2022年04月17日

かなり大きなコミットメント フレンズ1-12改その6

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7:55
ジョーイ: Okay, okay. How about if we split it? (わかった、わかった。俺たちで割り勘するってのはどう?)
チャンドラー: What do you mean? Like, buy it together? (どういうこと[意味]だよ? それって、一緒に買うってことか?)
ジョーイ: Yeah. (あぁ。)
チャンドラー: You think we're ready for something like that? (俺たちにはそういうことに対しての(心の)準備ができてると思うのか?)
ジョーイ: Why not? (どうしてできてないと思うんだよ?)
チャンドラー: Well, just that it's a pretty big commitment. I mean, what if one of us wants to move out? (ほら、ただ、それってかなり大きな、深いかかわり合いだと思うんだよ。ほら、もし俺たちの片方が引っ越したいと思ったらどうする?)
ジョーイ: Why, are you moving out? (なんだよ、お前は引っ越すつもり[予定]なのか?)
チャンドラー: I'm not moving out. (俺は引っ越さないよ[引っ越すつもりはないよ]。)
ジョーイ: You'd tell me if you were moving out, right? (もし引っ越すつもりならお前は俺に言うよな?)
チャンドラー: Yes, yes, it's just that, look, my last roommate, Kip-- (あぁ(言うさ)、ただ、ほら、俺の前のルームメイトのキップが…)
ジョーイ: Oh, I know all about Kip. (あぁ、キップのことは全部知ってるよ。)
チャンドラー: We bought a hibachi together and then he ran off and got married, and things got pretty ugly. (俺とキップは一緒にヒバチ[焼き肉用コンロ・グリル]を買って、それからやつは出て行って結婚して、ことがかなり厄介になったんだ。)
ジョーイ: Let me ask you something. Was Kip a better roommate than me? (ちょっと聞かせてくれ。キップは俺よりもいいルームメイトだったか?)
チャンドラー: Oh, don't do that. (あぁ、そういうのはやめてくれよ。)

How about if ...? は「〜したらどうですか?」と提案する表現。
split は「〜を割る、分割する」という動詞で、「壊れた机を買う」話をしているこの会話では「割り勘にする」という意味になります。
split the bill 「請求書を分割する」=「割り勘する」という感覚で、テーブルの支払いを二人で分け合おうということです。

チャンドラーは、split it というのは、buy it together ということだよな? と確認しています。
ready for thatは「そのことに対して準備が出来ている」ということ、つまり、「お金を出し合って一緒にものを買う、という覚悟があるのか」という感じ。
一緒に机を買うことについて「心の準備」の話をされたので、ジョーイは Why not? 「どうして準備ができてないと思うんだよ?」と返します。

a pretty big commitment の pretty は形容詞「可愛い、プリティな」ではなく、「かなり」という意味の副詞であることに注意しましょう。
形容詞 big を「かなり(大きな)」と強める役割を果たしています。

commitmentは「深くかかわり合うこと」というニュアンス。
commitment の日本語訳を英和辞典で調べてみると、「かかわり合い、献身、傾倒」「本気で深く関与すること」「特定の人と交際すること」などと書いてあります。
動詞 commit の名詞形なので、まずは commit という動詞から見てみましょう。
日本語で様々に訳される単語は、英英辞典でそのイメージを確認してみることも大切です。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) での commit の基本的な意味は、
commit :
2. SAY YOU WILL DO SOMETHING
to say that you will definitely do something or that you must do something

「絶対に何かをする、または何かをしなければならないと言うこと」
3. RELATIONSHIP
to decide to have a long permanent relationship with someone

「誰かと長く永続的[恒久的]な関係を持つことを決めること」

続いて、名詞の commitment も見てみましょう。
同じく LAAD では、
commitment :
1. a promise to do something or to behave in a particular way

「何かをする、またはある特別な方法で振舞うという約束」
2. the hard work and loyalty that someone gives to an organization, activity etc.
「ある人が組織や活動に与える勤勉や忠誠」
3. someone's decision to have a permanent relationship with another person, especially a decision to get married
「ある人が別の人と永続的な関係を持つという決心、特に結婚するという決心」
4. something that you have promised you will do or that you have to do
「すると約束したこと、またはしなければならないこと」

「約束、忠誠」などが「献身、傾倒」のイメージで、3. の「ある人との(結婚を意識したような)永続的な関係」が「特定の人と交際すること」というイメージに繋がると言えるでしょう。

フレンズはラブ・コメでもあるので恋愛がらみの話が多く、commitment というと、そういう恋愛関係にある人物間の relationship での意味、「特定の人と深く真剣に交際すること」というニュアンスで使われることが多いです。
言葉を変えると「深いかかわり(拘り、関わり、係わり)合いを持つこと」「深入りすること」「退っ引きならない(のっぴきならない)関係になること」「引くに引けない関係になること」「遊びではなく真剣に付き合うこと」などと様々に表現できるでしょうか。

遊びのつもりで軽く付き合うこと、というのとは正反対のイメージで、今回のエピソード、フリング(軽いお遊び)はフリングされてる(ポイされてる)はずでは フレンズ1-12改その2 に出てきた、fling 「遊びで軽くつきあうこと、短期間の情事、長続きしないロマンス」と正反対の意味だと言えるでしょう。
二人で一緒に物を買ったりして、一人が引っ越す気になった時、どうするんだよ? と言っていますが、結婚する時に二人でお金を出し合って家財道具を買うと、離婚時にどちらがどれを取るかでモメる、というイメージが、チャンドラーの頭の中にあるようです。

「もし片方が引っ越したいと思ったら」という発言を聞いて、ジョーイは Why, are you moving out? と返しています。
この現在進行形は「(今)〜している」という意味ではなく、「決まった近い将来の予定を表す」現在進行形になります。
「お前は引っ越すつもりなのか? 引っ越す予定なのか?」と訳すとよいでしょう。
問われたチャンドラーの方も同じく「予定」を表す現在進行形を使って、「俺は引っ越すつもり・予定はない」と返しています。
You'd tell me if you were moving out, right? の You'd は You would ということで、仮定法過去が使われていることになります。
「もし引っ越すつもりなら、お前は俺に(引っ越すことを)言うだろう…な?」というニュアンス。
「実際には引っ越さないとお前は今言ったが、それに反して、もし引っ越すつもりなら」と現実とは反対の仮定をしていることから仮定法過去(were)が使われているということです。

「引っ越すつもりならもちろんお前に言うよ」という意味で yes と答えた後、「(引っ越すとかじゃなくて)ただ前のルームメイトのキップが」と、名前を出しています。
それを聞くや否や、ジョーイは立ち上がり、「キップのことなら全部知ってるよ」と返します。
名前を聞いた途端にそう反応した様子から、チャンドラーが前のルームメイトであるキップの話をあれこれジョーイに話すこと、ジョーイはそのキップの話をされるのはうんざりだと思っている様子が伺えます。
「またキップの話かよ。もう嫌ってほど聞いてるよ」という感じです。

チャンドラーはキップとの間にあった出来事を説明しています。
hibach は見た目の通り、日本語の「火鉢(ひばち)」が語源です。
アメリカでは、バーベキューなどで肉を焼く時に金網を乗せて使うコンロ・グリルを指すようです。
LAAD では、
hibachi : a small piece of equipment for cooking food outdoors, over burning charcoal
つまり、「燃える炭の上で外で食べ物を調理するための小さな器具」。

bought, ran off, get married 「(二人で)買って、(やつが)出て行って結婚して」という流れがテンポ良く説明され、その結果 things got pretty ugly と言っています。
ugly は「醜い、不細工な、見苦しい」という意味で、「悪い、厄介な、面倒な」という意味でも使われます。
この場合は「物事がアグリーになった」ということなので、「こと・状況が厄介になった」と理解すればよいでしょう。
got pretty ugly の pretty も、今回の記事で最初に説明した a pretty big commitment と同じく、後に続く形容詞を強調する副詞「かなり」という意味になります。
カタカナで「プリティ/アグリー」と書くと「可愛い/醜い」という対義語が並んでいるようにも見えて「??」となりそうですが、これはあくまで意味を強調する副詞であって「可愛い」という意味は全くないということです。

一緒にヒバチを買ったのに、彼は逃げて他の女と結婚して…みたいに言っていますが、まるで「一緒に家財道具を買ったのに、彼は自分を捨てて他の女に走った」と恨み言を言う「元恋人」の発言のように聞こえてしまうところもポイントです。
それを聞いたジョーイは、こちらも真剣な様子で「キップは俺よりもいいルームメートだったか?」と尋ねています。
「そういう質問はやめてくれ」とチャンドラーは返していますが、ジョーイの質問もまた「自分よりもその元恋人の方が良かった?」と嫉妬心むき出しみたいな発言になっているのも面白いところです。


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posted by Rach at 13:01| Comment(0) | フレンズ シーズン1改 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年02月13日

想像の余地もないほど一目瞭然 フレンズ1-12改その5

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7:30
[Scene: Chandler and Joey's apartment. Joey and Chandler use their knees as a table to support the lasagna]
シーン:チャンドラーとジョーイのアパートメント。ジョーイとチャンドラーはラザニアを支えるために自分の膝をテーブルとして使っている。
チャンドラー: Okay, so just because it was my table, I have to buy a new one? (よし、それでそれが俺のテーブルだったからって理由だけで、俺が新しいテーブルを買わないといけないのか?)
ジョーイ: That's the rule. (それがルールだよ。)
チャンドラー: What rule? There's no rule. If anything, you owe me a table. (何のルールだよ? ルールなんかない。むしろ(何かあるとすれば)、お前が俺にテーブルを買う義務がある。)
ジョーイ: How'd you get there? (どうしてそういうことになるんだよ?)
チャンドラー: Well, I believe this piece of furniture was fine until your little breakfast adventure with Angela Delveccio. (そうだな、お前がアンジェラ・デルベキオとちょっとした朝食の冒険をするまでは、この家具は問題なかったはずだと思うからね。)
ジョーイ: You knew about that? (そのことをお前は知ってたのか?)
チャンドラー: Well, let's just say the impressions you made in the butter left little to the imagination. (そうだな、お前がバターに残した痕跡は想像の余地もなかった(ほど一目瞭然だった)と言っておこう。)

このシーンの最初のセリフで、「俺のテーブルだったから、俺が買わないといけないってか?」のように聞き返していることから、その前にジョーイが、「テーブルが壊れたから、チャンドラー、新しいテーブルを買ってくれよ。元々お前のものだろ?」と言ったであろうことが想像できます。
「持ち物が壊れたら、持ち主が買うのがルールだ」とジョーイは言いたいようですが、チャンドラーはそんなルールはない、と言います。
相手が「それがルールだよ」と言ってきた場合に「ルールって何だよ? そんなルールなんかないぞ」と反論することは日本語の会話でもありそうな流れですが、その場合には今回のように、That's the rule. - What rule? There's no rule. と返せば抗議のニュアンスが出ることもわかります。

if anything は「どちらかと言えば、むしろ」という決まり文句で、ここではそういう意味とも取れますし、if there’s any rule 「もし何らかのルールがあるとすれば」という意味にも解釈できるかもしれません。
俺に言わせれば、何らかのルールに則(のっと)るとすると、お前がテーブルを買うべきだと思うね、という感じです。
You owe me a table. は「お前は俺にテーブルの借りがある、お前は俺にテーブルを買って返すべき義務を負っている」ということ。
猫は貸しにしておく フレンズ1-7改その19 に出てきた You owe me a cat. と同じ使い方になります。

How'd you get there? について。
このセリフの表記は、
DVD : How did you get that?
ブルーレイ : How did you get there?
Netflix : How'd you get there?
となっていました。
音声を聞くと、that ではなく there に聞こえるので、How did you get that? または How did の部分を短縮した How'd you get there? が正しいと思われます。

get にはいろいろな意味がありますが、<get to+場所>が「(場所)に行く・到達する」という意味であることから、get there だと「そこに行く・到達する」となります。
there 「そこに」の「そこ」とは、「お前が俺にテーブルを買う義務がある、テーブルを買うべきなのはお前の方だ」というチャンドラーの出した「結論」だと考えられますので、「どのようにしてお前はその結論に到達したんだよ?」→「どうしてそういうことになるんだよ」というニュアンスで使っていると考えればよいでしょう。

どうしてそういう結論になるかということを、チャンドラーは、I believe 以下で説明しています。
this piece of furniture は「この家具」、つまり「壊れたテーブル」のこと。
furniture は集合的に「家具」を表す集合名詞なので、不可算名詞になります。
ですから、「家具1点」と言いたい場合は、a furniture ではなく、a piece of furniture と言わなければなりません。
昔の学校英語では、a furniture となっている間違いを探すような正誤問題によく出てきた単語でした。

was fine until... は「…するまでは fine だった、壊れるような状態ではなく良好な状態だった、問題なかった」。
つまり、until 以下のことが起こってから、テーブルの調子が悪くなったということ。
プレイボーイのジョーイに対して「ある女性との、朝のちょっとした冒険」という表現を使えばそれは、女性とのエッチな行為であると想像できます。
ちなみに、フレンズ1-5 にアンジェラというジョーイの元カノが登場して、ヨリを戻していましたので、今回のアンジェラ・デルベキオはそのアンジェラなのかもしれません。

その時、現場にいたわけでもないのに、どうしてお前はそのことを知ってるんだ? と問うジョーイに対してのセリフ、Let's just say the impressions you made in the butter left little to the imagination. について。
let's just say... は「…と言っておこう」、the impressions you made in the butter は「お前がバターに残した[作った]痕跡」。

left little to the imagination は「想像への余地をほとんど残さなかった」。
leave little room for... 「…の余地がほとんどない」というフレーズと似た感覚で、「想像へほとんど何も残さない」ということから、「ほとんど何も想像の余地がない」という意味になるわけです。
想像の余地がない、ということはつまり、想像しなくてもわかる、想像するまでもない、一目瞭然、ということ。

ですから、直訳すると「お前がバターに残した痕跡は、想像の余地がないほど一目瞭然だった、と言っておこう」ということになるでしょう。
つまり、チャンドラーは、ジョーイとアンジェラとの現場を見たわけじゃないけど、バターの痕跡を見てわかっちゃったよ、と言っているわけです。

この部分、DVDの日本語訳は、
バターが異常に 減ってたもん/あぁ、ちょっと想像力使えばわかるさ。バターが異常に減ってたもん。
となっていました。
英語のセリフが指している内容もおそらくそういうことで、バターを使ったプレイをしていた、ということを示唆しているように思います。
ちょっとハードな話になりますが、「食べ物を体に塗って舐め取る」(lick it off)的なプレイを示唆するセリフがフレンズには結構出てきます。
ネタバレしないようにエピソード番号だけ挙げておくと、フレンズ1-14, 3-21, 8-15 などに出てきますが、どれも「セリフそのものは結構エッチなことを言っているけれど、映像でそれをダイレクトには見せない」という形で使われていて、そこが「フレンズ」っぽいところだなぁと思います。

「バターを見りゃわかるよ」みたいに言ったことで、そういうものを使ったプレイをしていて、その激しい行為のせいで机が壊れちゃった、ということを観客に連想させて笑いを取る、というジョークのようです。
いきなりバターの話なので、ピンときにくいところではありますが、ジョーイはプレイボーイである、という設定から、「バター」という単語でそういうことをイメージさせることができるということなのでしょう。


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posted by Rach at 16:15| Comment(2) | フレンズ シーズン1改 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年01月06日

Everything's A-OK. フレンズ1-12改その4

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明けましておめでとうございます。
本年もどうかよろしくお願いいたします。


6:15
[Susan enters]
スーザンが入ってくる。
スーザン: Oh, hello, Ross! (まぁ、こんにちは、ロス!)
ロス: Susan. (スーザン。)
スーザン: So? So did you hear? (で? それで(あなたは)聞いたの?)
ロス: Yes, we did. Everything's A-OK. (あぁ、聞いたよ。すべては完全にオーケーだ。)
スーザン: Oh, that's so... [Susan hugs Carol, they giggle, Ross steps away] It really is. Oh, and do we know? (あぁ、それってすっごく… [スーザンはキャロルをハグし、二人はくすくす笑う。ロスは一歩離れる] 本当にね。あぁ、それでわかってるの?)
キャロル: We certainly do, it's going to be a-- (えぇ、確かにわかってるわ、赤ちゃんは…)
ロス: [flailing arms in protest] Oh, hey hey hey, ho ho ho, hello? See a guy who doesn't wanna know standing right here. [抵抗するように腕を振りまわしながら]あぁ、ねえねえねえ、おいおいおい、もしもし? ねぇ、知りたくない男がここに立ってるのが見える?)
スーザン: Oh, well, is it what we thought it would be? (あぁ、そうね、赤ちゃん(の性別)は私たちがそうだろうと思っていたものかしら?)
キャロル: Mm-hmmm [Susan and Carol hug, giggling. Ross stands back, reaches out and lightly taps Susan's shoulder] (ん−ん。[スーザンとキャロルはハグして、くすくす笑う。ロスは後ずさりして、手を伸ばし、スーザンの肩を軽く叩く])
ロス: Ok, what, what...ok, what did we think it was going to be? (よし、どうなるだろうって君たちは思ってたのかな?)
キャロル&スーザン: It's a--- (赤ちゃんは…)
ロス: [interrupts] No, no ,no. I don't want to know. Don't want to know. Ok, you know, I should probably, I should probably just go. ([さえぎって] いやいやいや。僕は知りたくない。知りたくない。よし、ねぇ、僕は多分、多分僕はただ出ていくべきだよね。)
キャロル: Well, thanks for the books. (えぇ、本をありがとう。)
ロス: No problem, ok, mmmwa [kisses Carol] oh, mmmwa [kisses Carol's stomach, then punches Susan's shoulder] Susan. [Ross leaves.] (いいんだよ。よし、ん−んまっ [キャロルにキスする]、あぁ、ん−んまっ [キャロルのお腹にキスして、それからスーザンの肩を(軽く)パンチする]スーザン。[ロスは出ていく])
スーザン: All right, who should we call first? Your folks or Deb and Rhona? [intercom buzzer rings] (いいわ、最初に誰に電話すべきかしら? あなたのご両親? それともデブかローナ? [インターコムのブザーが鳴る])
キャロル: Hello? (はーい?)
ロス [on intercom] Uh, never mind. I don't wanna know. [Carol and Susan laugh] ([インターコムで] あぁ、気にしないで。僕は知りたくないんだ。[キャロルとスーザンは笑う])

So did you hear? は「それであなたは聞いた?」ということ。
具体的に何を聞いたかという目的語がありませんが、少し前にロスに羊水の結果が出たことを伝えていましたので、今日は羊水の検査があることをパートナーのスーザンは当然知っていて、帰るとすぐに「例の結果を聞いた?」という意味で目的語なしの「聞いた?」という表現を使ったことになるでしょう。

先にキャロルから結果を聞いていたロスは、キャロルが答える前に「僕らは結果を聞いた」と言い、Everything's A-OK. と続けています。

A-OK は「エイ・オーケー(オウケイ)」と発音されていますが、これは「万事OKで、とても良い」という意味。
アカデミックな英英辞典である LAAD (Longman Advanced American Dictionary) にも載っていて、以下のように説明されていました。

A-OK [adjective] (informal) : in very good condition
例文)Everything's A-OK.

つまり「(インフォーマル)とても良い状況で」。

Macmillan Dictionary では以下のように出ています。
A-OK [​ADJECTIVE] (​AMERICAN ​INFORMAL)
perfectly OK
例文1)Everything is A-OK.
例文2)The sandwich is A-OK.

つまり「(アメリカ英語、インフォーマル)完璧にOK」

ロングマンやマクミランの英文にロスのセリフと同じ Everything を主語にした文が載っているように、A-OK はこのような形で使われることがよくわかると思います。

LAAD には Etymology (Word Origin) つまり語源も載っていて、以下のように説明されています。

A-OK
1900-2000 all (systems) OK


オール・オッケーのことだとわかれば、日本人にもピンときやすいですね。

なお余談になりますが、OK という言葉自体の語源には諸説あるようです。
Wiktionary : OK に詳しい説明がありますが、一般的に受け入れられている説としては、all correct をわざと(コミカルに)oll korrect と綴ったのだとする説があり、もしそうであるならば、LAAD の A-OK = all OK という説明は、A-OK = all all correct ということになり、何だか面白いなと思いました。

検査の結果が良好だとわかり、スーザンはキャロルにハグしています。
喜び合っている二人にはロスが全く見えていない感じで、ロスは少し二人から離れます。

その後の二人の会話、
Oh, and do we know?
We certainly do, it's going to be a--
について。
and do we know? も、シーン最初の So did you hear? と同じく、具体的な目的語が語られていませんが、「羊水検査の結果が出て、良好だった。そしてある件について知っている/わかっているかどうか」という話になれば、それは赤ちゃんの性別の話であることが想像できます。
今日、そういう検査をして赤ちゃんの性別がわかる(かも)ということが共通認識としてあるために、「(例の件は)わかってるの?[わかったの?]」と表現するだけでお互い何を指しているかわかるということです。

it's going to be a-- は主語が it となっており、これは「まだ性別のわからないお腹の中の赤ちゃん」を指していると考えるとよいでしょう。
赤ちゃんの性別はどっち? と質問する場合に Is it a boy or a girl? 「赤ちゃんは男の子? それとも女の子?」と尋ねるのが定型フレーズとなっているように、今回の場合もまだ性別のわからない赤ちゃんを(性別のない)中性代名詞 it で表現しているということです。
そして、少し前の会話で「赤ちゃんの性別は生まれてから知りたい」と主張していたロスが、it's going to be a-- つまり、it's going to be a boy または it's going to be a girl かのどちらかをキャロルが言おうとする寸前に、腕を振って止めたことになります。

See a guy who doesn't wanna know standing right here. について。
who は a guy を先行詞とする関係代名詞で a guy who doesn't wanna know は「知りたくない男」、standing right here は a guy を後置修飾している分詞と捉えることもできるでしょうし、see a guy standing right here のように「目的語が〜しているのが見える」と捉えることもできるかと思います。
前者の場合だと「ここに立っている、知りたくない男を見て」、後者の場合だと「知りたくない男がここに立っているのを見て」になるでしょう。
いずれにしても、ロスがいるのを忘れたかのように赤ちゃんの性別の話をしようとしている二人に対して、「もしもし、ここに性別を知りたくない人間がいるんだけど、僕のこと忘れてない?」とアピールしたことになります。

知りたくないと言っている人のそばでダイレクトに性別の話をしてはいけないと思ったらしいスーザンは、はっきりと性別そのものを尋ねるのではなく、is it what we thought it would be? とキャロルに尋ねています。
単語だけを見ると簡単なものばかりですが、このような遠回しな言い方はノンネイティブの口からはなかなかすっと出てきそうにない表現になっているなと感じます。
聞きたい内容は「今回判明した性別は、私たちが思っていたものだった?」ということですが、それを is it what we thought it would be? つまり直訳すると「赤ちゃん(の性別)は、赤ちゃん(の性別)がそうなるだろうと私たちが思っていたものかしら?」と表現したことになります。
多分こっちね、と二人の中で想像していた性別があれば、「そうなるって思っていたほうだった?」と尋ねるだけで結果がわかる、ということです。
キャロルは微笑みながら Mm-hmmm と言っているので、二人が思っていた性別が当たっていたことが見てとれます。
予想通りだったということで、また二人は嬉しそうにハグしていますが、それを見ていたロスは、知りたくないと言いつつも聞かずにはいられなくなったようで、キャロルと幸せな気分に浸っているスーザンの肩をトントンと叩き、「君たちはどっちになると思ってたの?」と尋ねます。
そう尋ねるロスに二人が性別を言おうとすると、またロスは我に返ったように「いや僕は知りたくない、知りたくない」と言って、「僕はここを出る・離れる方がいいよね」と言って、帰ろうとします。

キャロルは別れ際に thanks for the books. とお礼を言っていますが、本というのはロスがキャロルの家を訪ねてきた時に I brought all the books 「本を全部持ってきた」と言っていたことを受けたもの。
お礼を言われたロスは No problem. 「いいんだ、大したことないよ」と返していますが、Thank you. と言われたことに対してはこのように No problem. と返すことも多いですね。
「お安い御用さ」というニュアンスで返すイメージだと理解すると良いでしょう。

別れ際、キャロルの頬にキスして、お腹の赤ちゃんにキスした後、スーザンに対してはまるで男に挨拶するかのように肩を小突いて去っていくのが面白いです。

ロスがいなくなった後、「最初に誰に電話しようかしら?」と相談する二人。
folks は「人々」という意味がありますが、特に somebody's folks と所有格がついた場合はもっぱら「両親」の意味になります。
ここでも「あなたのご両親」という意味で使っていると考えればよいでしょう。

その後、インターコムが鳴り、キャロルが出ると、ロスの声が聞こえます。
Never mind. は「気にしないで。今のは忘れて」。
Never mind. は自分が何か発言した後、そのことについて深く追求されるのを避けるため、もしくは自分が言ったことを忘れて欲しい時などによく使われます。

LAAD では、
never mind : used to tell someone that somthing was not important, that you do not want to say something again, or that they should ignore what you said
例)"What did you say?" "Oh, never mind."

つまり「何かが重要ではなかった、何かをもう一度言いたくない、自分が言ったことを無視すべきだと誰かに言う時に使われる」。例文は「何て言った?」「あぁ、気にしないで」。

自分でインターホンを押しておきながら「気にしないで。僕は聞きたくないんだ」と言っているところに、実は赤ちゃんの性別が気になってしょうがない様子が見えるのが面白いです。


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posted by Rach at 21:37| Comment(0) | フレンズ シーズン1改 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月28日

視線を向けて〜が目に入る[〜だとわかる] フレンズ1-12改その3

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4:12
[Scene: Chandler and Joey leaving girls' apartment, carrying lasagna]
シーン:チャンドラーとジョーイがラザニアを抱えながら女子の部屋を出て行く。
ジョーイ: I love babies with their little baby shoes and their little baby toes and their little baby hands... (赤ちゃんって大好きなんだよな、ちっちゃな靴で、ちっちゃなつま先で、ちっちゃな手で…)
チャンドラー: Okay, you're gonna have to stop that... forever. (いいか、お前はそういうのはやめるんだ……永遠にな。)
[Joey opens door, throws keys on kitchen table, table falls over]
ジョーイはドアを開けて、台所のテーブルの上に鍵を放り投げる、テーブルが倒れる。
ジョーイ: Need a new table. (新しいテーブルが必要だな。)
チャンドラー: You think? (お前はそう思うのか?[(言葉にするまでもなく)当然そうだよな])

鍵を放り投げただけで、テーブルが倒れてしまいます。
Need a new table. 「(俺たちには)新しいテーブルが必要だな」と言ったことに対して、チャンドラーは You think? と返しています。
直訳すると「お前はそう思うか?」というところですが、これは当たり前のことを言ってきた相手に「そうか?」と皮肉っぽく返す時の表現。

Wiktionary には以下のように出ています。
Wiktionary: you think
you think?
(idiomatic) A sarcastic, rhetorical response to an obvious statement.
例)I reckon the trees are greener in spring than in winter. −You think?


つまり「(イディオム的)明らかな発言に対しての、皮肉っぽく修辞的な返答」。
例文は「冬よりも春の方が木々はより緑だと思うんだよ」「お前はそう思うのか?[当然そうだよな]」

今回の会話ではチャンドラーが You think? と言った後に観客の笑い声が起こっています。
テーブルが壊れたのを見てジョーイが「新しいテーブルが必要だな」という「あまりにも当たり前のことを言った」ことに対して、Yeah. 「ああ(そうだな)」と素直に返す代わりに、皮肉っぽく You think? と返したことになるでしょう。
You think? の単語のニュアンスを生かして和訳するとすれば「へえ、お前はそう思うんだ?」というところでしょうか。
「テーブルが壊れたから、新しいテーブルが必要だ」なんて、そんな当たり前のこと、わざわざ言わなくてもわかってるよ、と言いたい気持ちが出ているように思います。


4:43
[Scene: Carol's apartment. Knock at door]
シーン:キャロルのアパートメント。ドアにノックがある。
キャロル: Hey hey, come on in. (はいはい、入ってきて。)
[Ross enters, carrying lasagna]
ロスはラザニアを抱えて入ってくる。
ロス: Hey, hello. [kisses Carol] I brought all the books, and Monica sends her love along with this lasagna. (やあ、どうも。[キャロルにキスする] 例の本を全部持ってきた、それからモニカがこのラザニアと共に愛を送る、ってさ。)
キャロル: Oh, great! Is it vegetarian? 'Cause Susan doesn't eat meat. (まぁ、素敵! それってベジタリアン用(のラザニア?) っていうのは[なぜそんなことを尋ねるかって言うと]スーザンは肉を食べないのよ。)
ロス: [pauses] I'm pretty sure that it is. ([間があって] それはかなり間違いなくそう[ベジタリアン用]だと思うよ。)
キャロル: So I got the results of the amnio today. (それで、今日、羊水の結果が出たのよ。)
ロス: Oh, tell me, tell me. Is everything, uhh....? (あぁ、教えてよ、教えてよ。全部、その……)
キャロル: Totally and completely healthy. (全く完全に健康よ。)
ロス: Oh, that's great! That is great! [Hugs and kisses Carol. Then picks up a picture frame] (あぁ、それは良かった! それは良かった! [キャロルにハグしてキスする。それから写真立てを手に取る])
ロス: Hey, when did you and Susan meet Huey Lewis? (ねぇ、君とスーザンはいつヒューイ・ルイスに会ったの?)
キャロル: Uh, that's our friend Tanya. (あぁ、それは私たちの友達のターニャよ。)
ロス: [surprised, chuckling nervously] Of course, it's your friend Tanya. [looks up frightenedly] ([驚いてナーバスに含み笑いをして] もちろん、君の友達のターニャだよね[ヒューイ・ルイスなわけないよね]。[怯えたように目を上げる])
キャロル: Don't you wanna know about the sex? (セックスについて聞きたくない?)
ロス: [chuckles nervously] The sex? [chuckles] Um, I'm having enough trouble with the image of you and Susan together. When you throw in Tanya... I'm... Aah. ([ナーバスに笑って]セックス? [笑う] あのー、君とスーザンが一緒にいるイメージだけでも十分大変なんだよ。そこにターニャも放り込んだら……あぁ……)
キャロル: The sex of the baby, Ross. (赤ちゃんのセックス[性(別)]よ、ロス。)
ロス: You know the sex of the baby? Oh, oh oh oh! (君は赤ちゃんの性別を知ってるの? あぁ、あああ!)
キャロル: Do you want to know? (知りたい?)
ロス: No, no, no. No, I don't want to know. Absolutely not. I think, you know, I think you shouldn't know until you look down there and see, "Oh, there it is..." [pauses] or isn't. (いやいやいや。いや、僕は知りたくない。絶対に知りたくない。ほら、僕は思うんだよね、下のほうに視線をやって、「あぁ、それがある…」(間を置いて)または、ない、ってわかるまで性別は知るべきではないって[それがある、または、ない、ってわかって初めて性別を知るべきだって]。)

Monica sends her love along with this lasagna. を直訳すると「モニカがこのラザニアと一緒に愛を送る(って)」。
これはモニカが愛を込めて作ったラザニアで、モニカがよろしく言っといて、ってさ、くらいのニュアンスでしょう。

vegetarian は名詞で「菜食主義者、ベジタリアン」という意味ですが、ここでは「ベジタリアン用の」という意味の形容詞として使われています。
名詞の場合は可算名詞なので、You are a vegetarian? 「あなたはベジタリアンですか?」のように不定冠詞 a がつくことになります。
it は(人ではなく)その前の this lasagna 「このラザニア」を指していることからも、人を意味する「菜食主義者」という名詞ではないことが想像できます。

Is it vegetarian? 'Cause Susan doesn't eat meat. の 'Cause は Because の短縮形。
「なぜなら」というのは「なぜそんなことを尋ねるかって言うと」というニュアンス。
Susan doesn’t eat meat. は「習慣・習性を表す」現在形。
「スーザンは肉を食べない人だ」、つまり、スーザンは菜食主義者だということです。

それを聞いたロスは、少し沈黙した後、I'm pretty sure that it is. と言っています。
it is vegetarian であることは、pretty sure だよ、ということで、pretty は sure を強調する「かなり」という意味の副詞。
sure であることは「かなり」の度合いであるということで、ここでは「ほぼ間違いなくそうだ」というニュアンスになります。
このエピソードの冒頭での、モニカとシルおばさんとの電話の会話の中で、「ベジタリアン用ラザニアと言ってくれていたら、私はベジタリアン用ラザニアを作ったでしょうに」という発言があった通り、大量に余ってしまった「ベジタリアン用ではないラザニア」をロスが持ってきたことが想像されますので、ロスは、ベジタリアン用ラザニアではないと知っていて、「ベジタリアン用なのはほとんど間違いないよ」と嘘を言っていることになります。
キャロルとの会話からスーザンがベジタリアンということがわかり、ロスにとってスーザンは元妻を奪った恋敵のような存在ですから、間違えてそれを食べて気分が悪くなっても僕の知ったことか!みたいな気持ちが込められているのですね。
このエピソードの最初のモニカの電話の会話で、ラザニアがベジタリアン用ではないことがわかっているからこそ、ここでのロスの意地悪に笑えるという流れです。

amnio は amniocentesis「羊水を採取して、胎児の病気など、胎児が病気でないかを調べるテスト。羊水検査」の略で、羊水は amniotic fluid となります。
つまり、I got the results of the amnio today. は「今日、羊水検査の結果が出た、結果をもらった」ということ。

Huey Lewis は「ヒューイ・ルイス」で、アメリカのロックバンド、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース(Huey Lewis & The News)のボーカル。
映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主題歌「パワー・オブ・ラヴ」(The Power of Love)などで有名です。
その映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」では、ヒューイ・ルイスは以下のシーンでカメオ出演もしています。

ダンスパーティーに出演するバンドのオーディション。大音量でノリノリで演奏するマーティのバンド。ところが、拡声器を持った審査員がこう言います。
審査員: I'm afraid you're just too darn loud. ((残念ながら)君ら(のバンド)は音が大きすぎる。)
この審査員が、ヒューイ・ルイスでした。

(「フレンズ」の解説に戻ります)
ヒューイ・ルイスは、男っぽさ全開という感じの男性なので、キャロルとスーザンの友達であるターニャの見た目が男性っぽいことが想像できるやりとりになっています。

その後、キャロルが Don't you wanna know about the sex? 「sex について知りたくない?」と言って、ロスがあわあわするシーンについて。
have trouble with は「〜で苦労する、〜で大変である」なので、have enough trouble with は「〜で十分大変である」ということ。
直前にちょうど、ターニャの話題が出て、二人の友達にはこんな男っぽい女性もいるんだ、、、とびっくりしている時に、the sex の話題が出たので、ロスはてっきりレズビアンの sex つまり、「エッチの行為」についての話かと勘違いしたことになります。
キャロルとスーザンがエッチしている姿を想像するだけでも大変なのに、そこにその写真に写っているターニャも入ってくるとなるともう混乱しちゃうよ、と慌てているわけです。

ターニャの話は、ロスが写真立てに気づいたことで話題に上がったわけですが、キャロルとしてはあくまで赤ちゃんの羊水検査の話の続きとして the sex の話を持ち出したわけで、sex と言えば赤ちゃんの性別に決まってるでしょ、というところだったでしょう。
「羊水検査の結果が出た」→「たまたまロスがターニャの写真を発見」→「the sex について知りたい?」という流れから、キャロルとロスの間でそれぞれ、the sex という言葉で連想するものが違ってしまったというちぐはぐ具合が、この会話のポイントであり面白さともなっています。

「赤ちゃんの性別を知りたい?」と聞かれたロスは I don't want to know. Absolutely not. と答えています。
Absolutely not. は「絶対に〜ない」と全否定を強調するニュアンスで、ここでは「知りたいなんてことは絶対にない、絶対に知りたくない」ということ。

I think you shouldn't know until you look down there and see, "Oh, there it is..." or isn't. について。
このセリフでは look down there and see のように「見る」を意味する動詞 look と see が使われています。
look は「目をやる、視線を向ける」。
see は「見える、(自然と)目に入る」というニュアンスであり、またそこから「わかる」という意味でも使われるので、このセリフを直訳すると「下のほうに視線をやって、「あぁ、それがある」…またはない、とわかるまで、(性別を)知るべきじゃないと僕は思う」という感じになるでしょう。
赤ちゃんの性別を知る方法としては「”あれ”がついているか否か」で判断するのが一般的で、このロスの発言からもそれをイメージすることができます。
「下のほう(赤ちゃんの下半身)を見て、あるかないかを見るまでは性別を知るべきじゃない」というのは「それがついているかどうかを見て、初めて性別を知る」というのがロスにとって理想的な姿であることがわかります。

なお、このロスのセリフでは you が使われていますが、この you は、ロスの話し相手である「君=キャロル」を指しているのではなく、「一般の人々」もしくは回り回って「自分自身」を指しているものと考えられます。
このような you はあえて主語をはっきり訳さない方が良いでしょう。

仮にこの you をキャロルについて語ったものだと考えると「君は下を見て初めて性別を知るべきだと思う」と言ったことになりますが、キャロルはすでに性別を知っていることを考えると、キャロルがどうやって知るべきかを説いていると考えるには違和感があるでしょう。
赤ちゃんの性別を知る方法としては「生まれる前の超音波検査で知る」か「生まれた後であれがついているかどうかで知る」かのどちらかで、ロスは後者の方法を選びたいと語っているわけですから、「(自分も含め、人は)あれがついているかついていないかわかって初めて、赤ちゃんの性別を知るべきだ、と自分は考えている」のように語っていると考えればよいかと思います。


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posted by Rach at 15:51| Comment(0) | フレンズ シーズン1改 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年10月10日

フリング(軽いお遊び)はフリングされてる(ポイされてる)はずでは フレンズ1-12改その2

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3:09
[Rachel enters with Paolo, speaking Italian. Ross looks annoyed]
レイチェルが、イタリア語を話すパウロと共に入ってくる。ロスはうっとうしそうな顔をする。
レイチェル: Honey, you can say it. It’s Poconos. Poconos. It's like "poke a nose." [touching Paolo's nose with forefinger with each syllable] (ハニー、言えるわよ。ポコノスよ。ポコノス。「ポーク・ア・ノーズ(鼻をつつく)」みたいな感じよ。[シラブル(音節)ごとにパウロの鼻を人さし指で触れる])
パウロ: Ah, poke [Paolo touches Rachel's nose] a [touches nose again] nose, mmm [they rub noses, then kisses her] (あぁ、ポーク [パウロはレイチェルの鼻に触れる] ア [再び鼻に触れる] ノーズ。ん−ん。[二人は鼻をこすり、それから彼は彼女にキスする])
ジョーイ、チャンドラー、ロス: [sitting in living room, imitating Paolo] Mma, Mma, Mmaah. ([リビングに座りながら、パウロの真似をする] マ、マ、マー。)
[Camera pans to Rachel, Monica, and Phoebe in the kitchen]
カメラはキッチンのレイチェル、モニカ、フィービーにパンする。
モニカ: So did I hear "Poconos"? (それで、私は「ポコノス」って聞こえた?[今、(あなたは)「ポコノス」って言った?])
レイチェル: Yes, my sister's giving us her place for the weekend. (えぇ、週末に妹が場所[家]を私たちに貸してくれるのよ。)
フィービー: Woo-hoo. First weekend away together. (ウーフー。遠くで一緒に過ごす初めての週末ね。)
モニカ: Yeah, it's a big step. (うん、大きな一歩だわ。)
レイチェル: I know. (そうね。)
[Camera pans to Ross, looking dejected]
カメラがロスにパンする。
チャンドラー: Ah, it's just a weekend. Big deal. (あぁ、ただ週末(を過ごす)だけだ。大したことじゃない。)
ロス: Wasn't this supposed to be just a fling, huh? Shouldn't it be... [makes flinging motions with hands] flung by now? (ただの軽いお遊びのはずじゃなかったのか? [手でフリングする[投げる]動きをして]今頃はもうフリングされてる[ポイされてる]はずじゃないのか?)
[Camera pans back to Rachel]
カメラがレイチェルにパン・バックする。
レイチェル: I mean, we are way past the "fling" thing. I am feeling things that I've only read about in Danielle Steel books, you know? I mean, when I'm with him, I'm just totally, totally.... (つまり、私たちは「フリング(軽いお遊び)」ってやつをとっくに越えてしまったのよ。ダニエル・スティールの本で読んだことがあるだけだったことを、私は今感じているの、わかるでしょ? ほら、彼と一緒にいる時、私はただすっごくすっごく……)
[Camera pans to Ross, holding his stomach]
カメラがロスにパンする、ロスは腹を押さえている。
ロス: Nauseous. I'm physically nauseous. What am I supposed to do, huh? Call Immigration? [pauses, looks suddenly inspired] I could call Immigration. (吐き気がするよ。そうだ。僕は実際に吐き気がする。僕はどうすればいいんだ? 入国管理局に電話する? [間があって、突然ヒントを得たかのように] 僕は入国管理局に電話することができるじゃないか。)

Poconos「ポコノス」は、ペンシルベニア州の The Pocono Mountains(ポコノ山脈)のこと。リゾート地として有名です。
poke は「突く、つつく」。
Poconos と発音できないパウロに poke a nose「鼻をつつく」に発音が似てるわ、と説明するレイチェル。
鼻を触れあいながらキスしていちゃつく二人を見て、男性陣はパウロのイントネーションを真似ています。

So did I hear "Poconos"? を直訳すると「それで、私は(今)「ポコノス」って聞いたの?」というところ。
今、私にはポコノスと聞こえたけど、確かにそう言った? という感覚。
First weekend away together. は「ここから離れた場所で一緒に過ごす、初めての週末」。
away は「離れた場所で、(ここから)離れて」、together は「一緒に」で、しばらく付き合ってきたけれど、遠くに行ってお泊りするような小旅行は初めてね、ということ。
レイチェルとパウロが週末旅行することをモニカが a big step「大きな一歩」と表現した後、男性陣に画面が切り替わると、チャンドラーは Ah, it's just a weekend. Big deal. と言っています。
just がついているので「ただ週末(を過ごす)だけ」という意味になり、just を使っていることからチャンドラーは「週末旅行」をそれほど大ごととはとらえていないことがわかります。
Big deal. を直訳すると「大ごと、一大事」という意味ですが、It's not a big deal.「大したことじゃない」という意味で、皮肉っぽく Big deal. と表現することもよくあります。
本来の意味なのか、反対の意味なのかは、話の流れや話者の表情やイントネーションで判断できることになります。

ロスの Wasn't this supposed to be just a fling, huh? Shouldn't it be... flung by now? について。
これは fling という単語を使ったダブルミーニングになっています。
名詞の fling は「遊びで軽くつきあうこと、短期間の情事、長続きしないロマンス」という意味。
次のセリフの flung は、「ものを投げる、放り出す」という意味の動詞 fling の過去分詞形。

それぞれの意味は英英辞典で以下のように出ています。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
fling [noun] : a short and not very serious sexual relationship
fling [verb] : to throw something quickly with a lot of force

つまり、名詞は「短くてあまり真剣ではない性的関係」、動詞は「力いっぱい素早く何かを投げること」。

ですからロスは、手で「投げられる、ポイされる」ようなしぐさをしながら、fling(お遊び)だから、今頃は、be flung(放り出されている)はずじゃないのか?と fling の名詞と動詞の意味をかけていることになります。
Wasn't this supposed to be... は「これは…であるはずじゃなかったのか?」。

We are way past the "fling" thing. は「私とパウロは、「フリング(お遊び)」っていうのをずっと越えてしまってるのよ」。
past は「(限度を)越えて」、way は「はるかに、ずっと」という副詞。
もう「お遊び」のレベルはすっかり越えてしまって、真剣になってしまった、ということ。「fling だったはずなのに」と男性陣に愚痴っているロスを映した後、画面が切り替わり、レイチェルが「もう fling のレベルじゃない」と女性陣に言っている対比の描写が面白いです。
ロスの思いとはうらはらに、レイチェルとパウロとの仲がどんどん進展していっている様子が伺えます。

Danielle Steel は「ダニエル・スティール」。ロマンス小説のベストセラーを出している女性作家。
Wikipedia 日本語版:ダニエル・スティール
いかにも女の子が好きそうなロマンス小説の作家の名前を挙げたことになります。

レイチェルは「私は彼といると、ほんとに…」と自分がどれだけ幸せで、どれだけ彼に夢中かを話そうとしています。
レイチェルの I'm just totally, totally... の後の言葉を聞く前に、画面がパッと切り替わり、その I’m just totally, totally をうける形で、(I’m just totally, totally) nauseous. 「僕はただほんとに吐き気がするんだ」と繋がって聞こえるのが笑いのポイントになっています。
二人の言葉が一つの言葉のように連続して聞こえることで、ものすごく幸せそうなレイチェルと、不幸のどん底みたいなロスとの対比がさらにはっきりします。

totally は「全体的に、全く、完全に」「本当に、すごく」、nauseous は「不快な、胸が悪くなるような、吐き気がするような」、physically は「物理的に」「肉体的に、身体的に」。
physically nauseous は気持ち的・気分的な不快感ではなく、実際に僕の体が吐き気を催しそうになっている、比喩ではなく本当に吐きそうなほど気分が悪い、ということ。

What am I supposed to do, huh? は「僕はどうすればいいんだ?」。
be supposed to (do) は「…(する)ことになっている」。
少し前のロスのセリフ Wasn't this supposed to be just a fling, huh? でも過去形の否定疑問文の形で使われていました。
Wasn't this supposed to be... だと「(これは)…であることになっていたんじゃないのか?」となります。
過去形を使うことで「そうなっているはずだったのに実際には思っていたのと違う結果になっている」ことが示唆されています。

call Immigration は「入国管理局に電話する・連絡する、入国管理局を呼ぶ」。
immigration は「入国管理、移民」という意味で、文頭が大文字の Immigration は入国の管理をする施設の名称。
何の気なしに、Call Immigration? 「入国管理局に電話するか?」と言った後、その自分の発言を名案と思ったようで、I could call Immigration. 「そうだよ(しようと思えば)電話できるじゃないか。その手があるじゃないか」みたいに言っています。
ほとんど英語を話せないパウロを見て、ビザ切れ、不法滞在などの可能性もありそう、通報したら強制帰国させることが可能かも、というようなことでしょう。


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posted by Rach at 16:23| Comment(0) | フレンズ シーズン1改 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする