2012年08月09日

その理由は君だよ フレンズ6-24その2

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チャンドラーとモニカはレストランにいます。
今夜このレストランでモニカにプロポーズするつもりのチャンドラーは緊張している様子。
「大丈夫?」と聞かれたチャンドラーは「モニカこそ大丈夫?」と聞き返し、「少し寒いから、あなたの上着を貸して」とモニカに言われます。
上着の内ポケットに指輪のケースを入れているので上着を貸せないチャンドラーは、「君に貸したら僕が寒くなるじゃないか」みたいなことを言って上着を貸すのを拒んでいます。
やはり様子がおかしいと思ったモニカは、
モニカ: (laughs) Are you sure you're okay? ([笑って] 本当に、あなた、大丈夫?)
チャンドラー: Yes! I'm fine. In fact, I've been fine for a long time now and I think, the reason is you. (ああ! 俺は元気(順調)だよ。実際、俺は長い間ずっと元気でいる、僕は思うんだ、その理由は君だ、って。)
モニカ: Ohh, that's sweet! (まぁ、それって素敵。)
チャンドラー: Okay umm, before I met you, I had really little life. And I couldn't imagine growing old with-- (よし、えーっと、俺は君に会う前は、俺には人生ってものがほとんどなかった。そして俺には想像できなかったんだ、一緒に年を取っていくことを…)
(As he's talking Monica notices someone familiar has just entered the restaurant. Let's see; I seem to remember him driving a Ferrari in Hawaii solving crimes as a private investigator and as a certain eye doctor in more recent times.)
チャンドラーが話している時に、モニカは見覚えのある人がちょうどレストランに入ってきたのに気づく。彼が私立探偵として事件を解決しながら、ハワイでフェラーリを運転しているのを思い出す気がする、そしてもっと最近では、とある眼科医としての姿を。
モニカ: (interrupting him) Oh, my God! ([チャンドラーの発言をさえぎって] まぁ、なんてこと!)
チャンドラー: (not knowing the true meaning of her exclamation) I know. But just let me say it. ([モニカの感嘆の声の本当の意味を知らずに] わかってる。でもただ(何も言わずに)俺にそれを言わせてくれ。)
モニカ: Oh, my God, Richard. (Yep, Richard's back.) (なんてこと、リチャード。[その通り、リチャードが戻ってきた])
チャンドラー: What?! I'm Chandler! (She nods towards the doorway, Chandler turns and looks) Oh, that's Richard! (何だって? 俺はチャンドラーだぞ! [モニカは出入り口の方をあごで示す、チャンドラーは振り返って見る] あぁ、あれはリチャードだ!)

明らかにそわそわして様子がおかしいチャンドラーに、モニカは、Are you sure you're okay? と尋ねています。
それまでにもすでに何度か、Are you okay? 「あなた大丈夫?」と尋ねていて、チャンドラーは大丈夫だと返事していたのですが、やはり様子がおかしいので、「自分では大丈夫だって言ってるけど、それは間違いない?」みたいな感じで、Are you sure you're okay? と言っているのですね。

チャンドラーは、I'm fine. と返事しています。
英会話の決まり文句として習う、"How are you?" "I'm fine, thank you." のあの fine ですね。
改めて英英辞典で語義を見てみると、以下のように出ています。
fine : HEALTHY healthy and well
例) "How are you?" "Fine, thanks."

つまり、「健康で調子が良い」。

「大丈夫?」と聞かれて、「元気だよ、順調でいい感じだよ」と返事したチャンドラーは、優しい顔でその後の言葉を続けています。
I'm fine. In fact, I've been fine for a long time は、「今、自分は fine な状態で、実際、これまで長い間ずっと fine な状態だった」と言っていることになります。
そして、the reason is you と言っていますね。
その理由、つまり、自分がずっと fine でいられた理由は君だ、君のおかげでずっと僕は fine でいられた、と言っていることになります。
モニカが素直に感動していることからもわかるように、かなりロマンティックなセリフですね。
今からプロポーズするぞ!という大事な場面なので、いつものおふざけのチャンドラーではなくて、ちょっと照れたような笑顔で心からそう言っているらしいことが表情からもわかります。

the reason is you のように、you が最後に来ているところが、余計にそのセリフを素敵なものにしているように思います。
例えば、Wham! (ワム!)のヒット曲の Freedom のサビの部分で、
I don't need your freedom, girl, all I want right now is you.
という歌詞がありますが、これも、「今の僕が欲しいもののすべては君だ、今の僕が欲しいのは君だけだ」というような意味ですね。
I want you right now. と似たような意味ですが、... is you 「…は君だ」と表現することで、強調したい部分を後回しにしたような倒置のニュアンスが出るわけです。
今回のセリフも内容としては、You are the reason why I've been fine for a long time. のような感じですが、上のセリフのように表現することで、「俺はずっと fine だった、そして俺は思うんだ、その理由は君なんだ、って」というように、「(それは全て)君なんだ、君のおかげなんだ」という部分が強調されるわけですね。

モニカが感動してくれたので、チャンドラーもプロポーズの言葉を言う勇気が出てきたようです。
ついに、チャンドラーが一世一代のプロポーズの言葉を述べ始めたその時に、ある人物の姿が画面に映ります。
ト書きの説明を読むとわかりますが、モニカの元カレの眼科医、リチャード・バーク先生が、このタイミングで同じレストランに現れたのですね。
実際の画面では、「これってリチャードじゃない?」とわかる程度に最初はちらっと画面に映る程度ですが、ファンとしてはやはり彼の登場はまさに驚きなので、そういうファンとしての気持ちが出たト書きになっているのが面白いです。
「私立探偵として事件を解決しながら、ハワイでフェラーリを乗り回す」というのは、リチャードを演じるトム・セレックが主演していた人気ドラマ「私立探偵マグナム」(原題:Magnum,p.i.)のことですね。
Wikipedia 日本語版 : 私立探偵マグナム

そのウィキペディアの説明にも、

「ベトナム帰り」の元海軍士官であるトーマス・マグナムはハワイ・オアフ島で私立探偵業を営んでいる。
マスターズ所有の赤いフェラーリ・308を勝手に乗り回し「愛車」としている。


という記述があるように、「ハワイでフェラーリを乗り回している私立探偵」というのがマグナムのよく知られた設定だということです。
そのように、マグナムとして有名な彼だけれど、もっと最近の話だと、フレンズファンにとっては、「ある眼科医」であるバーク先生として思い出されるとも言っているのですね。

座った位置の関係で、モニカだけがリチャードがいることに気づいた状態で、チャンドラーのプロポーズの言葉が続いています。
モニカがチャンドラーの発言を遮る形で、Oh, my God! と言ったのは、思いがけない場所で元カレ、リチャードを見かけたからですが、チャンドラーはその驚きの意味に気づかないまま、「わかってる。でも俺に言わせて」と言っています。
君と出会う前の俺は(誰かと)一緒に年を取ることなんて想像もできなかった…みたいなフレーズが出てくると、たいていの人はこれがプロポーズのセリフだと気づくでしょう。
チャンドラーも、そのフレーズでモニカがプロポーズだと気づいて声を上げたのだと思って、「今のフレーズで、これがプロポーズの言葉だって気づいて君は驚きの声を上げたってこと俺にもわかってるけど、大事な言葉だから最後まで俺にそれを言わせて」と言っているわけです。
その後、モニカはまた、Oh, my God. と言い、今度は、Richard という名前も出します。
「リチャードだって? こんな大事な時に彼氏の名前を間違えるか? 俺はチャンドラーだ!」と名前を訂正したチャンドラーですが、モニカが示す方向を見て、そこに本当にリチャードがいることにやっと気づくことになります。

ト書きの nod toward the doorway について。
nod は「首を縦に振る、うなづく」ですね。
ですから、nod toward は、「〜の方向に向けて首を縦に振る」という感じで、「〜の方にあごをしゃくる、〜をあごで示す」という意味になります。
口で説明せずに、無言であごをしゃくって、何かを示す、それだと教える、という仕草が、nod toward だということですね。


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posted by Rach at 16:38| Comment(0) | フレンズ シーズン6 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月06日

乾杯の代わりにプロポーズ フレンズ6-24その1

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シーズン6 第24話
The One With The Proposal - Part 1 (チャンドラーのプロポーズ大作戦! Part 1)
原題は「プロポーズの話 パート1」


[Scene: Monica, Chandler, and Phoebe's, Chandler is showing Ross, Rachel, Joey, and Phoebe his engagement ring again.]
モニカ、チャンドラー、フィービーの家。チャンドラーはロス、レイチェル、ジョーイ、フィービーに(自分が買った)婚約指輪をもう一度見せているところ。
ロス: God, that is the most beautiful engagement ring ever! (わぁ、それってこれまでで最も美しい指輪だね。)
レイチェル: Yeah? Well, you should know, you've bought like a billion of ‘em. (そうよね? ほら、あなたはわかるはずだもの、これまでに何億個も婚約指輪を買ってきたもんね。)
ロス: Yeah, you didn't get one. (ああ、君は婚約指輪をもらったことないけどね。)
チャンドラー: Okay, well, tonight's the big night. (よし、今夜は重要な夜だぞ。)
フィービー: Yeah! (そうね!)
ジョーイ: Okay listen, how are you gonna ask her? (なぁ、どうやって彼女に申し込む[結婚してくれって言う]つもりなんだ?)
チャンドラー: It is going to be perfect. I am taking her to her favorite restaurant. I'm going to get her a bottle of the champagne that she really loves; therefore knows how expensive it is. Then when the glasses are full, instead of proposing a toast, I'm just gonna propose. (パーフェクトなものになるんだよ。俺はモニカのお気に入りのレストランに連れて行くつもりだ。俺はシャンパンのボトルを注文するんだ、彼女が大好きなシャンパンのね、それゆえに、彼女はそれがどんなに高価であるかを知ってるってわけさ。それから(2つの)グラスが(シャンパンが注がれて)満たされた時、乾杯をする代わりに、ただプロポーズするつもりなんだ。)

チャンドラーがモニカのために買った婚約指輪を見て、ロスは「これまでで最も美しい指輪だね」と絶賛しています。
それを聞いたレイチェルは、「ロスは何億個も指輪を買ってきたから、わかるはずよね」みたいなことを言います。
billion は 10億で、ここでは「膨大な数」の誇張表現として使われています。
ロスはさすがに何億もの指輪を買ってきたわけではないですが、「ロスはこれまでに3回結婚した」という、いつもフレンズたちが持ち出すネタを、ここでも使ったわけですね。
「何回も結婚してるから、何回も指輪を買ってる、そういう経験の豊富なロスだから、指輪の良し悪しはよくわかるわよね」みたいに言ってからかっているのです。

それに対するロスの返しも面白いです。
one は、an engagement ring のことですね。
このような one については、研究社 新英和中辞典では、以下のように説明されています。
one (代名詞)=[既出の可算名詞の反復を避けて] (その)一つ、それ
例) I don't have a pen. Can you lend me one? ペンがありません. お貸しくださいませんか .
語法 (one)
同一のものを受ける時は it を用いる: He has a car and likes to drive it. I want one. (彼は車を持っていてそれを運転することが好きだ。私も車が欲しい。)


LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
one [pronoun] : used to talk about a person or thing of a type that has already been mentioned or is known about
例) If you don't have a camera, buy one.

つまり、「すでに言及された、または知られているタイプの人やものについて語る時に使われる」。
例文は、「もし君がカメラを持っていないなら、カメラを買いなさい」。

it と表現すると、誰かが前に述べた「そのもの」を指すことになり、one だと「同じ種類のもの」を指す感覚になるわけですね。
ロスのセリフも、「君は婚約指輪というものをゲットしたことがない」と言っていることになります。
僕が何度も結婚したことをネタにしてるようだけど、そういう君は(僕と結婚したけれど、酒の勢いでの結婚だったから)婚約指輪はもらえなかったよね、みたいなことですね。

チャンドラーは、今日は the big night 「重要な夜、大切な夜」だと意気込んでいます。
ジョーイは、how 「どのようにして、どうやって」 ask her 、つまり、ask her to marry you するのかを尋ねています。
チャンドラーは「パーフェクトなんだよ」と言って、自分の完璧な計画を語って聞かせます。
未来の予定として、I am taking や、I'm going to が使われていますね。
I am taking は「近い将来の決まった予定」を表す現在進行形です。
モニカお気に入りのレストランにすでに予約を入れているので、「決まった確実な予定」であることから、現在進行形がフィットするのでしょうね。
その後は、「その流れで自分はこうするつもりだ」という「つもりの予定」みたいなものを述べているので、I'm going to/I'm gonna が使われているということになるでしょうか。

I'm going to get her a bottle of the champagne... therefore knows how expensive it is. という文の表現がなかなか面白いです。
therefore は「それゆえに、従って」という副詞。
LAAD では、
therefore [adverb] (formal) : as a result of something that has just been mentioned
つまり、「ちょうど言及されたばかりのことの結果として」。
哲学者デカルトの言葉、「われ思う、ゆえにわれあり」の英訳、"I think, therefore I am." にも登場する単語ですね。

前から順番に意味を取っていくと、
俺はシャンパンのボトルを1本注文するつもりだ→(どんなシャンパンかと言うと)モニカが本当に大好きな(シャンパン)→それゆえに→そのシャンパンがどんなに高価かをモニカは知っている
という流れになります。
knows のように、-s がついているのは、いわゆる「3単現の s」で、主語はその前の文章と同じ she(=Monica) だということですね。
つまり、チャンドラーは、「モニカが大好きなシャンパンを注文するんだよ、自分の好きなシャンパンだから、それがどんなに高いシャンパンかをモニカは知ってるんだ」と言っていることになり、それを注文することで、モニカは「まぁ、チャンドラーはこんなに高いシャンパンを頼んでくれたの?」と感激するのは間違いない、と言っていることになります。
ポイントは、「そのシャンパンが高い」ことではなく、「モニカがそのシャンパンが高額だと知っている」という部分なのですね。
そのシャンパンの価値をモニカは知ってるから、俺がプロポーズのために最高級のシャンパンを用意したことを、彼女はきっと喜んでくれるだろう、ということです。

when the glasses are full は、「その(二人の)グラスが満杯になる時」ですから、グラスにそのシャンパンが注がれた時、ということ。
さあ乾杯しよう、というその時に、propose a toast する代わりに、ただ、propose する、とチャンドラーは説明します。
動詞 propose は「提案する」というのが基本的な意味ですが、propose a toast は「乾杯する、乾杯の音頭をとる、乾杯を発議する」という意味の決まり文句になります。
そして、日本語にもなっている「プロポーズ」という言葉通り、「結婚を申し込む」という意味もありますね。

乾杯で、propose a toast する代わりに、toast (乾杯)じゃない方の propose をするんだ、というような、propose という動詞を使ったダブルミーニングのようなセリフになっているわけです。
逆に日本語では「プロポーズ」というと、結婚のプロポーズの意味で使われることがほとんどなので、ダブルミーニングに訳すのは難しいですね。
propose a toast というお決まりフレーズを知っているからこそ、「おぉ、しゃれてるね」と思えるセリフだということです。
ちなみに、日本語では「プロポーズ」は名詞扱いですが、英語の propose は「提案する、結婚を申し込む」などの動詞になります。
「プロポーズ、結婚の申し込み」という名詞は、proposal なので、今回の原題も、The One With The Proposal 「プロポーズ(結婚の申し込み)の話」になっているわけですね。


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posted by Rach at 17:54| Comment(6) | フレンズ シーズン6 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月03日

橋の下の水=過ぎてしまったこと フレンズ6-23その6

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少し前のニックス戦に誘わなかったことをチャンドラーが怒っている、と思ったジョーイとロスは、別の試合にチャンドラーを誘いますが、チャンドラーはそれを断ります。
それに気分を害した二人は、これからチャンドラーのことを無視しよう、と決め、今もそれを実行中です。
[Scene: Joey and Rachel's, Joey and Ross are watching TV as Chandler enters.]
ジョーイとレイチェルの家。ジョーイとロスがテレビを見ていると、チャンドラーが入ってくる。
チャンドラー: Guys? (They ignore him.) I've got something important to tell ya. (Still nothing so he walks over and stands in front of the TV.) Guys? (They lean over to try and watch the TV, Chandler mimics them.) Guys?! (Pause) I'm gonna ask Monica to marry me. (ねえ? [ジョーイとロスはチャンドラーを無視する] 君らに言うべき重要なことがあるんだ。[いぜんとして反応がないので、チャンドラーは歩いて行って、テレビの前に立つ] ねえ? [二人はテレビを見ようとして体を曲げる、チャンドラーはそれを真似する] 二人とも。[間があって] 俺はモニカに結婚してくれ、って言うつもりなんだ[結婚を申し込むつもりなんだ]。)
ジョーイ: (To Ross) I think we gotta end the freeze-out. ([ロスに] シカトは終わりにしなきゃいけないみたいだな。)
ロス: Wait a minute, is this, is this for real? (ちょっと待ってよ。これって、これって本当なの?)
チャンドラー: Yeah. Check out the ring. (Shows it to them.) (ああ。指輪を見てくれよ。[指輪を二人に見せる])
ジョーイ: Oh, my God!! (なんてこった!)
ロス: So you two are really serious?! (それじゃあ、二人はほんとに真剣だったんだな?)
チャンドラー: Yep, pretty much. (ああ、かなりね。)
ロス: You-you're gonna get married?! I mean... We're gonna be brothers-in-law! Come here! (They hug.) (チャンドラーは結婚するんだね!? つまり…僕たちは義理の兄弟になるわけだ! 来いよ! [二人はハグする])
ジョーイ: And-and-and-and-and-and, and we're gonna be friends again! (それでそれでそれで…俺たちはまた友達になれるんだな!)
チャンドラー: (goes to hug him and stops short) Heyyyy - What? ([ジョーイにハグしようとして、はたと止まって] おぉ〜い〜、何だって?)
ジョーイ: Oh, it's water under the bridge, forget it! (あぁ、過ぎたことだ、忘れろ!)

二人がテレビを見ているところに入ってきたチャンドラーは、大事な話をしようとしますが、「チャンドラーを無視する」と決めた二人は、チャンドラーに気づかぬふりをして、テレビを見続けています。
ですが、I'm gonna ask Monica to marry me. という重大発言をすると、さすがの二人も驚いた顔になり、ジョーイは見ていたテレビを消しています。

I think we gotta end the freeze-out. の freeze-out は「締め出し、(人を)締め出すこと」。
句動詞 freeze out を名詞にした形なので、freeze-out とハイフンで繋がれているのですね。
句動詞 freeze out については、
研究社 新英和中辞典では、
freeze out=(米口語) (冷遇・力ずくなどで)〈人・ものを〉締め出す、追い出す
英辞郎では、
freeze out=【句動-2】(組織や地位から)締め出す、追い出す、【句動-3】(人)をわざと無視する
と出ています。

LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
freeze somebody out / freeze out somebody [phrasal verb]
to deliberately prevevnt someone from being involved in something by making it difficult for them, not being nice to them etc.
freeze somebody out of something
例) He claims he was frozen out of the decision making process.

つまり、「故意に、誰かが何かにかかわるのを妨げること、その人に対してそれを難しくすることで、または、その人に親切にしないことなどで」。
例文は、「意思決定の過程で締め出しを食らったと彼は主張した」。

チャンドラーの「モニカにプロポーズする」発言に驚いたロスは、"Is this for real?" と言っています。
real は「本当の」という形容詞ですが、今回のロスのセリフのように、for real という形でもよく使われますね。
研究社 新英和中辞典では、
for real (米口語) [形容詞的に] 本物の、本気の
This is for real. これは本物だ.
Are you for real. 君本気か.

と出ています。

Macmillan Dictionary では、
for real (informal) : if something is for real, you are doing it seriously, not just practising or pretending
つまり、「何かが for real であるとは、人がそれを真剣にしている、ということ、ただ練習しているだけとか、そういうふりをしているだけなどではなく」。

「冗談じゃなくて、マジな話か?」と問われたチャンドラーは、買ってきた婚約指輪を二人に見せます。
brother-in-law は、「義理の兄弟」ですね。
当然のことながら、複数形にする場合は、brother に -s がついた brothers の形になります。

「僕たち、義理の兄弟になるんだ!」とハグし合う二人を見て、親戚関係にはならないジョーイは、「それで、俺たち(俺とチャンドラー)は、また友達になるんだ!」と言います。
ロスと同じように、一瞬喜びそうになるチャンドラーですが、その言葉の意味に引っかかって、「ヘ〜ェエイ」みたいな声を出して、それっていったい何のことだよ?みたいに問い詰めます。
「また友達になれる」ってことは、この話をする前は友達じゃなかった、ってことか? 俺のことを無視してたのは俺を友達だと思ってなかったからか?というようなことに気づいたからでしょう。

そう言われて、「だって、せっかくニックス戦のチケットを用意したのに、それを喜ばないお前が悪い」みたいな説明をしても良かったのでしょうが、もはやそういう次元の話を越えたビッグニュースが飛び込んできたので、「もうそんなことは忘れろよ」みたいに、あっさり言ってしまうのがジョーイらしいですね。

water under the bridge を直訳すると「橋の下の水」ということですから、「川の水」を指すことになるでしょうが、このフレーズには「過ぎてしまったこと」という意味があります。

研究社 新英和中辞典では、
water under the bridge=過ぎてしまったこと、取り返しのつかない過去

LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
be water under the bridge (spoken) : to be in the past and not worth worrying about
つまり、「過去のことで、心配する価値のないこと」。

Macmillan Dictionary では、
water under the bridge : used for saying that you should stop thinking about something bad that happened in the past and you should forgive people who did bad things
例) Don't worry - it's all just water under the bridge.

つまり、「過去に起こった悪いことについて考えるのをやめるべきだ、そして、悪いことをした人を許すべきだと言うために使われる」。
例文は、「心配するな。すべてはただ過ぎてしまったことだ」。

鴨長明の「方丈記」に、「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」という言葉もあるように、川の流れを移りゆく時の流れに例える感覚は日本語にも存在しますよね。
ですから、「橋の下の水」という直訳でも何となく意味を察することはできそうですが、どの辞書にも載っているような決まり文句なので、そういう表現があるんだ、と覚えておいて損はないと言えるでしょう。


(過去記事への追記のお知らせ)
前回の記事、仕事なら2千ドルは稼げたのに フレンズ6-23その5 のセリフ、
"When just 14 hours ago we figured out..." の when について、Twitter 上でコメントを頂戴しました。
記事への追記の形で、この when に関する今の見解を述べさせていただきましたので、併せてご覧いただけると幸いです。


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posted by Rach at 11:26| Comment(0) | フレンズ シーズン6 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月01日

仕事なら2千ドルは稼げたのに フレンズ6-23その5

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レイチェルが買い物から帰ってくると、ポールは「君に言いたいことがたくさんあって、それを書いてたんだ」と言います。
ポールが泣きながら想い出話をするのにうんざりしたレイチェルは、モニカがくれたアドバイス、「男を黙らせるにはエッチに持ち込めばいい」を思い出し、ポールにセクシーに迫る作戦に出ることにします。
レイチェルが胸の谷間をわざと見せるようにしても全くそそられる様子もなく、自分の幼少時代のことを語り続けるポールに、ついにレイチェルの怒りが爆発します。
レイチェル: I don't care about the little dude! I can't! I cannot listen to anymore of this! Y'know, the only person who would want to listen to this is a mental health professional! And then it's only because they get paid $100 an hour! Do you know how much money I could've made listening to you? $2,000! And do you know when I figured that out? While you were talking! (小さい子供のことなんて私にはどうでもいいのよ! もう無理! こんなこと、これ以上聞くことなんかできないわ! ほら、こんなことを聞きたいと思うような人は、メンタルヘルスのプロだけよ! それから、その理由はただ、そのプロは時給100ドルもらえるからよ! あなたの話を聞くことで、私がどれだけのお金を稼げただろうと思う? 2,000ドルよ! そして私がそれをいつ計算したか知ってる? あなたの話を聞いている間に(計算したの)よ!)
ポール: What?! I can't believe you're trying to stifle me! When just 14 hours ago we figured out that is exactly what my mother was trying to do to me! (何だって? 君が僕の感情を抑えようとするなんて信じられないよ! たった14時間前だぞ、僕の母が僕にしようとしていたことが、まさにそれだってわかったのは!) (:以下の記事内に、追加説明があります。)

ついにキレてしまったレイチェルは、I don't care about 「〜なんてどうでもいいわ!」という投げやりな言葉を使って、怒りを爆発させています。
the only person who... の文はちょっと長いですが、構造を単純にすると、is がメインの動詞になり、the person is a professional 「〜の人は、…のプロ(専門家)である」という意味になります。
関係代名詞 who や、形容詞がつくことで、person と professional を詳しく説明する形になっているのですね。
直訳すると、「こんなこと(こんなポールの話)を聞こうと思うような唯一の人間は、メンタルヘルス(心の健康)の専門家である」ということになります。
私は今まであなたの話を聞いていたけど、誰がこんな話を聞きたいもんですか、こんなのを聞きたがるのはメンタルヘルス専門家だけよ!ということですね。
その後、「そしてそれはただ…だからよ」と言って、専門家が話を聞きたいと思う理由はこれだけよ、と言っています。
その理由とは、「1時間に100ドル支払われるから」、つまり、メンタルヘルスのプロが仕事としてこういう話を聞くと、だいたい時給100ドル稼げるからよ、と言っているわけですね。
カウンセリングの相場がだいたいそんな感じだということでしょう。

その後、「あなたの話を聞くことで(聞きながら)、私はどれだけのお金が稼げただろうと思う?」みたいなことを尋ねていますね。
could've made (money) は、「could+have+過去分詞」の形で、「お金を稼ぐこともできたのに(実際にはできなかった)」という感覚。
私はカウンセラーじゃないから、時給100ドルもらうことはできなかったけど、もし私がカウンセラーとしての正規料金を受け取っていたら、どれだけのお金が稼げたか、という話をしているわけですね。
「どれだけ稼げたと思う? 2,000ドルよ!」と言った後、畳み掛けるように、「それをいつ計算したと思う? あなたが話している間に計算したのよ!」とも言っています。
あなたの話なんか興味なくて退屈だから、暇つぶしにそんな計算してたのよ、ということですね。

怒るレイチェルの発言を聞いて、ポールは、「君が僕を stifle しようとするなんて信じられない」と言っています。
stifle は「(人の)息を止める、窒息させる」という意味で、そこから「…を抑える」という意味にもなります。
Macmillan Dictionary では、
stifle :
1. to stop someone from breathing
3. to stop something from developing normally

つまり、1. は「誰かが呼吸するのを止めること」、3. は「何かが正常に発展するのを止めること」。

ポールが言っている stifle とは、「ポールが話をしようとしているのにそれを止めようとすること」でしょうね。
その後のセリフでも、「たった14時間前に僕らは解明したじゃないか、そのこと(stifle すること)が、まさに僕の母が僕に対してしようとしていたことだ、って!」と言っています。
ポールが幼少期に「親に受け入れられない」という思いを抱いたのは、母親がポールの話を聞こうとせず、話を止めようとしたからだ、ということですね。
レイチェルにいろいろと身の上話をして、その時に「母が僕を stifle しようとしたこと」がトラウマになっていると二人で気付いたのに、まさに母がしようとしていたことを、君は今僕に対してするつもりか?と言いたいのですね。

(2012.8.3 追記)
ポールのセリフ、"When just 14 hours ago we figured out..." について、「when は何のためにあるのだろうか?」というコメントを Twitter 上で頂戴しました。
興味深いポイントだと思ったので、ここで追記の形で、私の意見を述べさせていただきたいと思います。

ご指摘があったように、確かにこの when はクセモノですね。
「たった14時間前にそれがわかった」という文であれば、Just 14 hours ago だけで十分で、when は必要ないはずです。
上のセリフの英文は、ネットスクリプトを参考にしたものですが、この部分、DVDの英語字幕では、... to stifle me, when 14 hours ago... のように2文がカンマで繋がれていました。
英語字幕は「実際のセリフより単語が省略されるけれども、文法的に正しい文になるように表示される傾向がある」ので、英語字幕にも when が入っていたということは、この when は文法的に意味があると考えて良いと思います。

英和辞典を見ると、when には「〜なのに、〜であるのに」という逆接の意味が載っています。
そういう逆接の意味としては、LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、以下の2つが該当するように思います。

when [conjunction] :
5. even though or in spite of the fact that something is true
例) Why do you want a new job when you have such a good one already?
6. used to introduce a second statement that shows that the first statement is not true
例) The doctor said Dad was fine, when he was really dying.


つまり、5. は、「あることが本当であるという事実にもかかわらず」。
例文は、「どうして新しい仕事が欲しいの? すでにそんなに良い仕事を持っている(という事実)にもかかわらず[持っているのに]」。
6. は、「最初の発言が事実ではないことを示す2番目の発言を導入するために使われる」。
例文は、「パパは大丈夫だと医者は言ったが、(実際には)パパは本当に瀕死の状態だった」。

今回のポールのセリフは、ロングマンの 5. の語義、「〜という事実にもかかわらず(in spite of the fact that)」が近いように思います。
「信じられないよ、14時間前に〜がわかったばかりなのに(少し前にわかったという事実にもかかわらずそんなことを言うなんて)」という逆接の接続詞のニュアンスだろう、というのが、今の私の見解になります。

ネットスクリプトのように、... trying to stifle me! When just 14 hours ago ... と2文に分けて書こうとすると、やはり意味的にも文法的にも、When は必要ないように思います。
上で説明したような、「逆接の when 」のニュアンスとして使われていると考えると、文法的には、DVD英語字幕のように、... trying to stifle me, when just 14 hours ago ... とカンマで区切るのが正しいと言えるでしょう。
そうすることで、1文目と2分目を繋ぐための接続詞の役割をしていることがはっきりするわけですね。
(追記はここまで)

that is exactly what my mother was trying to do to me! というフレーズは、前回の記事に出てきた、That's exactly what my dad used to say! と、ほとんど同じ構造になっています。
ポールに対して、誰かが拒否的な反応をした場合に、「それはまさにパパがよく言ってた言葉だ」とか、「それはまさにママが僕に対してしようとしていたことだ」と言うことで、「君らも、両親と同じように、僕を受け入れてくれないのか?」と悲しむセリフになるわけですね。
こういうフレーズを繰り返すところに、「過去の辛い記憶がトラウマになっていて逃れられない人」という感じがよく出ていると思います。

また、上のセリフでは、レイチェル、ポールの両方が、figure out というフレーズを使っています。
レイチェルの方は「計算する、計算して答えを出す」という意味、ポールの方は「わかる、理解する」という意味で使われているのにも注目したいところですね。


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posted by Rach at 17:09| Comment(4) | フレンズ シーズン6 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月30日

heが指しているのは誰か? フレンズ6-23その4

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[Scene: Joey and Rachel's, Paul is still crying as Chandler enters.]
ジョーイとレイチェルの家。ポールはまだ泣いていて、そこにチャンドラーが入ってくる。
ポール: Rachel? (レイチェル?)
チャンドラー: No. How are ya, Paul? (Starts to look for his credit card.) (違うよ[レイチェルじゃないよ]。元気、ポール? [自分のクレジットカードを捜し始める])
ポール: (acting manly to try and cover up his crying) Okay. Chandler, did your dad ever hug you? ([自分が泣いていたのを隠そうとするために男らしく振る舞いながら] なぁ、チャンドラー、君のパパは(かつて、これまでに)君をハグした(ことがある)?)
チャンドラー: No. Did he hug you?! (いいや(ハグしなかった)。俺のパパが君をハグしたのか?!)
ポール: No! No! It's just that, my dad never did. I miss my dad. (いや、そうじゃない! 違うよ! ただ、僕のパパはこれまで僕をハグしなかった、ってだけのことなんだ。パパが恋しいよ。)
チャンドラー: Well, you can see my dad in Vegas kissing other dads. (うーんと、ベガスで俺のパパが他のパパたちにキスしてるとこは見られるよ。)
ポール: Hey, Chandler? (なぁ、チャンドラー?)
チャンドラー: Yeah? (ん?)
ポール: Would you.... Would you hug me? (俺をハグしてくれる?)
チャンドラー: I'm a little busy here, Paul. (俺は(今ここで)ちょっと忙しいんだよ、ポール。)
ポール: That's exactly what my dad used to say! (Starts to breakdown again.) (それは俺のパパがよく言っていたことと全く同じ(セリフ)だ! [また泣き出しそうになる])

レイチェルに子供の頃の思い出話をした後、泣き始めたポール。
レイチェルが買い物に行っている間も、一人でずっと泣いています。
ドアの音がしたので、「レイチェル?」と尋ねるのですが、入ってきたのはチャンドラー。
それまでしくしく泣いていたポールは、チャンドラーにはそんな様子は見せまいと、姿勢や歩き方に男らしさを出していますが、ハグについての質問をしています。

Did your dad ever hug you? は、「君のパパは君をハグしたか?(これまでに・過去に、君をハグしたことがあるか?)」ということですね。
それに対して、チャンドラーは、No. と答えています。
これは、No, he didn't. つまり、My dad didn't ever hug me. 「いいや、俺のパパは俺をハグしなかった」と言っていることになります。
今度はチャンドラーが、ポールに同じような質問を返していますが、Did he hug you?! については、その he が誰を指すか、ということに注目したいと思います。

この he が誰を指すか、という件については、「英語の仕組みを考えると、やはりそういう結論にならざるを得ない」ということなのですが、あくまで「私はこう解釈しました」という話であって、100%絶対そうだ!と断言するつもりはありません。
そういうことを踏まえて、お読みいただけると幸いです。

その二人のやり取りを、何となく雰囲気で意味を捉えてしまうと、
ポール:君のパパは君をハグしたか?
チャンドラー:いいや(しなかった)。君のパパは君をハグしたか?
のように解釈してしまいそうになりますが、Did he hug you?! の he は、直前に出て来た男性を指す代名詞ですから、he = (ポールが言うところの) your dad、すなわち、「チャンドラーのパパ」を指すはずです。
日本語で「彼は君をハグしたの?」と訳すと、日本語の「彼」は英語の he に比べて、対象が漠然としているために、「父と子という関係を相手に置き換えた形で同じ質問をしている」ように解釈することも可能な気がしますが、英語でこの文脈で he が出てきた場合は、直前のポールのセリフに出てきた your dad、すなわち、チャンドラーのパパを指していることになると私は思うのですね。

過去記事、フレンズ3-11その35 のコメント欄 で、So do I. に関する、興味深いご意見をいただいたことがありました。
概要をお話しますと、ある人 (A) が、"I kiss my wife every morning." と言った後に、別の人 (B) が「自分も同じことをする(私も自分の妻に毎朝キスをする)」と言おうとして、So do I. と言ってしまうと、英語では、"I kiss her[his wife] every morning, too." という意味になってしまう…という内容でした。
so というのは、kiss my wife every morning (my wife は、A にとっての「私の妻」すなわち「A の妻」という意味)を省略しているのであって、B が主語を I にして話しても、目的語が自動的に my wife (つまり、「B の妻」)に置き換わるわけではない、ということですね。

日本語で「うちもそうです。私もそうです」と言った場合には、主語が「私」に置き換わると、所有格も「私の」に置き換わる感覚がありますが、英語では「省略されている単語」は明白であり、「私の」に置き換えたい場合は、はっきりそう明示する必要がある、ということになるでしょう。

この So do I. の感覚に通じるものが、今回の Did he hug you?! にもあるように私は思うわけです。
話の流れだと、「君の場合はどうなのか?」を尋ねているように思えても、he が自動的に、your dad に置き換わるわけではなく、やはり、he = Chandler's dad という関係は崩れないはずだと思うわけです。
ですから、もしチャンドラーが、「俺のパパは俺をハグしなかったけど、君のパパは君をハグしたのか?」と尋ねたいなら、No. Did your dad hug you? のように、はっきり、your dad と表現しないといけないことになるはずだと思います。

その後に続くセリフでは、もう he という言葉は使われず、それぞれが、my dad という言葉で自分の父親を表現しています。
それぞれの父親の話が出てきた後に he を使うと、どちらの父親を指すかがわからなくなるからですね。
そういう紛らわしい場合には、毎回、my dad と表現せざるを得ないわけです。
チャンドラーのパパの話が出た直後(で、なおかつ、ポールのパパの話が出る前)の he であれば、それはチャンドラーのパパを指すことが明白なので、その時だけは、he で言い換えることができた、ということになるでしょう。

つまり、「俺のパパは俺をハグしなかったけど、その彼(俺のパパ)は君をハグしたのか?」というのが、チャンドラーのセリフの意味だと私は解釈しました。
ですから、ポールは、「違う、違う、(君のパパが僕をハグしたとか)そういうことじゃなくて、ただ、「僕のパパ」がこれまで(決して)僕をハグしなかった、ってだけなんだ」と、言っているわけですね。
No, it's just that... というのは、「いや、ただ…ってだけなんだ」のように、何か相手が誤解しているらしいことを訂正するニュアンスのフレーズですよね。
「彼(君のパパ)の話じゃなくて、僕のパパのことなんだ」という感じで、It's not that he/your dad hugged me. It's just that my dad never did. (=never hugged me.) と言っていることになるでしょう。

普通は、唐突に誰かが「君のパパは君をハグしたことある?」みたいに尋ねてきたら、「この人は自分の父親にハグされたことなくて、だから人にそういうことを尋ねているのかな?」と思いますよね。
チャンドラーもそれはわかっていたはずですが、わざとそれに気づかないふりをして、「俺はパパにハグされたことないけど、そんなこと聞くってことは、もしかして俺のパパが君をハグしたわけ?」みたいに、ちょっとゲイのジョークを込めて返したのだと思います(「ゲイのジョーク」については、後にもう少し語ります)。
チャンドラーのセリフ、Did he hug you?! は、HUG の部分が強く発音されていますが、それも「俺のパパが君を”ハグ”したのか?!」と、ハグという行為に驚いている感じが出ているように思います。

自分の父親にハグされたことないんだ、と告白した後、パパが恋しい、パパに会いたい、みたいなことをポールは言っています。
チャンドラーはまた、自分のパパの話を持ち出して、「(君のパパに会う方法は俺は知らないけど)俺のパパなら、ベガスで他のパパにキスしてるところを見ることができる」と言っています。

これまでのエピソードでも何度か語られていたように、チャンドラーのパパは、ベガスでゲイのショーに出ているような人なのですね。
そういう設定があるために、「パパが誰かをハグした」という話になると、父と子の親子のハグではなくて、「俺のパパがどこかの男性をハグした」というゲイの人にありがちな話だとチャンドラーが受け止めるのが、ある程度、自然に(?)思えるわけですね。
チャンドラー自身がよくゲイだと間違えられる、パパがベガスでゲイのショーをしている、という、ファンには周知の設定があるために、チャンドラーの、Did he hug you?! という驚いたような返しが、ゲイを彷彿とさせるジョークとして成立するわけでしょう。

ですがポールは、チャンドラーのパパがゲイである、という話に食いつく様子もなく(多分、ポールは自分の幼少時代の辛い記憶で頭がいっぱいなのでしょうね)、言いにくそうに「俺をハグしてくれる?」みたいに言っています。
チャンドラーは、「俺は今ちょっと忙しいんだけど」と言って、その依頼を断ろうとします。
実際、チャンドラーは指輪を買うためのクレジットカードを取りに戻ってきただけで、カードが見つかったらさっさと店に戻るつもりだったのも事実です。
ですが、その言葉を聞いたポールは、「(君が今言った)その言葉は、俺のパパがよく言っていたのと全く同じだ!」と言って、また泣きそうになってしまいます。
小さい頃、パパにぎゅっと抱きしめてもらいたいと思っても、パパはいつも忙しそうにしていて、「今は忙しいからダメだ」みたいに拒まれた…そういう記憶がチャンドラーの言葉でよみがえってしまったようですね。


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posted by Rach at 17:12| Comment(4) | フレンズ シーズン6 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月27日

know ofとknowの違い フレンズ6-23その3

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ポールにもっと心を開いてもらいたい、と思っていたレイチェルは、何とか彼から子供の頃の思い出話を聞き出すのですが、そのことをきっかけに、ポールは次から次へと、つらかった思い出を語り出し、ついには泣きだす始末。
[Scene: Monica, Chandler, and Phoebe's, Monica is there as Rachel enters.]
モニカ、チャンドラー、フィービーの家。モニカがそこにいて、レイチェルが入ってくる。
レイチェル: Oh, my God! Oh, my God!! (なんてこと、なんてこと!)
モニカ: Still crying? (まだ泣いてるの?)
レイチェル: Like a little girl. I know. I know. I know. This is all my fault. I wanted him to open up. But God, I didn't know that I was gonna unleash this-this weepy, clingy, moist monster! (小さな女の子みたいにね。わかってる、わかってる、わかってる。これは全部私のせいよ。私が彼に心を開いてもらいたいって望んだんだもの。でも、あぁ、私は知らなかったのよ、こんなに涙もろくて、粘っこい、じめじめしたモンスターを解き放つことになるなんて。)
モニカ: Y'know, I only know of two surefire ways to shut a man up. And one of them is sex. (ねぇ、男を黙らせる2つの確実な方法がある、って聞いたことあるだけなんだけど。で、その1つは、エッチね。)
レイチェル: What's the other one? (もう1つの方法は何?)
モニカ: I don't know. I've never had to use the other one. I'm just saying, y'know, if we're having sex, he's not gonna be talking. (さあね[知らないわ]。もう1つの方法を使わなければならなかったことが今までなかったもの。ほら、ただこういうことよ、もし二人がエッチしているなら、男性は話したりしないもの。)
レイチェル: Oh, that's right. You're the talker. (They both reflect on that briefly) Anyway uh, great idea! Umm, I gotta go to the store. I told him that I would buy him some more tissues. (あぁ、その通りね。話すのはあなたの方だもんね。[二人は今の発言を一瞬考える] とにかく、あー、いいアイデアね! あー、私はお店に行かなきゃ。ポールに言ったのよ、彼にもっとティッシュを買ってくるって。)
モニカ: Oh, we have some.... (あぁ、(ティッシュなら)うちにあるわよ…)
レイチェル: No, you don't! (いいえ、あなたの家には、ないわ!)

「(ポールは)まだ泣いてるの?」と尋ねるモニカに、レイチェルは「ええ、小さな女の子みたいに(しくしく)泣いてるわ」と返します。
そのことについて苛立ち(いらだち)ながらも、そうなったのは自分のせいだとも認めていますね。
「わかってる、全部私のせいよ。私が彼に心を開いて欲しいと望んだから。でも知らなかったのよ(こんなことになるなんて)…」という流れですね。

weep は「涙を流して泣く」という動詞で、weepy はその形容詞で「涙もろい、涙ぐんだ」。
cling は「くっつく」という動詞で、clingy は「粘着性の、粘っこい、粘りつく」「まといつく」という形容詞。
moist は「湿った、湿っぽい」「(目が)うるんだ」という形容詞。moisture 「湿気、水分、モイスチャー」の関連語ですね。

leash は名詞で「(犬などをつなぐ)革ひも、鎖」。動詞では「(犬など)を革ひもでつなぐ」という意味になり、その動詞に un- という「逆の動作を表す接頭辞」をつけることで、「革ひもをはずす・解く」「束縛を解く、解放する」という意味になります。
「彼に心を開かせようとすることで、ジメジメ、ネチネチと泣いてばかりのモンスターを解放してしまうことになるなんて、知らなかったのよ!」と言いたいのですね。

ポールが泣きやまないと嘆くレイチェルに、モニカは、男を黙らせる2つの確実な方法について語ります。
surefire は「確実な、成功間違いなしの」という形容詞。

ここでの二人のやり取りを簡単に書くと、「2つの方法を知ってる、1つは○○」「もう一つは何?」「知らない」と言っていることになりますね。
2つ知っていると言いながら、1つは知らないと答えていることになり、矛盾を感じる気もしますが、これは、know of と know のニュアンスの違いを意識することで理解できる気がします。

know は「知っている」ですが、know of という形になると「直接的にではなく間接的に聞いて知っている」というニュアンスが出ます。

研究社 新英和中辞典では、
know=〔+of+【(代)名】〕(直接ではないが)〔…のことを〕間接的に知って[聞いて]いる
I know of him, but I don't know him (personally). 彼のうわさは聞いて(間接的に知って)いるが(個人的に)知り合ってはいない。 (注:あとの know は 【他】U「〈人と〉知り合いである」の意味)


LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
know of somebody/something [phrasal verb]
1. to have been told or to have read about someone or something, but not know much about them
例) I only know of him - I've never actually met him.
2. to know that someone or something exists, used especially when asking for or giving advice.
例1) Do you know of any good restaurants in Chinatown?
例2) I know of one or two people who could help you with this.


つまり、1. は、「誰かや何かについて聞いたことがある、読んだことがあるが、それについてはあまり(多くのことを)知らないこと」。
例文は、「私は彼のことを聞いたことがあるだけだ[聞いたことがあるので知っているだけだ]。実際には彼に会ったことはない」。
2. は、「誰かや何かが存在することを知っていること、特に依頼する時、またはアドバイスを与える時に使われる」。
例文1は、「チャイナタウンに良いレストランがあるか知っていますか?」、例文2は、「この件で君を助けることができる人が1人か2人いるのを知っている」。

この know of のニュアンスを当てはめてみると、最初の know of を使ったセリフは、「男を黙らせる確実な方法が2つあると聞いたことがある」というような感覚になるでしょうか。
直接その2つの方法をモニカ自身が知っているわけではなくて、「確実な方法が2つある」って話を聞いたことある、という程度なのでしょう。
ですから、「1つ目は○○」と言えても、「2つ目は(あるらしいけど)私はよく知らない」という流れになるのですね。

know of と know の違いを感じたところで、その2つの方法について見てみます。
モニカによると、1つ目は「エッチ(すること)」で、2つ目は「知らない。使ったことないから」とのこと。
使ったことない、というのは、いつも1つ目を行なうことで問題が解決してしまうから、という意味ですね。
その後も、それを補足するような形でセリフが続いていますが、直訳すると、「もし私と相手の男性とがエッチをしているところなら、彼は話している状態にはならない」ということですね。
グチグチ、メソメソと泣きながら話をするような男性でも、エッチの最中にはそんな話はしないでしょ、エッチに持ち込めば彼を黙らせることができるでしょ、みたいなことですね。

それを聞いてレイチェルは「そうね」と同意した後、You're the talker. と言っています。
直訳すると、「あなたが話す(ほうの)人だ」みたいな感じです。
You're a talker. のように不定冠詞 a ならば、一般論として「あなたはおしゃべりだわ」という感覚になるでしょうが、ここで the talker と定冠詞 the で特定されているのは、if you two are having sex, you're the talker. 「あなたたち二人がエッチしている時には、あなたが話す人(話す担当)だもんね」みたいに言っていることになるでしょう。
別の言い方をすれば、You're the one who's talking while you two are having sex. という感じになるでしょうか。
そのように、the talker は「その状況で話すほうの人」という特定感が感じられる気が(私には)するわけです。
レイチェルは、モニカの話を聞いて、モニカがエッチしているところを頭に思い描いて、「ええ、確かに相手の男性は話さないわね、もっぱら話しているのはモニカの方だもんね」と言っているのだと思います。

ト書きにもあるように、そこで一瞬、奇妙で気まずい間(ま)が流れます。
言った瞬間、レイチェルも「あれ、まずいこと言った?」みたいな顔で視線を上にしていますし、モニカは伏し目がちで、顔がこわばっていて、レイチェルと視線を合わせようとしません。
モニカの顔には焦りみたいなものも見え、レイチェルも横目でモニカを見て、あっちゃー、みたいな顔もしています。
これは、モニカのエッチの様子を、レイチェルが詳しく知っていることを暴露してしまったために、お互い気まずくなっているわけですね。
偶然聞こえたのか、聞き耳を立てていたのかは知りませんが(笑)、そういう最中に聞こえてくるのは確かにモニカの声だけだわ、というのをレイチェルが言ってしまったために、「そんな時の声を聞かれてた?」と知り、恥ずかしくてレイチェルの顔を見られなくなってしまったわけですね。
レイチェルの方も、本来ならば、いくら(元)ルームメイトでかなりプライベートなことを知っていたとしても、あえてそれには触れないでいるのが、お互いのプライバシー尊重のためには必要だとわかっていたはずですが、モニカがエッチの最中の話を例えに出したのにつられて、つい、口が滑ってしまった、ということになるでしょう。

気まずい時に話を切り上げるのに便利な、anyway を使って、レイチェルは「お店に行かなきゃ。(泣いてばかりいる彼のために、涙を拭く)ティッシュを買ってくるって言ったから」と言いながら、そそくさと部屋を出て行こうとします。
モニカが言いかけた、we have some... は、we have some tissues here (in my apartment) ということですね。
「ティッシュなら(この部屋の住人である)私たちが持ってる」→「ティッシュなら、わざわざ外の店に買いに行かなくても、うちにあるわよ」と言っていることになります。
それに対してレイチェルは、No, you don't! と強く否定していますね。
「いいえ、あなたたちはティッシュを持ってないのよ! ここはティッシュはないのよ!」と断言している形になりますが、それは、気まずいことを言ってしまって早くここから逃れたいのと、この家のティッシュを借りれば、またすぐにポールのところに戻らないといけないので、外に出かけることでポールのところに戻るまでの時間を少しでも稼ぎたい、という思いの両方からでしょうね。
「あなたがあると言っても、ティッシュはここにはないの!」と強く言うことで、「ティッシュはないってことにしといて!」みたいな気持ちが込められるということですね。


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2012年07月25日

古生物学者なら掘り下げて フレンズ6-23その2

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モニカがチャンドラーに内緒で結婚式場を予約していたと知って、狼狽していたように見せていたチャンドラーでしたが、実は彼の方もモニカに内緒で、その式場を下見していました。
チャンドラーは婚約指輪を買おうと決め、そのことをフィービーと相談していた時に、ロス&ジョーイが入ってきたので、チャンドラー&フィービーはこそこそと逃げるように部屋を出て行ってしまいます。
その後の、セントラルパークでのシーン。
ロス: Hey, Pheebs, what-what was the deal with you and Chandler blowing us off before? (ねぇ、フィービー、少し前に、君とチャンドラーが僕たちを避けたのは一体どういうこと?)
フィービー: Yeah! That was so weird, huh? (そうね! あれってかなり変だったでしょ?)
ロス: Phoebe, why did you do it? (フィービー、どうしてそんなことしたの?)
フィービー: I didn't do it! It was Chandler! He's.... He's mad at you! (私がしたんじゃないわ! チャンドラーよ! チャンドラーが…彼があなた(たち)に怒ってるのよ!)
ロス: What?! Why?! (何だって? どうして?)
フィービー: Please, I think you know why. (全くもう、あなたはどうして(彼が怒っている)かを知ってると思うけど。)
ロス: I can't think of anything. (何も考えることができないよ。)
フィービー: Come on, Ross. You're a paleontologist. Dig a little deeper. (ちょっと、ロス。あなたは古生物学者でしょ。もう少し深く掘り下げなさい[掘り下げなきゃ]。)
ロス: Wait a minute, is it because Joey and I didn't invite him to that Knicks game a couple of weeks ago? (ちょっと待ってよ。それって2、3週間前に、ジョーイと僕とがチャンドラーをあのニックスの試合に招待しなかったから?)
フィービー: Do you think that's something that he'd be mad at you for? (それが、チャンドラーがあなた(たち)に対して怒ってることだとあなたは思うの?)
ロス: I guess it could. (可能性はあると思うよ。)
フィービー: Well, then I think that's it. (そう、じゃあ私もそれだと思うわ。)
ロス: Well, if he's angry, he really shouldn't just cover it up. I-I wish he would just tell me the truth. (うーん、もしチャンドラーが怒ってるなら、彼はそれを隠そうとすべきじゃないよ。本当のことをただ言えばいいのに、って僕は思うね。)
フィービー: Oh, if that's what you want, then you really should run him under hot water and bang his head against the table. (あぁ、もしそれがあなたの望みなら、そしたらあなたは彼を熱湯の下に通して、彼の頭をテーブルに打ちつけるべきよ。)

what's the deal? というのは、「どうしたの?」という意味。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
what's the deal? : used when you want to know about a problem or something strange that is happening
例) So what's the deal? Why is he so mad?

つまり、「今起こっている問題や何か変なことについて知りたいと思っている時に使われる」。
例文は、「それで、どうしたの? どうして彼はそんなに怒ってるの?」。

blow off は「吹く」+「分離」なので、「吹き飛ばす」が基本的な意味となり、そこから「避ける、無視する」という意味でも使われます。
「吹き飛ばす」という日本語からも、その対象となるものを軽んじて疎んじる感覚は感じられますよね。

「あれは一体どういうことなの?」と問われたフィービーは「ええ、あれって変だったでしょ」と様子がおかしかったことを認めます。
そして「どうしてそんなことをしたの?」と問い詰められて、「私がしたんじゃなくて、チャンドラーがやったことよ」と、自分のせいじゃないと主張します。
チャンドラーはあなた(or あなたたち)に怒ってるのよ、と言われても、ロスにはすぐには思い当たる節(ふし)がないようです。
「理由ならわかってるでしょ」「何も思いつかないよ」というやり取りの後のフィービーのセリフ、
You're a paleontologist. Dig a little deeper. が面白いですね。

paleontologist はロスの職業である「古生物学者」。
Dig a little deeper. を直訳すると、「もう少し(より)深く掘れ」になります。
ロスのように恐竜を研究している学者は、骨を発掘することが仕事の一つですよね(実際にシーズン1では中国での発掘調査の話も出てきました)。
また、dig deep には「深く掘り下げて調べる、探究する」という意味もあります。

Macmillan Dictionary では、
dig deep : to try very hard to find out information about someone
例) If I'd dug deeper, I might have found out what happened to his wife.

つまり、「誰かについての情報を見つけようと非常に努力すること」。
例文は、「もし私がもっと深く調べていたら、彼の妻に起こったことを見つけられたかもしれなかったのに」。

ですから、「ロス、あなたは古生物学者なんだから、もっと深く掘らなきゃ」と言いつつ、同時に「もっと深く掘り下げて調べなきゃ、探究しなきゃ」とも言っている、ダブルミーニングのしゃれになっているわけです。
日本語でも「深く掘り下げる」と言えば、「表面的なことだけではなく、深い部分まで徹底的に調べる・考える」というニュアンスになりますので、その感覚は同じですね。
ですから、このフィービーのセリフは、「あなたは古生物学者なんだから、もう少し深く掘り下げなさい」という日本語に訳せば、「発掘する」と「深く調べる、考える」との両方の意味で使っていることがわかるので、直訳してもそのまま日本語のしゃれとして通用する例の1つと言えるでしょう。
掘る、掘り下げる、という言葉の持つイメージは、日英同じだ、ということですね。

「もっと掘り下げろ、深く考えろ」と言われたロスは、「ニックス戦にチャンドラーを招待しなかった(誘わなかった)ことが原因かな?」と言います。
その後のフィービーの、相手の腹を探るようなセリフもなかなか面白いですね。
「ニックス戦が原因?」と言った時に、"Yeah, that's it!" 「そうよ、それよ!」と無責任に認めてしまうのも一つの手な気もするのですが、フィービーはあっさりそれを認めることはせずに、「それが、チャンドラーが怒っていることだと、あなたは思うの?」と問い返しています。
「そうである可能性はあると思う」と述べたロスに、フィービーはやっと、「それじゃあ(あなたがそう思うのなら)、それがそうだと[ニックス戦の件が、あなたが探している理由だと]思うわ」と言います。
誘導尋問みたいに相手の考えを引き出して、「あなたがそう思うなら、そうなんじゃない?」と、ちょっと責任逃れをしている感じがありますが、こういう展開にしておけば、「私がそうだと言ったんじゃない、私は嘘をついたわけじゃない」と後から言い訳できる気もしますしね。
嘘を言って何かしら理由を考えないといけない時には、こんな風に話を持っていけばいいのかも?と思えるような話術、テクニックにも思えます。

cover up は「(事実などを)隠す」なので、ロスは「怒ってるなら事実を隠さず、真実を話せばいいのに」と言っていることになります。
「ニックス戦のことで怒ってるなら、黙って無視したり逃げたりしないで、そのせいだってはっきり言ってくれればいいのに」ということですね。

tell me the truth という言葉が出てきたので、フィービーは、「もしそれがあなたの望みなら、もしあなたがチャンドラーに真実を話させたいなら」と言って、「彼を熱湯の下に通して、頭をテーブルに打ちつけるべきよ」と言っています。
このフレーズは、1つ前の記事、熱湯をかけて机に打ちつける フレンズ6-23その1 で取り上げたセリフに出てきましたね。
心を開かないポールを、「蓋の開かない瓶」に例えたフィービーに対して、「じゃあ、彼にお湯をかけてテーブルで頭を叩けばいいの?」のように、瓶の蓋を開ける行為を人間の彼に適用しろっての?みたいにレイチェルはジョークを言っていたのですが、フィービーは「それは人間の心を開かせる方法じゃなくて、人間に真実を吐かせる方法よ」と、まるで残虐な自白の拷問のように言っていた、というジョークでした。
そういうやり取りが視聴者の記憶に残っている間に、またここでそのネタが使われたことになります。
しばらく時間が経ってから、前に使ったギャグやジョークをもう一度使う、というのは、日本のお笑いでもよくある手法ですから、こういうものはコメディの王道と言えそうですね。


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2012年07月23日

熱湯をかけて机に打ちつける フレンズ6-23その1

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シーズン6 第23話
The One With The Ring (ポールは泣き虫)
原題は「リングの話」


[Scene: Central Perk, Phoebe and Rachel are sitting on the couch.]
セントラルパーク、フィービーとレイチェルがカウチに座っている。
フィービー: So how are things going with Paul? (それで、ポールとはどんな感じ?)
レイチェル: Good. Although, y'know, he-he's a private guy. Y'know, I wish I could get him to open up a little bit, share some feelings. (グッドよ。でも、ほら、彼は一人でいるのが好きな人[人前に出たがらない人]なんだけどね。彼がもう少し心を開くようにできればいいのに、感情をシェアさせることができればいいのに、って思ってるの。)
フィービー: That's easy. You just have to think of him as a-as a jar of pickles that won't open. (そんなの簡単よ。ただ彼を、蓋(ふた)が開かないピクルスの瓶だと思えばいいだけよ。)
レイチェル: So what are you saying; I should run him under hot water and bang his head against a table? (それじゃあ、あなたが言ってるのは、私は彼を熱湯の下に通して[くぐらせて]、彼の頭をテーブルに打ち付けるべきってこと?)
フィービー: No, that's what you do when you want to get the truth out of someone. (いいえ、それは、誰かから真実を引き出したいと思う時にすることよ。)

フィービーはレイチェルに「ポールとは今どんな感じになってる?」みたいなことを問うています。
How are things going with Paul? を直訳すると、「ポールとの間で、物事はどんな感じに進んでる?」みたいになるでしょうか。
そこから、ポールとの付き合いの状況や進行具合などを問う質問になるのですね。

レイチェルは、Good. と答えますが、その後に、逆接の意味のある although という単語が続いていることから、何かしらの不満を抱えていることがわかります。
接続詞 although は、「〜だけれども、〜であるが」のように訳されることが多いですが、このように、Good, although he's a private guy. のような形であれば、「グッドなんだけど、でも、彼はプライベートな人なの」のように、「でも、だが」という逆接で文を繋ぐ形で訳した方が自然になるでしょう。
フレンズのセリフでは、Good. He's a private guy, though. 「グッドよ。彼はプライベートな人なんだけどね」のように、文尾に though をつける形がよく出てきますね。
although と though は、although の方が文語的、形式的ですが、ほぼ同じ意味であるために、大抵の場合は置き換えが可能です。
ただ、He's a private guy, though. のような形で、although を文尾に使うことはできませんので、ご注意下さい。

private は「プライベート」という日本語からも何となくイメージは浮かびますが、「一人(でいるの)が好きな、人前に出たがらない、非社交的な」という意味。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
private [adjective] : PERSON [only before noun] a private person is one who likes being alone, and does not talk much about their thoughts or feelings.
例) He doesn't talk much about his family - he's a very private person.

つまり、「(名詞の前のみ) private な人とは、一人でいるのが好きな人、自分の考えや感情についてあまり多くを話さない人」。
例文は、「彼は自分の家族のことをあまり話さない。すごく private な人だ」。

いろいろな日本語の訳語を当てはめなくても、「彼はプライベートな人だ」と表現しても、理解できるようなニュアンスだとは思います。

「彼はプライベートな人なの」と言った後、レイチェルは、I wish I could 「〜できたらいいのに」という仮定法過去を使って、自分の願望を述べています。
open up は「広げる、開ける」で、この場合は「心を開く、気持ちを打ち明ける」という感覚ですね。
open up という、大きな概念の言葉を使った後、もっと具体的に述べる形で、share some feelings 「気持ちをシェアする、共有する」とも表現しています。

「彼に心を開かせたい、気持ちを共有させたい」というレイチェルに対して、フィービーは「そんなの簡単よ」と言っています。
You just have to は「ただ〜しさえすればよい」というニュアンス。
何をすれば良いのか、という以下の文の構造を簡単にすると、think of him as a jar 「彼を瓶と見なす、彼を瓶だと考える」になります。
どんな瓶かの説明が、その後に続く、(a jar) of pickles that won't open ですね。
won't open は「開かない、開こうとしない」なので、彼を「蓋が開かないピクルスの瓶」だと思え、と言っているわけです。

心を開かない人間を、蓋が開かない瓶だと思え、というのは、わかったようなわからないような例えなので、レイチェルは「じゃあ、蓋の開かない瓶に対してするような行動を、彼にもしてみればいいわけ?」と問い返しているのですね。

run him under hot water について。
run の基本的な意味は、自動詞「走る」ですね。
後ろに目的語を取る他動詞では「走らせる」が基本になるでしょう。
そこから、「(機械を)動かす」「(会社を)運営する」という意味にもなるのですね。
また、自動詞 run には「(液体が)流れる」という意味があり、run water という他動詞だと「水を流す、出す」という意味になります。
ただ、今回のセリフでは、確かに water という言葉が使われてはいますが、run の目的語とはなっていないので、「水を流す」という訳語は当てはまらないように思えます。

さらに別の意味を見てみると、run A through B で、「A を B に通す、突っ込む、突き刺す」というような意味もあります。

研究社 新英和中辞典では、
run=〈糸・指などを〉(…に)通す、突っ込む
He ran his hand [fingers] through his hair. 彼は手[指]を髪に通した。


この例文は、自分の髪の毛を手櫛(てぐし)のようにすいているイメージで、これが、her hair なら、彼女の髪の毛を彼の指で「すく」ような、恋人同士がよくやる仕草の描写になります。
これも「彼は髪に指を走らせた」と表現しても、イメージは湧きますよね。
通訳、翻訳を仕事とする方であれば、「日本語として一番しっくりくる言葉」を選ぶ必要が出てきますが、「英語を英語のまま理解する」ことを目的としているのであれば、頭の中に、この run という動作の動きがイメージできればいいわけです。
セリフでは、through ではなく under なので、「熱湯の下に通す[くぐらす]」と私は訳してみましたが、「通す」という訳語が大事なのではなくて、「熱湯の下を走らせた」みたいな動きが run という言葉からイメージできたらオッケーだ、ということです。

bang は元々「ズドン!」(銃声)、「バタン!」(ドアを閉める音)のような擬音語で、この場合は「〜をバンと強く打つ」という他動詞ですね。
ですから、bang his head against a table は、「彼の頭をテーブルに(バンと)強く打ちつける」と言っていることになります。
ジャムなどの瓶の金属製の蓋が固くて開かない場合に、火であぶったりお湯につけたりして膨張させるテクニックは日本人も使いますが、レイチェルはそれと同じようなことを言っているようです(私は温めた後、テーブルにぶつけたりはしませんけれど…笑)。

蓋を温めて、テーブルにガンと打ちつければピクルスの瓶は開くかもしれないけど、それと同じようなことを人間の彼にもやれってこと?と、レイチェルは冗談を言っているのですね。
レイチェルにしてみれば、「まさか本当に瓶みたいに、温めて叩けば開くってもんでもないでしょうに、瓶に例えられてもわからないわ」ということなのですが、その後のフィービーの返しが面白いです。

No とまずは否定しているので、「そんなことを人間に対してするわけないじゃない、私が言っているのは別のことよ」とでも続くのかと思いきや、フィービーの返事は、「それは、誰かから真実を引き出したいと思う時にすることだ」。
つまりフィービーは、「誰かに真実を語らせる、事実を吐かせる場合には、その方法を使うけど、心を開かせる時に使う方法じゃないわ」と言っていることになります。
「人間に対して使う方法じゃない」と否定しているのではなくて、「心を開かせる場合に使う方法じゃない」と否定しているわけですね。
「瓶に例えられても、まさか熱湯をかけてテーブルに頭をぶつけるわけにはいかないし」のように、そんな方法は人間に使えないとレイチェルは言っているのに、フィービーは「真実を吐かせる場合に使う方法だ」と人間に対してその方法を使うことを認めている、というオチになります。
例えば、「24」のように拷問シーンが登場するような作品には出てきてもおかしくないような方法ではありますが、そういうよくある(?)瓶の開け方を、対象を人間として語ってみると、何とも残酷な、口を割らせたり、自白させたりするための拷問みたいになってしまう、という英語表現の面白さが、このやり取りのポイントになっているわけですね。


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posted by Rach at 17:26| Comment(3) | フレンズ シーズン6 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月20日

彼女はそれを信じた? フレンズ6-22その6

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モニカが、モーガン・チェイス美術館で挙式するためのリストに名前を書いたと知り、チャンドラーはパニックになって、しばらく行方がわかりませんでした。
チャンドラーを家で待っていたモニカは、彼が帰ってくると、「おふざけでリストに名前を書いただけで、あなたにプレッシャーを与えるつもりなんかなかった」と必死に弁解し、チャンドラーもそれで納得した様子。
仲直りのハグをした後、
モニカ: All right. I'm gonna go tell Joey that (laughs) that you're back. I was really worried about you. (Exits.) (よーし(それじゃあ)、ジョーイに言ってくるわ [笑って] あなたが戻った、って。私はほんとにあなたのことを心配してたんだから。)
フィービー: (entering from her room) Hey, did she buy it? ([自分の部屋から出てきて] ねえ、モニカはそれを(本当だと)信じた?)
チャンドラー: Totally. (すっかりね。)
フィービー: So did Hildy show you the place? (それで、ヒルディはその場所を見せてくれた?)
チャンドラー: Yeah. It's beautiful. (ああ、きれいだね。)
フィービー: I can't believe you're gonna ask Monica to marry you. (あなたがモニカに結婚を申し込むなんて信じられない。)
チャンドラー: I know. (そうだね。)
(They hug.)
二人はハグする。

モニカは「あなたが戻った、ってジョーイに言ってくるわ。ほんとに心配したんだから」と言って、部屋を出て行きます。
何ともいえない表情で、モニカを見送るチャンドラー。
そこに、自分の部屋からフィービーが出てきて、Hey, did she buy it? と言い、チャンドラーは、Totally. と答えています。
この buy は「買う」ではなくて、「…を(本当だと)信じる」というニュアンスですね。
つまり、「彼女はそれを信じた?」「ああ、すっかり信じたよ」と言っていることになります。

LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
buy : BELIEVE [transitive] (informal) to believe an explanation or reason, especially one that is not very likely to be true
例) She'll never buy that excuse.

つまり、「ある説明や理由を信じること、特にあまり本当ではないようなことを」。
例文は「彼女はそんな言い訳は絶対に信じないよ」。

ロングマンの語義にあるように、buy は、「あまり本当ではないようなこと」を信じる場合に使われる単語です。
例文も、「そんな”嘘なのがミエミエの下手な言い訳”を彼女が信じるはずない」みたいなニュアンスですよね。
それを考えると、buy が使われたフィービーとチャンドラーの会話からだけで、「チャンドラーが本当とは違うことを言った、何か嘘を言った」らしいことが察せられます。
観客も視聴者も、このやり取りを聞いた瞬間に、「あれ? 何だかちょっと様子が違う」と感じたはずです。
チャンドラーがパニクって、モニカがそれをなだめて…というシーンだったはずが、何かそこには裏がある?と思える瞬間ですね。
フィービーが突然、部屋から出てきたのに、驚く様子もなく、むしろフィービーがそこにいたことを知っていたかのような様子であることも、「裏には何かある」ことを示していますね。

その次のやり取りで、ついに真実が明らかになります。
日本語訳なしの英語のセリフだけで、その「どんでん返し」に気づけた人は、ドラマを英語で楽しめていると言えることになるでしょう。

フィービーが「それで、ヒルディはその場所をあなたに見せた?」と言い、チャンドラーは、「ああ、きれいだね」と答えています。
ヒルディという名前はこのエピソードで何度か出てきたように、モーガン・チェイス美術館の人の名前ですね。
挙式のキャンセルが出たので…とモニカ宛に電話をかけてきた人です。
その美術館の(どうやら結婚式担当の)人が、「その場所をあなたに見せた?」と言っているわけですから、その言葉から、「チャンドラーは、その美術館を訪れ、式場となる場所を見せてもらった?」と言っていることがわかるわけです。
その問いに「ああ、きれいだね、きれいな場所だね」と答えるチャンドラーの笑顔がとても素敵ですね。
観客からもオー!という歓声が上がっています。
英語のセリフで見ていて、この観客と同じタイミングで歓声を上げることができた人、それが「英語を英語のまま理解できている人」だと思います。
「感動のシーンを英語のセリフで理解できた」ということは、何よりも自分の自信となります。
だからこそ、できるだけ「ネタバレ禁止」状態で見るように、私はお薦めしているのですね。

このシーンは本当に、何度見ても泣けてしまいます。
あれほど「コミットメント(commitment=特定の相手と深く真剣に付き合うこと)恐怖症」だったチャンドラーが、モニカに内緒で一人で式場の下見をしてきた、ということが、このセリフからわかるからですね。
"Yeah. It's beautiful." と言う時のチャンドラーの顔には、「コミットメント恐怖症」だった頃の面影はありません。
ずっと結婚に憧れていたモニカのために、人生最大の決心をして、それに心から満足している男の顔、です。

「式場の下見をしてきた?」「ああ、素敵なところだったよ」というやり取りだけで、もう、「チャンドラーはついにモニカと結婚する意志を固めた」ことがわかるのですが、フィービーはさらにそれをはっきりさせる形で、「あなたが結婚してってモニカに言うなんて、あなたがモニカに結婚を申し込むなんて、信じられない」と言っています。
I know. は「そうだね」という感覚で、「フィービーがそれを信じられないっていうのはよくわかるし、俺自身も自分がここまでできたことに驚いてるよ」という感じでしょう。

この時のフィービーの声も、チャンドラーの声も震えています。
もちろん、フィービー、チャンドラーという役を演じる役者としての演技であるのはもちろんですが、演じているリサ・クドロー、マシュー・ペリー自身も、自分たちが演じてきたフレンズのキャラクターの成長を感じて、感無量になっているようにも見受けられます。
演じる俳優たちと、観客、視聴者が一体となって、チャンドラー&モニカのこの画期的な出来事を一緒に喜び合えるのが、観客を入れた舞台で撮影しているシットコムの醍醐味と言えるかもしれませんね。


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posted by Rach at 17:16| Comment(7) | フレンズ シーズン6 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月18日

何か意味があるように取らないで フレンズ6-22その5

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チャンドラーは、モーガン・チェイス美術館からかかってきた電話で、モニカがその美術館で結婚式の予約をしたことを知ります。
モニカが家に帰ると、チャンドラーはパニクった様子で、そのまま家を飛び出してしまいます。
留守電を再生したモニカは、美術館からの電話にチャンドラーが出たことを知り、チャンドラーの動揺の原因を悟るのですが、その後もチャンドラーの行方がわからず困惑しています。
[Scene: Monica, Chandler, and Phoebe's, Monica is pacing, waiting for Chandler to return. Chandler enters.]
モニカ、チャンドラー、フィービーの家。モニカは、チャンドラーが帰ってくるのを待って、歩き回っている。チャンドラーが入ってくる。
モニカ: (going over to him) I'm so sorry. Please stop freaking out. ([チャンドラーに駆け寄りながら] 本当にごめんなさい。どうかパニクるのはやめて。)
チャンドラー: I'm not freaking out. Why would I be freaking out? A woman named Hildy called and said we were getting married. But that happens every day. (Does one of those Chandler noises.) (俺はパニクってなんかいないよ。どうして俺がパニクるわけ? ヒルディって名前の女性が電話してきて、俺たちは結婚する予定だ、って言ってた。でもそんなこと、毎日起こることだしね。[チャンドラーが(パニクった時に)よくやる例の音を出す])
モニカ: Honey, we were at this beautiful place. And I-I-I just put our names down for fun! I mean, what's the harm in that? (ハニー、私たち(女性陣)は、きれいな場所にいたのよ[私たちがいたのは、きれいなところだったのよ]。それで、ただ、おふざけで、名前を書いただけよ! つまり、そのことで何の害があるっていうの、ってね。)
チャンドラー: Right here! (Clucks like a chicken for some reason.) (まさにここに(害があるんだよ)! [どういうわけか、ニワトリのようなクワッという鳴き声を出す])
モニカ: Chandler, please don't think I was trying to pressure you. Phoebe and Rachel just thought-- (チャンドラー、どうか私があなたにプレッシャーを与えようとしてると思わないで。フィービーとレイチェルがただこう思っただけなの…)
チャンドラー: Phoebe and Rachel! So the people that knew about our wedding before me were you, Phoebe and Rachel, Hildy, and apparently some band called, Star Light Magic Seven, who are available, by the way! (フィービーとレイチェル! それじゃあ、俺より前に、俺たちの結婚式のことを知っていた人は、君とフィービーとレイチェルとヒルディと、それから、どうやら「スター・ライト・マジック・セブン」っていう名前のバンドも(それを知ってた)みたいだね。ちなみに、そのバンドは当日空いてるってさ!)
モニカ: It was a mistake. Please don't take this to mean anything, because it doesn't. (間違いだったのよ。どうかこのことを何か意味があると取らないで。だって何の意味もないんだもの。)
チャンドラー: Okay. (わかった。)
モニカ: Really? (ほんとに?)
チャンドラー: Yes. If it really doesn't mean anything, because you know that I'm just not ready.... (ああ。もしそれがほんとに何の意味もないのならね。だって君は知ってるだろ、ただ俺はまだ心の準備ができてないって…)
モニカ: I know. I know. (わかってるわ。わかってる。)
チャンドラー: Okay. (They hug.) (オッケー。[二人はハグする])

freak out は「パニックになる、パニくる」という感じ。
結婚式の予約リストの話を聞いたチャンドラーがどれほどパニクっているか、モニカはよーくわかっている、それで帰ってくるなり、「お願いだから、パニクらないで!」と言っているのですね。
そう言われたチャンドラーは、言葉では「俺はパニクってなんかいない、どうして俺がパニクるんだよ?」と返します。
電話の女性が、俺たち二人は結婚する予定だ、って言ってたけど、そんなの毎日起こることだし、みたいにも言っています。
知らない女性がいきなり電話をかけてきて、「あなたは結婚する予定になっています」って教えてくれたりすること、よくあるじゃん、という皮肉ですね。
彼の本当の気持ちとしては、「当人が知らない間に式場の予約をされて、しかも知らない女性がそれを電話で知らせてきた」なんて、そんなの絶対おかしいだろ!?という感じでしょう。
その後、チャンドラーがパニクった時によく出す「ワワワワ」みたいな叫び声もあげています。
「パニクってない」どころか、超パニックであることは誰の目にも明らかです。

for fun は「楽しみのために」ということですから、「面白半分に、おふざけで」というニュアンス。
きれいなところだったから、ちょっとふざけてリストに名前を書いただけよ、ということですね。
What's the harm in that? を直訳すると、「その中で、何が害なの?」というところ。
そういうことをしたことで、そこに何か害となるものがある?別に害なんか何もないでしょ、誰も困らないでしょ、みたいなことですね。
「何も harm なんかないはず」みたいに言われたので、チャンドラーは、両手の指で自分の頭を指差しながら、Right here! 「まさにここに害があるんだ!」みたいに言っています。
「害がない、だなんてとんでもない。そのせいで、俺の頭は今、混乱して爆発寸前なんだよ!」ということですね。
モニカは、Don't think... 「…だと思わないで」を使って、「私があなたにプレッシャーを与えようとしてるとは思わないで」と言っています。
リストに名前を書いちゃえば、結婚をいやでも考えないといけなくなるから…みたいに、あなたを追い込もうとしているわけじゃないの、ということですね。

フィービーとレイチェルの名前も出そうとしたところ、そのことでまた、チャンドラーの怒りが増幅します。
新郎に当たる、この俺が知らないのに、新婦の友人の二人はすでに知ってたんだよな、ということですね。
So the people that knew about our wedding before me were... は、長いですが、were の手前の me までが主語になっています。
シンプルにすると、the people were you, Phoebe... 「人々は、君とフィービーと…」ということですが、「どんな人々」のことを言っているかを、その後に修飾語句を続けて、詳しく説明しているのですね。
どんな人々かと言うと、「俺たちの結婚式について知っていた(人)、俺の前に」ということになります。
友達の2人、電話をかけてきた美術館のヒルディも知ってた、と言った後、apparently some band called... 「どうやら、…って名前のバンドも(俺より前に結婚式のことを知っていたみたいだ)」と言っています。
available は「利用できる、利用可能な」ということですから、結婚式当日はそのバンドの予定が空いているので演奏してもらえる、ということになります。
予定が空いているとわかる、ということはつまり、その日にビング・ゲラー両家の結婚式があると聞いているわけですから、そのバンドも俺より先に、この結婚式のことを知っていたことになるよね、という皮肉ですね。
それを、「他にも、スター…って名前のバンドも知ってたみたいだ、ちなみにそのバンドは当日、空いてるってさ!」みたいに、最後に by the way を付けて、情報を付け足しているのが、いかにも会話っぽいセリフですね。
「俺の知らない間に、バンドまで決まっちゃってるみたいだね! 君の希望したバンドが空いてて良かったね!」みたいな感じです。

チャンドラーの怒りが収まる様子がないので、モニカは必死に弁解しています。
Please don't take this to mean anything. は「どうか、これが何か意味があると取らないで」。
because it doesn't. は、it doesn't mean anything ということで、「だって、(実際に)何の意味もないから」ということになります。
一人で勝手に、意味ありげなことだといろいろ勘ぐらないで、ただのお遊びで、ただの間違いで、深い意味なんて何もないのよ、ということです。

「何の意味もない」ことを強調するモニカに、チャンドラーもようやく折れたようで、Okay. と言っていますね。
「ほんとにそれ(結婚式リストに名前を書いたこと)が何の意味もないなら、それでいいよ」ということです。
because you know that I'm just not ready.... は、「だって、君は俺が not ready だと言うことを知ってるから…」という感じ。
not ready 、つまり、何に対して準備できていないかと言うと、「結婚」という人生の重大事に向き合う心の準備がまだできていない、というニュアンスですね。
何の意味もない、ただのおふざけの間違いだと君が言うんなら、それでいい。君は俺がまだ結婚に対して準備できていないのを知ってるはずだから…ということです。
俺がそういう気持ちだと知っていながら、何かプレッシャーを与えようとしてそういうことをしたのなら許せないけど、君が俺の気持ちを理解していて、そのおふざけには何の意味もないと言うなら、それはもう水に流すよ、という感覚でしょう。

you know... という言葉を使ったチャンドラーに対して、モニカは、I know. I know. と言っています。
I know! 「アイ・ノウ!」 (知ってる! そうでしょ!)と叫ぶと、いつもの勝気で負けず嫌いのモニカの口癖になりますが、今回の I know. はそれとはかなり雰囲気が違いますね。
母親が子供をなだめる時のような、すごく優しい I know. 「わかってるわ」です。
結婚式リストに名前を書いたなんて知れたら、チャンドラーがパニックになるってわかってたはずなのに、ごめんなさい…みたいな気持ちがよく出ている気がします。


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posted by Rach at 16:51| Comment(4) | フレンズ シーズン6 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする