みたいなことを言っています。
Don't you let her go. は、Don't you...? という否定疑問文ではなく、Don't を使った否定命令文の強い形ですね。
Don't let her go. 「彼女を(どこかへ)行かせるな」→「彼女を手放すな」を強調する形で、省略されている主語 you をつけたものが、You don't let her go. となり、それを倒置にしてさらに強調したのが、Don't you let her go. の形になります。
チャンドラーは、you get... we get の形を使って、「モニカが…をゲットしたら、俺たちは…をゲットする」のように言います。
get は非常に幅広く使える単語なので、その後に続く目的語によって、いろいろな日本語の動詞を当てはめることができます。
そのため、日本語に訳そうとする場合、どういう単語にしようかと一瞬迷ってしまうところですが、逆にその汎用性を利用して、とにかく何かを「ゲットする」んだ、というくらいの大きな広いイメージで捉えていた方が、そういう迷いがない分、タイムラグなしにニュアンスをすんなり理解できる気がします。
英語を英語のままで理解する場合には、get の基本的な語義である「得る、手に入れる」というイメージをきちんと理解できていればそれで問題ない、ということになるでしょう。
今回のセリフも、モニカが get this するというのは、あえて日本語で言うと「これを取る」という感じ、今から投げようとしているサイコロの勝負に勝つことを意味します。
get the biggest suite は、「一番大きなスイート(ホテルのスイートルーム)をとる」、つまり、「部屋をとる、予約する、そこに泊まる」ことを示します。
the biggest suite in the place は、「この場所で最大のスイート」、つまり、このホテルで一番大きなスイートということ。
「次のゲームも当てたら、一番大きなスイートをとるぞー!」と言った後、周りで見ていた観客も歓声を上げていますが、チャンドラーは「みんなは誤解してるようだけど、we っていうのは、ここにいるみんなのことじゃなくて、俺たち二人のことだからね」としぐさで示しています。
みんなでその部屋でどんちゃん騒ぎをするとかじゃないからね、と釘を刺している感じでしょう。
ト書きの see the roll の roll は「(サイコロの)ころがし、一振り」という感覚。
サイコロがころがって、その結果の目を見る、というのが、see the roll のニュアンスでしょう。
またもや、目が当たり、大喜びのチャンドラーは、「俺たちが何のことについて喧嘩していたのか、思い出すことすらできないよ!」と叫んでいます。
モニカは、「それは私が…したからよ」と正確な理由を言おうとしますが、せっかく仲直りしたのに、またその喧嘩の原因を思い出させるようなことを言うこともない、と気づいて、Richard という名前の途中で言うのをやめ、「私も思い出せないわ」と言ってごまかします。
I had lunch with Rich-- のように、途中で言うのをやめた英語を、そのニュアンスを出して日本語に直すのは難しいですね。
日英では文章の構造が異なるので、自然な日本語では「私がリチャードとランチを食べた」のように、どうしても、「リチャードと」が「ランチを食べた」の前に来てしまいます。
「リチャードと」と言いかけて途中でやめた「リチャ…」みたいなニュアンスを日本語に出そうとすると、「私がリチャ…とランチを食べた」ではおかしいし、「私があの人とランチを食べたからよね、ほら、リチャ…」みたいに言うと、ものすごくわざとらしいセリフになってしまいます。
英語の構造が、「私はランチを食べた、リチャードと」という形であるために、with Rich-- で絶句するのが自然になるわけですが、日本語の場合はその with 「…と一緒に」が前に来ることもありませんから、「あぁ、それは私がリチャ…」くらいで絶句することになり、「誰かとランチを食べたけど、その相手が問題だった」というニュアンスを日本語に出すのがどうしても難しくなる、ということです。
次の目をチャンドラーに相談するモニカ。チャンドラーはまた、ハード8だと答えます。
チャンドラーが何度も hard eight だと言うのを聞いて、モニカは、hard eight って言うけど、easy eight って呼びましょうよ、みたいに言っています。
これは、hard と easy を、「難しい」と「簡単な」のニュアンスで使っているようですね。
合計が8になるにしても、それが4のぞろ目だとより確率が低くなる、だから、4の目2つの8をハード8と呼んでいるのでしょうが、モニカは今、絶好調で、ハード8を出すのがそんなにハードな(難しい)気がしない、だから、「こんなのはハード8じゃなくて、私にとってはイージー(簡単な)8よ、だからイージー8って呼んで」と言っている、自信満々の強気なセリフなのかなと思いました。
この hard eight のニュアンスについては、以下の Urban Dictionary の説明が詳しいです。
Urban Dictonary : hard eight
その説明によると、2つのサイコロの合計が8になる組み合わせ(combination)のうち、6と2、3と5は、the easy way で、4と4の組み合わせが、the hard way であるとのこと。
やはり、そのように数が同じ「ぞろ目」の組み合わせを、hard numbers と呼ぶようです。
その語義にも、easy と hard が使われていることからも、ツキまくりのモニカにとっては、4と4の組み合わせさえ、hard じゃなくて、easy だわ、と言っていることになるでしょう。
ちなみに、ウィキペディアで hard eight を調べると、
Wikipedia 英語版: Hard Eight
Hard eight describes a dice roll in the game of craps wherein each of two dice land on "four."
と出ています。
つまり、「ハードエイトは、クラップスのゲームで、2つのサイコロのそれぞれが4で着地する[4の目が出て止まる]というサイコロのころがしを意味する」。
また、その説明の後に、
The term may also refer to: として、Hard Eight (film) や Hard Eight (novel) が存在することも示されています。
allcinema : 映画「ハードエイト」 によると、1996年のアメリカ映画のようですが、日本では劇場未公開のようです。
やはり、ギャンブラーやカジノにまつわるお話のようですね。
それまでも次が当たりだったらこうする…みたいにいろいろ言っていたチャンドラーですが、ここで、ものすごい提案をしています。
次にもう1回、ハードエイトを転がしたら、つまり、ハードエイトの目を出したら、俺たちは今夜ここで結婚する!という宣言です。
観客からもオー!という声が上がっていますし、モニカはチャンドラーを見つめて固まっています。
ゲームを見ている人たちは、「やれ、転がせ!」とはやし立てますが、モニカは Shut up! と言ってみんなが騒ぐのを制していますね。
get interesting は「興味深くなる、面白くなる、面白くなってくる」ですから、It just got interesting! は「ちょうど面白くなってきたわ、面白くなってきたところなのよ!」という感じでしょう。
みんなは茶化すように騒ぐけど、こちらは人生がかかった真剣な話なのよ、それまでのお遊びのゲームじゃなくて、話がにわかに興味深いものになってきたんだから、他人はちょっとの間、黙ってて!みたいな気持ちなのでしょうね。
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クラップス(サイコロ2つの目を当てるゲーム)で絶好調のモニカ。隣にはチャンドラーがついていて、二人の周りには人だかりができています。
モニカ: Okay, good. Okay, what do I want now? (オッケー。それでいいわ。で、今度は何(の目)が欲しい?)
チャンドラー: Ahh, ooh, try a hard eight. (あー、うー、ハード8(エイト)でどう?[ハード8でやってみて])
モニカ: What? (何?)
チャンドラー: Two fours. (4が2つだよ。)
モニカ: Okay. (Rolls the dice) (わかった。[サイコロを転がす])
賭博の胴元(The Croupier): Eight! (8です!)
酔っ払いのギャンブラー(A Drunken Gambler): (To Chandler) Don't you let her go. You're a lucky guy! ([チャンドラーに] 彼女を手放すなよ。お前はラッキーな男だ!)
チャンドラー: Thank you, Mr. Drunken Gambler! Okay, you get this and uh, we get the biggest suite in the place! (Everyone cheers) Wait-wait-wait-wait! We (motions to Monica and him.) get the biggest suite in the place. (ありがとう、ミスター・酔っ払いギャンブラー! よし、モニカがこれをゲットしたら[これに成功したら]、俺たちはこの場所で一番大きなスイート(ルーム)をとるぞ! [みんなは歓声を上げる] 待って待って待って待って! 俺たち[チャンドラーは、モニカとチャンドラー(自身)を身振りで示す]が、この場所で一番大きなスイートをとるんだ!)
モニカ: All right. The biggest suite in the place. Come on! (Rolls the dice.) (わかった。この場所で一番大きなスイートね。来い! [サイコロを転がす])
チャンドラー: (sees the roll) Yes!! I love you! I can't even remember what we were fighting about! ([サイコロの振りを見て] よし! 愛してるよ! 俺たちが何のことで喧嘩してたのか思い出すことすらできないよ!)
モニカ: Oh, that's because I had lunch with Rich-- Me neither! Okay, what do I want now? (あぁ、それは私がランチを食べたからよ、リチャ…。私も思い出せないわ! よし、今度は何の目が欲しい?)
チャンドラー: Another hard eight. (もう1回、ハード8だ。)
モニカ: Hard eight? Let's call it easy eight! (ハード8? イージー8って呼びましょうよ!)
チャンドラー: Okay, okay, I'll tell you what. You roll another hard eight... (pause) and we get married here tonight. (オッケー、オッケー。ねぇ、こういうのはどうかな。モニカがもう一度、ハード8を出したら… [しばしの間] 俺たちは今夜ここで結婚するぞ。)
酔っ払いのギャンブラー: Go! Come on! Roll! (行け! やれ! 転がせ!)
みんな: Roll-roll! (転がせ、転がせ!)
モニカ: Shut up! It just got interesting! (黙って! ちょうど面白くなってきたところなのよ!)
仲直りしたチャンドラーが隣にいる状態で、モニカはサイコロを転がしています。
what do I want now? は、モニカが次はどんな目を出すかを、自分で決めないで隣のチャンドラーに決めてもらっている感覚ですね。
「今度は私は何の目が欲しい?」ということで、これから投げるのにどの目を狙って投げたらいいかなぁ?とチャンドラーに尋ねている感じになるでしょう。
チャンドラーは、hard eight にトライしてみて、と言っています。
モニカは一瞬、何?と聞き返していますが、チャンドラーは4が2つだと説明してくれていますね。
彼の説明によると、2つのサイコロを転がして合計8になる、それも4が2つのぞろ目で8になることを「ハード8(エイト)」と呼ぶようです。
その後、実際に転がして、2つのサイコロの目の合計が8になり、そばで見ていた酔っ払いのおじさんが「彼女を手放すなよ」みたいなことを言っています。
Don't you let her go. は、Don't you...? という否定疑問文ではなく、Don't を使った否定命令文の強い形ですね。
Don't let her go. 「彼女を(どこかへ)行かせるな」→「彼女を手放すな」を強調する形で、省略されている主語 you をつけたものが、You don't let her go. となり、それを倒置にしてさらに強調したのが、Don't you let her go. の形になります。
チャンドラーは、you get... we get の形を使って、「モニカが…をゲットしたら、俺たちは…をゲットする」のように言います。
get は非常に幅広く使える単語なので、その後に続く目的語によって、いろいろな日本語の動詞を当てはめることができます。
そのため、日本語に訳そうとする場合、どういう単語にしようかと一瞬迷ってしまうところですが、逆にその汎用性を利用して、とにかく何かを「ゲットする」んだ、というくらいの大きな広いイメージで捉えていた方が、そういう迷いがない分、タイムラグなしにニュアンスをすんなり理解できる気がします。
英語を英語のままで理解する場合には、get の基本的な語義である「得る、手に入れる」というイメージをきちんと理解できていればそれで問題ない、ということになるでしょう。
今回のセリフも、モニカが get this するというのは、あえて日本語で言うと「これを取る」という感じ、今から投げようとしているサイコロの勝負に勝つことを意味します。
get the biggest suite は、「一番大きなスイート(ホテルのスイートルーム)をとる」、つまり、「部屋をとる、予約する、そこに泊まる」ことを示します。
the biggest suite in the place は、「この場所で最大のスイート」、つまり、このホテルで一番大きなスイートということ。
「次のゲームも当てたら、一番大きなスイートをとるぞー!」と言った後、周りで見ていた観客も歓声を上げていますが、チャンドラーは「みんなは誤解してるようだけど、we っていうのは、ここにいるみんなのことじゃなくて、俺たち二人のことだからね」としぐさで示しています。
みんなでその部屋でどんちゃん騒ぎをするとかじゃないからね、と釘を刺している感じでしょう。
ト書きの see the roll の roll は「(サイコロの)ころがし、一振り」という感覚。
サイコロがころがって、その結果の目を見る、というのが、see the roll のニュアンスでしょう。
またもや、目が当たり、大喜びのチャンドラーは、「俺たちが何のことについて喧嘩していたのか、思い出すことすらできないよ!」と叫んでいます。
モニカは、「それは私が…したからよ」と正確な理由を言おうとしますが、せっかく仲直りしたのに、またその喧嘩の原因を思い出させるようなことを言うこともない、と気づいて、Richard という名前の途中で言うのをやめ、「私も思い出せないわ」と言ってごまかします。
I had lunch with Rich-- のように、途中で言うのをやめた英語を、そのニュアンスを出して日本語に直すのは難しいですね。
日英では文章の構造が異なるので、自然な日本語では「私がリチャードとランチを食べた」のように、どうしても、「リチャードと」が「ランチを食べた」の前に来てしまいます。
「リチャードと」と言いかけて途中でやめた「リチャ…」みたいなニュアンスを日本語に出そうとすると、「私がリチャ…とランチを食べた」ではおかしいし、「私があの人とランチを食べたからよね、ほら、リチャ…」みたいに言うと、ものすごくわざとらしいセリフになってしまいます。
英語の構造が、「私はランチを食べた、リチャードと」という形であるために、with Rich-- で絶句するのが自然になるわけですが、日本語の場合はその with 「…と一緒に」が前に来ることもありませんから、「あぁ、それは私がリチャ…」くらいで絶句することになり、「誰かとランチを食べたけど、その相手が問題だった」というニュアンスを日本語に出すのがどうしても難しくなる、ということです。
次の目をチャンドラーに相談するモニカ。チャンドラーはまた、ハード8だと答えます。
チャンドラーが何度も hard eight だと言うのを聞いて、モニカは、hard eight って言うけど、easy eight って呼びましょうよ、みたいに言っています。
これは、hard と easy を、「難しい」と「簡単な」のニュアンスで使っているようですね。
合計が8になるにしても、それが4のぞろ目だとより確率が低くなる、だから、4の目2つの8をハード8と呼んでいるのでしょうが、モニカは今、絶好調で、ハード8を出すのがそんなにハードな(難しい)気がしない、だから、「こんなのはハード8じゃなくて、私にとってはイージー(簡単な)8よ、だからイージー8って呼んで」と言っている、自信満々の強気なセリフなのかなと思いました。
この hard eight のニュアンスについては、以下の Urban Dictionary の説明が詳しいです。
Urban Dictonary : hard eight
その説明によると、2つのサイコロの合計が8になる組み合わせ(combination)のうち、6と2、3と5は、the easy way で、4と4の組み合わせが、the hard way であるとのこと。
やはり、そのように数が同じ「ぞろ目」の組み合わせを、hard numbers と呼ぶようです。
その語義にも、easy と hard が使われていることからも、ツキまくりのモニカにとっては、4と4の組み合わせさえ、hard じゃなくて、easy だわ、と言っていることになるでしょう。
ちなみに、ウィキペディアで hard eight を調べると、
Wikipedia 英語版: Hard Eight
Hard eight describes a dice roll in the game of craps wherein each of two dice land on "four."
と出ています。
つまり、「ハードエイトは、クラップスのゲームで、2つのサイコロのそれぞれが4で着地する[4の目が出て止まる]というサイコロのころがしを意味する」。
また、その説明の後に、
The term may also refer to: として、Hard Eight (film) や Hard Eight (novel) が存在することも示されています。
allcinema : 映画「ハードエイト」 によると、1996年のアメリカ映画のようですが、日本では劇場未公開のようです。
やはり、ギャンブラーやカジノにまつわるお話のようですね。
それまでも次が当たりだったらこうする…みたいにいろいろ言っていたチャンドラーですが、ここで、ものすごい提案をしています。
次にもう1回、ハードエイトを転がしたら、つまり、ハードエイトの目を出したら、俺たちは今夜ここで結婚する!という宣言です。
観客からもオー!という声が上がっていますし、モニカはチャンドラーを見つめて固まっています。
ゲームを見ている人たちは、「やれ、転がせ!」とはやし立てますが、モニカは Shut up! と言ってみんなが騒ぐのを制していますね。
get interesting は「興味深くなる、面白くなる、面白くなってくる」ですから、It just got interesting! は「ちょうど面白くなってきたわ、面白くなってきたところなのよ!」という感じでしょう。
みんなは茶化すように騒ぐけど、こちらは人生がかかった真剣な話なのよ、それまでのお遊びのゲームじゃなくて、話がにわかに興味深いものになってきたんだから、他人はちょっとの間、黙ってて!みたいな気持ちなのでしょうね。
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2011年07月01日
変な人は他にもたくさんいる フレンズ5-24その3
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ベガスに来る飛行機の中で喧嘩状態になったロスとレイチェル。
お互いを困らせようといたずらを繰り返した挙句、ロスは眠っているレイチェルの顔に、ペンでヒゲの落書きをします。
その落書きがどうしても消えないので、ロスは、ペンのインクを落とすにはどうしたら良いかを(おそらくペンのメーカーに)電話で尋ねています。
しばらく電話で話した後、
ロス: Okay, thank you! (Rachel gets excited at his tone.) (Hangs up the phone) Yeah, it's not coming off. (オッケー、ありがとう! [レイチェルはロスの声の調子(トーン)に胸を躍らせる] [ロスは電話を切る] あぁ、インクは落ちないって。)
レイチェル: What? What else did he say? (何ですって? その人は他に何か言ってた?)
ロス: Umm, he said he thought I was funny, so.... (Rachel stares at him.) Okay, look-look umm, let's just go downstairs, we'll have some fun and you will forget all about it. (うーん、あなたは面白い人ですね、って言ってた、それで… [レイチェルはロスをじっと見る] よし、ねえ、ただ下に[下の階に]行っちゃおうよ、僕たち楽しめるよ、そしたら君はその件のことを全部忘れるさ。)
レイチェル: Ross, no! There is no way I am leaving this room looking like this! (ロス、だめよ! こんな姿でこの部屋を出るなんて絶対に無理よ!)
ロス: Oh, come on, Rach. It's-it's not that bad. (もう、いいじゃないか、レイチェル。そんなにひどくないよ。)
レイチェル: Ross, I am a human doodle! (ロスは、私は人間のいたずら書きなのよ!)
ロス: Look, just because some idiot drew on your face doesn't mean you shouldn't have any fun, okay? Besides, hey-hey-hey, no one's even gonna look at you, okay? This is Vegas! Hello? There are tons of other freaks here. (Rachel turns around and glares at him.) There are tons... of... freaks here. No other. No. Come on. No one will notice. I swear. (ねえ、ただどこかのバカが君の顔に(絵を)描いたからって、それで、君は何も楽しむべきじゃないってことにはならないよ、だろ? それに、ほらほらほら、誰も君を見ることさえしないよ、そうだろ? ここはベガスだ! いいかい? ここには他にも変なやつはいっぱいいるんだよ。[レイチェルは振り向いて、ロスをにらむ] ここには変なやつがいっぱいいる…だ。「他にも」じゃなくて。ねぇ、誰も気付かないって。誓うよ[本当だって]。)
(They both exit.)
二人は部屋を出て行く。
[Time lapse, they're both entering.]
時間が経過し、二人は部屋に入ってくる。
ロス: Okay, there was some staring and pointing. (そうだね、見つめる人とか指差す人はいたね。)
レイチェル: Okay, I need a, I need a drink! (Makes a beeline for the mini-bar.) (いいわ、私にはお酒が必要よ! [(部屋の)ミニバーにまっすぐに進む])
come off は「分離した状態になる」という感覚ですから、「(ものが)(…から)とれる、はずれる、抜ける」「(汚れなどが)とれる、落ちる」「(塗料などが)はがれる」という意味になります。
ロスはずっと、顔に書いたペン(のインク)をとる方法を電話で問い合わせていましたので、it's not coming off は「その顔に書いたペンはとれない」と言っていることがわかりますね。
現在進行形なのは、「近い将来」を示す感覚でしょうか。
It's coming off. という肯定文ならば、「(指示通りにやっていれば)(そのうち、近いうちに)とれるよ」という感覚になり、今回はその否定形なので、「(何をやっても、どんな方法をとっても)そのペンがとれることはない」というニュアンスを出しているように思います。
電話で話している時のロスは、電話を切る直前、嬉しそうな声で相槌を打っていましたので、ト書きにあるように、ロスの声の調子(his tone)にレイチェルは喜んでいる様子でした。
それなのに電話を切った後、あっさり「とれないって、やっぱり無理だって」と言う、そういう「期待させておいて落とす」ところが「いかにもコメディー」な感じです。
インクは落ちない、という話だけなら、何をそんなに話してたの?とレイチェルは思ったのでしょう、「その人は他に何か言ってた?」と尋ねています。
ロスの he said he thought I was funny は、「その人は、僕(ロス)が面白いと思うと言ってた」。
つまり、電話の相手は、友人の顔に落書きをしたロスの話を聞いて、「あなたって面白い人ですねぇ」(I think you are funny.)と言ったと説明していることになります。
つまり、引用符を使うと、He said, "I think you are funny." になるわけですが、それが間接話法で、He said he thought I was funny. になっている、ということです。
何を楽しそうに話してたのかと思ったら、「ご友人の顔に落書きをしたなんて、そりゃあ面白いですね」みたいなことを言っていたのだとわかって、それでレイチェルはロスをにらんでいるわけです。
こっちは真剣に悩んでるのに、そんなくっだらないこと話してたの?!という気持ちですね。
let's just go downstairs は、「ただもう(つべこべ言わずに、悩まずに)下に行こう」という感覚。
上の階にあるこの客室から、下のカジノのある階に行こうよ、ということですね。
カジノとかでパーッと遊べば、思いきり楽しめて、その顔のヒゲのこととか全部忘れるさ、と言っていることになります。
こんな姿で部屋を出ることなんてできない、というレイチェルに、ロスは it's not that bad と言っています。
これは、that がポイントですね。
It's not bad. なら「悪くない」ですが、that が入ると、「そんなに悪くない」というニュアンスになります。
「そんなに」とは「どんなに」かと言うと、部屋を一歩も出ることができない、っていうほど、そんなにひどくないよ、という感覚ですね。
bad じゃないとは言えない、確かに bad は bad だけど(笑)、レイチェルがそこまで嫌がるほどそんなにひどくはない、と言っていることになります。
レイチェルは「あなたは他人事(ひとごと)だからそんな風に言うけど」と言いたげに、「私は a human doodle なのよ!」と叫んでいます。
doodle は「いたずら書き」。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
doodle : to draw shapes, lines, or patterns without really thinking about what you are doing
つまり、「自分が何をしているかについてよく考えることをせずに、形や線や模様(パターン)を描くこと」。
研究社 新英和中辞典では、
doodle :
【動】【自】 (考えごとをしながら)いたずら書きをする
【名】【C】 (考えごとなどをしている時の)いたずら書き
とあって、何か他のことを考えながら、何を書くという目的もなく何となく書いてしまったいたずら書きみたいなものを doodle と言うようです。
ロスの場合は、明らかに「ヒゲ」を描こうとして描いているので(笑)、without really thinking... 以下の語義とはちょっと合わないような気もしますが、「絵」と呼べるほどのものでもない、落書き、いたずら書きを doodle と表現する、ということで良いでしょう。
フレンズ3-15その5 では、メモの下に書いてあるのは何?と聞かれて、
モニカ: Oh that's my doodle of a ladybug with a top hat. (あぁ、それはシルクハットをかぶったテントウムシの落書き[いたずら書き]なの。)
というセリフも出てきました。
普通は、紙などに書かれるようないたずら書きを人間の体(顔)に書かれたことを、自ら、a human doodle 「人間(の)[人間に書かれた]いたずら書き」と表現しているわけですね。
これじゃあ、いたずら書き、落書きが歩いているようなもんだわ!みたいな感覚でしょう。
ロスはレイチェルを諭すように、just because... doesn't mean 〜 と言っています。
これは、「ただ…だからと言って、それが〜を意味しない」という感覚ですね。
some idiot は「(あえて名前を出さない)どこかのバカ」という感じですが、それはもちろん、レイチェルの顔に落書きをしたロス自身を指しています。
「どっかのおバカが、どこぞのアホが」、君の顔に(絵や線を)描いたからって、それが「レイチェルは少しも楽しむべきではない、少しも楽しんではいけない」ということにはならないよ、と言っていることになります。
僕がふざけてひどいことをしちゃったけど、そんなバカな僕のいたずらのせいで、君が楽しめないなんておかしいじゃないか、それってもったいないと思わない?みたいな感じですね。
besides 「その上、さらに」と付け加える形で、「誰も君の方を見ないよ」とも言っています。
look at は「…に視線を向ける」感覚。
ここはベガスなんだよ!と言ったロスは、There are tons of other freaks here. と言っています。
tons of は「多くの、多数の、大量の」。
重さの単位である1トン、2トンの ton ですが、その単位を使うことでその多さを強調しているニュアンスです。
これは、There is/are 構文で、「ここには、他の freak (変な人、変人)がたくさんいる」と言っていることになります。
つまり、「他にも変人はいっぱいいる、変人は他にもたくさんいる」と言っているわけですが、その言葉にレイチェルは引っ掛かったようで、ロスをにらみつけています。
other 「他の、別の」という表現を使って、「他にもいる」と言ったということは、すでに freak が存在していることを示していることになります。
つまりはロスはレイチェルのことも freak だと思っていて、「心配しなくても、ここはベガスだから、君みたいな freak は「他にも」いっぱいいるさ」と言っていることがわかるのですね。
other を使ってしまうと、レイチェルもその tons of freaks の一人だと言ってしまうことになると気付いたロスは、次のセリフで、other がないバージョンで言い直しているわけです。
no other 「other はナシでね」と付け足して、other がないことをさらに強調しています。
「君以外にもヘンなヤツはいっぱいいるから誰も君を見ない」じゃなくて、「ヘンなヤツが周りにいっぱいいるから、誰も(普通の)君を見ない」みたいに言い換えた感じになります。
I swear. 「誓うよ、絶対だよ」とまで言って、二人は部屋を出るのですが、その後、すぐに画面が切り替わり、レイチェルが怒りながら部屋に帰ってきます。
「絶対大丈夫だって」と出て行ったら、やっぱり全然大丈夫じゃなかった、というオチになるのは、コメディーの定番ですね。
there was some staring and pointing は、「いくつかの「じろじろ見ること」と「指を差すこと」があった」。
つまり、実際にカジノに行ってみると、「何、その顔?」みたいに、じろじろ見られて、指を差された、と言っていることになります。
レイチェルがプリプリ怒るのは無理もない、僕は「誰も気づかないよ」って言ったけど、実際そういう行為があったもんね、と少し前の状況を客観的に説明しているセリフになるでしょう。
レイチェルは、「もうやってられないわ!」という感じで、お酒を飲もうと、部屋のミニバーに近づきます。
ト書きの、make a beeline for は「…へまっすぐに・まっしぐらに進む」。
beeline の bee は「ミツバチ」のことで、ミツバチが巣に戻る時に描く一直線を beeline と言うようです。
LAAD では、
make a beeline for somebody/something : (informal) to go quickly and directly toward someone or something
つまり、「(インフォーマル) 急いで、そして直接、誰かや何かに向かうこと」。
ミツバチがまっすぐ巣に戻るように、「寄り道せずに、脇目も振らずに」一直線にそこに向かう、直行する、という感覚ですね。
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ベガスに来る飛行機の中で喧嘩状態になったロスとレイチェル。
お互いを困らせようといたずらを繰り返した挙句、ロスは眠っているレイチェルの顔に、ペンでヒゲの落書きをします。
その落書きがどうしても消えないので、ロスは、ペンのインクを落とすにはどうしたら良いかを(おそらくペンのメーカーに)電話で尋ねています。
しばらく電話で話した後、
ロス: Okay, thank you! (Rachel gets excited at his tone.) (Hangs up the phone) Yeah, it's not coming off. (オッケー、ありがとう! [レイチェルはロスの声の調子(トーン)に胸を躍らせる] [ロスは電話を切る] あぁ、インクは落ちないって。)
レイチェル: What? What else did he say? (何ですって? その人は他に何か言ってた?)
ロス: Umm, he said he thought I was funny, so.... (Rachel stares at him.) Okay, look-look umm, let's just go downstairs, we'll have some fun and you will forget all about it. (うーん、あなたは面白い人ですね、って言ってた、それで… [レイチェルはロスをじっと見る] よし、ねえ、ただ下に[下の階に]行っちゃおうよ、僕たち楽しめるよ、そしたら君はその件のことを全部忘れるさ。)
レイチェル: Ross, no! There is no way I am leaving this room looking like this! (ロス、だめよ! こんな姿でこの部屋を出るなんて絶対に無理よ!)
ロス: Oh, come on, Rach. It's-it's not that bad. (もう、いいじゃないか、レイチェル。そんなにひどくないよ。)
レイチェル: Ross, I am a human doodle! (ロスは、私は人間のいたずら書きなのよ!)
ロス: Look, just because some idiot drew on your face doesn't mean you shouldn't have any fun, okay? Besides, hey-hey-hey, no one's even gonna look at you, okay? This is Vegas! Hello? There are tons of other freaks here. (Rachel turns around and glares at him.) There are tons... of... freaks here. No other. No. Come on. No one will notice. I swear. (ねえ、ただどこかのバカが君の顔に(絵を)描いたからって、それで、君は何も楽しむべきじゃないってことにはならないよ、だろ? それに、ほらほらほら、誰も君を見ることさえしないよ、そうだろ? ここはベガスだ! いいかい? ここには他にも変なやつはいっぱいいるんだよ。[レイチェルは振り向いて、ロスをにらむ] ここには変なやつがいっぱいいる…だ。「他にも」じゃなくて。ねぇ、誰も気付かないって。誓うよ[本当だって]。)
(They both exit.)
二人は部屋を出て行く。
[Time lapse, they're both entering.]
時間が経過し、二人は部屋に入ってくる。
ロス: Okay, there was some staring and pointing. (そうだね、見つめる人とか指差す人はいたね。)
レイチェル: Okay, I need a, I need a drink! (Makes a beeline for the mini-bar.) (いいわ、私にはお酒が必要よ! [(部屋の)ミニバーにまっすぐに進む])
come off は「分離した状態になる」という感覚ですから、「(ものが)(…から)とれる、はずれる、抜ける」「(汚れなどが)とれる、落ちる」「(塗料などが)はがれる」という意味になります。
ロスはずっと、顔に書いたペン(のインク)をとる方法を電話で問い合わせていましたので、it's not coming off は「その顔に書いたペンはとれない」と言っていることがわかりますね。
現在進行形なのは、「近い将来」を示す感覚でしょうか。
It's coming off. という肯定文ならば、「(指示通りにやっていれば)(そのうち、近いうちに)とれるよ」という感覚になり、今回はその否定形なので、「(何をやっても、どんな方法をとっても)そのペンがとれることはない」というニュアンスを出しているように思います。
電話で話している時のロスは、電話を切る直前、嬉しそうな声で相槌を打っていましたので、ト書きにあるように、ロスの声の調子(his tone)にレイチェルは喜んでいる様子でした。
それなのに電話を切った後、あっさり「とれないって、やっぱり無理だって」と言う、そういう「期待させておいて落とす」ところが「いかにもコメディー」な感じです。
インクは落ちない、という話だけなら、何をそんなに話してたの?とレイチェルは思ったのでしょう、「その人は他に何か言ってた?」と尋ねています。
ロスの he said he thought I was funny は、「その人は、僕(ロス)が面白いと思うと言ってた」。
つまり、電話の相手は、友人の顔に落書きをしたロスの話を聞いて、「あなたって面白い人ですねぇ」(I think you are funny.)と言ったと説明していることになります。
つまり、引用符を使うと、He said, "I think you are funny." になるわけですが、それが間接話法で、He said he thought I was funny. になっている、ということです。
何を楽しそうに話してたのかと思ったら、「ご友人の顔に落書きをしたなんて、そりゃあ面白いですね」みたいなことを言っていたのだとわかって、それでレイチェルはロスをにらんでいるわけです。
こっちは真剣に悩んでるのに、そんなくっだらないこと話してたの?!という気持ちですね。
let's just go downstairs は、「ただもう(つべこべ言わずに、悩まずに)下に行こう」という感覚。
上の階にあるこの客室から、下のカジノのある階に行こうよ、ということですね。
カジノとかでパーッと遊べば、思いきり楽しめて、その顔のヒゲのこととか全部忘れるさ、と言っていることになります。
こんな姿で部屋を出ることなんてできない、というレイチェルに、ロスは it's not that bad と言っています。
これは、that がポイントですね。
It's not bad. なら「悪くない」ですが、that が入ると、「そんなに悪くない」というニュアンスになります。
「そんなに」とは「どんなに」かと言うと、部屋を一歩も出ることができない、っていうほど、そんなにひどくないよ、という感覚ですね。
bad じゃないとは言えない、確かに bad は bad だけど(笑)、レイチェルがそこまで嫌がるほどそんなにひどくはない、と言っていることになります。
レイチェルは「あなたは他人事(ひとごと)だからそんな風に言うけど」と言いたげに、「私は a human doodle なのよ!」と叫んでいます。
doodle は「いたずら書き」。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
doodle : to draw shapes, lines, or patterns without really thinking about what you are doing
つまり、「自分が何をしているかについてよく考えることをせずに、形や線や模様(パターン)を描くこと」。
研究社 新英和中辞典では、
doodle :
【動】【自】 (考えごとをしながら)いたずら書きをする
【名】【C】 (考えごとなどをしている時の)いたずら書き
とあって、何か他のことを考えながら、何を書くという目的もなく何となく書いてしまったいたずら書きみたいなものを doodle と言うようです。
ロスの場合は、明らかに「ヒゲ」を描こうとして描いているので(笑)、without really thinking... 以下の語義とはちょっと合わないような気もしますが、「絵」と呼べるほどのものでもない、落書き、いたずら書きを doodle と表現する、ということで良いでしょう。
フレンズ3-15その5 では、メモの下に書いてあるのは何?と聞かれて、
モニカ: Oh that's my doodle of a ladybug with a top hat. (あぁ、それはシルクハットをかぶったテントウムシの落書き[いたずら書き]なの。)
というセリフも出てきました。
普通は、紙などに書かれるようないたずら書きを人間の体(顔)に書かれたことを、自ら、a human doodle 「人間(の)[人間に書かれた]いたずら書き」と表現しているわけですね。
これじゃあ、いたずら書き、落書きが歩いているようなもんだわ!みたいな感覚でしょう。
ロスはレイチェルを諭すように、just because... doesn't mean 〜 と言っています。
これは、「ただ…だからと言って、それが〜を意味しない」という感覚ですね。
some idiot は「(あえて名前を出さない)どこかのバカ」という感じですが、それはもちろん、レイチェルの顔に落書きをしたロス自身を指しています。
「どっかのおバカが、どこぞのアホが」、君の顔に(絵や線を)描いたからって、それが「レイチェルは少しも楽しむべきではない、少しも楽しんではいけない」ということにはならないよ、と言っていることになります。
僕がふざけてひどいことをしちゃったけど、そんなバカな僕のいたずらのせいで、君が楽しめないなんておかしいじゃないか、それってもったいないと思わない?みたいな感じですね。
besides 「その上、さらに」と付け加える形で、「誰も君の方を見ないよ」とも言っています。
look at は「…に視線を向ける」感覚。
ここはベガスなんだよ!と言ったロスは、There are tons of other freaks here. と言っています。
tons of は「多くの、多数の、大量の」。
重さの単位である1トン、2トンの ton ですが、その単位を使うことでその多さを強調しているニュアンスです。
これは、There is/are 構文で、「ここには、他の freak (変な人、変人)がたくさんいる」と言っていることになります。
つまり、「他にも変人はいっぱいいる、変人は他にもたくさんいる」と言っているわけですが、その言葉にレイチェルは引っ掛かったようで、ロスをにらみつけています。
other 「他の、別の」という表現を使って、「他にもいる」と言ったということは、すでに freak が存在していることを示していることになります。
つまりはロスはレイチェルのことも freak だと思っていて、「心配しなくても、ここはベガスだから、君みたいな freak は「他にも」いっぱいいるさ」と言っていることがわかるのですね。
other を使ってしまうと、レイチェルもその tons of freaks の一人だと言ってしまうことになると気付いたロスは、次のセリフで、other がないバージョンで言い直しているわけです。
no other 「other はナシでね」と付け足して、other がないことをさらに強調しています。
「君以外にもヘンなヤツはいっぱいいるから誰も君を見ない」じゃなくて、「ヘンなヤツが周りにいっぱいいるから、誰も(普通の)君を見ない」みたいに言い換えた感じになります。
I swear. 「誓うよ、絶対だよ」とまで言って、二人は部屋を出るのですが、その後、すぐに画面が切り替わり、レイチェルが怒りながら部屋に帰ってきます。
「絶対大丈夫だって」と出て行ったら、やっぱり全然大丈夫じゃなかった、というオチになるのは、コメディーの定番ですね。
there was some staring and pointing は、「いくつかの「じろじろ見ること」と「指を差すこと」があった」。
つまり、実際にカジノに行ってみると、「何、その顔?」みたいに、じろじろ見られて、指を差された、と言っていることになります。
レイチェルがプリプリ怒るのは無理もない、僕は「誰も気づかないよ」って言ったけど、実際そういう行為があったもんね、と少し前の状況を客観的に説明しているセリフになるでしょう。
レイチェルは、「もうやってられないわ!」という感じで、お酒を飲もうと、部屋のミニバーに近づきます。
ト書きの、make a beeline for は「…へまっすぐに・まっしぐらに進む」。
beeline の bee は「ミツバチ」のことで、ミツバチが巣に戻る時に描く一直線を beeline と言うようです。
LAAD では、
make a beeline for somebody/something : (informal) to go quickly and directly toward someone or something
つまり、「(インフォーマル) 急いで、そして直接、誰かや何かに向かうこと」。
ミツバチがまっすぐ巣に戻るように、「寄り道せずに、脇目も振らずに」一直線にそこに向かう、直行する、という感覚ですね。
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2011年06月29日
彼は君の運命の恋人だ フレンズ5-24その2
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[Scene: The craps table, Monica is on a big roll.]
クラップス(2個のさいころを使うゲーム)のテーブル。モニカは大きく勝ち続けている。
モニカ: All right, baby, come on! (Rolls the dice) Yes! Yes! I am on fire! (いいわ、ベイビー、来い! [サイコロを転がす] やった、やった! 私は燃えてるわよ!)
チャンドラー: (walking by with his luggage) See you later, Mon. ([荷物を持って通りかかる] じゃあね、モニカ。)
モニカ: Wait, Chandler, what are you doing? (待って、チャンドラー、何やってるの?)
チャンドラー: What's it look like? I'm going home. (どう見える? 俺は家に帰るんだよ。)
モニカ: What? Wait! Why? (He turns and heads for the door and she chases after him.) Chandler! Chandler! Wait! I’m sorry, I was just playing for one second! I was trying to find you to tell you that, look, if you don't want me to see Richard again, I won't! He, He means nothing to me. (何ですって? 待って! どうして? [チャンドラーは向きを変えてドアの方に進む、そしてモニカは彼の後を追いかける] チャンドラー、チャンドラー! 待って! ごめんなさい。私はただ、ちょっとだけ(一瞬)、ゲームをやっていただけなの! 私はあなたを探して、こう言おうとしてたの、ほら、もしあなたが私にもう二度とリチャードに会って欲しくないと思うなら、私は会わないわ! 彼は、彼は私にとっては何の意味もないもの。)
チャンドラー: Oh, come on. I was there. (He's propped up with his hand on a statute of a naked guy. He winces and pulls his hand away.) I know he's the love of your life. (あぁ、よせよ。俺はその場にいたんだぞ。[チャンドラーは、裸体の男性像の上に手を置いて自分の体を支える。彼は顔をしかめ、手を引っ込める] リチャードは君の運命の恋人だって、俺は知ってるんだぞ。)
モニカ: Not anymore. (今はもう違うわ。)
チャンドラー: Really? (ほんとに?)
モニカ: Really! (They hug and kiss) All right? Let's forget about this going home stuff and celebrate our anniversary. (She picks up his suitcase.) Okay, this is empty. (ほんとよ! [二人はハグしてキスする] いい? この家に帰るってことは忘れましょう、そして、私たちの記念日を祝いましょうよ。[モニカはチャンドラーのスーツケースを持ち上げる] ちょっと、これは空(から)よ。)
チャンドラー: Yeah, I wanted to make a dramatic scene, but I hate packing. (そうなんだ。ドラマティックなシーンにしたかったんだけど、でも、荷造りするのが嫌でね。)
ト書きの the craps table について。
crap というと、ドラマや映画のセリフでは、「うんち」「くず、がらくた」「たわごと、うそ」という悪い意味で使われることが多いですが、この craps というのはゲームの名前で、「2個のサイコロを使う博打(ばくち)、ゲーム」のことを指します。
Macmillan Dictionary では、
craps [noun] [uncountable] : a game played especially in the U.S. in which the players throw two dice and risk money on the numbers
つまり、「特にアメリカで行われるゲームで、そのゲームでは、プレーヤーは2個のサイコロを投げて、数字に金を賭ける」。
今回のエピソードでは、実際にそのクラップスというゲームのシーンが流れますので、まさにその説明の通り、2個のサイコロを投げて、その出た目の合計を当てるゲームであることがわかります。
クラップスで絶好調なモニカのそばを、カバンを持ったチャンドラーが通りかかり、じゃあね、と言って去って行こうとします。
モニカの What are you doing? に対して、チャンドラーは What's it look like? と言っていますね。
What does it look like? ということで、「(今のこの状況は)何に見える?」みたいな感覚でしょう。
自然な日本語にすると、「見りゃわかるだろ、家に帰ろうとしてんだよ」みたいな感じになるでしょうか。
そう言ってまた去ろうとするチャンドラーを追いかけて、モニカは必死に自分のこれまでの行動を説明しています。ゲームをちょっとやってただけで、I was trying to find you... と言っていますね。
「私は…しようとしていた」のように、was trying to という過去進行形が使われていることで、「そうしようとしていたけど、失敗した。あなたを探そうとしたけれど、見つからなかったの」と言っていることがわかります。
to tell you that で、「that 以下のことをあなたに言うために(あなたを探そうとしていた)」ということもわかりますね。
その言おうとしていた内容が、if 以下のセリフで語られています。
「私がリチャードにもう一度会うことをあなたが望まないのなら、私は(もう二度と)会わないわ!」ということです。
He means nothing to me. は、「彼は私にとって何の意味もない」。
そこまではっきり断言しても、チャンドラーはその言葉が信じられない様子で、Oh, come on. I was there. と言っています。
「あぁ、(そんな嘘を言うのは)よしてくれよ。俺はその場にいたんだぞ」という感じですね。
この部分、DVDの日本語訳では、「当時を知ってるぞ/付き合ってた頃を知ってるんだぞ」となっていましたが、まさにそういう意味ですね。
モニカにとってリチャードの存在に意味がないだなんて大嘘だ、二人は熱愛していて、別れた後、モニカがボロボロになってたのも知ってる、その様子をずっと近くで見ていて知っている俺に、そんな口先だけの嘘を言うなよ、という感じなのでしょう。
ところで、この I was there. とよく似たフレーズの、You weren't there! というセリフが、フレンズ1-5 で使われていたことがあります。
偶然にも、つい先日、フレンズ1-5その1 のコメント欄 で、その You weren't there! に関するご質問があり、そのフレーズのニュアンスについても説明させていただいていますので、合わせてお読みいただけると幸いです。
そんな風に真剣に怒りながらも、たまたま手を乗せたのが近くにあったローマ風の彫刻で、それが男性の裸体像だったため、ぎょっとした顔をして慌てて手を引っ込めるのも、フレンズらしくて面白いです。
チャンドラーは、「モニカとリチャードが付き合っていた頃のことを知ってる」と言った後で、I know he's the love of your life. とも言っています。
この love は抽象的な「愛」というよりも「恋人」を意味していて、「人生の恋人」みたいな感覚でしょうか。
もっと詩的に言うと、「運命の恋人、運命の人」みたいな意味ですね。
Queen の曲にも、Love of My Life というタイトルの歌があります。
Queen のベスト盤、Jewels II の9曲目に入っていて、手持ちの歌詞カード(笑)を見てみたのですが、やはり歌詞の日本語訳では、「運命の恋人」と訳されていました。
将来に対する方向性の違いで二人は別れてしまったけれど、リチャードはモニカが一番愛した男性で、運命の人だってことを、俺は知ってるんだぞ、ということですね。
それに対してモニカは、Not anymore. と言っています。
not anymore は、「もはや(もう)…ではない」ということですね。
確かにつき合っていた当時はリチャードは運命の人、運命の恋人だった、でも今はもう違うのよ、ということです。
それはつまり、今の私にとっては、今の恋人のあなたが、the love of my life だと言っているわけですね。
昔のリチャードとの関係を否定しても、チャンドラーには嘘にしか聞こえないでしょうから、そのように過去の事実を否定するのではなく、「チャンドラーとこうして恋人になって、あなたを愛するようになったから、もはやリチャードは運命の人ではない」と、今の正直な気持ちを素直に伝えたわけです。
「今はもう違う」という一言がチャンドラーを救ってくれたようで、チャンドラーは嬉しそうな顔をして、Really? と言っています。
ハグ&キスをしたモニカは、家に帰ろうとしてたことは忘れて、記念日をお祝いしましょう、と言っています。
this going home stuff は、「この「家に帰る」って件、家に帰ろうとしていたこと」みたいな感覚ですね。
カバンを部屋に戻そうと持ち上げた時に、それが軽くて中身が空っぽであることにモニカは気付きます。
make a dramatic scene は文字通り、「ドラマティックなシーンを作る」ということですね。
「もう俺は帰るからな!」「あなた、お願いだから待って!」みたいにドラマティックになるような演出を考えていたんだけど、実際にカバンに荷物を詰めるのは苦手で面倒くさかったから、中身は空っぽのまま持ってきちゃったんだ、ということです。
つまり、チャンドラーは本気で帰ろうとしていたわけではなかった、ということで、その事実に気づかれて、チャンドラーもちょっと気まずそうな顔をしていますが、二人の誤解が解けて仲直りできたのならまぁそれでいいか、というところでしょうね。
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クラップス(2個のさいころを使うゲーム)のテーブル。モニカは大きく勝ち続けている。
モニカ: All right, baby, come on! (Rolls the dice) Yes! Yes! I am on fire! (いいわ、ベイビー、来い! [サイコロを転がす] やった、やった! 私は燃えてるわよ!)
チャンドラー: (walking by with his luggage) See you later, Mon. ([荷物を持って通りかかる] じゃあね、モニカ。)
モニカ: Wait, Chandler, what are you doing? (待って、チャンドラー、何やってるの?)
チャンドラー: What's it look like? I'm going home. (どう見える? 俺は家に帰るんだよ。)
モニカ: What? Wait! Why? (He turns and heads for the door and she chases after him.) Chandler! Chandler! Wait! I’m sorry, I was just playing for one second! I was trying to find you to tell you that, look, if you don't want me to see Richard again, I won't! He, He means nothing to me. (何ですって? 待って! どうして? [チャンドラーは向きを変えてドアの方に進む、そしてモニカは彼の後を追いかける] チャンドラー、チャンドラー! 待って! ごめんなさい。私はただ、ちょっとだけ(一瞬)、ゲームをやっていただけなの! 私はあなたを探して、こう言おうとしてたの、ほら、もしあなたが私にもう二度とリチャードに会って欲しくないと思うなら、私は会わないわ! 彼は、彼は私にとっては何の意味もないもの。)
チャンドラー: Oh, come on. I was there. (He's propped up with his hand on a statute of a naked guy. He winces and pulls his hand away.) I know he's the love of your life. (あぁ、よせよ。俺はその場にいたんだぞ。[チャンドラーは、裸体の男性像の上に手を置いて自分の体を支える。彼は顔をしかめ、手を引っ込める] リチャードは君の運命の恋人だって、俺は知ってるんだぞ。)
モニカ: Not anymore. (今はもう違うわ。)
チャンドラー: Really? (ほんとに?)
モニカ: Really! (They hug and kiss) All right? Let's forget about this going home stuff and celebrate our anniversary. (She picks up his suitcase.) Okay, this is empty. (ほんとよ! [二人はハグしてキスする] いい? この家に帰るってことは忘れましょう、そして、私たちの記念日を祝いましょうよ。[モニカはチャンドラーのスーツケースを持ち上げる] ちょっと、これは空(から)よ。)
チャンドラー: Yeah, I wanted to make a dramatic scene, but I hate packing. (そうなんだ。ドラマティックなシーンにしたかったんだけど、でも、荷造りするのが嫌でね。)
ト書きの the craps table について。
crap というと、ドラマや映画のセリフでは、「うんち」「くず、がらくた」「たわごと、うそ」という悪い意味で使われることが多いですが、この craps というのはゲームの名前で、「2個のサイコロを使う博打(ばくち)、ゲーム」のことを指します。
Macmillan Dictionary では、
craps [noun] [uncountable] : a game played especially in the U.S. in which the players throw two dice and risk money on the numbers
つまり、「特にアメリカで行われるゲームで、そのゲームでは、プレーヤーは2個のサイコロを投げて、数字に金を賭ける」。
今回のエピソードでは、実際にそのクラップスというゲームのシーンが流れますので、まさにその説明の通り、2個のサイコロを投げて、その出た目の合計を当てるゲームであることがわかります。
クラップスで絶好調なモニカのそばを、カバンを持ったチャンドラーが通りかかり、じゃあね、と言って去って行こうとします。
モニカの What are you doing? に対して、チャンドラーは What's it look like? と言っていますね。
What does it look like? ということで、「(今のこの状況は)何に見える?」みたいな感覚でしょう。
自然な日本語にすると、「見りゃわかるだろ、家に帰ろうとしてんだよ」みたいな感じになるでしょうか。
そう言ってまた去ろうとするチャンドラーを追いかけて、モニカは必死に自分のこれまでの行動を説明しています。ゲームをちょっとやってただけで、I was trying to find you... と言っていますね。
「私は…しようとしていた」のように、was trying to という過去進行形が使われていることで、「そうしようとしていたけど、失敗した。あなたを探そうとしたけれど、見つからなかったの」と言っていることがわかります。
to tell you that で、「that 以下のことをあなたに言うために(あなたを探そうとしていた)」ということもわかりますね。
その言おうとしていた内容が、if 以下のセリフで語られています。
「私がリチャードにもう一度会うことをあなたが望まないのなら、私は(もう二度と)会わないわ!」ということです。
He means nothing to me. は、「彼は私にとって何の意味もない」。
そこまではっきり断言しても、チャンドラーはその言葉が信じられない様子で、Oh, come on. I was there. と言っています。
「あぁ、(そんな嘘を言うのは)よしてくれよ。俺はその場にいたんだぞ」という感じですね。
この部分、DVDの日本語訳では、「当時を知ってるぞ/付き合ってた頃を知ってるんだぞ」となっていましたが、まさにそういう意味ですね。
モニカにとってリチャードの存在に意味がないだなんて大嘘だ、二人は熱愛していて、別れた後、モニカがボロボロになってたのも知ってる、その様子をずっと近くで見ていて知っている俺に、そんな口先だけの嘘を言うなよ、という感じなのでしょう。
ところで、この I was there. とよく似たフレーズの、You weren't there! というセリフが、フレンズ1-5 で使われていたことがあります。
偶然にも、つい先日、フレンズ1-5その1 のコメント欄 で、その You weren't there! に関するご質問があり、そのフレーズのニュアンスについても説明させていただいていますので、合わせてお読みいただけると幸いです。
そんな風に真剣に怒りながらも、たまたま手を乗せたのが近くにあったローマ風の彫刻で、それが男性の裸体像だったため、ぎょっとした顔をして慌てて手を引っ込めるのも、フレンズらしくて面白いです。
チャンドラーは、「モニカとリチャードが付き合っていた頃のことを知ってる」と言った後で、I know he's the love of your life. とも言っています。
この love は抽象的な「愛」というよりも「恋人」を意味していて、「人生の恋人」みたいな感覚でしょうか。
もっと詩的に言うと、「運命の恋人、運命の人」みたいな意味ですね。
Queen の曲にも、Love of My Life というタイトルの歌があります。
Queen のベスト盤、Jewels II の9曲目に入っていて、手持ちの歌詞カード(笑)を見てみたのですが、やはり歌詞の日本語訳では、「運命の恋人」と訳されていました。
将来に対する方向性の違いで二人は別れてしまったけれど、リチャードはモニカが一番愛した男性で、運命の人だってことを、俺は知ってるんだぞ、ということですね。
それに対してモニカは、Not anymore. と言っています。
not anymore は、「もはや(もう)…ではない」ということですね。
確かにつき合っていた当時はリチャードは運命の人、運命の恋人だった、でも今はもう違うのよ、ということです。
それはつまり、今の私にとっては、今の恋人のあなたが、the love of my life だと言っているわけですね。
昔のリチャードとの関係を否定しても、チャンドラーには嘘にしか聞こえないでしょうから、そのように過去の事実を否定するのではなく、「チャンドラーとこうして恋人になって、あなたを愛するようになったから、もはやリチャードは運命の人ではない」と、今の正直な気持ちを素直に伝えたわけです。
「今はもう違う」という一言がチャンドラーを救ってくれたようで、チャンドラーは嬉しそうな顔をして、Really? と言っています。
ハグ&キスをしたモニカは、家に帰ろうとしてたことは忘れて、記念日をお祝いしましょう、と言っています。
this going home stuff は、「この「家に帰る」って件、家に帰ろうとしていたこと」みたいな感覚ですね。
カバンを部屋に戻そうと持ち上げた時に、それが軽くて中身が空っぽであることにモニカは気付きます。
make a dramatic scene は文字通り、「ドラマティックなシーンを作る」ということですね。
「もう俺は帰るからな!」「あなた、お願いだから待って!」みたいにドラマティックになるような演出を考えていたんだけど、実際にカバンに荷物を詰めるのは苦手で面倒くさかったから、中身は空っぽのまま持ってきちゃったんだ、ということです。
つまり、チャンドラーは本気で帰ろうとしていたわけではなかった、ということで、その事実に気づかれて、チャンドラーもちょっと気まずそうな顔をしていますが、二人の誤解が解けて仲直りできたのならまぁそれでいいか、というところでしょうね。
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2011年06月27日
ジャックポットを盗むラーカー フレンズ5-24その1
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シーズン5 第24話
The One in Vegas Part II (恋人たちのベガス PART 2 )
原題は「ベガスの話 パート2」
ベガスのホテルのカジノコーナーで話をしているロスとフィービー。
(The old lady at Phoebe's machine wins. Phoebe turns around in shock.)
フィービーの[フィービーが使っていた](スロット)マシンに座っている老婦人が勝つ。フィービーはショックな顔で振り向く。
フィービー: Ugh! (あー!)
ロス: What? (何?)
フィービー: That's like the third time that lady's won on a machine I was playing. (あれで3度目(くらい)なのよ、あの女性が私がプレイしてたマシンで勝つのは。)
ロス: Oooohhh, I'll bet she's one of those people. (ほぉー、彼女はあの手の人だと思うね。)
フィービー: M-M-Mole people? (ス、ス、スパイなの?)
ロス: What? No-no, a lurker. (何だって? 違う違う、ラーカーだよ。)
フィービー: Oh. What's a lurker? (ああ。ラーカーって何?)
ロス: Okay, when you're playing a machine and it hasn't paid out, a lurker waits for you to give up and then-- (そうだな、人がマシンをプレイしていて[ゲームをやっていて]支払い[払い戻し]がない時、ラーカーはその人があきらめるのを待っていて、それから…)
フィービー: Kills you? (その人を殺すの?)
ロス: No. They swoop in and steal your jackpot. (違うよ。そいつらは急にやってきて、その人の大当たり(ジャックポット)を盗むのさ。)
ベガスのホテルのカジノで、自分が使っていたスロットマシンに後から座った女性が勝ってしまうのよ、とフィービーはロスにボヤいています。
それを聞いてロスは、その女性は one of those people だと思うね、と言っています。
bet は元々、「(金などを)(…に)賭ける」という意味で、I'll bet (you) that だと「(that 以下であることを)(君に)賭けてもいい」と何かを「断言」するニュアンスになります。
お金を賭けてもいいと思えるほど、that 以下であることを確信してるよ、that 以下であることについては自信があるよ、みたいな感じです。
one of those はこれまで何度も登場してきましたが、「よくあるそういうものの一つ」というニュアンスですね。
「よくいる、あの手の人だよ」と言っているロスに、フィービーは、驚いたように「モモモ、モー・ピーポー?」みたいに、どもるような感じで言っています。
mole という単語は、「ほくろ」、あるいは「モグラ」という意味があります。
その「モグラ」という意味から発展して、「スパイ」という意味もあります。
地下に潜って行動するイメージから来たのでしょうね。
フィービーはその「スパイ」の意味で使っているようです。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
mole : someone who works for an organization, especially a government, while secretly giving information to its enemy.
例) FBI moles were looking for evidence of fraud.
つまり、「組織、特に政府のために働き、その一方でその敵方に秘密裏に情報を与える人」。
例文は、「FBI のスパイたちは不正行為の証拠を探していた」。
驚いて「スパイなの?」というフィービーに、ロスは、彼女は lurker だと説明しています。
聞きなれない言葉なので一瞬「それって何?」と思った方も多いかもしれませんが、フィービーもその言葉を知らずに聞き返しているため、その後のロスの説明を聞けば意味がわかる仕組みになっています。
ネイティブでも当然、知らない言葉、わからない言葉はあるわけで、そういう言葉がある場合に、「それは何?」と聞けて、相手がそれをわかりやすく説明できれば、それできちんと内容は伝わるわけです。
ノンネイティブが英語を学ぶ場合にもそれは非常に大切なことですね。
相手がわからない言葉を使ったら聞き直す。自分が何かを説明する際に、それを示す一番適切な言葉を知らなくても、別の言葉で何とかそれを説明しようとする姿勢があれば、コミュニケーションは成り立つということです。
ロスの説明はわかりやすいですね。when you're playing... の you は、話し相手のフィービーを指しているのではなく、「一般の人々」を指しています。
「聞き手のフィービー(あなた)を含めた一般の人々」の感覚ですね。
もしこれがフィービーを指しているのだとすれば、フィービーのセリフは、Kills me? になるはずですが、それが you になっていることからも、この you はフィービーだけを指しているのではないことが確認できます。
when you're playing..., a lurker waits... 「人が…している時、ラーカーは〜する」のような形の説明は、その lurker がする典型的な行動を説明するのに非常にわかりやすい形になっています。辞書の語義説明にもありそうなパターンです。
こういう部分はノンネイティブの我々も大いに参考にすべきだと思います。
「日本語の○○を英語で言うとこうなる」というように、日本特有の事項を英単語として覚えている人も多いと思いますが、文化背景の違う外国人の方にとっては、直訳とされている単語や熟語だけではピンと来ないことも多いような気がします。
英語に訳す場合には確かにそう表現するけど、でもそれって何のこと?と相手に思わせてしまう気がするのですね。
その場合、もう少し言葉を加えて、かみ砕いて説明することが必要になりますし、その際には、今回のロスのような説明の仕方を覚えておくことが重要になってくると思います。
いざと言う時、何とか自分の語彙の範囲内で説明できる力があると思えることが、英語を話す際の大きな自信になるはずです。
ロスは、「誰かがマシンを使っていて当たりが出ない時、ラーカーはその人があきらめるのを待っていて、それから…」と説明しています。
フィービーは、ロスがその先を言う前に、「その人があきらめるのを待って、その人を殺すの?」と物騒なことを言っていますね。
まださっきの「スパイ」の連想が頭から離れないようです。
swoop は「(鳥が)(空からさっと)舞い降りる、急降下する、飛びかかる」「急襲する」。
「猛禽類が空から獲物を襲う」イメージの言葉で、そこから「急襲する」イメージも出てくるのですね。
swoop in は、過去記事、フレンズ3-11その17 にも出てきました。
jackpot は「(スロットマシン、ポーカーなどの)積み立て掛け金、たまった賞金」「(賭け事の)大当たり」。
hit the jackpot なら「大当たりをとる」。
LAAD では、
jackpot [noun] [countable] : a large amount of money that you can win in a game that is decided by chance
つまり、「運で決まるゲームで、勝ち取ることができる多額の金」。
hit the jackpot : to win a lot of money by gambling
つまり、「ギャンブルで多額の金を勝ち取る」。
lurker についてのロスの説明を聞いた後で、改めて、lurker という単語について見てみることにします。
lurk は「待ち伏せする、潜伏する」「こそこそ動く、歩き回る」という動詞。
LAAD では、
lurk : to wait somewhere quietly and secretly, usually because you are going to do something bad
around/in/beneath etc.
例) Witnesses said they saw a man lurking near the woman's home.
つまり、「どこかで静かにひそかに待つこと、たいていは何か悪いことをしようとしているという理由で」。
例文は、「目撃者は、ある男性がその女性の家の近くでこそこそしているのを見たと言った」。
lurker 、つまり、「lurk する人」というのは、「こそこそ動き回るやつ、潜伏するやつ」みたいなニュアンスですね。
lurk という単語は普通に使われる動詞のようなので、フィービーも、「lurk する人」という意味であることはわかったのでしょうが、それが具体的にどんな風にこそこそするのか、という部分がピンと来なかったのでしょう。
ロスの説明で lurker の具体的な行いがわかって、やっとその言葉の意味が納得できた、というところでしょうね。
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シーズン5 第24話
The One in Vegas Part II (恋人たちのベガス PART 2 )
原題は「ベガスの話 パート2」
ベガスのホテルのカジノコーナーで話をしているロスとフィービー。
(The old lady at Phoebe's machine wins. Phoebe turns around in shock.)
フィービーの[フィービーが使っていた](スロット)マシンに座っている老婦人が勝つ。フィービーはショックな顔で振り向く。
フィービー: Ugh! (あー!)
ロス: What? (何?)
フィービー: That's like the third time that lady's won on a machine I was playing. (あれで3度目(くらい)なのよ、あの女性が私がプレイしてたマシンで勝つのは。)
ロス: Oooohhh, I'll bet she's one of those people. (ほぉー、彼女はあの手の人だと思うね。)
フィービー: M-M-Mole people? (ス、ス、スパイなの?)
ロス: What? No-no, a lurker. (何だって? 違う違う、ラーカーだよ。)
フィービー: Oh. What's a lurker? (ああ。ラーカーって何?)
ロス: Okay, when you're playing a machine and it hasn't paid out, a lurker waits for you to give up and then-- (そうだな、人がマシンをプレイしていて[ゲームをやっていて]支払い[払い戻し]がない時、ラーカーはその人があきらめるのを待っていて、それから…)
フィービー: Kills you? (その人を殺すの?)
ロス: No. They swoop in and steal your jackpot. (違うよ。そいつらは急にやってきて、その人の大当たり(ジャックポット)を盗むのさ。)
ベガスのホテルのカジノで、自分が使っていたスロットマシンに後から座った女性が勝ってしまうのよ、とフィービーはロスにボヤいています。
それを聞いてロスは、その女性は one of those people だと思うね、と言っています。
bet は元々、「(金などを)(…に)賭ける」という意味で、I'll bet (you) that だと「(that 以下であることを)(君に)賭けてもいい」と何かを「断言」するニュアンスになります。
お金を賭けてもいいと思えるほど、that 以下であることを確信してるよ、that 以下であることについては自信があるよ、みたいな感じです。
one of those はこれまで何度も登場してきましたが、「よくあるそういうものの一つ」というニュアンスですね。
「よくいる、あの手の人だよ」と言っているロスに、フィービーは、驚いたように「モモモ、モー・ピーポー?」みたいに、どもるような感じで言っています。
mole という単語は、「ほくろ」、あるいは「モグラ」という意味があります。
その「モグラ」という意味から発展して、「スパイ」という意味もあります。
地下に潜って行動するイメージから来たのでしょうね。
フィービーはその「スパイ」の意味で使っているようです。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
mole : someone who works for an organization, especially a government, while secretly giving information to its enemy.
例) FBI moles were looking for evidence of fraud.
つまり、「組織、特に政府のために働き、その一方でその敵方に秘密裏に情報を与える人」。
例文は、「FBI のスパイたちは不正行為の証拠を探していた」。
驚いて「スパイなの?」というフィービーに、ロスは、彼女は lurker だと説明しています。
聞きなれない言葉なので一瞬「それって何?」と思った方も多いかもしれませんが、フィービーもその言葉を知らずに聞き返しているため、その後のロスの説明を聞けば意味がわかる仕組みになっています。
ネイティブでも当然、知らない言葉、わからない言葉はあるわけで、そういう言葉がある場合に、「それは何?」と聞けて、相手がそれをわかりやすく説明できれば、それできちんと内容は伝わるわけです。
ノンネイティブが英語を学ぶ場合にもそれは非常に大切なことですね。
相手がわからない言葉を使ったら聞き直す。自分が何かを説明する際に、それを示す一番適切な言葉を知らなくても、別の言葉で何とかそれを説明しようとする姿勢があれば、コミュニケーションは成り立つということです。
ロスの説明はわかりやすいですね。when you're playing... の you は、話し相手のフィービーを指しているのではなく、「一般の人々」を指しています。
「聞き手のフィービー(あなた)を含めた一般の人々」の感覚ですね。
もしこれがフィービーを指しているのだとすれば、フィービーのセリフは、Kills me? になるはずですが、それが you になっていることからも、この you はフィービーだけを指しているのではないことが確認できます。
when you're playing..., a lurker waits... 「人が…している時、ラーカーは〜する」のような形の説明は、その lurker がする典型的な行動を説明するのに非常にわかりやすい形になっています。辞書の語義説明にもありそうなパターンです。
こういう部分はノンネイティブの我々も大いに参考にすべきだと思います。
「日本語の○○を英語で言うとこうなる」というように、日本特有の事項を英単語として覚えている人も多いと思いますが、文化背景の違う外国人の方にとっては、直訳とされている単語や熟語だけではピンと来ないことも多いような気がします。
英語に訳す場合には確かにそう表現するけど、でもそれって何のこと?と相手に思わせてしまう気がするのですね。
その場合、もう少し言葉を加えて、かみ砕いて説明することが必要になりますし、その際には、今回のロスのような説明の仕方を覚えておくことが重要になってくると思います。
いざと言う時、何とか自分の語彙の範囲内で説明できる力があると思えることが、英語を話す際の大きな自信になるはずです。
ロスは、「誰かがマシンを使っていて当たりが出ない時、ラーカーはその人があきらめるのを待っていて、それから…」と説明しています。
フィービーは、ロスがその先を言う前に、「その人があきらめるのを待って、その人を殺すの?」と物騒なことを言っていますね。
まださっきの「スパイ」の連想が頭から離れないようです。
swoop は「(鳥が)(空からさっと)舞い降りる、急降下する、飛びかかる」「急襲する」。
「猛禽類が空から獲物を襲う」イメージの言葉で、そこから「急襲する」イメージも出てくるのですね。
swoop in は、過去記事、フレンズ3-11その17 にも出てきました。
jackpot は「(スロットマシン、ポーカーなどの)積み立て掛け金、たまった賞金」「(賭け事の)大当たり」。
hit the jackpot なら「大当たりをとる」。
LAAD では、
jackpot [noun] [countable] : a large amount of money that you can win in a game that is decided by chance
つまり、「運で決まるゲームで、勝ち取ることができる多額の金」。
hit the jackpot : to win a lot of money by gambling
つまり、「ギャンブルで多額の金を勝ち取る」。
lurker についてのロスの説明を聞いた後で、改めて、lurker という単語について見てみることにします。
lurk は「待ち伏せする、潜伏する」「こそこそ動く、歩き回る」という動詞。
LAAD では、
lurk : to wait somewhere quietly and secretly, usually because you are going to do something bad
around/in/beneath etc.
例) Witnesses said they saw a man lurking near the woman's home.
つまり、「どこかで静かにひそかに待つこと、たいていは何か悪いことをしようとしているという理由で」。
例文は、「目撃者は、ある男性がその女性の家の近くでこそこそしているのを見たと言った」。
lurker 、つまり、「lurk する人」というのは、「こそこそ動き回るやつ、潜伏するやつ」みたいなニュアンスですね。
lurk という単語は普通に使われる動詞のようなので、フィービーも、「lurk する人」という意味であることはわかったのでしょうが、それが具体的にどんな風にこそこそするのか、という部分がピンと来なかったのでしょう。
ロスの説明で lurker の具体的な行いがわかって、やっとその言葉の意味が納得できた、というところでしょうね。
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2011年06月24日
背後から棒で殴る フレンズ5-23その6
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[Scene: Chandler's hotel room, he's sitting there with Joey who's talking about his helmet and running his hand through that feathery thing at the top.]
チャンドラーのホテルの部屋。チャンドラーはそこでジョーイと座っている。ジョーイは自分の(グラディエイター用)ヘルメットについて語っていて、ヘルメットのてっぺんについているその羽のようなものを手でとかしている。
ジョーイ: Hey, y'know, in Roman times, this was more than just a hat. (なぁ、ほら、ローマ時代にはさ、これはただの帽子以上のものだったんだぜ。)
チャンドラー: Really? (ほんとに?)
ジョーイ: Yeah, sure, sure! They would uh, they would scrub the floors with it! They would use it to get the mud off their shoe. And sometimes would get dirty. So they would stick it right-- (ああ、そうさ、そうだよ! ローマ人はそれで床をゴシゴシ磨いてたもんだ! 彼らはそれを靴の泥を落とすのに使ったもんだ。それから時々、馬の下の部分が汚れるだろ、そしたら彼らはそれをそこに突っ込んで…)
チャンドラー: (interrupting in the nick of time) Joey, I uh! I can't believe this is how I'm spending my anniversary. ([間一髪でそれを遮って] ジョーイ、俺は、あぁ! 俺はこんな風に自分の記念日を過ごしてるってことが信じられないよ。)
ジョーイ: All right well, I'll take you someplace nice then. Look! A guy tipped me a hundred bucks today. (よーし、それなら、俺がお前をいいところに連れてってやる。見ろ! 今日、ある男が俺に 100ドルのチップをくれたんだ。)
チャンドラー: Whoa! (おぉ!)
ジョーイ: Yeah-yeah, he was playing blackjack for like an hour and he won $5,000. Can you believe that? $5,000! (そうなんだよ、彼は1時間くらいブラックジャックをしていて、5,000ドル勝ったんだ。そんなの信じられるか? 5,000ドルだぞ!)
チャンドラー: Y'know, if I won $5,000, I'd join a gym, y'know. Build up my upper body and hit Richard from behind with a stick! (Mimics it.) (なあ、もし俺が 5,000ドル勝ったとしたら、俺はジムに入会するね。上半身を鍛え上げて、リチャードを殴るんだ、背後から、棒で! [その動作をする(真似る)])
ジョーイ: Wait a minute! Why don't I just do what that guy did? I'll take this $100, turn it into $5,000! And then I'll turn that into enough money to get my movie going again! (ちょっと待て! 俺もただ、その男がやったことをしたらどうなんだ? この 100ドルを持って行って、それを 5,000ドルに変えるんだよ。それからそれを、俺の映画を再開させるのに十分な金に変えるんだ!)
チャンドラー: Good luck! (幸運を!)
ジョーイ: Chandler, I don't need luck. I have thought this through! (チャンドラー、俺には運は必要ないよ。このことはじっくり考え抜いたんだ。)
チャンドラー: I see. (そうだね。)
(Joey exits as Chandler shakes his head.)
ジョーイが出ていく時、チャンドラーは(だめだこりゃ、というように)首を横に振る。
ジョーイは、グラディエーターの衣装に含まれている、てっぺんに赤いフサフサがついたヘルメットを触りながら話をしています。
ト書きの running his hand through that feathery thing を直訳すると、「その羽のようなものを通って、自分の手を走らせている」ということですから、手櫛(てぐし)のように自分の指でその羽をとかしながら触っているような感覚ですね。
英辞郎にも、
run one's hand through one's untidy hair=乱れた髪を(片)手でとかす
という例が載っています。
ジョーイは、ローマ時代はこれはただの帽子じゃなかったんだ、と言っています。
more than just a hat は「ただの・単なる帽子以上である」という感覚ですね。
ジョーイは、ローマ時代にローマ人たちがしていたと思われることを、would を使って話しています。
would は「過去の習慣、反復行動・動作についての回想」を表すものですね。
「…したものだ、…したものだった」と訳されることが多いです。
ここでも、彼らはこの帽子を使って、こんなこと、あんなことしたもんだった、と回想風に語っているわけです。
ジョーイは頭の上のブラシみたいなのは、床を磨いたり、靴の泥を落としたりするのに使ってたんだ、と説明しています。
「したもんだった」と言っているけれども、それはあくまでもジョーイの想像の産物に過ぎないことは内容からも明らかなわけですが(笑)、ブラシみたいなのはダテじゃない、ちゃんとブラシとしても使っていたんだよ、と、もっともらしい(?)説明をしているのですね。
そして時には…と話を続けていますが、underneath the horse は「馬の下の部分」のエリアですね。
stick は「刺す、突き刺す」「差し込む、突っ込む」なので、馬の下部分が汚れたら、そのブラシ状のものをそこに差し込む…と言いかけていることになります。
汚れる、という表現から、下部分は股下を指していることが想像されますので、汚い話になりそうだと思ったチャンドラーは慌ててジョーイの発言を止めたわけですね。
まさにト書きにあるように、interrupting in the nick of time 「間一髪でそれを遮った」わけです。「それ以上は聞きたくない」という気持ちです。
I can't believe this is how I'm spending my anniversary. を直訳すると、「俺が自分の記念日をどんな風に過ごしているか、がこれ[こんな風]だなんて信じられないよ」みたいな感じになるでしょう。
I can't believe I'm spending my anniversary like this. 「こんな風に記念日を過ごしているなんて信じられない」と同じようなニュアンスですが、「これ、この今の状態が、記念日を過ごしている様子であることが信じられない」のような言い方をすることで、余計にその「本来、記念日を過ごしているであろう理想の形」と「今の悲惨な状態」とのギャップがはっきり出るような気がします。
恋人とラブラブで記念日を過ごしているはずが、どうして馬の下半身の掃除の話を聞かされるはめになるんだよ、みたいなことですね。
落ち込んでいるチャンドラーに、ジョーイは「俺がいいところに連れてってやる」と言います。
ある男が 100ドルのチップをくれたんだけど、そいつは1時間で 5,000ドルも稼いだんた、と言っていますね。
カジノで儲けた人の話を聞いて、チャンドラーは、if I won $5,000, I'd join a gym と言っています。
これは典型的な仮定法過去ですね。
5,000ドルも勝てるわけはないけど、もしそれだけ勝てたとしたら、俺ならこうするだろう、と言っていることになります。
その後に続く、Build up... and hit Richard... もすべて、I would に続く部分ですね。
ジムに入会して、上半身を鍛えて、リチャードを殴る…みたいなことを言っているわけですが、その後に続く言葉がチャンドラーらしくて面白いです。
from behind は「後ろから、背後から」で、with a stick は「棒で」ですね。
つまり、稼いだ金でジムに入って、体を鍛えてリチャードをやっつけてやるんだ!と、腕力で彼を負かしてやるかのように言っているのかと思ったら、正々堂々と戦うのではなくて、背後からの不意打ち、しかも棒(凶器)で殴る・叩く、という、非常に卑怯で姑息な方法でリチャードをやっつけようとしている、というオチです。
そう説明した後、その様子を再現して、「えいっ! このっ、このっ!」みたいに、スティックを持った手を伸ばして、リチャードを叩く真似をする姿にも笑えます。
今回のエピソードのセリフでは、私はこの、from behind with a stick という最後のオチが一番面白くて、DVDを見ながら声に出して笑ってしまいました。
背後から凶器を持って襲うなら、別にジムで上半身を鍛えなくてもいいじゃん、何のために上半身を鍛えたの?みたいな面白さですね。
過去記事、オチは最後に持ってくる フレンズ3-8その26 でも説明しましたが、英語のニュアンスと同じように日本語訳もオチを最後に持ってこようとすると、「リチャードを殴るんだ、背後から、棒でね」のような倒置の形にならざるを得ないため、ちょっとわざとらしいセリフになってしまいます。
英語ではこのように「背後から」「棒で」という副詞句が最後に来るのが普通なのでわざとらしい感じがない、自然なジョークになるわけですね。
ジョーイは突然、「5,000ドル稼いだ男と同じことを俺もすればいいんじゃないか?」みたいなことを言い出します。
100ドルを 5,000ドルにして、それをもっと大金、つまり、資金不足で中止になっている自分の主演映画を再開させるために十分なお金に変えることができるじゃないか、みたいな考えです。
その自分の考えに大いに納得した様子のジョーイは、チャンドラーの肩をポンと叩いてさっそくカジノに向かおうとします。
そのジョーイに、Good luck! 「グッドラック、幸運を!」とチャンドラーは声をかけるのですが、ジョーイは「俺には幸運なんて必要ない」と強気な発言をしています。
I have thought this through! の think through は「考え抜く、じっくり考える」。
現在完了形が使われていますので、「それを思いついてから今に至るまでじっくり考え抜いてきた(から大丈夫さ)」というニュアンスになると思います。
ついさっき、思いつきで言ったばかりなのに、ある程度の期間、熟慮熟考したかのように言っている面白さもあるでしょうね。
チャンドラーは、運が良ければカジノで儲かることもあるだろう、という気持ちで Good luck! と声をかけたのですが、ジョーイは、論理的に考えて出した結論だから、うまく行かないはずがないと信じ切っているのですね。
ギャンブルには当たりもあればはずれもある、という大前提をジョーイはすっかり忘れているようです。
お金をかければ必ずもうかって大金が手に入ると思いこんでいるジョーイを見て、チャンドラーもあきれたように首を横に振るしかありませんね。
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チャンドラーのホテルの部屋。チャンドラーはそこでジョーイと座っている。ジョーイは自分の(グラディエイター用)ヘルメットについて語っていて、ヘルメットのてっぺんについているその羽のようなものを手でとかしている。
ジョーイ: Hey, y'know, in Roman times, this was more than just a hat. (なぁ、ほら、ローマ時代にはさ、これはただの帽子以上のものだったんだぜ。)
チャンドラー: Really? (ほんとに?)
ジョーイ: Yeah, sure, sure! They would uh, they would scrub the floors with it! They would use it to get the mud off their shoe. And sometimes would get dirty. So they would stick it right-- (ああ、そうさ、そうだよ! ローマ人はそれで床をゴシゴシ磨いてたもんだ! 彼らはそれを靴の泥を落とすのに使ったもんだ。それから時々、馬の下の部分が汚れるだろ、そしたら彼らはそれをそこに突っ込んで…)
チャンドラー: (interrupting in the nick of time) Joey, I uh! I can't believe this is how I'm spending my anniversary. ([間一髪でそれを遮って] ジョーイ、俺は、あぁ! 俺はこんな風に自分の記念日を過ごしてるってことが信じられないよ。)
ジョーイ: All right well, I'll take you someplace nice then. Look! A guy tipped me a hundred bucks today. (よーし、それなら、俺がお前をいいところに連れてってやる。見ろ! 今日、ある男が俺に 100ドルのチップをくれたんだ。)
チャンドラー: Whoa! (おぉ!)
ジョーイ: Yeah-yeah, he was playing blackjack for like an hour and he won $5,000. Can you believe that? $5,000! (そうなんだよ、彼は1時間くらいブラックジャックをしていて、5,000ドル勝ったんだ。そんなの信じられるか? 5,000ドルだぞ!)
チャンドラー: Y'know, if I won $5,000, I'd join a gym, y'know. Build up my upper body and hit Richard from behind with a stick! (Mimics it.) (なあ、もし俺が 5,000ドル勝ったとしたら、俺はジムに入会するね。上半身を鍛え上げて、リチャードを殴るんだ、背後から、棒で! [その動作をする(真似る)])
ジョーイ: Wait a minute! Why don't I just do what that guy did? I'll take this $100, turn it into $5,000! And then I'll turn that into enough money to get my movie going again! (ちょっと待て! 俺もただ、その男がやったことをしたらどうなんだ? この 100ドルを持って行って、それを 5,000ドルに変えるんだよ。それからそれを、俺の映画を再開させるのに十分な金に変えるんだ!)
チャンドラー: Good luck! (幸運を!)
ジョーイ: Chandler, I don't need luck. I have thought this through! (チャンドラー、俺には運は必要ないよ。このことはじっくり考え抜いたんだ。)
チャンドラー: I see. (そうだね。)
(Joey exits as Chandler shakes his head.)
ジョーイが出ていく時、チャンドラーは(だめだこりゃ、というように)首を横に振る。
ジョーイは、グラディエーターの衣装に含まれている、てっぺんに赤いフサフサがついたヘルメットを触りながら話をしています。
ト書きの running his hand through that feathery thing を直訳すると、「その羽のようなものを通って、自分の手を走らせている」ということですから、手櫛(てぐし)のように自分の指でその羽をとかしながら触っているような感覚ですね。
英辞郎にも、
run one's hand through one's untidy hair=乱れた髪を(片)手でとかす
という例が載っています。
ジョーイは、ローマ時代はこれはただの帽子じゃなかったんだ、と言っています。
more than just a hat は「ただの・単なる帽子以上である」という感覚ですね。
ジョーイは、ローマ時代にローマ人たちがしていたと思われることを、would を使って話しています。
would は「過去の習慣、反復行動・動作についての回想」を表すものですね。
「…したものだ、…したものだった」と訳されることが多いです。
ここでも、彼らはこの帽子を使って、こんなこと、あんなことしたもんだった、と回想風に語っているわけです。
ジョーイは頭の上のブラシみたいなのは、床を磨いたり、靴の泥を落としたりするのに使ってたんだ、と説明しています。
「したもんだった」と言っているけれども、それはあくまでもジョーイの想像の産物に過ぎないことは内容からも明らかなわけですが(笑)、ブラシみたいなのはダテじゃない、ちゃんとブラシとしても使っていたんだよ、と、もっともらしい(?)説明をしているのですね。
そして時には…と話を続けていますが、underneath the horse は「馬の下の部分」のエリアですね。
stick は「刺す、突き刺す」「差し込む、突っ込む」なので、馬の下部分が汚れたら、そのブラシ状のものをそこに差し込む…と言いかけていることになります。
汚れる、という表現から、下部分は股下を指していることが想像されますので、汚い話になりそうだと思ったチャンドラーは慌ててジョーイの発言を止めたわけですね。
まさにト書きにあるように、interrupting in the nick of time 「間一髪でそれを遮った」わけです。「それ以上は聞きたくない」という気持ちです。
I can't believe this is how I'm spending my anniversary. を直訳すると、「俺が自分の記念日をどんな風に過ごしているか、がこれ[こんな風]だなんて信じられないよ」みたいな感じになるでしょう。
I can't believe I'm spending my anniversary like this. 「こんな風に記念日を過ごしているなんて信じられない」と同じようなニュアンスですが、「これ、この今の状態が、記念日を過ごしている様子であることが信じられない」のような言い方をすることで、余計にその「本来、記念日を過ごしているであろう理想の形」と「今の悲惨な状態」とのギャップがはっきり出るような気がします。
恋人とラブラブで記念日を過ごしているはずが、どうして馬の下半身の掃除の話を聞かされるはめになるんだよ、みたいなことですね。
落ち込んでいるチャンドラーに、ジョーイは「俺がいいところに連れてってやる」と言います。
ある男が 100ドルのチップをくれたんだけど、そいつは1時間で 5,000ドルも稼いだんた、と言っていますね。
カジノで儲けた人の話を聞いて、チャンドラーは、if I won $5,000, I'd join a gym と言っています。
これは典型的な仮定法過去ですね。
5,000ドルも勝てるわけはないけど、もしそれだけ勝てたとしたら、俺ならこうするだろう、と言っていることになります。
その後に続く、Build up... and hit Richard... もすべて、I would に続く部分ですね。
ジムに入会して、上半身を鍛えて、リチャードを殴る…みたいなことを言っているわけですが、その後に続く言葉がチャンドラーらしくて面白いです。
from behind は「後ろから、背後から」で、with a stick は「棒で」ですね。
つまり、稼いだ金でジムに入って、体を鍛えてリチャードをやっつけてやるんだ!と、腕力で彼を負かしてやるかのように言っているのかと思ったら、正々堂々と戦うのではなくて、背後からの不意打ち、しかも棒(凶器)で殴る・叩く、という、非常に卑怯で姑息な方法でリチャードをやっつけようとしている、というオチです。
そう説明した後、その様子を再現して、「えいっ! このっ、このっ!」みたいに、スティックを持った手を伸ばして、リチャードを叩く真似をする姿にも笑えます。
今回のエピソードのセリフでは、私はこの、from behind with a stick という最後のオチが一番面白くて、DVDを見ながら声に出して笑ってしまいました。
背後から凶器を持って襲うなら、別にジムで上半身を鍛えなくてもいいじゃん、何のために上半身を鍛えたの?みたいな面白さですね。
過去記事、オチは最後に持ってくる フレンズ3-8その26 でも説明しましたが、英語のニュアンスと同じように日本語訳もオチを最後に持ってこようとすると、「リチャードを殴るんだ、背後から、棒でね」のような倒置の形にならざるを得ないため、ちょっとわざとらしいセリフになってしまいます。
英語ではこのように「背後から」「棒で」という副詞句が最後に来るのが普通なのでわざとらしい感じがない、自然なジョークになるわけですね。
ジョーイは突然、「5,000ドル稼いだ男と同じことを俺もすればいいんじゃないか?」みたいなことを言い出します。
100ドルを 5,000ドルにして、それをもっと大金、つまり、資金不足で中止になっている自分の主演映画を再開させるために十分なお金に変えることができるじゃないか、みたいな考えです。
その自分の考えに大いに納得した様子のジョーイは、チャンドラーの肩をポンと叩いてさっそくカジノに向かおうとします。
そのジョーイに、Good luck! 「グッドラック、幸運を!」とチャンドラーは声をかけるのですが、ジョーイは「俺には幸運なんて必要ない」と強気な発言をしています。
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現在完了形が使われていますので、「それを思いついてから今に至るまでじっくり考え抜いてきた(から大丈夫さ)」というニュアンスになると思います。
ついさっき、思いつきで言ったばかりなのに、ある程度の期間、熟慮熟考したかのように言っている面白さもあるでしょうね。
チャンドラーは、運が良ければカジノで儲かることもあるだろう、という気持ちで Good luck! と声をかけたのですが、ジョーイは、論理的に考えて出した結論だから、うまく行かないはずがないと信じ切っているのですね。
ギャンブルには当たりもあればはずれもある、という大前提をジョーイはすっかり忘れているようです。
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2011年06月22日
あなたが指図することはできない フレンズ5-23その5
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ラスベガスのホテルで、ジョーイと再会したチャンドラーたち。
ジョーイは映画が中止になったことを黙っていて悪かったとチャンドラーに謝り、二人は仲直りするのですが、チャンドラーとモニカが喧嘩中のようなので、ジョーイはフィービーに質問しています。
ジョーイ: Yeah, what-what's going on? (あぁ、何が起こってるの?)
フィービー: Monica had lunch with Richard. (モニカはリチャードと食事したのよ。)
ジョーイ: Dawson? ((リチャードって)ドーソン?)
フィービー: Noo! But that would've been so cool! (違うわ! でもそうだったらすごくクールだったのにね!)
チャンドラー: No! Her boyfriend Richard! (違うよ。モニカの恋人のリチャードだよ。)
モニカ: It meant nothing! Okay? After all this time, how can you not trust me? (何の意味もないわ、いい? こんな時間をずっと過ごしてきた後で、どうして私のことを信頼できないの?)
チャンドラー: When you go lunching with hunky mustache men and don't tell me about it! (たくましいヒゲの男と一緒にランチに行って、それを俺に話さない時にはね!(信じられるわけないよ))
モニカ: You're right. I'm sorry. I should've told you. (あなたが正しいわ。ごめんなさい。あなたに言うべきだったのに。)
チャンドラー: Thanks. (They hug.) (ありがと。[二人はハグする])
ジョーイ: Aww, there we go. (あー、いいぞ。)
フィービー: Now I love Vegas. (今は、ベガスが大好き。)
モニカ: I promise you next time I absolutely will tell you. (あなたに約束するわ、この次は絶対にあなたに言うって。)
チャンドラー: (pushing her away from another hug) "Next time"? ([もう一回ハグしようとするモニカを押しのけて] 「この次」だって?)
ジョーイ: Ooh, so close. (あー、すごく惜しかった。)
チャンドラー: There's not gonna be a next time! You cannot see him ever again! (この次なんてないだろう! モニカはリチャードに二度と会っちゃいけないんだ!)
モニカ: I cannot see him? I mean, you can't tell me what to do! (私がリチャードに会っちゃいけないですって? 私が何をすべきかをあなたが言う[指図する]ことなんてできないわ!)
チャンドラー: That's so funny, because I think I just did! (そりゃものすごくおかしいね、だって俺はたった今、(そういうことを)言ったと思うけど。)
フィービーはジョーイに、「モニカがリチャードと食事したの」と説明しています。
それを聞いてジョーイは驚いたように、Dawson? と言っていますね。
モニカがリチャードと言えば、元カレのリチャードに決まっているというのに、フィービーに続いてジョーイまでもが、モニカと縁もゆかりもない(笑)別人のリチャードの名前を挙げている、という面白さです。
フィービーは、リチャード・シモンズの名前を出していましたが、ジョーイはまたそれとは違うリチャード・ドーソンを出してくるところにちょっとした「ひねり」みたいなものも感じます。
同じシモンズだとジョークとしてはありきたりになってしまいますものね。
とにかく、元カレのリチャードではなくて、別人の名前を出してきたというジョーイのオトボケ具合が楽しめればそれで十分ジョークとして笑えるわけですが、やはり一応(笑)、どんな人かだけ確認しておきましょう。
リチャード・ドーソンについては、詳しくは以下のウィキペディアで。
Wikipedia 英語版: Richard Dawson
ウィキペディアの説明にあるように、彼は「俳優、コメディアン、クイズ番組の解答者、司会者」だそうです。
そのウィキペディアに、クイズ番組の Family Feud の写真が載っていて、his greatest professional success とありますので、彼の名前を聞くと、やはりそのクイズ番組の司会者のイメージが浮かぶ人が多いということなのでしょうね。
フィービーは、「リチャード・ドーソンじゃないわ」と否定しながらも、that would've been so cool とも言っています。
もし、そうだったら、モニカがリチャード・ドーソンと食事したんだったら、クールだったのにねぇ、みたいなことですね。
自分はリチャード・シモンズを想像しちゃったけど、そのドーソンっていう案もなかなかイケるわね、みたいな感じでしょう。
チャンドラーは怒ったように「モニカの恋人のリチャードだよ」と説明していますが、ex-boyfriend 「元恋人、元カレ」のように、ex- 「元の」という言葉をつけていませんね。
チャンドラーも、「かつて付き合っていた元カレ」みたいに、完全に過去の人物として捉えているなら、ここまで怒らなかったのでしょう。
会って食事に行ったなんて、まだお互い気があるんじゃないか?と疑っている気持ちがあるために、まるで「今の恋人、今の思い人」であるかのように、わざと ex- をつけない boyfriend と言ったのかなという気がします。
mean nothing は「何も意味しない、何の意味もない」。
ばったり会って食事に行っただけのことで、そこには何の意味もないわ、ただ食事しただけよ、と言っているのですね。
After all this time, how can you not trust me? について。
this time 「この時間」は、チャンドラーとモニカが恋人として過ごしてきた時間を指しているでしょう。
二人がこういう時間をずっと過ごしてきたその後で、つまり、恋人としての時間を私たちは1年過ごしてきたのに、どうして私のことを信頼、信用できないの?みたいな感覚です。
why ではなくて、how なので、理由を尋ねているというよりは、「”私を信頼しない”ということがどのようにして可能なの?」と言っている感じになります。
一緒に長い時間を過ごしてきたのに、まだ私のことを信頼できないなんて、そんなことありえないわ!という気持ちですね。
それに対してチャンドラーは、When を使って答えています。
これは、I cannot trust you when you go lunching... and you don't tell me... ということですね。
「…とランチに行ってそのことを俺に話さない時には、俺は君を信じることができないよ」みたいなことです。
どうして信じてくれないの?ってモニカは言うけど、そういうことをして俺にそのことを話さないで秘密にしてたんだから、信じろって言う方が無理だろう、信じられないと思って当然だろう、という気持ちですね。
そのランチに行った相手はリチャードなわけですが、チャンドラーはリチャードの名前は出さず、あえて、hunky mustache men と表現しています。
hunky は「(男性が)がっちりしてたくましい」、hunk は「がっちりした男、魅力的な男」。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
hunky : a man who is hunky is sexually attractive and strong-looking
つまり、「hunky な男性は、性的に魅力的で、強そうに見える」。
hunk : (informal) a sexually attractive man with a big strong body
つまり、「大きな強い体を持った、性的に魅力的な男性」。
men と複数形になっているのは、一般論として語っている感覚だと思います。
リチャードだけに限らず、「男性として魅力のあるかっこいい男」と食事してそれを黙ってたら、何かあると思うのが普通だろ、とチャンドラーは言いたいわけでしょう。
恋人のチャンドラーとしては、魅力のない男と食事したとかならまだしも、男性として魅力的な(しかも元カレの)リチャードとそんなことがあったと聞いたら、何か勘ぐってしまいたくなるのはしょうがないというところなのでしょうね。
チャンドラーが hunky mustache men と表現したことで、焼きもちを焼いているのがわかったのでしょう、モニカは素直に謝り、「あなたに話しておくべきだったわ」と言っています。
二人が仲直りし、ハグする様子を見て、ジョーイもフィービーも嬉しそう。
Now I love Vegas. と言っているのは、フィービーが今回の旅行中、自分だけ留守番だったロンドン旅行と今回のベガス旅行とを点数化して比較している流れからのセリフです。
フィービーとしては、自分も参加しているベガス旅行に軍配を上げたいのですが、飛行機の中でリチャードの件で二人が喧嘩を始めたため、ベガス旅行の評価が下がっていた、それがこの仲直りで「やっぱり今はベガスが一番ね、ベガスが大好きよ」と言えるようになったわけです。
モニカはチャンドラーに、「この次は必ずあなたに言うから」と言うのですが、チャンドラーはその言葉に引っかかったようで、さらにハグしようとするモニカを押し戻しています。
チャンドラー自身が繰り返しているように、next time という言葉が問題なわけですね。
次回、つまり、今度リチャードと食事する時は必ずあなたに事前に言うから、ということで、それはつまり、「また今度会うつもりがある」と言っていることになります。
チャンドラーが怒っているのが明らかなので、ジョーイは、so close と言っていますね。
close は「近い、接近した」なので、「(正解や目標に)近い、惜しい」という感覚になります。
もうちょっとで完全に仲直りできたところだったのに、その一言のせいでまた逆戻りしちゃったね、すごく惜しいところだったね、みたいなことです。
チャンドラーは怒って、「next time なんてないんだ、彼には二度と会っちゃいけない、会っちゃだめだ」と言っています。
You cannot と言われたことにカチンときたモニカは、I cannot...? 「私が…しちゃいけないですって?」みたいに返します。
その後、さらにそれを補足説明する形で、I mean を使って、you can't tell me what to do! と言っています。
tell someone what to do を直訳すると、「すべきことを人に言う」ということですから、「人に…すべきだと言う、…しろと言う、すべきことを指図する」という感覚になります。
モニカは、自分の行動に対して、You cannot と言われたことに腹を立て、自分の行動は自分で決めるわ、あなたに、ああしろとか、こうしろとか、もしくはこんなことはするなとかを指図されたくないわ、と言っているわけです。
あなたが you cannot と決めつけるんだったら、私の方こそ言わせてもらうわ、あなたには私の行動を指図することはできない、そんな権利はないんだからと、同じように you can't を使って返しているわけですね。
それを聞いたチャンドラーは、そりゃおかしいや、みたいに言った後、because I think I just did と言っています。
did はその前の文の tell 以下を指していて、つまりチャンドラーは、I think I just told you what to do. と言っていることになるでしょう。
モニカが、you can't tell me what to do と言ったのを受けて、モニカは俺が「言えない、言うことができない」って言うけど、現にさっき、俺は、You cannot see him ever again! って口に出して言ったよ、現に言えたよ、だから、言えないってことはない、俺はさっきそれを言ったばかりなんだからさ、みたいに言っていることになるでしょう。
このセリフを文字通りに解釈すれば、物理的に音声としてそういう言葉を発することができるし、実際そういうこと(モニカはリチャードに会っちゃいけないという、命令や指図のようなこと)をついさっき言ったわけだしね、という意味になるでしょう。
さらには、そのセリフに隠された本音としては、恋人としてそれくらいのことを言う権利はあるはずだ、元カレとはもう二度と会うなと言ってもいいはずだ、という気持ちも含まれている気がします。
「言えないなんてことないよ、実際、さっき言ったわけだし」と冗談のように茶化しながらも、モニカに対して「俺がこんなに怒ってるのにまた会うつもりなのか?」と非難したい気持ちも込められているのだろうと思いました。
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ラスベガスのホテルで、ジョーイと再会したチャンドラーたち。
ジョーイは映画が中止になったことを黙っていて悪かったとチャンドラーに謝り、二人は仲直りするのですが、チャンドラーとモニカが喧嘩中のようなので、ジョーイはフィービーに質問しています。
ジョーイ: Yeah, what-what's going on? (あぁ、何が起こってるの?)
フィービー: Monica had lunch with Richard. (モニカはリチャードと食事したのよ。)
ジョーイ: Dawson? ((リチャードって)ドーソン?)
フィービー: Noo! But that would've been so cool! (違うわ! でもそうだったらすごくクールだったのにね!)
チャンドラー: No! Her boyfriend Richard! (違うよ。モニカの恋人のリチャードだよ。)
モニカ: It meant nothing! Okay? After all this time, how can you not trust me? (何の意味もないわ、いい? こんな時間をずっと過ごしてきた後で、どうして私のことを信頼できないの?)
チャンドラー: When you go lunching with hunky mustache men and don't tell me about it! (たくましいヒゲの男と一緒にランチに行って、それを俺に話さない時にはね!(信じられるわけないよ))
モニカ: You're right. I'm sorry. I should've told you. (あなたが正しいわ。ごめんなさい。あなたに言うべきだったのに。)
チャンドラー: Thanks. (They hug.) (ありがと。[二人はハグする])
ジョーイ: Aww, there we go. (あー、いいぞ。)
フィービー: Now I love Vegas. (今は、ベガスが大好き。)
モニカ: I promise you next time I absolutely will tell you. (あなたに約束するわ、この次は絶対にあなたに言うって。)
チャンドラー: (pushing her away from another hug) "Next time"? ([もう一回ハグしようとするモニカを押しのけて] 「この次」だって?)
ジョーイ: Ooh, so close. (あー、すごく惜しかった。)
チャンドラー: There's not gonna be a next time! You cannot see him ever again! (この次なんてないだろう! モニカはリチャードに二度と会っちゃいけないんだ!)
モニカ: I cannot see him? I mean, you can't tell me what to do! (私がリチャードに会っちゃいけないですって? 私が何をすべきかをあなたが言う[指図する]ことなんてできないわ!)
チャンドラー: That's so funny, because I think I just did! (そりゃものすごくおかしいね、だって俺はたった今、(そういうことを)言ったと思うけど。)
フィービーはジョーイに、「モニカがリチャードと食事したの」と説明しています。
それを聞いてジョーイは驚いたように、Dawson? と言っていますね。
モニカがリチャードと言えば、元カレのリチャードに決まっているというのに、フィービーに続いてジョーイまでもが、モニカと縁もゆかりもない(笑)別人のリチャードの名前を挙げている、という面白さです。
フィービーは、リチャード・シモンズの名前を出していましたが、ジョーイはまたそれとは違うリチャード・ドーソンを出してくるところにちょっとした「ひねり」みたいなものも感じます。
同じシモンズだとジョークとしてはありきたりになってしまいますものね。
とにかく、元カレのリチャードではなくて、別人の名前を出してきたというジョーイのオトボケ具合が楽しめればそれで十分ジョークとして笑えるわけですが、やはり一応(笑)、どんな人かだけ確認しておきましょう。
リチャード・ドーソンについては、詳しくは以下のウィキペディアで。
Wikipedia 英語版: Richard Dawson
ウィキペディアの説明にあるように、彼は「俳優、コメディアン、クイズ番組の解答者、司会者」だそうです。
そのウィキペディアに、クイズ番組の Family Feud の写真が載っていて、his greatest professional success とありますので、彼の名前を聞くと、やはりそのクイズ番組の司会者のイメージが浮かぶ人が多いということなのでしょうね。
フィービーは、「リチャード・ドーソンじゃないわ」と否定しながらも、that would've been so cool とも言っています。
もし、そうだったら、モニカがリチャード・ドーソンと食事したんだったら、クールだったのにねぇ、みたいなことですね。
自分はリチャード・シモンズを想像しちゃったけど、そのドーソンっていう案もなかなかイケるわね、みたいな感じでしょう。
チャンドラーは怒ったように「モニカの恋人のリチャードだよ」と説明していますが、ex-boyfriend 「元恋人、元カレ」のように、ex- 「元の」という言葉をつけていませんね。
チャンドラーも、「かつて付き合っていた元カレ」みたいに、完全に過去の人物として捉えているなら、ここまで怒らなかったのでしょう。
会って食事に行ったなんて、まだお互い気があるんじゃないか?と疑っている気持ちがあるために、まるで「今の恋人、今の思い人」であるかのように、わざと ex- をつけない boyfriend と言ったのかなという気がします。
mean nothing は「何も意味しない、何の意味もない」。
ばったり会って食事に行っただけのことで、そこには何の意味もないわ、ただ食事しただけよ、と言っているのですね。
After all this time, how can you not trust me? について。
this time 「この時間」は、チャンドラーとモニカが恋人として過ごしてきた時間を指しているでしょう。
二人がこういう時間をずっと過ごしてきたその後で、つまり、恋人としての時間を私たちは1年過ごしてきたのに、どうして私のことを信頼、信用できないの?みたいな感覚です。
why ではなくて、how なので、理由を尋ねているというよりは、「”私を信頼しない”ということがどのようにして可能なの?」と言っている感じになります。
一緒に長い時間を過ごしてきたのに、まだ私のことを信頼できないなんて、そんなことありえないわ!という気持ちですね。
それに対してチャンドラーは、When を使って答えています。
これは、I cannot trust you when you go lunching... and you don't tell me... ということですね。
「…とランチに行ってそのことを俺に話さない時には、俺は君を信じることができないよ」みたいなことです。
どうして信じてくれないの?ってモニカは言うけど、そういうことをして俺にそのことを話さないで秘密にしてたんだから、信じろって言う方が無理だろう、信じられないと思って当然だろう、という気持ちですね。
そのランチに行った相手はリチャードなわけですが、チャンドラーはリチャードの名前は出さず、あえて、hunky mustache men と表現しています。
hunky は「(男性が)がっちりしてたくましい」、hunk は「がっちりした男、魅力的な男」。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
hunky : a man who is hunky is sexually attractive and strong-looking
つまり、「hunky な男性は、性的に魅力的で、強そうに見える」。
hunk : (informal) a sexually attractive man with a big strong body
つまり、「大きな強い体を持った、性的に魅力的な男性」。
men と複数形になっているのは、一般論として語っている感覚だと思います。
リチャードだけに限らず、「男性として魅力のあるかっこいい男」と食事してそれを黙ってたら、何かあると思うのが普通だろ、とチャンドラーは言いたいわけでしょう。
恋人のチャンドラーとしては、魅力のない男と食事したとかならまだしも、男性として魅力的な(しかも元カレの)リチャードとそんなことがあったと聞いたら、何か勘ぐってしまいたくなるのはしょうがないというところなのでしょうね。
チャンドラーが hunky mustache men と表現したことで、焼きもちを焼いているのがわかったのでしょう、モニカは素直に謝り、「あなたに話しておくべきだったわ」と言っています。
二人が仲直りし、ハグする様子を見て、ジョーイもフィービーも嬉しそう。
Now I love Vegas. と言っているのは、フィービーが今回の旅行中、自分だけ留守番だったロンドン旅行と今回のベガス旅行とを点数化して比較している流れからのセリフです。
フィービーとしては、自分も参加しているベガス旅行に軍配を上げたいのですが、飛行機の中でリチャードの件で二人が喧嘩を始めたため、ベガス旅行の評価が下がっていた、それがこの仲直りで「やっぱり今はベガスが一番ね、ベガスが大好きよ」と言えるようになったわけです。
モニカはチャンドラーに、「この次は必ずあなたに言うから」と言うのですが、チャンドラーはその言葉に引っかかったようで、さらにハグしようとするモニカを押し戻しています。
チャンドラー自身が繰り返しているように、next time という言葉が問題なわけですね。
次回、つまり、今度リチャードと食事する時は必ずあなたに事前に言うから、ということで、それはつまり、「また今度会うつもりがある」と言っていることになります。
チャンドラーが怒っているのが明らかなので、ジョーイは、so close と言っていますね。
close は「近い、接近した」なので、「(正解や目標に)近い、惜しい」という感覚になります。
もうちょっとで完全に仲直りできたところだったのに、その一言のせいでまた逆戻りしちゃったね、すごく惜しいところだったね、みたいなことです。
チャンドラーは怒って、「next time なんてないんだ、彼には二度と会っちゃいけない、会っちゃだめだ」と言っています。
You cannot と言われたことにカチンときたモニカは、I cannot...? 「私が…しちゃいけないですって?」みたいに返します。
その後、さらにそれを補足説明する形で、I mean を使って、you can't tell me what to do! と言っています。
tell someone what to do を直訳すると、「すべきことを人に言う」ということですから、「人に…すべきだと言う、…しろと言う、すべきことを指図する」という感覚になります。
モニカは、自分の行動に対して、You cannot と言われたことに腹を立て、自分の行動は自分で決めるわ、あなたに、ああしろとか、こうしろとか、もしくはこんなことはするなとかを指図されたくないわ、と言っているわけです。
あなたが you cannot と決めつけるんだったら、私の方こそ言わせてもらうわ、あなたには私の行動を指図することはできない、そんな権利はないんだからと、同じように you can't を使って返しているわけですね。
それを聞いたチャンドラーは、そりゃおかしいや、みたいに言った後、because I think I just did と言っています。
did はその前の文の tell 以下を指していて、つまりチャンドラーは、I think I just told you what to do. と言っていることになるでしょう。
モニカが、you can't tell me what to do と言ったのを受けて、モニカは俺が「言えない、言うことができない」って言うけど、現にさっき、俺は、You cannot see him ever again! って口に出して言ったよ、現に言えたよ、だから、言えないってことはない、俺はさっきそれを言ったばかりなんだからさ、みたいに言っていることになるでしょう。
このセリフを文字通りに解釈すれば、物理的に音声としてそういう言葉を発することができるし、実際そういうこと(モニカはリチャードに会っちゃいけないという、命令や指図のようなこと)をついさっき言ったわけだしね、という意味になるでしょう。
さらには、そのセリフに隠された本音としては、恋人としてそれくらいのことを言う権利はあるはずだ、元カレとはもう二度と会うなと言ってもいいはずだ、という気持ちも含まれている気がします。
「言えないなんてことないよ、実際、さっき言ったわけだし」と冗談のように茶化しながらも、モニカに対して「俺がこんなに怒ってるのにまた会うつもりなのか?」と非難したい気持ちも込められているのだろうと思いました。
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2011年06月20日
誘おうとしてたんじゃなかったのか フレンズ5-23その4
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モニカがチャンドラーと旅行に出かけたため、部屋で一人きりのレイチェル。
フィービーが「家に一人だと裸で過ごせるわね」と言ったことを思い出し、裸になって歌など歌いご機嫌な様子ですが、その姿を向かいのアパートメントのロスに見られてしまいます。
ロスは「自分に見られるのを承知であんな行動をしている。きっと僕を誘っているに違いない」と思い、レイチェルの部屋をノックします。
ロス: May I come in? (入ってもいいかな?)
レイチェル: Uh, yeah, if you want to. (あー、いいわよ、もしあなたがお望みなら。)
ロス: Do you want me to? (君は僕にそうして欲しいと望んでる?)
レイチェル: Yeah, sure? (ええ、もちろん。)
ロス: So do I. (Slowly walks in.) Okay, Rach, before anything happens (He takes off his coat) I just want to lay down a couple of ground rules. (Turns back to face her.) This is just about tonight. I don't wanna go through with this if it's gonna raise the question of "us." (Rachel's confused) Okay? I just want this to be... (Kicks off his left shoe) about what it is! (Kicks off the other one.) (僕もそう望んでるよ。[ゆっくり歩いて部屋に入る] オッケー、レイチェル。何かが起こる前に [ロスは自分のコートを脱ぐ] ちょっと基本的なルールを2、3、決めておきたいんだ。[振り返ってレイチェルの方を見る] これは今夜だけだよ。僕はこのことをやり通したくない、もしそれが「僕たち」の問題を提起することになるのならね。[レイチェルは困惑している] いいかい? 僕はただ望んでるんだ [左の靴を蹴って脱ぐ]、このことが、今まさにそうであるもの(に関すること)であって欲しいってね。[反対の靴を蹴って脱ぐ])
レイチェル: And um, what-what is that, Ross? (それで、あの、それって何のこと、ロス?)
ロス: The physical act of love. (Hisses at her.) (愛の肉体行為だよ。 [(気取ったように)シーっという音を出す])
レイチェル: (laughs) What, are you crazy? ([笑って] 何、あなた、おかしいの?)
ロス: Oh so-so you weren't trying to entice me just now with your-your nakedness? (あぁ、それじゃあ、君はたった今、自分の裸で[裸になることで]僕を誘おうとしてたんじゃなかったのか?)
レイチェル: (gasps) Oh God, you saw me?! Oh! ([息を呑んで] まぁ、なんてこと、あなた、私を見たの? まあ!)
ロス: You weren't trying to entice me with your nakedness. (君は、自分の裸で僕を誘おうとしてたんじゃなかったのか…。)
レイチェル: Noo!! No! You thought, you actually thought I wanted to have sex with you?! Oh, my.... (そんなことしてない、してないわ! あなたは本当に私があなたとエッチしたがってると思ったの? なんてこと…)
レイチェルのドアのところに立っているロスは、気取った格好で意味ありげな表情を浮かべています。
入ってもいい?と尋ねるロスに、レイチェルは、「あなたが入りたいと思っているならどうぞ」みたいに答えますが、それにロスは Do you want me to? とさらに尋ねていますね。
「君は僕が部屋に入ることを望んでるの?」ということですが、暗に「裸で僕の気を引いて、部屋に誘い込もうとしている君の気持ちを僕は承知してるよ」みたいなことが言いたいようです。
部屋に入った後も、ずっと気取った雰囲気を保っているロスは、上着を脱ぎながら、何かが起こる前に、lay down a couple of ground rules しておきたい、と言っています。
ロスはレイチェルが誘ったと思い込んでいますので、あえて具体的に何とは言わず、anything と表現しているのですね。お互い、それが何を指しているかわかるだろ、という感じです。
lay down の基本的意味は「…を横たえる、据える」という感覚ですが、そこから、「(ルール・規則など)を定める、決める」という意味になります。
lay down rules なら「規則を定める」ですね。
ground rule は「基本原則」。
This is just about tonight. を直訳すると、「これは今夜についてだけだ、今夜だけに関することだ」みたいになるでしょうか。今から何が起こったとしても、それは今夜だけの、今夜限りの話ことだからね、と念押ししている感じです。
go through with は「やり通す、やり抜く」。
if という条件節を使って、「もし…なら」このことを最後までやり通したくはない、つまり、「もし if 以下のことになるのなら、これをするつもりはない」と言っていることになるでしょう。
raise the question は「問題を提起する」。
if 節の中に be going to が使われているのは、「この先(この流れで)、将来的に、そういう問題を提起することになるのなら」という感覚だと思います。
そのように、if の中に、be going to が使われるパターンは、if条件節の未来形 フレンズ5-3その7 にも出てきました。
その記事で、if+be going to の形について、もう少し詳しく説明していますので、興味のある方は合わせてお読み下さい。
ロスは、the question of "us" と言いながら、us の部分で、両手の指2本ずつを2回曲げるしぐさをしています。
これは「引用符」を意味するジェスチャーですね。
「僕たち」の問題、「僕たち」っていう問題、みたいな感覚で、元恋人同士である君と僕がまたよりを戻すなどのそういう「僕たちの(恋愛・男女)関係」の問題を提起することになったとしたら、僕は今からしようとしているこのことをやり通したくはないからね、と言っていることになるでしょう。
今から this (これ、あること)をしようとしているけれど、将来的に、僕らの問題が再浮上することになるんだったら、これをするのはやめにする、と宣言していることになると思います。
聞いているレイチェルは混乱した顔をして、ロスの言っている意味が理解できないようですが、ロスはさらに続けます。
I just want this to be about what it is! について。
シンプルな単語ばかりが並んでいますが、こういうものは却って自然な日本語に訳しづらいです。
this が、be about what it is であることを僕はただ望んでいる、ということで、This is about what it is. であることを望んでいる、ということになるでしょう。
what it is は「(今の)まさにそのもの」という感じになるでしょうか。
研究社 新英和中辞典では、
what
(関係代名詞)
(2) [関係詞節中 be の補語に用いて] (…ある)まさにその人[もの]
He's not what he was. 「彼は昔の彼ではない」
(用法:昔と比べて現在は「堕落した」「衰えた」など通例悪い意味に用いる)
You have made me what I am today. 「私の今日あるのはあなたのおかげです」
などの例が載っています。
what he was が「昔の彼」、what I am が「今の私」であるとすると、what it is は「今のそれ、それの今の姿」みたいな感じなんだろうと思います。
about が入っているので余計に訳しにくいのですが、意味としては、「このことが、今の状態、今の姿、今の形であって欲しいと望んでいる」みたいなことだろうと思います。
過去や未来は関係なしに、今からしようとしていることが今あるその姿の状態であってほしいと望んでいる、その行為そのもの以上の意味は持たせなくない、というようなことかなぁ、と。
ロスが、what it is という抽象的な表現を使ったので、「それは一体、何のことを言っているの?」という感じで、レイチェルは、What is that? と尋ねています。
ロスは the physical act of love だと答えていますね。
act of love 「愛の行為」だけでも、エッチ行為を示唆することになると思うのですが、ロスは、mental 「心の」の対義語となる physical 「身体の、肉体の」を使って、さらにそれを具体的に、ダイレクトに表現している感じです。
その言葉を聞いて、ロスの言っている意味にやっと気づいたレイチェルは、「あなた、クレイジーね」と言っています。
それに対してロスは、「君は僕のことをクレイジーだって言うけど、じゃあ君は、窓越しに見せていたあの裸で、たった今、僕を誘おうとしてたんじゃないのか?」と強気な発言をしています。
entice は過去記事、フレンズ5-9その6 にも出てきました。
このセリフは、疑問文の語順になってはいませんが、you weren't trying...? のように文尾が上がり調子になっていますので、Weren't you trying...? 「君は…しようとしてたんじゃないのか?」という否定疑問文のニュアンスになります。
このような否定疑問文は、通常の疑問文と比べて、話者の推測を感じ取ることができます。
「…しようとしてたのか?」ではなく、「…しようとしてたんじゃないのか?」と否定疑問文にすることで、「君は…しようとしてたはずだ、そうしようとしてたに決まってる、僕はそう思った、そう感じた」という話者(ここではロス)の考えが出るわけですね。話者がそうだと信じて決めつけている感じがこの否定疑問文にはあって、君はそれを否定するっていうのか?という感覚です。
your nakedness という言葉を聞いて、レイチェルは、「私を見たの?」と驚いています。
自分が裸でいたことをロスに見られたことに、ここで初めて気づいたわけですね。
そのレイチェルの発言で、「レイチェルはロスに見せようとして裸になっていたわけではない」という事実をロスも知ることになります。
その次のセリフ、You weren't trying to... は少し前にロスが言ったセリフとほぼ同じですね。
違うのは、さきほどのように決めつけて勝ち誇るような否定疑問文のニュアンスではないところです。
今回のセリフは語尾には疑問符はついておらず、レイチェルの発言から、レイチェルの過去の行動の意味は実際にはそうだったんだ、とロスが悟ったかのようなセリフになっています。
「…してたんじゃなかったのか?(僕には…しているように見えたけど)」ではなくて、「(それじゃあ本当に)…してたんじゃなかったのかぁ…そうなんだね」と改めて事実を確認するようなセリフになっているわけです。
セリフというのは文字から判断する意味だけではなく、その言い方やイントネーションが意味を大きく左右します。
今回のよく似た2つのセリフも、見た目は同じようなセリフなのに、イントネーションの違いで、「そうしようとしてたくせに(僕にはわかってるんだぞ)!」と「本当にそうしようとしてたわけじゃなかったんだ(僕の早合点だったんだ)」という二つの意味になる、というところが面白いわけですね。
最初のセリフが、Weren't you trying...? のような「疑問文」の形になっていなかったことで、余計に二つの文章がそっくりになっているのもポイントなんだろうと思います。
同じ言葉を発しているのに、言っているロスの気持ちが天と地ほど違う、という楽しさでしょう。
部屋に入ってからのロスはあえて、sex という言葉を使わないでずっと会話をしてきましたが、レイチェルは、have sex with you というダイレクトな言葉を使っています。
ロスの勝手な思い込みにあきれたために、「私があなたと sex したがってるって、あなたは勝手にそう思ってたの?」と、わざとそういう直接的な言葉を使って、そういうことを想像していたロスを非難しているわけですね。
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モニカがチャンドラーと旅行に出かけたため、部屋で一人きりのレイチェル。
フィービーが「家に一人だと裸で過ごせるわね」と言ったことを思い出し、裸になって歌など歌いご機嫌な様子ですが、その姿を向かいのアパートメントのロスに見られてしまいます。
ロスは「自分に見られるのを承知であんな行動をしている。きっと僕を誘っているに違いない」と思い、レイチェルの部屋をノックします。
ロス: May I come in? (入ってもいいかな?)
レイチェル: Uh, yeah, if you want to. (あー、いいわよ、もしあなたがお望みなら。)
ロス: Do you want me to? (君は僕にそうして欲しいと望んでる?)
レイチェル: Yeah, sure? (ええ、もちろん。)
ロス: So do I. (Slowly walks in.) Okay, Rach, before anything happens (He takes off his coat) I just want to lay down a couple of ground rules. (Turns back to face her.) This is just about tonight. I don't wanna go through with this if it's gonna raise the question of "us." (Rachel's confused) Okay? I just want this to be... (Kicks off his left shoe) about what it is! (Kicks off the other one.) (僕もそう望んでるよ。[ゆっくり歩いて部屋に入る] オッケー、レイチェル。何かが起こる前に [ロスは自分のコートを脱ぐ] ちょっと基本的なルールを2、3、決めておきたいんだ。[振り返ってレイチェルの方を見る] これは今夜だけだよ。僕はこのことをやり通したくない、もしそれが「僕たち」の問題を提起することになるのならね。[レイチェルは困惑している] いいかい? 僕はただ望んでるんだ [左の靴を蹴って脱ぐ]、このことが、今まさにそうであるもの(に関すること)であって欲しいってね。[反対の靴を蹴って脱ぐ])
レイチェル: And um, what-what is that, Ross? (それで、あの、それって何のこと、ロス?)
ロス: The physical act of love. (Hisses at her.) (愛の肉体行為だよ。 [(気取ったように)シーっという音を出す])
レイチェル: (laughs) What, are you crazy? ([笑って] 何、あなた、おかしいの?)
ロス: Oh so-so you weren't trying to entice me just now with your-your nakedness? (あぁ、それじゃあ、君はたった今、自分の裸で[裸になることで]僕を誘おうとしてたんじゃなかったのか?)
レイチェル: (gasps) Oh God, you saw me?! Oh! ([息を呑んで] まぁ、なんてこと、あなた、私を見たの? まあ!)
ロス: You weren't trying to entice me with your nakedness. (君は、自分の裸で僕を誘おうとしてたんじゃなかったのか…。)
レイチェル: Noo!! No! You thought, you actually thought I wanted to have sex with you?! Oh, my.... (そんなことしてない、してないわ! あなたは本当に私があなたとエッチしたがってると思ったの? なんてこと…)
レイチェルのドアのところに立っているロスは、気取った格好で意味ありげな表情を浮かべています。
入ってもいい?と尋ねるロスに、レイチェルは、「あなたが入りたいと思っているならどうぞ」みたいに答えますが、それにロスは Do you want me to? とさらに尋ねていますね。
「君は僕が部屋に入ることを望んでるの?」ということですが、暗に「裸で僕の気を引いて、部屋に誘い込もうとしている君の気持ちを僕は承知してるよ」みたいなことが言いたいようです。
部屋に入った後も、ずっと気取った雰囲気を保っているロスは、上着を脱ぎながら、何かが起こる前に、lay down a couple of ground rules しておきたい、と言っています。
ロスはレイチェルが誘ったと思い込んでいますので、あえて具体的に何とは言わず、anything と表現しているのですね。お互い、それが何を指しているかわかるだろ、という感じです。
lay down の基本的意味は「…を横たえる、据える」という感覚ですが、そこから、「(ルール・規則など)を定める、決める」という意味になります。
lay down rules なら「規則を定める」ですね。
ground rule は「基本原則」。
This is just about tonight. を直訳すると、「これは今夜についてだけだ、今夜だけに関することだ」みたいになるでしょうか。今から何が起こったとしても、それは今夜だけの、今夜限りの話ことだからね、と念押ししている感じです。
go through with は「やり通す、やり抜く」。
if という条件節を使って、「もし…なら」このことを最後までやり通したくはない、つまり、「もし if 以下のことになるのなら、これをするつもりはない」と言っていることになるでしょう。
raise the question は「問題を提起する」。
if 節の中に be going to が使われているのは、「この先(この流れで)、将来的に、そういう問題を提起することになるのなら」という感覚だと思います。
そのように、if の中に、be going to が使われるパターンは、if条件節の未来形 フレンズ5-3その7 にも出てきました。
その記事で、if+be going to の形について、もう少し詳しく説明していますので、興味のある方は合わせてお読み下さい。
ロスは、the question of "us" と言いながら、us の部分で、両手の指2本ずつを2回曲げるしぐさをしています。
これは「引用符」を意味するジェスチャーですね。
「僕たち」の問題、「僕たち」っていう問題、みたいな感覚で、元恋人同士である君と僕がまたよりを戻すなどのそういう「僕たちの(恋愛・男女)関係」の問題を提起することになったとしたら、僕は今からしようとしているこのことをやり通したくはないからね、と言っていることになるでしょう。
今から this (これ、あること)をしようとしているけれど、将来的に、僕らの問題が再浮上することになるんだったら、これをするのはやめにする、と宣言していることになると思います。
聞いているレイチェルは混乱した顔をして、ロスの言っている意味が理解できないようですが、ロスはさらに続けます。
I just want this to be about what it is! について。
シンプルな単語ばかりが並んでいますが、こういうものは却って自然な日本語に訳しづらいです。
this が、be about what it is であることを僕はただ望んでいる、ということで、This is about what it is. であることを望んでいる、ということになるでしょう。
what it is は「(今の)まさにそのもの」という感じになるでしょうか。
研究社 新英和中辞典では、
what
(関係代名詞)
(2) [関係詞節中 be の補語に用いて] (…ある)まさにその人[もの]
He's not what he was. 「彼は昔の彼ではない」
(用法:昔と比べて現在は「堕落した」「衰えた」など通例悪い意味に用いる)
You have made me what I am today. 「私の今日あるのはあなたのおかげです」
などの例が載っています。
what he was が「昔の彼」、what I am が「今の私」であるとすると、what it is は「今のそれ、それの今の姿」みたいな感じなんだろうと思います。
about が入っているので余計に訳しにくいのですが、意味としては、「このことが、今の状態、今の姿、今の形であって欲しいと望んでいる」みたいなことだろうと思います。
過去や未来は関係なしに、今からしようとしていることが今あるその姿の状態であってほしいと望んでいる、その行為そのもの以上の意味は持たせなくない、というようなことかなぁ、と。
ロスが、what it is という抽象的な表現を使ったので、「それは一体、何のことを言っているの?」という感じで、レイチェルは、What is that? と尋ねています。
ロスは the physical act of love だと答えていますね。
act of love 「愛の行為」だけでも、エッチ行為を示唆することになると思うのですが、ロスは、mental 「心の」の対義語となる physical 「身体の、肉体の」を使って、さらにそれを具体的に、ダイレクトに表現している感じです。
その言葉を聞いて、ロスの言っている意味にやっと気づいたレイチェルは、「あなた、クレイジーね」と言っています。
それに対してロスは、「君は僕のことをクレイジーだって言うけど、じゃあ君は、窓越しに見せていたあの裸で、たった今、僕を誘おうとしてたんじゃないのか?」と強気な発言をしています。
entice は過去記事、フレンズ5-9その6 にも出てきました。
このセリフは、疑問文の語順になってはいませんが、you weren't trying...? のように文尾が上がり調子になっていますので、Weren't you trying...? 「君は…しようとしてたんじゃないのか?」という否定疑問文のニュアンスになります。
このような否定疑問文は、通常の疑問文と比べて、話者の推測を感じ取ることができます。
「…しようとしてたのか?」ではなく、「…しようとしてたんじゃないのか?」と否定疑問文にすることで、「君は…しようとしてたはずだ、そうしようとしてたに決まってる、僕はそう思った、そう感じた」という話者(ここではロス)の考えが出るわけですね。話者がそうだと信じて決めつけている感じがこの否定疑問文にはあって、君はそれを否定するっていうのか?という感覚です。
your nakedness という言葉を聞いて、レイチェルは、「私を見たの?」と驚いています。
自分が裸でいたことをロスに見られたことに、ここで初めて気づいたわけですね。
そのレイチェルの発言で、「レイチェルはロスに見せようとして裸になっていたわけではない」という事実をロスも知ることになります。
その次のセリフ、You weren't trying to... は少し前にロスが言ったセリフとほぼ同じですね。
違うのは、さきほどのように決めつけて勝ち誇るような否定疑問文のニュアンスではないところです。
今回のセリフは語尾には疑問符はついておらず、レイチェルの発言から、レイチェルの過去の行動の意味は実際にはそうだったんだ、とロスが悟ったかのようなセリフになっています。
「…してたんじゃなかったのか?(僕には…しているように見えたけど)」ではなくて、「(それじゃあ本当に)…してたんじゃなかったのかぁ…そうなんだね」と改めて事実を確認するようなセリフになっているわけです。
セリフというのは文字から判断する意味だけではなく、その言い方やイントネーションが意味を大きく左右します。
今回のよく似た2つのセリフも、見た目は同じようなセリフなのに、イントネーションの違いで、「そうしようとしてたくせに(僕にはわかってるんだぞ)!」と「本当にそうしようとしてたわけじゃなかったんだ(僕の早合点だったんだ)」という二つの意味になる、というところが面白いわけですね。
最初のセリフが、Weren't you trying...? のような「疑問文」の形になっていなかったことで、余計に二つの文章がそっくりになっているのもポイントなんだろうと思います。
同じ言葉を発しているのに、言っているロスの気持ちが天と地ほど違う、という楽しさでしょう。
部屋に入ってからのロスはあえて、sex という言葉を使わないでずっと会話をしてきましたが、レイチェルは、have sex with you というダイレクトな言葉を使っています。
ロスの勝手な思い込みにあきれたために、「私があなたと sex したがってるって、あなたは勝手にそう思ってたの?」と、わざとそういう直接的な言葉を使って、そういうことを想像していたロスを非難しているわけですね。
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2011年06月18日
実際の計画とは違うように見せかける フレンズ5-23その3
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モニカは、交際1周年の記念に、ラスベガス行きのチケットをチャンドラーにプレゼントします。
ベガスに行ったらチャンドラーがジョーイと仲直りできるし、二人の思い出にもなる、と思ったわけですが、フィービーもそれに同行したいと言い出し、結局、3人でベガス行きの飛行機に乗ることになりました。
フィービーがトイレに向かい、二人きりになったチャンドラーとモニカは、記念日を祝っています。
チャンドラー: Can I give you a present now? (今、君にプレゼントあげていい?)
モニカ: Okay! (いいわよ!)
チャンドラー: Okay! (He grabs his carryon and starts rummaging through it.) Oh, man! Don't tell me I did this. (よし! [チャンドラーは持ち込んだ手荷物を掴み、その中をひっかき回して(くまなく)探す] あぁ、なんてこった! まさか俺がこんなことしちゃったなんて言わないでくれよ。)
モニカ: I love "I forgot the present" fake-out! (「俺、プレゼント忘れちゃった」ってふりをして騙すの、大好き!)
チャンドラー: How do you feel about the "I really did forgot the present, please forgive me" not fake-out? (「俺、本当にプレゼントを忘れちゃったんだ。どうか俺を許して」っていう、「何かのふりをして騙してるんじゃない」だったらどう思う?)
モニカ: Oh, honey, that's okay. Don't worry about it, you can give it to me when we get back. (あぁ、ハニー、そんなのいいのよ。心配しないで、戻った時にプレゼントを渡してくれればいいわ。)
チャンドラー: Ohh, this is the worse thing that can happen on an anniversary ever! (あぁ、これは、記念日に起こりうる(中で)最悪の出来事だよ!)
フィービー: (sitting down) Oh good! All right, so you decided to tell him about the Richard thing. ([(戻ってきて)席に座りながら] あぁ、良かった! よし、それじゃあモニカは、例のリチャードのことをチャンドラーに言うことに決めたのね。)
チャンドラー: What, what "Richard thing"? (何? どんな「リチャードのこと」?)
フィービー: Oh, no. [The patented version.] (あら、やだ。[フィービー独特のバージョンで])
チャンドラー: What "Richard thing"? (どんな「リチャードのこと」なの?)
フィービー: (To Monica under her breath) Simmons! Go with Simmons! ([モニカに声をひそめて] シモンズよ! シモンズの線で行って!)
二人きりになった時に、チャンドラーは自分からのプレゼントをモニカに渡そうとします。
ト書きの carryon は、通常は carry-on とハイフン付きで表記されることが多いですが、「(飛行機の)機内持ち込み手荷物」のこと。carry-on baggage の略ですね。
rummage は「ひっかき回して・くまなく探す」。
実際の映像からも、またその rummage が使われているト書きからも、目的のプレゼントを探しているけれども見つからない感じが出ています。
Don't tell me! を直訳すると、「俺に(…だと)言わないでくれよ!」みたいなことですが、これは、「まさか!」というニュアンスですね。
英辞郎には、
Don't tell me you don't know.=知らないなんて言わないでくださいよ。/まさか知らないとは言わせないよ。
という例が載っています。
その例にならうと、「俺がこんなことしちゃったなんて言わないでくれよ。まさか俺がこんなことやっちゃったとは言わせないよ」みたいな感じになるでしょうか。
英辞郎に載っていた他の例文も、もっぱら、Don't tell me you... のように、you が主語の文が続く形が載っていて、「君が…したって(…だって)言わないでくれよ」というニュアンスを出していますが、その主語を I に変えたバージョンが今回のチャンドラーのセリフということになるでしょう。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
don't tell me : used to interrupt someone because you know what they are going to say or because you want to guess, especially when you are annoyed
例) Don't tell me we're out of milk!
つまり、「誰かがこれから言おうとしていることがわかるからという理由で、または自分が(相手の言うことを)推測したいからという理由で、相手の発言をさえぎるために使われる。特に、いらいらしている時に」。
例文は、「ミルクを切らしてるなんて言わないでくれよ」。
このロングマンの例も、主語に自分を含めた we が使われていますので、必ずしも、主語が you である必要はない、と言えそうです。
チャンドラーのセリフの、Don't tell me という命令文は、隣にいるモニカに向けられたものというよりも、もっと漠然とした対象、もしくは自分自身に向けられた言葉、という感じがします。
「…しちゃったとか言ってくれるなよ」と誰とはなしに言っている感覚、または、「こんなことしちゃった、とか言うなよ、俺」みたいに、自分自身に対して言っている感覚でしょうか。
いずれにしろ、探しているプレゼントが見つからない様子と、Don't tell me I did this. というセリフから、「こんなことしちゃった」=「プレゼントをバッグに入れるのを忘れちゃった、プレゼントを家に置いてきちゃった」であることは想像できますね。
そのチャンドラーの様子を見て、モニカはがっかりすることなく、I love ... fake-out! と嬉しそうに叫んでいます。
fake-out という単語については、fake-out という言葉そのものは手持ちの辞書にありませんでしたが、fake out という句動詞を名詞化した感覚だと思います。
fake someone out で「人をだます」という意味になります。
LAAD では、
fake somebody out [phrasal verb] : to deceive someone by making them think you are planning to do one thing when you are really planning to do something else.
つまり、「自分が本当は何か他のことを計画している時に、自分が(それとは違う)あることを計画していると人に思わせることで相手をだますこと」。
ですからここでの fake-out は、「Aをするように見せかけて、実はBをしようとしている」みたいな感覚になります。
「フェイク」という言葉は日本語になってしまっていますから、その「フェイク」という言葉で今回の fake-out のニュアンスを表せる気はします。
fake-out の前に、文を引用符でくくる形の形容詞、"I forgot the present" がついていますから、この fake-out は、「俺、プレゼント忘れちゃった、って見せかけて、実はプレゼントはここにあるんだよ〜ん」みたいに、私をだましてびっくりさせようとしてるのね、みたいなことになるでしょう。
「プレゼントがない、ない」と焦ったそぶりを見せて、私ががっかりした時に、ジャジャーン!と見せて喜びを倍増させるつもりね、と言っているわけですね。
それに対してチャンドラーは同じような、文を引用符でくくる形容詞+not fake-out を使って、「…についてどう思う?、どう感じる?」と尋ねています。
not fake-out を無理やり日本語にすると、「非フェイク、フェイクじゃないもの」みたいになるでしょうか。
「俺、プレゼント忘れちゃった」っていうフェイクじゃなくて、「俺は本当にプレゼントを忘れちゃったんだ、だからごめんね許してね」っていう「フェイクじゃないもの」だとしたらどう思う?みたいなことで、びっくりさせようと忘れたふりをしてるんじゃなくて、ほんとに忘れちゃったんだよ、これはフェイクじゃないんだよ、と言っていることになります。
モニカはチャンドラーがプレゼントを忘れたことを理解し、「戻った時に渡してくれればそれでいいわ」と言うのですが、チャンドラーは忘れたことがよほど悔やまれるようで、「記念日における最悪の出来事だ」みたいなことを言っています。
this is the worse thing that can happen on an anniversary ever を直訳すると、「これは、ある1つの記念日に起こりうる最悪のことである」になるでしょう。
記念日にはいいこと悪いこといろいろ起こるけど、相手にあげるプレゼントを忘れるなんて最悪だ、俺は最低のことをしちゃった、と言っているセリフになります。
プレゼントを忘れたことが客観的に見て「最悪」とは思えませんが、それを最悪と表現することで、モニカをがっかりさせてしまったことを俺は大いに反省しているよ、と示したいのでしょう。
席に戻ってきたフィービーは、そのチャンドラーのセリフを聞いて、「それじゃあ、モニカは例のリチャードの件をチャンドラーに告白することに決めたのね」みたいなことを言っています。
チャンドラーが、「それって何のこと?」みたいに言うので、フィービーは自分の失言に気づいたように、Oh, no. と言っていますね。
観客も、フィービーのそのセリフにどよめいていますから、フィービーがヤバいことを言ってしまったことは容易に想像できます。
たまたま席を外していて「記念日で最悪のこと」というセリフだけを聞いたフィービーは、チャンドラーが最悪のことと言ったのは、モニカがリチャードと食事したことを告白したからだ、と勘違いしたのですね。
you decided to tell him about 「…について彼に話すと決めた」という過去形は、そう決めて、今、実際にそれを話したのね、と言っていることになるでしょう。
「言わないって言ってたけど、今のチャンドラーのセリフを聞くと、モニカは話すことにしたのね」と軽く言ったわけですが、その内容を the Richard thing と名前を出して言ってしまったので、チャンドラーの注意を強く引いてしまったわけですね。
チャンドラーは、What "Richard thing"? と2回言っていますが、厳密に言うと、What's the Richard thing? (= What is the Richard thing?) とは微妙にニュアンスが違うように思います。
What's the Richard thing? なら、「例のリチャードのこと」って何?と問うていることになるでしょうが、What "Richard thing" だとその what は、「何の、どんな」という形容詞になり、何の「リチャードのこと」なの?、どんな「リチャードのこと」なの?、とその「リチャードのこと」の内容、「どのような”リチャードのこと”なのか?」を問うている感覚になると思います。
チャンドラーが「リチャードのこと」が何かわかっていないことから、フィービーは自分が失言したことに気づいたようで、Oh, no. と言っていますが、そのト書きには、[The patented version.] と書いてありますね。
patent は「特許、特許権、パテント」のことで、動詞では「…の特許(権)を取る、特許を受ける」という意味になります。
ですから、直訳すると、「例の特許を与えられたバージョン」みたいな意味になるわけですが、それはつまり、「フィービーがよく使うと多くの人に認められている、そのバージョンで」みたいな感じでしょう。
何か言ってはいけないことを言ってしまった後に、こんな風に、Oh, no. と言うのがフィービーの口癖、いつものパターンである、という感覚なんだろうと思います。
「リチャードのこと、ってどんなことだよ?」と追及するチャンドラーを見て、フィービーがモニカに、リチャード・シモンズのことを言うのが面白いですね。
リチャード・シモンズについては、1つ前の記事、あのリチャードってどのリチャード? フレンズ5-23その2 で説明しましたが、モニカが「あのリチャード」と言った時に、フィービーが思い出したのが、減量プログラムで有名なフィットネス界の有名人、リチャード・シモンズでした。
go with は「…と共に行く」ということですが、ここでは、英辞郎の
go with=【句動-9】〜を選ぶ、〜の線[路線]で行く
という語義が近いように思います。
リチャードという名前を聞いて、私はあなたの元カレのリチャードじゃなくて、リチャード・シモンズのことを思い出したんだから、ここでもその路線で、「リチャード・シモンズの線で」行きなさいよ、リチャードっていうのはあのリチャード・シモンズのことよ、って話をそらしちゃいなさいよ、と勧めているわけですね。
最初にシモンズの名前がセリフに出てから、このように、かなり後のシーンで再度シモンズの名前を出してくるところも、コメディの定石と言えるかもしれません。
モニカがリチャードと言えば、誰もが元カレのリチャードを思い出すに決まっているのに、シモンズだと言い張って逃げられるかのように思っているところに、フィービーのオトボケ具合が感じられて、楽しいなと思いました。
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ベガスに行ったらチャンドラーがジョーイと仲直りできるし、二人の思い出にもなる、と思ったわけですが、フィービーもそれに同行したいと言い出し、結局、3人でベガス行きの飛行機に乗ることになりました。
フィービーがトイレに向かい、二人きりになったチャンドラーとモニカは、記念日を祝っています。
チャンドラー: Can I give you a present now? (今、君にプレゼントあげていい?)
モニカ: Okay! (いいわよ!)
チャンドラー: Okay! (He grabs his carryon and starts rummaging through it.) Oh, man! Don't tell me I did this. (よし! [チャンドラーは持ち込んだ手荷物を掴み、その中をひっかき回して(くまなく)探す] あぁ、なんてこった! まさか俺がこんなことしちゃったなんて言わないでくれよ。)
モニカ: I love "I forgot the present" fake-out! (「俺、プレゼント忘れちゃった」ってふりをして騙すの、大好き!)
チャンドラー: How do you feel about the "I really did forgot the present, please forgive me" not fake-out? (「俺、本当にプレゼントを忘れちゃったんだ。どうか俺を許して」っていう、「何かのふりをして騙してるんじゃない」だったらどう思う?)
モニカ: Oh, honey, that's okay. Don't worry about it, you can give it to me when we get back. (あぁ、ハニー、そんなのいいのよ。心配しないで、戻った時にプレゼントを渡してくれればいいわ。)
チャンドラー: Ohh, this is the worse thing that can happen on an anniversary ever! (あぁ、これは、記念日に起こりうる(中で)最悪の出来事だよ!)
フィービー: (sitting down) Oh good! All right, so you decided to tell him about the Richard thing. ([(戻ってきて)席に座りながら] あぁ、良かった! よし、それじゃあモニカは、例のリチャードのことをチャンドラーに言うことに決めたのね。)
チャンドラー: What, what "Richard thing"? (何? どんな「リチャードのこと」?)
フィービー: Oh, no. [The patented version.] (あら、やだ。[フィービー独特のバージョンで])
チャンドラー: What "Richard thing"? (どんな「リチャードのこと」なの?)
フィービー: (To Monica under her breath) Simmons! Go with Simmons! ([モニカに声をひそめて] シモンズよ! シモンズの線で行って!)
二人きりになった時に、チャンドラーは自分からのプレゼントをモニカに渡そうとします。
ト書きの carryon は、通常は carry-on とハイフン付きで表記されることが多いですが、「(飛行機の)機内持ち込み手荷物」のこと。carry-on baggage の略ですね。
rummage は「ひっかき回して・くまなく探す」。
実際の映像からも、またその rummage が使われているト書きからも、目的のプレゼントを探しているけれども見つからない感じが出ています。
Don't tell me! を直訳すると、「俺に(…だと)言わないでくれよ!」みたいなことですが、これは、「まさか!」というニュアンスですね。
英辞郎には、
Don't tell me you don't know.=知らないなんて言わないでくださいよ。/まさか知らないとは言わせないよ。
という例が載っています。
その例にならうと、「俺がこんなことしちゃったなんて言わないでくれよ。まさか俺がこんなことやっちゃったとは言わせないよ」みたいな感じになるでしょうか。
英辞郎に載っていた他の例文も、もっぱら、Don't tell me you... のように、you が主語の文が続く形が載っていて、「君が…したって(…だって)言わないでくれよ」というニュアンスを出していますが、その主語を I に変えたバージョンが今回のチャンドラーのセリフということになるでしょう。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
don't tell me : used to interrupt someone because you know what they are going to say or because you want to guess, especially when you are annoyed
例) Don't tell me we're out of milk!
つまり、「誰かがこれから言おうとしていることがわかるからという理由で、または自分が(相手の言うことを)推測したいからという理由で、相手の発言をさえぎるために使われる。特に、いらいらしている時に」。
例文は、「ミルクを切らしてるなんて言わないでくれよ」。
このロングマンの例も、主語に自分を含めた we が使われていますので、必ずしも、主語が you である必要はない、と言えそうです。
チャンドラーのセリフの、Don't tell me という命令文は、隣にいるモニカに向けられたものというよりも、もっと漠然とした対象、もしくは自分自身に向けられた言葉、という感じがします。
「…しちゃったとか言ってくれるなよ」と誰とはなしに言っている感覚、または、「こんなことしちゃった、とか言うなよ、俺」みたいに、自分自身に対して言っている感覚でしょうか。
いずれにしろ、探しているプレゼントが見つからない様子と、Don't tell me I did this. というセリフから、「こんなことしちゃった」=「プレゼントをバッグに入れるのを忘れちゃった、プレゼントを家に置いてきちゃった」であることは想像できますね。
そのチャンドラーの様子を見て、モニカはがっかりすることなく、I love ... fake-out! と嬉しそうに叫んでいます。
fake-out という単語については、fake-out という言葉そのものは手持ちの辞書にありませんでしたが、fake out という句動詞を名詞化した感覚だと思います。
fake someone out で「人をだます」という意味になります。
LAAD では、
fake somebody out [phrasal verb] : to deceive someone by making them think you are planning to do one thing when you are really planning to do something else.
つまり、「自分が本当は何か他のことを計画している時に、自分が(それとは違う)あることを計画していると人に思わせることで相手をだますこと」。
ですからここでの fake-out は、「Aをするように見せかけて、実はBをしようとしている」みたいな感覚になります。
「フェイク」という言葉は日本語になってしまっていますから、その「フェイク」という言葉で今回の fake-out のニュアンスを表せる気はします。
fake-out の前に、文を引用符でくくる形の形容詞、"I forgot the present" がついていますから、この fake-out は、「俺、プレゼント忘れちゃった、って見せかけて、実はプレゼントはここにあるんだよ〜ん」みたいに、私をだましてびっくりさせようとしてるのね、みたいなことになるでしょう。
「プレゼントがない、ない」と焦ったそぶりを見せて、私ががっかりした時に、ジャジャーン!と見せて喜びを倍増させるつもりね、と言っているわけですね。
それに対してチャンドラーは同じような、文を引用符でくくる形容詞+not fake-out を使って、「…についてどう思う?、どう感じる?」と尋ねています。
not fake-out を無理やり日本語にすると、「非フェイク、フェイクじゃないもの」みたいになるでしょうか。
「俺、プレゼント忘れちゃった」っていうフェイクじゃなくて、「俺は本当にプレゼントを忘れちゃったんだ、だからごめんね許してね」っていう「フェイクじゃないもの」だとしたらどう思う?みたいなことで、びっくりさせようと忘れたふりをしてるんじゃなくて、ほんとに忘れちゃったんだよ、これはフェイクじゃないんだよ、と言っていることになります。
モニカはチャンドラーがプレゼントを忘れたことを理解し、「戻った時に渡してくれればそれでいいわ」と言うのですが、チャンドラーは忘れたことがよほど悔やまれるようで、「記念日における最悪の出来事だ」みたいなことを言っています。
this is the worse thing that can happen on an anniversary ever を直訳すると、「これは、ある1つの記念日に起こりうる最悪のことである」になるでしょう。
記念日にはいいこと悪いこといろいろ起こるけど、相手にあげるプレゼントを忘れるなんて最悪だ、俺は最低のことをしちゃった、と言っているセリフになります。
プレゼントを忘れたことが客観的に見て「最悪」とは思えませんが、それを最悪と表現することで、モニカをがっかりさせてしまったことを俺は大いに反省しているよ、と示したいのでしょう。
席に戻ってきたフィービーは、そのチャンドラーのセリフを聞いて、「それじゃあ、モニカは例のリチャードの件をチャンドラーに告白することに決めたのね」みたいなことを言っています。
チャンドラーが、「それって何のこと?」みたいに言うので、フィービーは自分の失言に気づいたように、Oh, no. と言っていますね。
観客も、フィービーのそのセリフにどよめいていますから、フィービーがヤバいことを言ってしまったことは容易に想像できます。
たまたま席を外していて「記念日で最悪のこと」というセリフだけを聞いたフィービーは、チャンドラーが最悪のことと言ったのは、モニカがリチャードと食事したことを告白したからだ、と勘違いしたのですね。
you decided to tell him about 「…について彼に話すと決めた」という過去形は、そう決めて、今、実際にそれを話したのね、と言っていることになるでしょう。
「言わないって言ってたけど、今のチャンドラーのセリフを聞くと、モニカは話すことにしたのね」と軽く言ったわけですが、その内容を the Richard thing と名前を出して言ってしまったので、チャンドラーの注意を強く引いてしまったわけですね。
チャンドラーは、What "Richard thing"? と2回言っていますが、厳密に言うと、What's the Richard thing? (= What is the Richard thing?) とは微妙にニュアンスが違うように思います。
What's the Richard thing? なら、「例のリチャードのこと」って何?と問うていることになるでしょうが、What "Richard thing" だとその what は、「何の、どんな」という形容詞になり、何の「リチャードのこと」なの?、どんな「リチャードのこと」なの?、とその「リチャードのこと」の内容、「どのような”リチャードのこと”なのか?」を問うている感覚になると思います。
チャンドラーが「リチャードのこと」が何かわかっていないことから、フィービーは自分が失言したことに気づいたようで、Oh, no. と言っていますが、そのト書きには、[The patented version.] と書いてありますね。
patent は「特許、特許権、パテント」のことで、動詞では「…の特許(権)を取る、特許を受ける」という意味になります。
ですから、直訳すると、「例の特許を与えられたバージョン」みたいな意味になるわけですが、それはつまり、「フィービーがよく使うと多くの人に認められている、そのバージョンで」みたいな感じでしょう。
何か言ってはいけないことを言ってしまった後に、こんな風に、Oh, no. と言うのがフィービーの口癖、いつものパターンである、という感覚なんだろうと思います。
「リチャードのこと、ってどんなことだよ?」と追及するチャンドラーを見て、フィービーがモニカに、リチャード・シモンズのことを言うのが面白いですね。
リチャード・シモンズについては、1つ前の記事、あのリチャードってどのリチャード? フレンズ5-23その2 で説明しましたが、モニカが「あのリチャード」と言った時に、フィービーが思い出したのが、減量プログラムで有名なフィットネス界の有名人、リチャード・シモンズでした。
go with は「…と共に行く」ということですが、ここでは、英辞郎の
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という語義が近いように思います。
リチャードという名前を聞いて、私はあなたの元カレのリチャードじゃなくて、リチャード・シモンズのことを思い出したんだから、ここでもその路線で、「リチャード・シモンズの線で」行きなさいよ、リチャードっていうのはあのリチャード・シモンズのことよ、って話をそらしちゃいなさいよ、と勧めているわけですね。
最初にシモンズの名前がセリフに出てから、このように、かなり後のシーンで再度シモンズの名前を出してくるところも、コメディの定石と言えるかもしれません。
モニカがリチャードと言えば、誰もが元カレのリチャードを思い出すに決まっているのに、シモンズだと言い張って逃げられるかのように思っているところに、フィービーのオトボケ具合が感じられて、楽しいなと思いました。
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